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氷河期の賢者
勝手ながら引き継ぎました。
ここは、ドリメに関係ない短編を書くところです。
ドリメ意外の、個人小説のテストアップに使っていただいても構いません!
過去の短編を貼るのもいいですし、突発的に思いついたけどどこに投稿すればいいか分からないのを貼るのも結構です。
以前別所に投稿したけど、流れてしまった小説などを貼るのも良しだと思いますナリ。
過去の短編小説コンテスト投稿作品は、秋葉さんに頼めば出してきてくれると思うので、その依頼等もこちらにどうぞ……!
2011/07/20 Wed 22:05 [No.471]
氷河期の賢者
※ハリーはハリー、ロンはロン、ハーマイオニーはハー、ヴォルデモートはヴォ、ベラトリックスはベラ、ナレーターはナで表す。
Aパート
ナ「分霊箱壊しの旅を続けているハリーたち。その分霊箱はいよいよあと一つになる。そう、ナギニだ。本来ならホグワーツで戦闘が繰り広げられるはずだったのだが、マクゴナガル先生の凄まじすぎる活躍によりデスイーターは全滅、ヴォルデモート卿とベラトリックスは、何とか難をのがれてかつてハリーたちと死闘を繰り広げた魔法省の神秘部に逃げ込んでいた」
ハリー「『エクスペクト・パトローナム』!守護霊よ来たれ!」
ロン「ハリー、守護霊に乗って魔法省へ行こうなんてどうかしてるよ」
ハー「守護霊は言葉は託せても触れることはできないのね……」
ハリー「じゃあどうやって魔法省まで?箒はマルフォイが全部折っちゃったし」
ロン「マルフォイのやつ、余計なことしてくれるよな」
ハー「じゃあ、地下鉄に乗りましょう。ロンドンまでなら通ってるわ」
ロン「地下鉄!?ホグワーツにそんなの通ってるわけないよ!」
ハー「マルフォイが作ったわ……」
ハリー「マルフォイは敵か味方か……」
ロン「いや、そこじゃなくてそもそもどうやって地下鉄なんか引いたんだ?」
ハー「『地下鉄魔法』というのがあるのよ」
ロン「いや、ないだろ」
ハリー「ロンドンへ行けるなら何でもいい、駅はどこにあるの?ハーマイオニー」
ハー「秘密の部屋よ」
ロン「なんであそこなんだ!てかあそこにはバジリスクの遺体があったんじゃないの?」
ハー「マルフォイが整備したわ」
ロン「マルフォイ大活躍じゃないか。じゃあ早く行こう!秘密の部屋へ」
ナ「そして秘密の部屋。かつてハリーがバジリスクと闘いました」
ハー「あー、ハリー、蛇語を喋って。でないと扉があかないわ」
ハリー(蛇語)
ロン「扉が開いた!やっぱり君ってすごいや!」
ハリー「あの人と同じ能力だ。あまり嬉しいことでもない」
ハー「さあ、ボタンを押せば地下鉄が来るわ」
ロン「しかしマルフォイのやつ、もう少し魔法使いらしい設備にすればよかったのにな」
ハー「ロン、ボタンに魔法がかけられてるわ。機械的なものよ。あなたってホントずぼら。さ、早く乗りましょう」
ナ「こうして三人はマルフォイの手助けでロンドンへ。が、三人のうちだれもマルフォイに感謝などしていないのでした」
2011/07/27 Wed 21:25 [No.522]
氷河期の賢者
Bパート
ハリー「魔法省だ。しかし人がいないなあ」
ロン「ハリー、これを大人の事情というんだよ」
ハリー「ロン、僕たち成人しているけど今演じている人たちは子どもだよ?」
ハー「ハリー、それも大人の事情なのよ……もう」
ヴォ(声だけ)「ハリー・ポッター……ずいぶんと余裕のようだが……ここで俺様が負けるのも大人の事情だ……よく覚えておくがよい……」
ベラ(声だけ)「わが君、どうしてあなた様が負けるようなことを!」
ヴォ(声だけ)「すまん。つい……」
ロン「ハリー、あの人もハリーのこと怖がってるのかもしれないぜ!弱気な発言だ!」
ハー「私には私たちを油断させる作戦に思えるけどね……」
ハリー「大丈夫。大人の事情で僕らが勝つから」
ロン「ハリー、君ってやつは……」
ハー「『オプリピエイト』!忘れよ」(ハリーに向けて忘却術)
ロン「ちょ、何やってるんだ!忘却術なんかかけたらハリーが記憶喪失になっちゃうじゃないか!」
ハー「あのね、私はロックハート先生とは違うの。ちゃんと必要な分だけの記憶を抜き取ったわ」
ロン「じゃあなんの記憶だよ……」
ハー「ハリーを見てみなさい……」
ハリー「二人とも、相手は強い。注意するんだ」
ロン「あれ、さっきのハリーじゃない。つまんないや」
ハー「ロン、あなたにも忘却術かけてあげましょうか?」
ロン「……遠慮しとくよ」
ハー「さあ、そろそろ神秘部ね」
ベラ「アバダケタブラァぁぁぁぁァ!」
ハリー「うわあああああ!」(攻撃を受け、倒れる)
ハー「ええええええ!!?」
ベラ「やってしまった……わが君の獲物を……でも仕方がない……」
ハー「何が仕方ないのよ!ハリーが死んじゃったのに!」
ベラ「いや、そいつ大人の事情で生き返るし」
ハリー「そういうことだ」
ハー「早ッ!」
ベラ「しかも、しかも、わがご主人様は……悟ったのだ……」
ハー「悟った……?」
ベラ「ハリーポッター、あの方はお前を直々に手をかけなくてもいいという考えを持つようになってしまった。簡単にいうと、闘うのがめんどくさくなったのだ。最近はペン回しに熱中している。――魔法を使えばいいのに」
ハリー「つまり……」
ベラ「そうさ!このベラトリックスおばさんがラスボスだよ!お前たちの知っているヴォルデモート卿はもういない!今はただのペン回しに集中するはげでしかない!」
ハリー「ハゲ……ということは」
ハー「勝てるかもしれない」
ロン「いや、ハゲ関係ないでしょ。あと僕に発言権をください」
ヴォル「成功したああああああああ!」
2011/07/27 Wed 21:26 [No.523]
氷河期の賢者
Cパート
ナ「ヴォルデモート卿はペン回しを成功させました!さあ、これがこの後の戦いにどう影響してくるか!」
ロン「いや、しないでしょ」
ハー「するのよ、ロン。ヴォルデモートがペン回しを成功させた、それはすなわちベラトリックスがペン回しを成功させることを意味する」
ベラ「わが君!できました!」
ヴォル「おお、やるなベラ」
ロン「待て、この作品はいつからペン回し作品に……」
ハリー「エクスペンアームズ!ペンよ去れ!」(ベラのペンが飛んでいく)
ベラ「――負けた」
ロン「いやいやいや負けてないでしょアンタ」
ヴォル「ベラ、このペンを貸してやろう。ドラコマルフォイのペンだ」
ロン「マルフォイ出た!!またマルフォイ出た!」
ハー「やばいわね……」
ハリー「まずいな……」
ロン「え、何が?」
ハー「ドラコマルフォイはペン回しの世界王者なのよ……あのペンはニワトコのペン。世界最強のペンよ」
ロン「いや最強のペンて」
ヴォル「ドラコマルフォイは俺様が以前始末した……つまりこのペンの真の所有者は俺様だ」
ハリー「いや、違うな」
ヴォル「何?」
ハリー「お前は確かにドラコマルフォイを破った。けれど、それ以前に僕が彼のペンを武装解除した。そしてペン回し世界王者の防衛戦にも勝利した。だから、ニワトコのペンの真の所有者は、僕だ」
ヴォル「戯言を言いおる!アバダケタブラ!」(ちゃんと杖で)
ハリー「おっと。僕たちは今、ペン回しについて話しているはずだ!魔法なんか使うな!」
ロン「いやいやいや」
ハー「そうね、ハリーの言うとおりだわ」
ロン「ハーマイオニー、君どうかしてる」
ハー「してないわ」
ハリー「ニワトコのペンだけじゃない。僕は死の秘宝と呼ばれる残り二つの宝も手に入れた。一つは蘇りのペン。一回ペン回しを失敗してももう一回やることを許されるんだ。二つ目は透明ペン。見えない」
ハー「すごいわハリー!」
ハリー「僕の方が圧倒的に有利なこの状態で勝つなどどっちが戯言かわからないな」
ヴォル「ベラ、やれ」
ロン「ステュービファイ!」(ベラトリックスを貫く)
ハリー「な……」
ハー「ロン!空気読みなさいよ!どうして魔法なんか使うの!」
ロン「だって!この作品は魔法物語だろ!?それなのにどうしてラストシーンでペン回しなんかするんだ!おかしいじゃないか!僕はあの人の側につく!」(寝返る)
ハー「そんな……ロン」
ヴォル「ペン回しを否定するとはいい度胸だ。だが、寝返るという行為を評価して許してやろう……さあウィーズリー、この杖を使うのだ……」
ロン「えい!」(杖を回す)
ヴォル「何をする!」
これでニワトコの杖の真の所有者は僕だ!ペン?どうだっていい。ヴォルデモート卿、お前は最後の最後に大きな過ちを犯してしまったようだな。ペン回しに没頭するなんて。ハリーとハーマイオニーを服従の呪文にかけていたのだってわかっているんだ。さあ、ヴォルデモート、分霊箱は全て破壊した。お前の負けだ!……ハリー、あとは頼む」
ハリー「大人の事情……だな」(かっこつけて)
ハー「そうね。大人の事情ね」
ヴォル「アバダケタブラァ!」
ハリー「エクスペリアームズ!」呪文がぶつかり合うので、とりあえず両方頑張る。
ヴォル「うわぁぁぁぁぁ」(倒れる)
ハー「やったわ……勝ったのよハリー!勝ったのよ!」
ハリー「うん。勝った」
ロン「僕の巧妙な作戦、すごかったでしょ?」
ハー「ロン、やっぱりあなたってすごいわ!」
ハリー「ねえ、みんな」
ロン、ハー「何?」
ハリー「僕、世界が平和になったら、一番にしたいことができた」
ロン、ハー「何何?」
ハリー「ペン回し」
2011/07/28 Thu 22:35 [No.528]
氷河期の賢者
Dパート
ナ「ヴォルデモートを倒してから19年後、ハリーは一人で暮らしていました。その手の中に杖はありません。彼が最後に魔法を使ったのは、自分を一生ペンを落とさない体にするためにでした」
ハー「ハリー久しぶりね。元気にしてた?」
ロン「これ、マルフォイからおみやげ」
ハリー「ありがとう」
ハー「すごいわね。世界チャンピオンだなんて。でも魔法の決闘でも世界チャンピオンになれる気がするんだけど」
ハリー「僕はペン回しの技術と引き換えに魔力を失った。けど後悔はしていないさ。父さん、母さん、シリウスには悪いけど、これが僕の生きる道なんだ。君たちも自分の信じるものに突き進んでごらんよ」
ロン「そうだね、僕たちの人生はまだまだこれからだもんね!」
ハー「ま、最後は感動的に終わるってのも、大人の事情よね」
ハリー「君、大人の事情ぶち壊したよ」
ナ「ハリーの傷跡は、この19年間一度も痛むことはなかったのです」
ロン「正直、傷跡関係ないよね」
ハリー「うん」
完
2011/07/28 Thu 23:11 [No.531]
フィリット
<ジャグフィリが旅の途中でバシャージに会う話>
+ + +
炎タイプの彼はいつも熱くて。
格闘タイプでもある彼はいつもハキハキしてて。
彼が私達側に居る時間は短かったけれど、彼はいつもそんな感じだった事を覚えている。
そんな彼から、あの熱気と明るさが消えた時はとても驚いた。
信じられなかったし、信じたくも無かった。
あの時、私はそんな彼を置いて行くしかなかった。
私の心には、彼を残した事への後悔しか残らなかった。
残らなかった、筈なのに。
それなのに。
私は、彼の事を脳の隅に追いやってしまっていた。
私自身の幸せに浸っていて。
彼の事を、いつしか思わなくなった。
……たとえ大好きな人と幸せになったとしても……
忘れてはいけない事なのに。
+ + +
私とジャグラーさんが旅を始めて、数ヶ月経ったある日。
「フィリットさん、少し休憩しないか?」
「そうだね、ジャグラーさん。」
ふと、足を止めて近くにあった樹にもたれる様に私達は座り込む。
こうしてジャグラーさんとのんびり旅をするのはとても楽しい。
ふと、耳を澄ますとどこからか子供の笑い声が聞こえてきた。
「あれ、向こうでポケモンが遊んでる。」
「…本当だ。いいなぁこういうのって」
その声を、微笑みながら聞いていると。
「………あれ?」
「…どうしたの?」
ジャグラーさんがふと、そう言い出した。
「いや、なんか…別の声が聞こえる気が……」
「?」
少し耳を澄ましてみると。
――ほら、早く!
――キャハハ!遅いよー
――お兄ちゃん、置いてくよー!
――ハハッ、ほら待て待てー!
「……?!」
私はその微かな声に懐かしさを感じた。
どこかで、聞いた事のある声。
「……………まさか…」
「?」
ジャグラーさんは聞き取れなかったらしいけど、私は聞き取れた。
種族がエーフィとあり耳が大きかったからなのか、偶然なのかは分からないけれど。
しっかりと、聞き取った。
あの声は。
何度も聞いた事のある……
「ルイージ、さん……!?」
「何だって…!?ちょ、フィリットさん!」
私は自然と、その声の方向へ駆け出していた。
+ + +
「ほらー!捕まえた!」
「うわ、捕まっちゃったー!!」
「もう一回やろ、鬼ごっこー!」
小さいポケモン達と一緒に遊ぶ、明らかに大きいポケモン。
その姿は炎タイプと格闘タイプを併せ持つポケモン、バシャーモ。
いうまでもなく、元人間のDr.ルイージだ。
「ほら、行く……!」
ルイージの目線の先には。
1匹のエーフィと、ルカリオ……
ルカリオは、自分の友で。
エーフィは、自分の行くべき道を照らしてくれた人で。
「ジャグラー…にフィリット、さん………?!」
「!…やっぱり、ルイージさんだ…!」
「ルイージ?!ルイージなのか…!」
久々の再会に、それぞれが言う。
そんな中で。
「ルイージさん…良かった………無事、だったんだ、ね……」
フィリットは、ボロボロと泣き出す。
「ちょ、フィリットさんどうしたんだ…!?」
「……ちょっと、話をしようか。」
ジャグラーは慌てるが、ルイージは冷静にさっき一緒に遊んでいたポケモン達を呼ぶ。
「お兄ちゃん、どうしてエーフィのお姉ちゃん泣いてるの?」
「……色々あったんだ。俺はちょっと話をしなきゃいけないから、皆で先に遊んでてくれ。」
「うん、分かったー。」
幼いポケモン達はしぶしぶ遊び始める。そんな中で3人は座って話し始めた。
2011/07/28 Thu 22:52 [No.529]
フィリット
「本当に久し振りだな…ルイージ。」
「…そうだな。ジャグラー、お前とこうして話せるのも……戦争が終わってくれたおかげなんだろう。」
「………だな。」
ふとルイージがフィリットをチラッと見ると、フィリットはまだ少し赤目だった。
「…変わっちゃいないな、フィリットさん。“あの時”もこうして泣いてた。」
「………ぐすっ……そんなに、簡単に変われないよ…」
「まぁ、確かに。」
ルイージが言った「“あの時”」という言葉の意は、フィリットもジャグラーも理解できた。
ルイージがDMかDCに行くか、リディアに選択を強いられたあの時だ。
「…それに、ルイージさんの事で泣いたの……もう1回あるし……ぐす…。」
「…?」
「ルイージさん…リディアと戦ってたんでしょ…?」
「………………………知ってた、のか。」
「うん……。」
「え、どういう事だ!?」
突然の話の流れにジャグラーは混乱する。
「俺は…あれから心変わりしてさ。DCの戦力を少しでも削ろう、って思ってリディアと戦った。」
「な…お前……」
「!……そう、なの?」
「あぁ。見事に、完敗だったけどな。」
ルイージは苦笑いをする。
「俺は結局自分を見失った。いつの間にか、自分が何をしたいのか分からなくなってきて…」
「そっか、それで……そんな時に私達はルイージさんと出会ったんだよ……ルイージさんには、何を話しても通じなかったし……」
「……そうだったのか。」
「うん。その時は、ある作戦の為に仕方無く置いて行っちゃったから……心配したよ…」
「……ありがとう、心配してくれて……」
フィリットとルイージの会話が続く中で、
(「……なんか俺が寝てる間に色々起こってたんだなぁ……」)
と、ジャグラーはそう思いつつ話をボーッと聞いていた。
そしてふと、思い付いた疑問を口に出してみた。
「でさ、ルイージは今何をしてるんだ?」
「え?」
「いやー、何でこんな小さなポケモン達と遊んでるのかなってさ。」
「……あぁ。このポケモン達さ、親をDCに殺されてるんだ。」
「…………それで、代わりに育てるつもりなの?」
「そのつもりだ。」
しばらく、3匹は遊ぶ幼いポケモン達を眺めていた。
「別に、罪滅ぼしとかそういうのじゃなくて、純粋にこの子達に未来を託したいと思うんだ。」
「……大丈夫だよ、ルイージさんなら。頑張ってね。」
「良い子に育てろよ。」
「…あぁ、ありがとう。」
ふぅ、と一息付いて、ルイージは逆に質問する。
「でさ、フィリットさんとジャグラーは何してるんだ?見る所2人で旅してるみたいだけど?」
「え」
「あっ」
一瞬、3人の間に微妙な空気が流れ始める。
「………え、俺何か不味い事言った……?」
「ううん、いや、そういうのじゃないんだけど……///」
「その……なんというか、うん///」
フィリットとジャグラーが顔を真っ赤にする様子を見てルイージは「まさか」と呟く。
「……まさか、2人付き合ってる?」
「(コクリ)」
「(コクリ)」
「マジかよーー!?」
ルイージが叫んだ声が大きかった為に、遊んでいたポケモン達が不思議そうにぞろぞろ集まってきた。
「お兄ちゃんどうしたの?」
「何かあったの?」
「いやなー、このルカリオの兄さんとエーフィのお姉さんが付き合ってるんだってさ」
「狽ソょっ、ルイージ!///」
「ひゅーひゅー」
「よっ、このいろおとこー!」
「ッ……うがぁー!待てぇー!!」
「キャー怒ったー!」
「逃げろー!」
ポケモン達がどこで覚えたのか分からない言葉をあげる。
ジャグラーは恥ずかしさを紛らわす為にポケモン達を追いかけ始めた。
フィリットは沸騰しそうなくらい赤い顔でその様子を見守る。
「…まぁ、あんな奴だけど宜しくな。」
「え…うん……」
会話が途切れ、2人は小さいポケモン達がジャグラーと遊ぶ微笑ましい光景を笑顔で眺めるのだった。
ズゴッ
「いってぇ!」
「あ、ジャグラーさんコケたよ。」
「ブッ、ハハッ!本当だ!」
「笑うなぁーー!!」
END
2011/07/28 Thu 23:04 [No.530]
ジャグラー
「おらっ、ぐずぐずすんな!」
「だらしねえガキだ、3日飯を抜いただけですぐに倒れやがる!」
「あう・・・うあぁ・・・」
屈強なゴーリキーにまた鞭で体を叩かれ、悲鳴を上げ続ける体を無理矢理動かす。
体が成長しておらず、未発達な私はただ永遠と重荷を担ぐ道具と扱われるだけ。
私はニューラという一匹のポケモンとして扱われていない。私は、ただの奴隷・・・。
私に名前なんてない。私は孤児・・・利用されるだけ。
ただどんなことのために作られたか分からない荷物を運び続け、私を道具をとしか見てないゴーリキー達の鬱憤を晴らすために理不尽な暴力を受ける毎日。
そんな私に希望なんてない、そう思っていた。
そう、あの日が来るまでは・・・。
あれは、雨の降る日だった。
私がいた所にしてみれば珍しい雨。誰かが[あまごい]でもしたのかと思った。
雨の日は唯一荷物を運ぶ事がなくなる日で、私が体を休めることが出来る日だった。
誰もがそれぞれのことをしてくつろいでいた時、そのくつろぎは突然消え去った。
大きな爆発音と共に。
「な、何だ!?何が起きたんだ!」
「し、侵入者だ!ルカリオだ、色違いのルカリオが一匹!」
「なにぃ!?くそっ、ここには狙うものなんか何もないぞ!」
「とにかく侵入者を捕まえろ!奴隷を解放させるな!」
騒がしくゴーリキー達が動き始める。
私も何が起きたのか見に行きたかったが、足には逃げることを封じるための重りをつけられていたから動けない。
仕方なく、私は眠りについた。
「おやおや・・・僕一人のためにこれほどの人数を用意するとは」
「ごちゃごちゃ抜かすんじゃねえ・・・・!!ここを襲ったツケはでかいぞ!」
一匹のルカリオを7匹のゴーリキー達が囲んでいる。
ルカリオはマントを付けており、雨でぬれてしまってマントの役割を果たし切れていない。
ルカリオは普通のルカリオとは違い、色が黄色い。俗に言う色違いだった。
「それよりも、ここには奴隷のように扱われている方々がいるはずです。
それらをすべて、こちらに渡してくれませんか?」
「て、てめえ・・・!!ふざけてんのか!!」
「ふざけてなんかいませんよ。ただ、貴方達が孤児をも奴隷にしていると聞きましてね。それに、私は物語はバッドエンドよりもハッピーエンドが好きなんですよ。奴隷は普通の一般市民として幸せな人生を歩むべきなんです。」
「黙れ哲学者気取りが!てめえら、こいつをやっちまえ!!」
ルカリオの言葉を無視してゴーリキー達は一斉に飛びかかる。
しかし、ルカリオはゴーリキー達が目前にまで迫っても目をつむっていた。
そして、ゴーリキーの拳が彼に直撃する。
しかし、それはすぐに消え去った。
「な、何!?[かげぶんしん]だと!?」
「馬鹿な、いつの間に・・・!?」
突然ルカリオが消えてゴーリキー達は焦り始める。
しかし、その焦りも長くは続かなかっった。
「一気に、終わらせましょうか。[じしん]。」
ゴーリキー達の後ろにいたルカリオが[じしん]を繰り出す。
ゴーリキー達は突然の攻撃になすすべなく倒れていく。
しかし、1匹だけはまだ耐えていた。
「くっ・・・くそっ・・・こんな馬鹿な・・・!」
「調べはついてるんです。あなた達が奴隷を酷使して奪ってきたポケモンのタマゴを色んな地方にばらまいていました。
さっきも言いましたが、私は幸せな終わり方が大好きな者でしてね。
奴隷とタマゴは、頂きますよ。」
「ち、ちくしょう・・・・!覚えてやがれ、絶対に・・・絶対にお前を見つけて叩きのめしてやる・・・!」
「へえ、楽しみにしてますよ」
そう言ってルカリオはゴーリキーに[はっけい]をぶつける。
ゴーリキーはそれをまともに受け、気絶した。
2011/07/29 Fri 15:01 [No.533]
ジャグラー
「さて、ここが奴隷達が暮らしている部屋ですね。
・・・ずいぶんとカビ臭い・・・ただ壁に穴を開けてそこを部屋としてるだけの粗末な部屋みたいですね」
「奴隷の皆さん!どうか、私の話を聞いてください。
私は、貴方達を助けに来ました。どうか、私についてきてくれませんか?
私は皆さんに毎日温かい食事を出しますし、きちんとした部屋を用意します。必ず、皆さんに幸せな生活を提供します!」
ルカリオが部屋の入り口で叫ぶ。
彼の叫びが部屋に響き渡る。それを聞いたポケモン達がルカリオに集まってくる。
「ほ、本当に助けてくれるのか?」
「はい。外で私の仲間がいます。彼らの指示に従ってください。
私は動けない方々の救助に当たりますので。」
「あ、ありがたい!この奥にニューラの女の子がいるんだ。
酷い怪我をしていてまともに動くことが難しい。助けてやってくれ!」
ルカリオの質問に一匹のエビワラーが答える。
「分かりました、ではまた後で会いましょう。」
彼がそう言うとポケモン達は一斉に外に出てルカリオが言った場所に向かった。
一方のルカリオは、ニューラを助けるために奥へと向かった。
足音がやってくる。
またあのゴーリキー達が憂さ晴らしにやってきたのだろうか。
でも、足音がどこか違う。軽やかな足取り。
だけど、誰が来ても結局やることは一緒・・・。
期待するだけ無駄なら、少しでも眠ってる方がいい。
「君、大丈夫ですか?」
声をかけられる。あの声からして、ゴーリキー達ではない。
一体、誰?
そう思い、私は目を開ける。一匹のルカリオが、そこにいた。
「私の言葉が聞こえますか?今貴方を助けます。動けますか?」
「あ・・・」
足が痛い、そう言おうとしても口がうまく開かない。
体がぼろぼろになって、そのせいで話す事すらできない。
だけど、ルカリオは何を言おうとしてたのか分かってたのかも知れない。
「足を怪我してるんですか?大丈夫です、私が担いであげます」
「あぁ・・・う・・・」
「大丈夫ですよ。怖がる事はありません。必ず、私があなたを助けてあげますから」
何、この気持ち・・・?
今まで、ここでは感じることのなかった気持ち。
これは・・・?
「さあ、行きますよ。しっかりつかまっててください」
ルカリオは私を担いで外へと向かう。
正直、この時は何も感じることはできなかったが、そのあとでこれはここから出られると言う「感動」という気持ちが湧いていたらしい。
「僕は、セクト。君のようなポケモン達を幸せにさせるために戦ってる哲学者だよ。君の、名前は?」
「あ・・・」
「ア?・・・うーん、アイシスかい?」
「う・・・」
「そうか、アイシスか。よろしくね、アイシス」
これが、私の名前がアイシスになった瞬間だった。
それから1年たっただろうか。
体がすっかり回復してまともに話せるようになった私は、あのルカリオと共に行動を共にしていた。
だけど、最近思うようになった。
これは、『成り行き』でやっているのではなく、『自分の意志』で決めてやっている[恩返し]なのだと。
なら、私はあのルカリオ・・・いえ、あの方のために戦う事を誓おう。
助けてくれた恩を、あの方のために戦うこと返そう。
「・・・セクト様」
「ん?・・・様は余計だよ、アイシス」
セクト様は私の言葉に違和感を感じたのか、少し苦笑いをする。
しかし、私は構わず続ける。
「セクト様。私は、決めました」
「決めた・・・?何をだい?」
「私は、貴方のためにこの命を捧げます。私は・・・あなたの武器となります。」
後悔などない。これが私の心から思っていたこと。
セクト様のためなら、例え体が砕け散ろうとも戦い続ける。
「・・・アイシス。君がしようとしていることは、死ぬこともあるかも知れない。それでもいいのかい?」
「構いません。私はセクト様に助けられて今もこの命があります。
・・・私は、恩返しがしたいのです。どうか・・・」
「・・・分かった。アイシスが、そこまで言うのならいいよ。
・・・アイシス。君は今日をもって僕の部下だ。命令には従ってもらうよ」
「ハッ、セクト様の仰せのとおりに!」
私は何があってもあなたをお守りします。
あなたは、私のマスターですから。
2011/07/29 Fri 15:01 [No.534]
ジャグラー
緑豊かな大地に恵まれた大陸、ラーシア大陸。
この大陸では、一つの伝説があった。
正義を持つ者だけに力を発揮し、時代を渡ることが出来る天から舞い降りた武器・・・聖槍グングニルの伝説。
その力は、山をも貫き―――海をも貫く、聖なる槍。
争いの真っただ中、その聖槍は突如舞い降りる。
その槍が持つ、絶対的な力と共に。
ラーシア大陸は、いくつもの国が構成されている。
その中で最も強大な力を持つ国、『アーガスト帝国』。
そしてそのアーガスト帝国の隣に存在する、人間、エルフ族、ウンディーネなど、人外族も多数暮らしている平和的な国、『シャンロット公国』。
シャンロット公国は大陸の中では比較的強大な勢力ではなかったが、国の治安は常に善良な国王によって維持されていたため、アーガストを初めとする隣国とも貿易で仲を深め、平和を維持していた。
しかし、突如その平和は壊された。
「進め!シャンロットの腰抜け共など恐れるに足りん!ひねりつぶせ!!」
アーガスト帝国皇帝、『ギルファ・ガンドリュー』が自ら前線に出て公国の中枢都市、『シグワース』を攻撃し始めたのだ。
公国軍はウンディーネ族、エルフ族を中心とした正規軍で抵抗するものの、圧倒的な戦力差の前になすすべもなく敗北してしまう。
シャンロット公国次期国王、『エリス・ルージュ』は多数の兵達の犠牲もありながら国を抜けて逃亡する事に成功する。
『シグワース』の陥落を皮切りに、アーガスト帝国は瞬く間にシャンロット公国全体を占領していった。
だが、アーガストの侵攻を拒むように民と正規軍の残党が結成したレジスタンスが、都市『マーブル』で帝国軍と徹底抗戦を開始する。
しかし、実践経験のない者が多いレジスタンスはすぐに追い込まれてしまう。
そんな中、レジスタンスのサブリーダー、『ブレオ・ギース』は偵察中、街中に一本の槍を見つける。
それが、レジスタンスを勝利に導き、少年を英雄に変えた瞬間であった。
「聖槍グングニルよ!今こそ、我らに勝利を!!」
仲間と王女エリスと共に、英雄は帝国と戦う。
『正義の聖槍 グングニル』 公開未定!!
―――――――――――――
戦争物には何気に初挑戦。
話的には、
少年ブレオがグングニルを手にして王女とレジスタンスと共に帝国軍に立ち向かっていく話です。
とりあえず、そのうちキャラ紹介もちろっと載せておこうと思います。
2011/08/01 Mon 23:18 [No.541]
ジャグラー
キャラ紹介。
「このグングニルの力を見せてやる!」
「シャンロットの民は、そう簡単に挫けはしない!!」
ブレオ・ギース 男 16歳
シャンロット公国のシグワース出身の少年。
生まれてすぐに母親を亡くし、父親と二人で暮らしていた。
帝国軍の侵攻の際に父親と共にマーブルへ逃げようとしたが、道中に敵の待ち伏せで父親が殺されてしまい、一人でマーブルに逃げ込んだ。そのあとに、レジスタンスに合流する。
偵察中にグングニルを発見し、力を認められてレジスタンスの主力となる。
その力を持って、打倒帝国を目指す。
明るくすぐにその場に溶け込め、仲間思い。
しかし、その思いが強すぎて自己犠牲な所もある。
「私は、エリス・ルージュ・・・公国の王女です。」
「ごめんなさい・・・私みたいな足手まといがいると、邪魔ですよね・・・」
エリス・ルージュ 女 15歳
シャンロット公国の次期国王。カードを使った占いが出来る。
王女という身分でありながら、シグワースの貧しい民に食べ物や金を分け与えているため国民からの人気は高い。
元々はおとなしく、笑顔が多かった彼女だが、帝国の侵攻で城を離れることになり、多くの犠牲を生みながらマーブルへ逃げたために罪悪感を抱いている。
そのため、笑うことがなくなり、ネガティブになっている。
城に生えているナッツが好物で、よくブレオに頼んでいる。
※ナッツ…この作品では「シャンロットナッツ」のことを指している。
シャンロットナッツは主に海岸近くで生るため、ナッツ自体に塩分が含まれており、塩辛くて美味しい。主に酒のつまみや非常食に使われる。
レジスタンスの兵達は、これを非常食にしている。
「僕達だって兵士だ。いつまでもブレオ君に頼ってるわけにはいかないよ。」
「ブレオ君を最前線に置くなんて・・・!あの子はまだ20歳にもなってない子供なんですよ!?」
ロック・ストレンジャー 男 21歳
シグワースを守る警備兵。レイラは彼の姉でもあり、上司でもある。
帝国の侵攻の際にバリケードを作って抵抗したが、抑えきれずに撤退してマーブルに逃げ込んだ。
戦闘経験のない民兵達をまとめ上げ、マーブルに籠って粘り続けているのも彼が指導したおかげである。
レジスタンスの中でも数少ない司令塔的な存在で、作戦の大体は彼が考えている。
ブレオがグングニルを手にしてから、彼ばかりに任せてはいられないとブレオをカバーしている。
冷静で温和な性格で、レジスタンスのムードメイカーだが、彼は本来心配性でそれを出さないために冷静でいる。
多少の事では焦らないが、危険な状態になると本性が出てくる。
「倒した帝国兵から装備は奪っておきなさい。・・・追い剥ぎみたいなことはしたくないけど、そうでもしないと勝てないからね」
「兵士たるもの、民間人ばかりに任せたくはないからね。私達兵隊が一番頑張らないといけないのよ!」
レイラ・ストレンジャー 女 23歳
シグワースを守る警備兵。ロックは彼女の弟で、彼の上司である。
帝国の侵攻の際に投石器と弓矢で抵抗したが、抑えきれずに撤退してマーブルに逃げ込んだ。
指揮官と言う立場でありながら、自ら馬に乗って戦場に出る。
ロックには指揮官らしくじっとしてて欲しいと言われているが、ブレオ達民兵ばかりに任せたくないと言い張っている。
非常に好戦的だが、少々短気な所もある。しかし頭脳はレジスタンスの方では高い方なので指揮官という立場について短気な性格を抑え込んでいる。
レジスタンスの中で数少ない騎馬兵である。
2011/08/02 Tue 22:31 [No.542]
ジャグラー
「森を荒らした帝国を、許しはしないわ!」
「軍を襲うだけならまだしも・・・軍とは関係ない私達を巻き込むなんて、論外よ!!帝国の奴なら女子供もやってしまえばいいのよ!」
アリス・アトヴィレッチ 女 15歳
エルフの森に住むエルフ族の少女。仲間たちと共にゲリラ活動をしており、そのリーダーを務めている。
アーガスト帝国がキャンプ地を増やす際に森を燃やされ、親や仲間達を大量に虐殺されたため、彼女が仲間達と共に反帝国活動のゲリラを行う事を決めた。
エルフ族は元々狩りが得意な種族なため、弓矢の扱いが上手い。
彼女はそれを利用して度々夜間に帝国のキャンプ地を弓矢で襲撃している。
非常に勇敢で好戦的。帝国を相手にすると非常に残酷極まりない性格になる。帝国の兵士はもちろん、その家族も容赦なく抹殺する。
反面、戦闘以外では女の子らしい一面もある。
「シャンロット公国軍の兵は、陸はエルフ族と言われている。そして水は、我々ウンディーネ族。水を得た我々に適うと思うな!」
「我が公国軍の意地を見せてやろう!!」
シーア・キャロン 女 19歳
シャンロット公国軍の兵士。ウンディーネ族。
エリスの親衛隊の隊長を務めており、実力もウンディーネ族の中ではかなりのクラス。
アーガスト帝国の侵攻の際にはエリスをマーブルまで送るという任務を受け、仲間の屍を盾にしながらもエリスを守り通した。
ウンディーネ族は水中を潜るのが得意で、それを利用して川や海では奇襲攻撃を仕掛けるのが得意。
レイラはこの特性を生かして、水を利用した作戦はすべてシーアに任せている。
非常に攻撃的で勇敢。しかし、作戦会議や普段の生活の時は冷静で戦いの時のような荒っぽさは一つも見えない。
ひそかに毎日違う香水をつけているが、あまり気づいてくれていないため少しショックを受けている。
「所詮人外種の寄せ集め!我が帝国には勝てん!」
「ふんっ、グングニル?どうせ見かけ倒しのただの槍にすぎぬ!」
ギルファ・ガンドリュー 男 32歳
アーガスト帝国の第34代皇帝。
非常に人望が厚く、彼自身も民を第一に考えた政策を行っている。
ラーシア大陸では初の軍事政権と民主政権を混ぜ合わせた政権を行っており、他の国よりも軍事力が大きい。
シャンロット公国侵攻の際には、圧倒的な軍事力を駆使してたった3日で首都シグワースを陥落させることに成功する。
ブレオがグングニルを手にした事を聞いた時には全く信用しないなど、神話や伝説などは信じない人間でもある。
敵に対しては非常に攻撃的で容赦がない。そのため、エルフの森の侵攻や民間人の虐殺などを行い、敵を増やしてしまうことに。
しかし、味方や自国の民に対しては厳しいながらもどこか優しさがあり、これが民を信頼させている。
彼が作った精鋭部隊、『アイアンホース隊』は兵も馬も鉄の鎧を着け、黒色の軍旗を持っている。
その旗を見た敵は恐怖に陥ることも多い。
2011/08/02 Tue 22:31 [No.543]
ジャグラー
設定。
グングニル
天界で作られた揺るがない正義を持つ者にしか扱えないという伝説の槍。
槍全体が透き通った青色になっている。
その力は山を貫き、海をも貫く。
グングニルは持ち主によりその力と姿を変える事があり、場合によっては持ち主を滅ぼすこともある。
持ち主によっては『聖槍』と『魔槍』のどちらかに代わる。
また、例え『聖槍』になっても持ち主が堕落すれば『魔槍』にもなり、その逆もある。
グングニルを守るために天界から任を受けた戦乙女がいるというが・・・。
聖槍グングニル
グングニルの力に酔いしれず、自らの欲望のために使わない持ち主が使用した事によって『聖槍』となったグングニル。
色は青色から白色になり、その力は要塞をも軽々と砕くという。
『魔槍』に比べ、こちらは防御能力が特化しているため、持ち主が致命傷を負う事は少なくなる。
グングニルがこの聖槍になった際、戦乙女に認められ、死後は天界で勇敢な戦士になるらしい。
魔槍グングニル
グングニルの力に溺れ、自らの欲望のために使う持ち主が使用した事によって『魔槍』となったグングニル。
色は青色から黒色になり、持ち主の身体能力を限界まで上昇させ、この槍自身の力も底知れないほどの力を持つ。
『聖槍』に比べ、こちらは攻撃能力に特化している。
しかし、その代償としてこの槍の持ち主の生命力はほとんど奪われ、性格も凶暴になり戦闘狂になってしまう。
また、グングニルをこの『魔槍』にしてしまうと戦乙女に殺されてしまい、死後は魔界で永遠の苦しみを味わう事となる。
そのあとのグングニルは、戦乙女によって元のグングニルに戻される。
シャンロット公国
ラーシア大陸の東に存在する国。
領土の周りが海に囲まれているので、海産物を中心とした貿易をおこなっている。
元々はウンディーネ族だけが住んでいた集落だったが、族長『リーザ』の導きでエルフ族、人間も住むようになり、シャンロット公国という一つの国が出来上がる。
国内で紛争や争いなどは起きず、むしろ互いに助け合いながら生きている国で、平和的である。
一応軍隊は存在はしているが、平和なために兵達はあまり訓練を行っていない。
アーガスト帝国皇帝、ギルファはこれに目を付けたためにシャンロット公国侵攻をする。
無論日々鍛錬を怠っている公国軍では敵わず、公国を占領されてしまう。
アーガスト帝国
シャンロット公国の隣に存在する国。
初代皇帝が行った民主政治と軍事政権を上手く混ぜ合わせた政権を今もなお続けている。
税などが厳しい所もあるが、その分民への配慮も大きいため、ほとんどの皇帝は民から信頼を得ている。
そのため、軍隊は非常に強力で、特に皇帝が優秀な兵を集めた精鋭、『アイアンホース』は連戦連勝の活躍を何度も上げている。
シャンロット公国を侵攻した理由は、『増えすぎた難民達の住む場所を増やすため』。
元々国の領土が小さかった帝国にとって、シャンロット公国を自分の領土にしたいというのは数々の皇帝が思ってきたことである。
公国の軍隊の堕落を見て、第34代皇帝、ギルファ・ガンドリューは公国を攻める事を開始する。
エルフの森
シャンロット公国にあるエルフ族が住んでいる森。
植物も多く、動物も多く生息しているため、ここに住んでいるエルフ族は他のエルフ族とは違って狩りが得意。
帝国軍の駐屯地を作る際に森を焼き払われ、多くのエルフ族や動物達が殺されてしまう。
アリスはこれをきっかけにエルフの森を拠点として反帝国活動を行うことになる。
戦乙女
グングニルが破壊されるのを防ぐのと、持ち主の監視を行う任を受けて天界から地上へ降りてきた戦乙女。
グングニルの防衛と持ち主の監視を今まで何百年も続けており、魔槍と化したグングニルの持ち主を何百人も殺している。
しかし、顔は未だ老いていくことはなく、少女の姿をしている。
普通、戦乙女はグングニルを手にした際にすぐに持ち主の元に現れる。
だが、ブレオがグングニルを手にした際にはすぐには現れず、行方不明となっている。
2011/08/04 Thu 23:16 [No.544]
ジャグラー
・デュランひとり語り風です。
・捏造EDです。
・ネタバレ注意!!
あの戦いの後、それぞれ自分たちの故郷へと帰っていきました。
私ことデュランは、姫様とラッセル殿とクルス殿と共に祖国、ファンタジニア王国に戻りました。
ラッセル殿とクルス殿は途中でカローナで別れを告げ、姫様と共にパルティナへ戻りました。
その後、しばらくは多忙の日々でした。
壊滅した騎士団を再び結成するのに私はパルティナを駆け回り、姫様は国民達にこの戦争で知った事実を説明し、戦争の後処理など、私よりも非常に忙しい日々を送っておりました。
そんなある日、それぞれの帰るべき場所に戻った仲間たちから手紙が届きました。
少し、その内容を読んでみることにしましょう。
※次からキャラ一人ずつの捏造EDが始まります。なんども言いますが、ネタバレ注意!!
2011/08/10 Wed 01:34 [No.547]
ジャグラー
ラッセル編
「おめでとう、ラッセル!フローネ!」
「二人ともお幸せに!」
ラッセル殿はフローネ殿と結婚し、正式に夫婦となりました。
ラッセル殿はカローナの総隊長となり、帝国とカローナの国境を警備しながら兵達を鍛える日々を送っています。
そんなラッセル殿を、フローネ殿は陰から支えており、非常に夫婦円満の仲だそうです。
最近では、フローネ殿が子供を身ごもったと聞きますが・・・もしそうであれば、今度祝いに行くとしましょう。
「フローネ、私のそばにいてくれるかい?」
「ええ、もちろんよラッセル」
・・・余談ですが、ラッセル殿とフローネ殿の結婚式の際には帝国軍のエミリオ殿や黒騎士レオン、あのガルカーサ殿も見に行ってたそうです。帝国の軍門に下っていた時期もありましたから、帝国軍の兵達とは仲が良かったのでしょうか?
クルス編
「ねーねー、クルスさん。クルスさんって、一人でマルドゥークの森で王国軍を助けたって本当?」
「ああ、本当さ。王国軍がアジト開放を手伝ってくれた後、帝国の連中が後ろからやってきてね。みんなが逃げている間、僕は一人で帝国を足止めしてたんだ。」
「すごーい!さすがクルスさん!」
クルス殿はあのあと、カローナの人々から『カローナの英雄』と称えられ、銅像まで作られたそうです。
今でも彼の家には子供たちがクルス殿の武勇伝を聞くために毎日訪れているそうです。
「クルス先生!今日も先生の弓使いを見せてください!」
「よし、分かった。それじゃちょっとやるとしますか!」
今ではクルス殿の弓使いを覚えようと、弟子まで出来るほどです。
・・・しかし、クルス殿はエレナ殿が王国軍に加入してからは後方支援ばかりで前線にあまり出てなかったような・・・?
まあ、クルス殿がよければよしとしましょう。
2011/08/10 Wed 18:16 [No.550]
ジャグラー
ロズウェル&ロザリィ編
「山賊から街を守るのはあたしのゴーレム達がやるわ。」
「分かった。では攻撃は私のネクロマンサーとシモベ達に任せてくれ。」
ロズウェル殿とロザリィ殿はあのあと、黒薔薇家と白薔薇家どちらも休戦条約を結び、共に魔術の研究をしながらヴァーレンヒルズを守ることを約束しました。
アンクもない今、もう両家が争うこともないでしょう。
最近では、オルテガ山賊団に対抗するために両家が精鋭部隊を集めて『黒白連合軍』という軍隊を作って山賊団に総攻撃をかけるそうですが・・・。
さすがのオルテガ山賊団も、両家の精鋭には勝てないでしょう。
「・・・それと、もう一つ計画があるんだが」
「計画?」
「ああ、メリア教国にあるバナナンの木をいくつか買い取ろうと思うんだ」
「・・・はあ!?何言ってんのよあんた!買い取るにしてもどうやってこのヴァーレンヒルズにまで持ってくるのよ!」
「メリア教国のグリフライダーを総動員して持ってくればいい!バナナンを名産品にするんだ!」
「・・・それ、あんたの自己満足のためでしょバナナ総帥。ま、そこがあんたのいいところかしらね・・・。」
「何か言ったか?」
「何でもないわよ」
余談ですが、しばらくしてからヴァーレンヒルズでは大量のバナナンが実ったそうです。
一体どうやって生やしたんでしょうね?メリア教国から持ってくるにしても距離がありすぎますし・・・。
オルテガ編
「よーしてめえら!ヴァーレンヒルズのゴタゴタが収まる前に奪えるもんは奪っておくぞぉ!」
「ヘイ、親分!」
ロザリィ殿の話だと、どうやらあのオルテガ山賊団も生き返ったみたいです。
しかし、山賊団が攻撃する頃には『黒白連合軍』が出来ていたそうです。
「でも親分、黒薔薇と白薔薇両方仲直りしたそうですぜ?もし両家から攻撃されたらどうします?」
「心配はいらねえよ、いくら仲直りしたとしても夜に攻撃をかければどうってことはねえ。夜に奇襲すれば問題ねえよ」
「さすが兄貴!」
・・・ロザリィ殿の手紙によると、山賊団は夜に攻撃を仕掛けたそうですが、ロザリィ殿のゴーレム部隊が足止めしてる間にロズウェル殿のネクロマンサーとスケルトン部隊に後ろから攻撃を受け、山賊団はヴァーレンヒルズに入ることなく撤退したそうです。
そのあと、何度も山賊団は攻撃を仕掛けましたが何度も失敗して最終的には降伏したそうです。
2011/08/10 Wed 23:56 [No.551]
椎名
イマゲの妄想。
無理矢理隠語にして纏めてるので、わからなかったら、うん…
なんとなくで埋めてます。
王女:ソラキッス
盗賊:?
鳥乗:?
第三部隊長:ラプラス
チビウンディーネ:マコリル
北領主:エルリッカー
海領主:ジュカッター
夜襲:カポリーズ
怪しい魔女:エル椎名
元密偵:有留ッコ
戦業主婦:?
* * *
焔帝:ガウリイル
軍神:クール
魔砲士:アキチュウ
ロリ鳥乗:アイビス
滅殺:?
リア充剣士:ジャグリオ
傭兵剣士:バシャージ
戦乙女:??
* * *
賞金稼ぎ:?
2011/08/11 Thu 23:24 [No.555]
フリッカー
※このエア小説は、皆さんの脳内でお楽しみください。
オレの名はミラノ。あちこちを旅しながら、生きるために盗みをやっている盗賊だ。
でも、全部の人から盗る訳じゃねえ。昔のオレと同じように苦しんでいたヤツから盗る趣味なんて持ってねえ。オレは人の生活を苦しめるようなヤツからモノを盗んで、生きてきた。
オレが今盗賊をやらないと生きていけねえのも、そんなヤツのせいだったから――
そんな中で、オレは彼女と出会った。
突如ファンタジニア王国に侵攻してきたという、新生ブロンキア帝国軍にアジトを焼かれた、あの満月の夜――
「きれいな嬢ちゃんだな……」
「お願いです! 帝国から王都パルティナを解放するために、協力してください!」
「じゃあ、お前の城をよこせ。オレ達の新しいアジトにしてやる」
帝国軍の侵攻によって崩壊したファンタジニア王国の王女、ユグドラ=ユリル=アルトワルツ。
王国が崩壊したという話は聞いていたが、どうして王女様がこんな辺境の地にやってきたのかはわからねえ。
だが、オレにとっては絶好の獲物だった。
無き国の王族なんて、大した事ねえはずだ。王都奪還に協力するふりをして、王都に着いたら城を奪い取ってやろうと。
そういう訳で、オレはユグドラの手を取った。
だが――
「あんなに美しかった王都は、帝国軍に全て蹂躙されてしまったの。そして、私の父上と母上までも――」
「な――!? お前の父さんと母さんは、死んだのか!?」
「ええ、帝国軍の手によって……焔帝ガルカーサの手で……! 私は許せない、帝国軍の事が――!」
「ユグドラ……」
オレは気付いちまった。ユグドラの心に潜む、深い悲しみに。
だからだろうか。ユグドラはどんな戦いでも、その手に持つ聖剣『グラン・センチュリオ』の力を純粋に信じていた。
そして普段の穏やかさとは裏腹に、戦い方にも激しさを感じさせた。
「寄らば、斬ります!!」
その言葉を、戦いの時口癖のように言っていたユグドラ。
その裏には、帝国軍によって全てを失い、奪われた事でできた深い傷跡があった。
オレと同じだ――
「力ずくで止めるしか、方法はないみてえだな……!」
「どうして……どうしてあなた達ウンディーネと戦わなければならないの――?」
「……方法は1つしかねえ。黒薔薇と白薔薇、どちらか一方を潰すんだ」
「そんな、でも――」
「下手に両方相手にしたら、向こうは手を組んで一斉に反撃してくるかもしれねえ。そうなったら、オレ達の戦力じゃ勝ち目はねえ。どうする、ユグドラ?」
王国解放を目指す戦いは、決して楽なものじゃなかった。
ファンタジニア王国解放軍のリーダーとして、ユグドラは何度も苦しい決断を迫られた。
気が付けば、オレはもう城を奪う事なんてどうでもよくなっていた。
「どうしてミラノは、そんな判断ができるの……?」
「世の中に平等なんてものはねえ。あるのは強いヤツしか生き残れねえ、弱肉強食の世界だけさ……」
全てを失った傷跡を胸に、戦い続けるあいつの事が放っておけねえ。
「焔帝ガルカーサ……父上と母上の仇……!!」
「よせ、ユグドラッ!!」
「やああああああああっ!!」
だから、オレは――
エア小説版ユグドラ・ユニオン
ファーストシーズン:解放編
「派手に何か盗ってきなっ!!」
「我が聖剣の下に革命をっ!!」
聖剣『グラン・センチュリオ』。
そして、魔法の力を秘めたカード。
生存と破滅の狭間で、その力は何を導くのか――
2011/08/15 Mon 00:05 [No.563]
あんびしゃん(氷河期の賢者
※台本にするので文章としてはガタガタです。
少女は、笑っていた。
アメリカ兵は、白旗を掲げた少女――白旗の少女にシャッターを向けた。少女は少し目を瞑って間を置き、笑いながら手を振った。
アメリカ兵は何故少女が笑うのかわからない。投降する直前、どうして笑っているのだろうか。アメリカ兵は不思議に思い、この写真を後世に残した。
白旗を掲げた少女が、手を振っている写真を――
「でも、ニイニイ、兵隊さんになったら、死んじゃうかもしれないよ? 富子、知ってるよ」
「いいさ。お国のために死ねるなら嬉しい!」
「うそだあ」
富子は驚いた。兄の言葉に。
松川富子。後の比嘉富子。白旗の少女その人である。十歳の兄と、年長の姉二人、母親を病で亡くしたため父の五人家族。あの写真の日から二カ月ほど前までは、首里で平和な暮らしをしていた。
「富子は小さいから分からないだけさ、ヨシ子ネエネエおかわり!」
「直裕も食べざかりだねえ」
兄は直裕といい、姉二人は上からヨシ子、初子。父親は直影という。
直裕は早く兵士になりたいらしく、中国へと出兵している上の兄を尊敬している。
一方富子は、戦争を恐れていた。まして、幼いながら戦争に行くと死ぬかもしれないという事実を知っていただけに余計恐怖だった。
直影はいつも口癖のように言う言葉を、ここでも言った。
「平和な時に笑って死ねるのが一番じゃ……わしもアメリカに殺される時は笑って死にたい……」
父親は、母の写真が飾ってあるところを見て言う。この台詞を言う時は決まって視点がそこである。
「お父さんまたそれ? もう」
初子が飽きたと言わんばかりの表情で父の目を見るが、父の目は純粋無垢。
「またとはなんじゃ。いいことじゃ。笑うことはいいことじゃ。お前たちの母さんも、最期は笑っていた……」
直影がこの話をし始めたのは、母親が亡くなってからずっと。直裕は頷いていたが、幼い富子に理解するには少し意味が深すぎたのかもしれない。富子ははてなと首をかしげていた。
「あ……」
富子がお茶をこぼした。富子は罪悪感で泣きだしたが、ヨシ子がすぐに慰めた。
「大丈夫大丈夫。ほら、新しいのあげるから」
「ありがとうヨシ子ネエネエ……」
富子が湯呑を受け取った刹那、爆音が轟いた。壁にかけていた時計は床に落ち、富子だけではなく、全員の湯呑からお茶がこぼれていく。直影はすぐに立ち上がり、ヨシ子に告げた。
「すぐに荷物をまとめなさい。父さんは少し外を見てくる」
「……は、はい!」
直影は裸足で駈け出した。足元の石で足をとられても、転ぶわけにはいかない。一刻を争う。
沖縄の住居は石垣で囲われており、守り神のシーサーがおかれていることが多い。石垣の門を出ると、目の前に炎が上がっている状態だった。もう正門からは逃げられない、そんな状態まですでに追い込まれていた。炎の先に、飛んでいく飛行機が見えた。機体には星条旗が――直影はつい呆然としてしまったが、子供たちのことを思い出し、家に戻った。
直影が駆け出して十分もたっておらず、荷造りはまだ終わっていなかったが、直影は先に富子と直裕を逃がす。体が軽い子ども二人から逃がし、後で落ちあうことにする。
「富子、ネエネエと父ちゃんと一緒にいる!」
すがる富子だが、直影は首を横に振った。
「大丈夫。すぐに会える。また会えるから。直裕、富子を頼むぞ」
「――はい」
いつになく神妙な直裕を見て、富子はことの重大さをようやく感じ始めた。
「ほれ、こっちじゃ。裏口から逃げるぞ!」
直影は二人に裏の塀を乗り越えさせ、すぐに姉妹のところへ向かった。
二人は防災頭巾をかぶり、駆け出した。少しの食料。隣では戦火。いつ命を落とすかわからない。走って、走って、走って。
富子は耳をふさいだ。近くでまた爆音が鳴り響いたからだ。ふいに振り返る。
「家が……家が……」
直裕の悲痛な嘆きで富子はようやく理解した。あそこで燃えているのは、我が家だということを。あれは紛れもなく、富子が四年間育ってきた我が家だということを。そしてあの場所が燃えているということは、すなわち父と姉の命はもう――
2011/08/16 Tue 19:04 [No.564]
あんびしゃん(氷河期の賢者
「父ちゃん……ネエネエ……」
その場で泣き崩れる富子を、直裕は抱きかかえた。直裕とてまだ十歳である。泣きたい気持ちは溢れているし、現に泣いている。けれど自分までもがここで泣き崩れ、この場を進まなければ、二人ともここで死ぬ。父親は子どもを守るという責任を果たして死んだ。だから自分も兄としての責任を果たさなければいけないという責任感だけを頼りに直裕は走る。
「富子、大丈夫だから、大丈夫だから。今は逃げなきゃ。おとうが残してくれた命を大事にしなきゃ」
二人は力いっぱい走り、なんとか戦火から逃れ、静かな海岸にやってきた。
「うえーん、父ちゃん、ネエネエ……」
岩にこしかけ、富子は泣いた。思いっきり泣いた。走ってきた間、兄に迷惑をかけまいと思いこらえていた涙を全て使って。
「泣くな。富子、泣くな……もしかしたら……もしかしたらおとうたちも生きてるかもしれん。今日はゆっくり寝て、南に行こう。きっと会えるよ」
「本当に?」
「本当さ。だからな、富子。泣きたくなったら、笑え」
直裕はとびきりの笑顔を見せた。富子は直裕がどれほど頑張ってその笑顔を作っているかを想像しただけで涙が出そうになったが、兄の努力を無駄にすることはしたくないという意思が勝り、笑った。
「ありがとう、ニイニイ」
富子はその場に寝転んだ。直裕は鞄に入れていた小さな布団を富子にかけ、自分は何もなしで寝転んだ。
「ニイニイ、掛け布団いらないの?」
「いいさ。富子が寝れればいいのさ」
「ニイニイ、お休み」
「おやすみ、とみ……」
直裕が声をかけようとした時にはもう、富子は静かに寝息を立てていた。
「お父さん!お父さん!」
炎に包まれる家から間一髪逃げ出した姉二人。しかしその命があるのは父の犠牲のおかげで、父が炎に包まれるのを二人は目にしてしまった。否、初子は見ていない。ヨシ子が初子の目を覆い、見せなかった。父親が炎に包まれていく姿など、見せたくはなかったのだ。
「初子、行くよ!」
何とか難を逃れ、森に逃げた二人は、小さなガマに身を潜めた。
「お父さんが。お父さんが……」
泣きすする初子をヨシ子は必死に慰める。
「お父さんが残した命、大切にしよう。南へ行こう。南へ行って、富子と直裕に遭わないと。二人を安心させないと。だから今日はゆっくり寝よう」
「ありがとう、ヨシ子ネエネエ」
こうして松川家は二つに引き離されてしまった。昨日まで当たり前にあった平和が突如奪われる。これが戦争。
翌朝、富子は爆音で目が覚めた。目を開けると、あたりいっぱいに煙が充満していた。富子でも分かる。近くで爆撃があったということは。
「ニイニイ、起きて。ここは危ないかも……」
直裕の首元から激しく流血している。直裕は目を開けたままじっとしている。その目は虚ろで、何も捉えていない。
「ニイニイ……?」
富子は直裕の体を揺さぶるが、その虚ろな目が他の何かを捉えようと動くことも、まぶたが瞬きをするために閉じようとすることもなかった。富子は不意に直裕のおでこを触った。
「冷たい……」
生きている心地が感じられないほどの冷たさ。富子は母親を思い出した。
「母ちゃんと一緒だ……冷たい。死んだ人は冷たくなるって父ちゃんが言ってた……」
母が死んだ時も、富子は不意におでこを触っていた。その時と同じ感触を、この時富子は覚えた。
「ニイニイ……死んじゃった」
富子は死んだ人をどうすればいいのかわからなかった。
「ニイニイ……富子はどうしたらいいの?」
兄が答えることはない。ふと、富子は昨晩の兄の言葉を思い出した。
「父ちゃんに助けてもらった命……でもニイニイは死んじゃった……ネエネエも死んじゃったかもしれない。じゃあ、富子がみんなの分まで生きるね! ごめん、ニイニイ。富子、行かなくちゃ!」
姉らが死んでしまったと勘違いしてしまったことは、富子をさらに奮い立たせていた。
兄を置いていくのに抵抗もあったが、絶対に自分が生き残って、また兄の骨を拾いに来る。そう決意した富子は、一人で歩きだした。波は激しく打ち寄せる。
一人きりで南へと進む旅。幾度となく爆撃に遭うが、何とか難を逃れ続けて、また南へ。
富子は当初、人の多い方へと逃げていた。しかしある日、直裕のことを思い出していた際に、兄とのかくれんぼを思い出した。
「富子はみんなと同じところに逃げるから駄目なんだよ。いいか、かくれんぼのコツはよ、人のいないとこ、いないとこに逃げることなんだ」
直裕の言葉を思い出してからの富子は、昼間は隠れ、夜に食べ物を探すという生活をし始めた。
2011/08/16 Tue 19:05 [No.565]
あんびしゃん(氷河期の賢者
一方日本不利で進む沖縄戦は、兵士だけでなく住民さえも追い詰めた。『投降すればアメリカ兵に八つ裂きにされる』という誤報が流れたりし、集団自決を迫られる事例も多かったのである。
富子は、小さなガマの近くにやってきた。富子は服を引っ張られているのを感じ、振り向くと同じくらいの年の男の子がいた。
「遊ぼ」
男の子はそう言うと走り出した。鬼ごっこを誘っているらしい。
「鬼ごっこか。よーし!」
富子は走り出した。まるで直裕とかくれんぼをしているかと思うほどにこの瞬間は楽しかった。
「直裕! 来なさい! ……あら、遊んでくれたの?」
母親らしき人が駆け寄り、男の子の頭をなでた。
「直裕? 富子のニイニイも直裕だよ」
兄と同じ名前ということに気がつき、富子は聞く。母親は頷いた。
「そうかい。私たちはねえ、今からとってもいいところに行くんだよ? アンタも行くか?」
「え、どこどこ?」
「……天国」
母親は遠くを見て話を続ける。その目に生気はない。
「大丈夫。手りゅう弾あるからすぐ楽になる。来るか?」
富子は頷きかけた。ここ二週間、大した食べ物も食べることができず、ずっと一人ぼっちで歩いてきて、精神的にも限界が近づいていたからだ。
しかし富子は首を振った。兄の遺体の前での決意を思い出したからだ。父と姉と兄の分まで自分が生きる。そう決意したことを。
「行かない。富子死なない!」
母親は残念そうな表情をし、再び直裕を抱きかかえた。
「じゃあ、もしあなたが生きてたら、私たちのこと、覚えていてちょうだいね。お願いね……」
母親は直裕を抱きかかえ、小さなガマに入って行った。そして富子がその場を去ってから一分後、ガマは爆発した――
富子はあの母親が最期に見せた表情を思い出す度に胸が苦しくなった。
富子の孤独な旅が続く間、沖縄戦は終盤に差し掛かっていた。沖縄の住民に残された選択肢は、投降か自決かというくらいまでに追い込まれていた。
富子は、ある小さなガマにたどり着いた。というのも、外からでもわかるほどに油味噌のにおいがしたからなのだが。外はサトウキビ畑が広がっていて、見つかりにくいガマではあった。
「あった! 油味噌だ!」
富子は油味噌をほじくり、思いっきり舐める。
――飛び上がって喜ぶ。
「おいしい! ……あ」
が、視線に気づき隠れる。
「こっちに来なさい」
太い、老人の声。座って富子を見つめている。
「誰か入ってきたのですか?」
今度は老婆だ。
富子はためらったが、老人があんまりしつこく言うものだから、仕方なく老人が座っているところにいった。――老人の両手と両足はなかった。
「ご……ごめんなさい!」
富子は老婆に向けて頭を下げた。が、老婆の目は富子を捉えない。
「あら、女の子ね」
「目が見えないの……?」
「そうなのよ。おじいさんは戦争で両手と両足を無くしてねえ。二人でここに住んでるのさ。棚の上に食べ物があるから、食べなさい」
老婆は立って、ぐらつきながらも棚に物を取りに行った。富子は老婆を制止し、自分で取りに行った。
「おいしい!」
富子は豆を頬張った。逃亡生活を始めて以来の美味しさで、富子は驚いた。そして泣いた。兄、父、姉のこと。全て話した。老人と老婆は涙を浮かべながら聞いた。
「ひどいねえ。こんな小さい時には、もっといいものを見たいのに……」
「ずっと。ここにいていいんだよ」
老人は優しく富子に語りかける。
2011/08/16 Tue 19:06 [No.566]
あんびしゃん(氷河期の賢者
翌日。富子は老人に今までの話をした。
「父ちゃんはね、優しかったよ。富子が弁当を落としちゃっても、食べられるからって、ありがとうって言ってくれたの」
「優しいお父さんだなあ」
「だから、富子も優しい子なんだねえ」
「富子優しいの?」
「富子は優しい子だ。富子はいい子。いい子。お豆を食べよう」
老婆は頷き、富子を抱きかかえ、棚の方に向かう。
「おばあちゃん……ねえ、さっきから音が聞こえるんだけど」
小さな狭いガマのため、歯ぎしりのようなその音はよく聞こえていた。
「ああ、それはね、おじいさんの傷にたかるウジの音だよ。おじいさんの傷を食べているんだ」
「ウジ……」
富子の顔から血の気が引いた。人を食べる虫……富子は自分も食べられるのかと思ってしまう。富子が突如として静まり返ったのに気がつき、老婆はあわてて補足する。
「で、でもね、ウジは悪いところを食べてくれるんだよ。おじいさんの中に入り込む、悪いものを退治してくれるんだ」
「本当に? おじいちゃんをいじめてるんじゃないの?」
「うん。おじいちゃんも痛がらないから、大丈夫なんだよ」
富子は安堵の表情を浮かべる。それが見えなくとも、老婆もにこやかにほほ笑んだ。
「富子は、本当に優しいねえ」
そんな平和な毎日が二週間も続き、富子はすっかり老夫婦になじんでいた。
富子は地面に絵を描いていた。その時、頭にひらひらと紙が落ちてきた。
「これなあに?」
「富子、持ってきなさい」
老人が富子から手渡され、その紙を見た。チラシである。
「なんて書いてあるのです?」
盲目の老婆は老人に聞いた。
「数日の間にガマからでないと爆破する……アメリカからだ」
「とととととと富子、富子はここにいるよ」
「駄目だ。富子は行きなさい」
「やだ! おじいちゃんとおばあちゃんと一緒にいる!」
「富子は優しい子。だから私たちと一緒にいようとするのもよくわかる。でもね、富子はお父さんとお兄ちゃんとお姉ちゃんの分までいきなきゃいけないんだよ」
富子ははっと思いだした。あの決意も、全て話した。この老夫婦は、富子の決意を尊重している。
「明日、ここから出るんだ。でないと――」
老人の声は、拡声器による大声で遮られた。
「ニホンノミナサン、ワタシノハハオヤハニホンジンデス。シンジテクダサーイ! ハヤクデテキテクダサイ! ソウシナイトバクハシマス! ハヤクデテキテクダサイ! ワタシニホンジンコロシタクアリマセン!」
アメリカ兵の説得が始まる。富子には悪意にしか思えない。
「……おばあさん、ふんどしと木の棒を持ってきなさい」
「はい」
老婆はそれらを持ってきて、富子とおじいさんの間に置いた。
「富子、ふんどしをちぎって、木に巻きつけて、白旗を作りなさい」
「白旗を……?」
「そうだ、時間がない。はやくしなさい」
老人は焦っていた。いつ爆破されるか分からない。富子は生き残らせなければいけないという責任を感じていた。
あっという間に日がくれ、夜が更ける。富子は反射的に眠りについてしまい、老婆が残りをとり繕う。そして翌朝、老婆の声で富子は目が覚めた。
「できました! 富子、どうぞ」
老婆は白旗を手渡す。手は傷だらけだ。盲目の老婆にとってこの作業は苦痛だったであろうが、富子のことを思ったからだろう、早くできた。
「でも……富子はもう行かなくちゃいけないの?」
「そうだ。いつ爆破されるかもわからんのだ。お前は生き残らなければいけない」
老人はいつになく厳しい口調で言ったが、堅い表情はすぐに崩れた。富子がまた目に涙を浮かべているからだ。
「ああ、ごめんよ」
「……うん。でも、富子外に出たからって生き残れるの?」
「大丈夫。その白旗を持っている限りは大丈夫。その白旗は、平和の証だ」
「平和の……証?」
富子が首をかしげると、老婆が補足する。
「そう。平和の証。それを持っていれば、アメリカも襲ってこない」
「八つ裂きにされないの?」
「されやしないさ。富子を八つ裂きにしようなんて人は誰もいない」
老婆は富子を抱きしめた。
「いいか富子。命どぅ宝じゃ。富子の命こそ宝じゃ。命を宝だと思えば、お互いに仲良くなれる。命を宝だと思えば、お互いを助け合うことができる。命を大切にするんじゃ。わしらはもう、外に出ても動けない。外に出れば命を捨てることになる。だから富子、わしらの分まで生きてくれ。その白旗は、生きるためのものじゃ。命を大切にするためのものじゃ。平和のためのものじゃ」
「おじいちゃん……」
「富子、行きなさい。富子は優しい子。だから、命を大切にできる。命は宝。忘れないでね」
2011/08/16 Tue 19:06 [No.567]
あんびしゃん(氷河期の賢者
「おばあちゃん……」
「ニホンノミナサン、ワタシノハハオヤハニホンジンデス。シンジテクダサーイ! ハヤクデテキテクダサイ! ソウシナイトバクハシマス! ハヤクデテキテクダサイ! ワタシニホンジンコロシタクアリマセン!」
再び鳴り響くアメリカ兵の説得。老夫婦は富子を急かした。
「早く行きなさい。いい、富子。外に出たら、もっと南に向かいなさい。そこにたくさんのアメリカ兵がいるだろうけど、怖がらないでね。富子、さようなら……」
「おばあちゃん、さようなら」
「白旗を持っている限り、大丈夫だ。富子、さようなら」
「おじいちゃん、さようなら」
富子は名残惜しくガマを後にした。二週間ぶりに外に出ると、そこは一面に広がるサトウキビ畑。珍しく爆撃を受けておらず、風になびいている。沖縄らしい、サトウキビを富子は踏みしめ、白旗を掲げつつ南へと歩いて行った。
「コッチニキテクダサイ!」
アメリカ兵が、日本人を誘導している。富子は、とうとう住民が投降する場所までたどりついた。
「富子は、大丈夫。殺されない。白旗があるから、大丈夫」
富子は自分に言い聞かせ、アメリカ兵の前をゆっくり歩いた。
しかし、富子は恐ろしいことに気がついた。アメリカ兵が、自分に何かを向けている。
「あれは、銃! だめ、殺される! 富子、死んじゃう……」
動揺する富子だが、過去のことを思い出した。父、兄、老夫婦の言葉を。
「死ぬ時は……笑って死にたい……泣きたいときは笑う……命どぅ宝! そうだ、白旗があれば大丈夫! 怖いけど笑おう! 泣きたいときは笑うんだ!」
富子はとびきりの笑顔を見せた。そして手を振った。
――パシャリ。
こうして、白旗の少女は生まれた。
富子は、何もなかったことに喜び安堵の息をついた。
「よかった。おじいちゃん、おばあちゃん、ありがとう」
富子が見上げた人ごみの中に、暗い表情をしているヨシ子と初子がいることに気がつき、富子は駆け寄った。
「ヨシ子ネエネエ! 富子だよ!」
「富子ぉおおおお!」
姉妹は再会を果たした。そして泣いた。なぜか。お互い一人ずつ欠けている。直影と直裕がいない。それでも生き残ったことにないた。泣いて、抱き合った。そして、白旗の少女は、今も生きている。
彼女はあの時笑った。それは、彼女の周りの人々がそうさせた。
白旗も平和の象徴だが、笑顔も平和の象徴ではないか。
全ての人が笑顔でいられることが、平和なのではないか。
少女は、笑う。
完
2011/08/16 Tue 19:07 [No.568]
フィッターR
果てなく続く雪と氷。
何もかも白く染められたまっさらな世界。
凍てつく野に一輪の花が咲いた時、物語は始まる。
塹壕に根を下ろし、倒れた兵(つわもの)の生き血をすすり、鉄条網に蔓を這わせ、燃える炎で身体を温める。
その花は、戦場にたたずむ青い薔薇。
第1話「ネージュ」
その薔薇に触れる者は、刺に刺されて眠りに堕ちる。
夢が現か、現が夢か。
人が獣か、獣が人か。
夢幻の花園に集いしは、夢から生まれた電子の胡蝶。
ある者は理想の蜜に酔い、またある者は真実の露を求める。
舞い踊る胡蝶達は、抜け出た繭で夢の糸を紡ぎ、現実の布を織る。
夢も現も、人も獣も、此処では全てが紙一重。
次回「仮想現実」
青薔薇はシミュレイテッドリアリティの夢を見るか。
歩み続けた修羅の道も、振り返れば泡沫の幻。
歩みの果てに辿り着きしは、人の踏み入らぬ、ポケモンだけのパラダイス。
抗争は無い。傷付く事も無い。死ぬことも無い。平和な、あまりにも平和な、狂気すら覚えるシャングリラ。
血と泥をすすって生きる青薔薇は、清ら過ぎるこの地で根腐れを起こし、衰弱していく。
次回「楽園」
生き延びる為、薔薇はより深く深くへ根を伸ばす。
2011/08/27 Sat 00:51 [No.590]
ジャグラー
ニーチェ編
「みんなー!ニーチェ、見つけてきたよ!転生石、取り戻したよ!」
「あれは・・・ニーチェ!?」
「エ、エメローネ様!見てください、ニーチェの持ってる物を!」
あのあと、ニーチェ殿は転生石を持ってエンベリア公国へ帰っていきました。
聖剣の最後の力で、我々との戦いで散っていったウンディーネ達は生き返り、ニーチェ殿は戦いが起こる以前の平和な生活を楽しんでいるようです。
「ニーチェ、貴方が私に槍を向けたのは転生石を取り戻すためだったのですね。」
「裏切り者などと言ってすまなかった・・・許してくれ」
「ニーチェ、あなたはエンベリアの英雄よ!」
「えへへ・・・ニーチェ、頑張ったよ!」
転生石を取り戻し、再び活気が戻ったエンベリア公国。
再びファンタジニア王国との関係も昔と同じく親しい関係に戻り、姫様も安心していました。
エメローネ殿はエンベリアの女王として、二度と争いが起こらないよう最善を尽くしています。
私も一度エンベリアを訪れましたが、以前よりも平和で街が栄えてました。
イシーヌ殿は、あのあとエメローネ殿の補佐として日々頑張っているようです。
行動力があって積極的な彼女ならば、エメローネ殿を手助けできるでしょう。
そしてニーチェ殿は槍を捨て、エンベリアで市民として暮らしています。
最近では一人で王国にも来るようになり、姫様とよく遊んでおられます。
彼女はこれからはウンディーネ達と平和に暮らせる喜びに浸りながら毎日を過ごせるでしょう。
「お姉ちゃん、ニーチェは今幸せだよ!」
パメラ編
「ふふーん♪あのウンディーネから材料はとれたし、この国なら誰にも邪魔されずに研究出来るわ〜♪」
あのマルドゥークの森で出会ったウィッチ、パメラ殿はどうやらエンベリア公国に住んでいるようです。
ウンディーネの事を研究するためか、よく道端のウンディーネに実験をしているようです。
彼女は本当に不思議な存在です。
ロザリィ殿曰く、「変人だが魔力は並じゃない」と言ってますが・・・。
私からしてみればただの変人にしか見えませんが。
「あ、そこのウンディーネ!綺麗な貝殻をあげるから、パメラ様の実験にちょーっとだけ付き合ってくれない?」
「え〜!?何であなたがこのエンベリアにいるの?」
「あ、あんたはニーチェ!ちょうどいいわ。さあさあ、パメラ様の実験を手伝いなさい!」
「え〜!?またあの変な薬かけるの〜?やだよぉ〜・・・」
・・・噂では、ニーチェ殿がよく被害に合ってるとか。
ほどほどにしないと、エメローネ殿が怒り出しそうですね。
2011/08/27 Sat 02:44 [No.593]
あんびしゃん(氷河期の賢者
私は運動をしたくない。
というのも、運動できるほどの体ではないからである。
まず腹が出ている。どのくらい出ているかというと、椅子に座った時に腹がたるんで、椅子の裏から一周して頭に乗っかるくらい。
何故太ったのか、未だに思いだせない。幼いころ、ピザ、ピザ、ピザ、ピザ、ピザ、ポテト、ピザ、ピザ、ピザ、ハンバーガーという何とも健康的でバランスの取れた食生活を送っていたものだから、原因不明だ。
最近は、ピザ、ポテト、ハンバーガーに加え、コーラをよく飲むようになった。やせたいという願望はないが、さすがに頭に腹が乗っている状態は不便なので骨が溶けると噂の炭酸飲料を飲んでみている。
――舌が溶けた。
もとい、しびれただけだが。
舌の機能を失ってしまうと、ピザを食べられなくなるので炭酸はやめた。
やせる方法を調べるために、グー●ルで検索することにした。キーワードは『ドミ●ピザ・新メニュー』。これでやせるスポーツの名前が出てくる――こなかった。
私は疑問に思う。何故ピザでやせれないのか。
私は試行錯誤した。ピザを食べながらできるスポーツはないのかと。そして行きついた答えが――
2011/09/02 Fri 22:19 [No.616]
あんびしゃん(氷河期の賢者
――フリスビーである。
そうだ、フリスビーをすればいいじゃないか。ピザで。
「ちょっと待ちなされそこの巨人!」
振り返るとなんとなんと、そこにはシルクハットをかぶった紳士が空中でボディビルディングをしているではありませんか。一体私に何の文句があるというのでしょう。
「ピザじゃねえ。ピッツァだ……」
なんだ思ったよりワイルドじゃないか。
紳士は高速回転し、台風十二号とともに姿を消した。瞬間最高風速は25キロピッツァ毎時。台風もピンキリである。
そうかピッツァか。ならいいだろう。しかしトッピングがしたい。諸君よ、そうは思わんか?……そう、思わないのね。
「緊急地震速報です! 台風十三号が、西に北上しています!」
――どういうこった。
結局トッピングはしないわけだが、どうするか。というか私はフリスビーのやり方をしらない。一説によると、フリスビーの板はチャンピオンベルトに装着できないらしい。
「それー」
背後にはガキがいた。おもむろにものを投げている。
「何をやっている、少年よ」
「野球! そしてそのおなかに、どストライーク!」
腹に硬球がめり込まなかった。受け止めて縫い目をほどいた。いつの間に器用になった私の腹。
「いいかい、巨人! ものはこうやって投げるんだ!」
ガキはボールを投げた。――ジャイロボールだと……こいつ、できる。
私は少年の真似をしてフリスビーを放る。
――フリスビーは地面にめり込み、そのまま新世界を作った。少年は唖然とした。そして抵抗。いややめてくれ。
「なら! それ!」
少年はトマトを取り出した。――なぜ。
「これで、トッピングするんだ」
「ありがとう少年」
しかし、私のフリスビーはマグマに食べられている。
マグマとトマトって同じ系統の色だよね。
「フリスビーはだめか」
トマトを眺めつつ呟いてみる。素人でもできるようなこと――
さっきグーグルで調べてもまともな結果が出なかったから、ヤ●ーで検索してみることにする。ワードは『やせる・スポーツ』。
結果はマラソンがいいという結論だ。マラソンってなんだろう。もしかして短い距離を思いっきり走る競技だろうか。
確か知り合いに走ることが不得意だとかいう奴がいたので聞いてみることにする。
「大山西海畠山、どうやったら早く走れると思う?」
「うーん、とりあえず顔を左右に思いっきり振って走るといいんじゃないかな。あとは足と手を一緒に出す。そうするとカッコいいと思うよ」
私にとって大山西海畠山は親友なので、彼を信じて走ってみる。大山西海畠山にタイムを計ってもらい、五十メートルを走ってみることにする。私はマラソンをマスターすることができるのだろうか。
しかし走るのが面倒になったので、先ほどほらったトマトで醤油を作ってみた。駄目だった。
気を取り直していざ五十メートル。
顔は左右に、手足は一緒に出す! 風邪を感じる。風邪をひいたようだ。どうでもいいや。
「すごいぜ、十八秒だ!」
大山西海畠山は喜んでいた。ということは私は、マラソンマスターになったのだろうか。
予備知識がないというのはいいものだ。それを純粋な形で楽しめるのだから。
短い距離を全力でダッシュする競技、マラソン。私はそれを極めた。その事実だけが、今の私を鼓舞している。
私は家に帰り、ダンベルを持ち、ダンベルを置き、ピザを持ち、口の中に入れた。また、私はポテトを持ち、口の中に入れた。
今日の私は素晴らしい。大変満足している。今日マラソンをしたから、これでやせることができるはず。ピザが美味しい。トマトも美味しい。ふふふ、全ての歯車がかみ合った瞬間である――
一ヶ月後、私の腹は体の周りを一周していた。おかしい。一度マラソンをすればやせると聞いていたのだが。私は大山西海畠山を一生恨むことにした。
「台風情報です、台風十二号は北西に南下しています。近畿地方から長州藩に向かって移動していますので、現地のリポーターの方はご注意ください!」
2011/09/02 Fri 22:20 [No.617]
あきはばら博士
「(と、とにかく、早くこの場から離れないと……!)」
「痛い……」
「? ……様子が……」
様子がおかしい……?
「痛い……痛い、痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!! あ”あ”ぁははああぁひゃああ”はっっ!!!! お兄さんの事許さないよ、絶対に飲ませて貰うから!!!」
「(飲ませる? 何を? まさか…………血を?)」
クラウドの顔の血の気がひいた。
「…………狂ってる……!」
「あはははひゃぁあ”あ”あ”あ”はははっっ!!!」
先程よりも無茶苦茶なナイフの太刀筋は、クラウドの読みを狂わせる。
相手はまるでさきほどまでに受けた技の数々のダメージなど無いかのような元気の有り様だった、形勢逆転されたのかもしれない。
サイコのナイフは致命傷にならないまでも、体を少しずつ傷付け、赤い線を残して行く。
「うっ くっ……!」
クラウドはとにかく、相手の攻撃を受けないようにと[影分身]を作り出す。
相手の攻撃が空振りしたことを確認して、こちらの体勢を立て直す。バッと距離を取って、更に[影分身]を積み、相手を見据える。
その時、脇腹に何かが刺さった感触が走った。
「あっ……! そ、こ、かぁ〜〜……!」
相手に必ず当たる技……[シャドーパンチ] + ナイフinハンド
クラウドの体から赤い血液がドロドロと流れ出る。
「鮮血飲ませてね!!!!」
/
/
「がはっ! はぁはぁ……」
メイルは地面に仰向けの状態で、肩で息をしていた。受けたダメージと疲労で、立ち上がる体力も使い果たしていた。
「さてと」
フィーレンは言う。
「では、メイルさん、失礼ながら。とどめを刺させてもらいますわ」
メイルには言い返す力も残っていない。
怒りで暴走状態になっていたところをフィーレンにあしらわれしまい自滅してしまったことが、メイルの敗因だった。
その証拠にフィーレンはほとんど息が上がってなく、完全に主導権はフィーレンの物になっていた。
「フィレ姉さ〜〜ん!!!」
遠くからやんちゃそうな男の子の声が聞こえくる。
眼をわずかに開けると、全身が紅く染まったゴーストがいた。
「あら、サイコ……そっちは終わったの?」
「うん!」
「(終わった? 何が?)」
「で、これは…… 僕が飲んでいいの?」
「ええ、結構よ、好きにしていいわよ」
「(飲む? って?)」
そう言い残して、フィーレンはそこから去る。
「(ああ…… 死ぬっていうことは……)」
「やったぁ! いただきま〜〜〜す!!」
メイルは最後の意識でこう思った。
――こんなに嫌なことなんだね。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
そこからちょっと歩いた場所に、一人のラルトスがいた。
「こんにちは、聖さん」
メイルとの戦いを終えたフィーレンはそのラルトス、聖に挨拶をした。
「……終わったのか?」
「ええ、終わりましたわ。 ……ただ、そんなこと報告するまでもないことだと思いますわね」
聖がいるこの場所は、先ほどのメイルとクラウドの戦いの両方が良く見えるところだった。実際に自分の目で確認しないと納得できないタチらしい。
「一応だ」
聖は短く返事をする。
「貴方の依頼では、あのラルトスさんがいるチームを分断させて、シャワーズさんとブラッキーさんを始末するという依頼でしたわね」
「ああ」
「ただ、その次のことには勝手ながら反対いたしますわ…… さすがに相手は女の子ですし、やりすぎと思います」
「そこは貴女方には頼んでいない、それは俺がやるから、貴女方には関係ない話だ」
そう言って、聖はフィーレンに何かを手渡す。
「いえ、重ねて言いますが報酬は結構ですわ。 サイコには良いストレス解消になっただろうし、私としても暇つぶしになりましたし、それだけで十分」
「いいから、貰って置け。 ここで受け取ってもらえないと俺の主義に反する」
聖のその眼を見て、フィーレンは「では」と言い、それを受け取る。
フィーレンとサイコが帰ったことを確認した後、眠らせてある輝を見つめる。
頼ろうとしていた者達が、眼が覚めたら凄惨な亡骸になっていたとすれば、彼女はどうなるのだろうか?
と、考えながら。
2011/09/02 Fri 23:59 [No.618]
いぬ
I am the bone of my snow.
――――体は雪で出来ている。
Ice is my body, and grain is my blood.
血潮は氷で、心は結晶。
I have created over a thousand frozen body.
幾たびの人狩りを越えて不敗。
Unknown to Death.
ただの一度も平穏はなく、
Nor known to Life.
ただの一度も共感されない。
Have withstood pain to create many fragment.
彼の少女は常に独り 雪の丘で勝利に酔う。
Yet, those hands will never hold anything.
故に、我が二度目の生に意味は無く。
So as I pray, unlimited freezing works.
その体は、きっと雪で出来ていた。
.
――――
ただの某改変。いぬめのこイメージ
2011/09/03 Sat 00:26 [No.622]
あんびしゃん(氷河期の賢者
三段腹とテレキャスター 肥満の整列、アンハッピー
単身赴任で浮気 撃ち込んだ音妻の怒声
声が潰れるまで叫んで 近所の信頼を棒に振った
もう既に手に入れてたアンタ いい加減飽きたし手放すわ
「マンランライフこんにゃく畑!」
お部屋の中は少女漫画、
ミシンが既に無くなった 此処で一度返し縫いしようか
僕のお父さんの母の 曾祖父の祖父の曾祖父は
武将柴田勝家の二番目の弟子です でもそれ知人がついたウソです
北京の南で三転倒立
対抗して銀座でパパとコサックダンス
足りないものはもう無い、もう無い
そうかい? そうだよ、違うよ
お前の、家の、犬はラッキー
歩道の隅で平泳ぎ チャレンジしていたら 腹が、やばいことに
腹筋なんてあるはずないわ!
初めて貰ったサインボール 書かれたのはなぜか偽名でした!
つまりつまり意味はないの(サインボールには)
そうだね今すぐ飛び降りよう!
画面の向こう 目指したけど
行けるはずがない、哀れなオタク
2011/09/05 Mon 21:31 [No.642]
あきはばら博士
――景色が風になる。
[スピードスター]を翼に引っ掛け[燕返し]の要領で飛ぶ。そのすごいスピードで相手にぶつかり、爆発してダメージを与える、鋼の翼を持つエアームドだからこそ出来るムチャなこのワザは後々『スカイドライブ』という名前で使われることになるのだが……
「(スゴイ! エアームドってこんなに速く飛べるんだ……)」
……新幹線並みかそれ以上の速さでめまぐるしく変わる景色に違和感を見つけたのはすぐだった。
“斜めっている”。要するに何故かは知らないが落ちていっているわけで……。
「ストップストップ!! ……何で聞かなっキャーーー!?」
ガシャ! パリパリパリーン! ドガーン!
派手な音と小さな爆発が起こって暗転。次に気がついたら焦点の合わないまま空を見上げていた。
慌てて背を起こすとシャラシャラと音がする。目の前の大窓が割れているのを見るとどうやらガラスの雨が降り注いだようだ。
気を失うほどの衝撃に爆発にガラスの雨、そして一応無事な自分。鋼タイプに感謝しなくてはなるまい。
「大丈夫ですか? エアームドさん。」
いきなり声をかけられたのに驚いて首を向けると背を向けた緑の人影……いや、ポケモンの影が居た。
わけ分からないながらにも「えぇ、一応……」と返事するとその影は柔らかな笑みを浮かべる。
「良かった、その様子なら大丈夫ですね。」
その台詞を言うや否や、温和な雰囲気が一変した。
その影――ジュカインは無駄の無い動きでバッと刀のある腕を突き出し『種マシンガン』の種だろうか? 緑の小さな粒を沢山浮かばせる。
その強い視線の先にはラクを追いかけて来たポッポ軍団、総勢十七羽。
「食い逃げ、万引き、嫌がらせさんはお引取り願いますよ!」
その言葉にキレたのかポッポ軍団が雪崩を打って突っ込んでくる。
一方のジュカインは浮かべた粒を『リーフブレード』の面で一払い。打たれた粒が銃弾のように下から軍団に降り注いだ。
* * * * *
「すぐ手当てできなくてスミマセン。」
十数秒後、ポッポ軍団は一人残らず気絶して地に伏していた。
勿論ジュカインのほうは無傷だ。
さっき見たときは気づかなかったが左に眼帯をしているそのヒトは、戸惑っているラクを見て慌てて言い添えた。
「自己紹介が遅れましたね。僕はサイサリスの店主、アッシマーMkU量産型です! あっ呼ぶときはアッシマーでいいですよ」
その場所こそが、『ポロック・ポフィン・ポケまんまの店 サイサリス』だった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
2011/09/06 Tue 00:15 [No.646]
あきはばら博士
「ほら、着いたよっ! ここが私の家!」
エルジアのその声に若菜が見ると、目の前に小さな店があった。
ゲームでの描写通り、ここソノオタウンは花で埋め尽くされていた。その花畑の中に佇む、可愛らしい感じの店。入り口の上部にかけられた薄桃色の看板に躍る緑色の文字を、若菜は声に出して読んでいた。
「『ポロック・ポフィン・ポケまんまの店 サイサリス』……?」
「そう! お父さん、お母さん、ただいまー!!」
エルジアは元気良く自分の帰宅を知らせ、店の中に入った。若菜も続いて、「お邪魔します」と言いながら店内へ。
四方の壁に並んだ棚には、所狭しとポロックやポフィンが陳列されている。中には木の実そのものや、若菜がゲームの中では見たこともない食べ物もあった。恐らくこれが『ポケまんま』だろうか。
店の突き当りにはカウンターがあり、その更に向こうはのれんで仕切られていた。外観は2階建てだったので、のれんの奥と2階が住居だと思われる。
若菜がそんなことを考えていると、エルジアの声を聞きつけて、カウンターでしゃがみこんでなにやら作業をしていたポケモンが顔を上げた。
「お帰りなさい、エルジア。あら、お友達も一緒?」
そのポケモンが伝説のポケモン――ラティアスであるのを見て、若菜の思考は停止した。
更に、そのラティアスが、どこかで見たようなゴスロリの衣装を着ていることに2度驚いてしまう。
「え……えぇぇぇぇ!!?」
二重の驚きが、素直に声に出た。
エルジアは、不思議そうに首を傾げる。だが、ラティアスの方は若菜が驚く理由に見当がついたのだろう。苦笑いをして、カウンターから出てきた。
「若菜? どしたの?」
「え、いや……確かにここはポケモンの世界だし、パソコンの中にあるし、ここにいたっておかしくないけど……。もしかして……サナスペの、ラティアス?」
そう言う若菜にラティアスは笑ってみせ、質問には答えず逆に訊き返してくる。
「ところで……そういうふうに驚くってことは、やっぱりチコリータさんも人間なの?」
「あ、はい、私は若菜といいます」
「メスフィから預かってきて、私も詳しいことは聞いてないんだけど……なんだか若菜さん、元の世界に帰れなくなってしまって、迷っちゃってるみたいなの。だから、お父さんに相談して力を借りようと思うんだけど……」
エルジアはそう言って、店の奥を覗こうとした。
「木の実を採りに行ってるから、もうすぐ帰ると思うわ……ほら!」
ラティアスが言い終わるか終わらないかといううちに、店の扉が再び開き、1体のポケモン――ジュカインが入ってきた。
「なんだ、帰ってたのかいエルジア」
「あ、お父さん!」
温厚そうに細められているが、その奥にどことなく鋭さを感じさせる瞳は、片方を眼帯で覆われている。見慣れないジュカインの容姿に若菜は一瞬尻込みするが、エルジアやラティアスの嬉しそうな様子を見て、そしてジュカインの人の良さそうな笑みを見て、首を横に振った。
どうやら、エルジア達に絶大の信頼を寄せられているようである。悪い人なはずがない。
このジュカインがエルジアのお父さん、ラティアスがお母さんであるらしかった。両親どちらもと娘の種族が違うのが少し気になったが、家庭事情のタブーに触るかもしれないと、若菜は敢えてそこに言及しなかった。
2011/09/06 Tue 00:16 [No.647]
あきはばら博士
ジェノサイドクルセイダーズの根城である施設にある私室のベランダにて、トゲチックのツバサが連絡役らしきペラップの報告を聞いて小さく笑って要約する。
「……へぇ、それってつまり失敗したってわけ?」
「はい。レベル差から考えて当然の結果で、依頼前後の事もあっさり話していました。その事でレオードもあなたが関わっている事に気づいたようです」
「それでいいんだよ。僕のディナーは彼なんだから」
元々あんな弱い二人組に期待はしていない。ただ、自分にとっては己から唯一逃げ出す事が出来たレオードに大きな不幸の前触れを気づかせる事が出来たのならばそれでいいのだ。
今の自分の優先目的は己の望んだ不幸から逃げ出したレオードに史上最高の不幸を与える事。
もちろん元人間達の不幸を与えて、絶望の悲鳴を聞くのも大好きだ。
だからこそ両立させて芸術的な史上最高の不幸を与えてやりたいのだ。
そう考えると楽しくて楽しくて笑みが止まらなくてしょうがない!
突然クスクスと笑い出したツバサに対し、ペラップは若干引きそうになりながらも尋ねる。
「……と、ところでツバサさん、あなたはどうするのですか?」
「出るに決まってるじゃないか。他の連中にレオード、そして彼の相棒を傷つけられるのはイヤだからね。もしもやっちゃったなら、そいつに不幸を与えるだけさ。 ふふ、ふふふふふ……」
殺意が篭った笑い声を聞き、自分の体にとても冷たい悪寒が走ったのをペラップは感じた。
ここに集った者達の多く(特に部隊を率いる幹部クラス)に見られる共通点は自分と自分の気に入ったモノ以外に対して、本当に容赦が無いというところ。一歩間違えたら、己自身だって殺される可能性が高い。
絶対に誰も敵に回したくないな、とペラップが考えていると不意にツバサが話しかけてきた。
「僕はもうちょっとのんびりしたいから、一人にさせてくれないかな?」
「へ?」
「ほら、僕だって人の子だよ? 何かを考えたいなーって思うことはあるよ。善は急げっていうけど、気持ちの整理はしないとね」
「あ、はい……」
要するにこのトゲチック、考え事をしたいから出て行けと言いたいらしい。
ペラップはその命令を理解すると、さっさと飛び去ってその場から離れていく。
それを見送ったツバサは右手を口に当てて、再びクスリ……またクスリと小さく笑い出す。
「ふふふ、ついにかぁ。ついに、ついに、世界にとって最大の不幸の日が来たかぁ……」
笑いをこらえ切れないツバサが思い出すのは、先ほど行われたジェノサイドクルセイダーズの首領であるボスの演説。
2011/09/06 Tue 00:19 [No.648]
あきはばら博士
『闘いだ! 戦争だッ! 殺し合いだッッ! それによる混乱ッ! 我々は長き刻を待ち続け、ついにこの瞬間を迎えたのだッッッ!!!』
そう、僕達の長く待ち望んでいた、殺戮の時が来たのだ。
行う意味や理由は異なるけれども、殺戮を望む部分は一致した僕等にとって待ち望み続けたその瞬間。
『戦ってッ! 戦って! 闘ってェエエエエッ! そして……殺せッ! 殺せッ! 殺せェエエエッ!』
その通りだ!
他の奴等がどんな理由で殺すかは知らない!
だが僕は、相手の苦しむ絶望とも言える不幸な姿を見たいからこそ殺す!!
だからこそ、殺して殺して殺してまくろうじゃないかッッッ!!!!
『この世は弱肉強食、一握りの強者だけが、弱者を支配し、頂点に立つべきなのだッ! そう、支配だッ! 負けた者の気持ち等察する事無く、弱者に対する欲望のままに行動するッ!』
そうだ、そうだ、そうだ!!
僕等は強者、僕等は支配者、僕等は欲望の主!!
だからこそ、弱者で欲を満たす!
弱者に不幸を届け、絶望へと突き落とす!!!!
『弱者が苦痛によがり、トドメを刺す時を想像したまえ、それは絶頂すら覚える最高の瞬間なのだッッッ!』
そう、それこそこの“不幸宅急便”が最も望む最高の瞬間!!
複数もの苦痛、複数もの悲劇、複数もの……不幸ッ!!!
それらを与え、悲鳴をあげ、トドメを刺される弱者の声こそ史上最高の快楽、いや、絶頂たるもの!!
『諸君、今一度問う、諸君等の求める物は何かァアアアアァアッ!?』
僕が望むのは……殺戮による不幸の叫びッッ!! そして史上最高の快楽だッッッ!!!!
ツバサは己の回想で演説するゼロに答える、否、己の欲望を言葉にして実在させる。
彼が望むのは殺戮、虐殺、弱者の悲鳴、……全てを含め「不幸」と呼べる悪夢を生み出し、その快楽を見る事。
彼が優先するのは人を絶望の不幸に陥れる事。その為ならば手段を選ばない。
漸く全てが不幸になる時が来た。そう、ジェノサイドクルセイダーズが望む“世界の混乱”という不幸の時が!
ツバサは興奮が冷めないまま、言葉を叫ぶ。
「僕が宅配してあげた不幸を受け取らなかった彼に、タップリと慰謝料を払ってもらわないとねぇ!」
脳裏に浮かび上がるのは、かつて一度だけ己が届けてやった不幸から逃げ出したニャース……レオードの姿。
彼が人間の相棒を連れているのは報告で知っている。だからこそ、彼は嫌でも巻き込まれる運命になるだろう。
そう、このジェノサイドクルセイダーズの企みに。
巻き込まれてしまった彼を、誰よりも深い深い絶望の不幸に叩き落してやろう。
猫旅堂のレオード、そして彼の連れている相棒――yunaを!!
ツバサはここにはいない二人に向かって、何よりも重く歪んだ思いを口にした。
「真っ先に絶望の不幸を与えてあげるよ……!」
ツバサは興奮と楽しみから来る笑みを深めながら、準備を行う為に部屋から出ていった。
2011/09/06 Tue 00:20 [No.649]
ジャグラー
原曲
「ローリンガール」より、替え歌「アサシンガール」です。
アサシンガールはいつまでも 届かない夢見て
騒ぐ頭の中を掻き回して,掻き回して。
「大丈夫です」と呟いて、言葉は失われた?
ああ失敗、ああ失敗。
任務を失敗させたら,また,負けるの!
もう一回.もう一回。
「私は今日も戦います。」と,
少女は言う,少女は言う
愛しの人を思いながら!
「もう良いかい?」
「もう少し,任務はまだ続くので。息を止めるの,今。」
アサシンガールの成れの果て 届かない,獲物たち。
止まらない血と咳を混ぜ合わせて,混ぜ合わせて。
「大丈夫です」と呟いた言葉は失われた。
どうなったて良いんだってさ,
命を捨ててもいいんだよと誘う,坂道。
もう一回,もう一回。
私をどうか戦わせてと。
少女は言う 少女は言う
腕に刃を重ねながら!
「もう良いかい?」
「もう少し,もうすぐ任務が終わるだろうと。息を止めるの,今。」
もう一回,もう一回。
「私は今日も戦います」と,
少女は言う 少女は言う
言葉に笑みを奏でながら!
「もう良いかい?もう良いよ。そろそろ君も疲れたろう,ね。」
息を止めるの,今。
2011/09/08 Thu 21:20 [No.661]
ルナサ・クリスティ
──あなたと友達になれて、嬉しかった
──みんな… 死ぬしかないじゃない! あなたも、私もッ!!
──バカな私を助けてあげて… くれないかな
──彼女だけでは荷が重すぎたんだ
──あれは誰にも倒せない。あれを解き放っては… いけない
──遅かれ早かれ結末は同じだよ
孤高の戦いに明け暮れ、数多の平行世界を横断する魔法少女、暁美ほむら。
どうすれば、たった一人の自分の友達を救う事ができるのか。その答えを探し出す為に何度も同じ時間を巻き戻し、そして繰り返してきた迷える少女は今、新たなる時間軸へとたどり着いた。
……それは、少女の知る世界ではなかった。
「何なの… これは…」
「あの異形の生物が来訪してから20年が経過した! 彼女らのおかげで我々の生活は大きく変わったのだ!」
その世界は、地球の危機に晒されていた。
「た、助けて!」
「マキナ…?」
「それが我々が今、倒すべき敵だ」
「MDC。 …それが、私の所属する組織」
その世界は、魔法が人間によって制御されていた。
「どうして… あなたがここにいるの」
「お前… なんか変だぞ?」
「…私も、マミさんみたいな魔法少女になれるのかな」
「大丈夫、あなたならきっとやる事ができるわ」
「…って、私はどうなのさ!?」
そして、魔女が存在していた。 …それも、ただの魔女ではない。
「これは… 一体…?」
「あなたという存在は実に興味深い…」
「私はもう、何も信じない… 奇跡なんて… あるわけない!」
「てめぇ… さやかに何をしやがった!?」
人工的に作られた魔女。その目的とは…
「自分を変えようなんて思っては駄目よ。でなければ… あなたの大切なものを、すべて失ってしまう」
「ほむらちゃん…?」
「みんな、真実を受け入れられないのね… こんなことをしている場合ではないというのに…」
人から、心の闇を払うことは不可能なのだろうか。
世界が負の力で満たされた時、数々の負の感情(ジャネン)が具現化し、襲いかかる。それは、邪念・破壊・破滅・終焉を求める者なのか。
「…あと、何度繰り返すの?」
「…だけど、それは私がさせない。あなたは、私の実験台になってもらうわ!」
魔法を制御する人間は、何を望むのか。
──魔法少女まどか☆マギカ 偽りの理想郷──
「…諦めない限り、終わりはないんだよ」
少女は、願う──
ツイッターで見かけたネタに様々な箇所からネタをパク… もとい、インスパイアを受けた代物。
…オワコン? 禁句です
2011/10/13 Thu 23:47 [No.701]
ルナサ・クリスティ
用語
・インキュベーター
20年前に襲来した宇宙人。様々な「魔女」と呼ばれる存在を従え、人類を襲った。
魔法を用い、一度は人類を窮地に追い詰めるが、人類はそれに対して徹底抗戦を仕掛ける。
その結果、人類の手によって討たれ、行方不明となる。しかし、その目的は一切の謎に包まれている。
・魔女
インキュベーターの生み出す破壊を求める存在。その形は様々である。
インキュベーターが行方不明となった後に残党が捉えられ、魔法という力を解析される事となる。
・M.D.C.
インキュベーター襲来事件後に制定された民間軍事組織。
魔女を解析して制御・利用可能となった魔法を用いる。主な任務は地球防衛だが、要人警護なども行う。
正規軍を凌ぐくらいの軍事力を誇る軍事組織だが、その存在に疑問を持つ者は数多い。
地球防衛を行うのは主に「魔法少女」と呼ばれる者たちの為、女性の地位が高い。
学生も数多く所属するが、平時はMDCへの所属を秘密にする守秘義務が課されている。
・魔法
文字通りの不思議な力。殺傷能力を持つ危険なものから火を起こすなどの日常生活で用いられる魔法など種類は多彩。インキュベーターの放つ魔女の残党を捕獲して解析し、人間の手によって制御することが可能となった。
魔法の使用はMDCの制定する規則によって厳しく取り締まられており、その規制を破る者は破った数日後に行方不明となるため、使用を規定するMDCに連れ去られてしまっているのではという黒い噂が絶えず飛び交っている。
・ソウルジェム
魔法少女に変身するために用いられる道具。
魔法を解析して生み出されているがその素材などは一切の謎に包まれている。
魔法を使いすぎるとその中に穢れが溜まるが、その穢れはグリーフシードと呼ばれる器に溜められ、電力などのエネルギー生成に用いられる。
・マキナ
数年前より地球に現れるようになった謎の金属生命体。
ソルジャー、スナイパー、ナイト、ビーストなどの小さなものやフォートレスやゴーレムなどの大型など様々な形が確認されている。
これらの存在に対して人類は正規軍とMDCを投入して対抗。だが現れる場所に規則性がなく、町のど真ん中に現れることも多いために主にMDCに所属する魔法少女によって討伐される。
2011/10/13 Thu 23:53 [No.702]
ルナサ・クリスティ
キャラ設定
・鹿目まどか
主人公。マキナに襲われていた所をマミに助けられ、彼女に憧れを持ってMDCに志願した新米隊員。
明るい性格でクラスのムードメーカー。勉強は並だが、魔力が何故かずば抜けて高い。その為に教官から一目置かれた存在なのだが当の本人は取り得がないと言っている。
両親を何者かによって殺され、魔法に対するトラウマを持っている。
武器は弓。マミによって射撃精度を鍛えられており、その腕はかなり高い。
・美樹さやか
まどかのクラスメイトのMDC隊員。まどかと同じくマキナに襲われていた所をマミに助けられ、MDCに志願した。
成績は優秀なほうなのだが魔法力が低く、教官からも最低の烙印を押されてしまう。
武器として剣を用い、あまり魔法に頼らない戦い方を得意としている。幼馴染の恭介のことを気にかけている。
・佐倉杏子
まどか達と同い年のMDC隊員。好戦的な性格で魔法少女としての適正能力はかなり高い。
義理の妹としてゆまを連れ、とても可愛がっている。
若干きつく当たる事もあるが明るい性格。大食い。
・巴マミ
まどか達より1つ年上のMDC隊員。まどか達にはよき先輩として接している。
MDCには幼少時から所属し、数多くの戦闘経験を積んでいるために戦闘能力、分析能力が高い。
自身の使用している武器なので銃の扱いに優れ、体術も会得している。
まどか達の憧れの的。だが内面はかなり脆弱である。
・暁美ほむら
その出生全てが謎に包まれている神秘的な少女。まどか達より遅れてMDCに所属する。
容姿端麗・成績優秀・スポーツ万能・クールな性格。魔法力もまどかの次に高くMDCに所属して間もないにもかかわらず魔法を完全に扱いこなす。
特にまどかを気にかけ、たびたび彼女に戦わないようにと言っているがその理由は不明。
拳銃、スナイパーライフル、手榴弾などを扱うがMDFの備品ではなく、何処から持ち出したものなのかは不明
・千歳ゆま
両親をマキナによって殺され、自身も殺されかけた所を杏子に救われた幼女。
彼女に救われ、また杏子もゆまを可愛がっている為、特に杏子に懐いている。
杏子の計らいにより、MDCに所属することとなる。ヒーリングの魔法を得意とする。
・ルナサ・クリスティ
MDC埼玉支部のすべての実権を握る女性司令官。まどか達の教官も勤める。
一児の母だがマキナの襲来により、娘を失う。まどかの親と面識があった。
2011/10/13 Thu 23:58 [No.703]
フリッカー
※この小説は、企画中のものです。内容は本編と若干異なる場合があります。
その出会いがきっかけで、俺――久家瑞貴(くげ みずき)の日常は崩れ去った。
「お、おい! 大丈夫か!?」
「そ、そなたは……?」
(魔法、少女……? 結構かわいいなあ……)
偶然保護した小柄な女の子は、魔法の世界からやってきた王女様――
「我が名は、スクルド8世。インペラリア王国の第一王女じゃ!」
「それってもしかして、『剣と魔法』の世界――?」
「この家、気に入ったぞ! これからこの家を領地として、『新生インペラリア王国』を建国する! そなたらは『国民第1号』じゃ!」
「えええ――!?」
そして俺の家は、なぜか『国』として独立してしまった――!?
「なぜじゃ……なぜこのお札は誰も買ってくれぬのじゃ……?」
「こんなおもちゃっぽい紙幣だったら、売れなくて当たり前だって……」
「優海(ゆうみ)は野菜を作っておるのか…何じゃ、我が国の『産業』にできるものがあったではないか!」
「お前――バカッ!!」
そんな中、我が家に忍び寄る、謎の敵の影……
「インペラリアめ、この異世界まで侵略する気か!!」
「兄さん! あれって『ゴーレム』じゃ……!」
「早く奴らを追い出さなければ、我が国が一瞬で侵略されてしまうぞ!」
「そんな大げさな! ただの『不法侵入』レベルじゃないか!」
俺はそんな敵と、魔法のアイテムでむりやり戦わされる羽目に――!?
「ジェネラートじゃ。これが、そなたらの言う『マホウ』のエネルギーをくれるのじゃ」
「……ジェラート?」
「ジェラートではない! ジェ『ネ』ラートじゃ!!」
「ミズキよ、新生インペラリア王国女王として命じる! 我が国の領地を犯す敵を、その力で排除するのじゃ!!」
「そんな事言われたって――っ!!」
どうなるの俺!? どうなるの俺の家!?
新小説:俺の家が1つの国になっちまった!
「我が聖拳(せいけん)の力さえあれば、恐れるものなど何ひとつない!」
「ならお前が戦えよーっ!」
現在企画進行中!
2011/10/20 Thu 00:45 [No.705]
兼
デスノートが使えない今僕はリュークと今後どうやってLを殺そうかと悩んでいた
と、その時父さんが『ヨツバ』に突っ込んでいった。
「父さん!!!! 駄目だ戻ってくるんだ!!!」
「ウィィィィリィィィィイ!!!!」
父さんが殴られて意識を失った、この『ヨツバ』を止めるのが先だろうと思い。僕もLを殺す前にこの事件を終わらそうと思う。
―ヨツバ事件終盤―
ヘリの中でリュークがこんな事を言ってきた。Lと決着を付けるのならジャンケンで決着を付けろ。と一体どうやってLにジャンケンで勝負しろというんだか
「俺はリューク、L、お前と合うのは初めてだな」
「月さんこの化け物は?」
「そうだ僕がこの化け物の力を借りて犯罪者を殺した僕が”キラ”だ!」
「という事だLと月には”デスジャンケン”で決着を付けて負けた方が死ぬと言うのでいいだろう」
このジャンケン全ての決着が付く時だ。と僕は心に言う。そしてその戦いの火蓋が幕を切って落とされた――
「「ジャンケンポン!!!!」」
最初はLがグーを出し僕もグー出した。この緊張感ノートに書くより張り詰めている。
「アイコかよしもう一度だ」
「「ジャンケンポン!!!!」」
何、僕が僕がLにジャンケンで負けただと認めん断じて認めんうわぁぁぁぁ
「月さん私の勝ちです。まさか貴方が”キラ”だった何て私は間違っていなかった」
「お前と居た数日間楽しかったぜーだがもうタイムリミットだ」
「嫌だ!!死にたくない!!死にたくないうわああああああ!!!!」
「刑事の皆さん!!! この事件を通してやりたい事ができました!!!」
「と、言うと」
「ジャンケンです。」
2011/11/06 Sun 08:30 [No.710]
フリッカー
※この小説は、新作のテスト用に書いたものです。
どこまでも広がる、青い空と白い雲。
体のほとんどがキャノピーに覆われるこのコックピットからの眺めは最高。まるで、私の体そのものが空に浮かんでいる感覚が気持ちいい。
もっとも、最初のころはコックピットから落ちそうな気がして、怖かったけど。
私の名前は、フリーダ・ベルツ。
ボルドニア空軍第1飛行隊に所属する、ファイターパイロットです。
ファイターパイロットのコードネームとも言える愛称、TAC(タック)ネームは『ストーン』。この呼び名は『かなめ石(キーストーン)』にちなんで付けられたもの。
どうして私が、かなめ石なのかと言うと――
『おーいヒート、生きてますかー?』
すぐ左隣を飛ぶリーダー機の声が無線で入る。
その戦闘機は複座型――つまり2人乗りで、タンデム式コックピットの前の席に座るパイロットが、後ろの席に振り向いて呼びかけている。
『くー、くー……』
後ろの席に座る、小柄すぎるパイロット――ヒートは、がっくりと顔をうつむけたまま動かない。酸素マスクとヘルメットのバイザーで顔が隠れて見えないけれど、聞こえてくる規則正しい息の音から、居眠りしている事がすぐにわかった。
『……はあ、やっぱり寝てたのか。道理で静かだと思ったよ』
「ヒートがおとなしくしてる時はいつも寝てる時か本読んでる時かのどっちかでしょ、アクア」
呆れてため息をつく前の席のパイロット――アクアに私はそう言ってやる。
さて、問題はこれからどうやってヒートを起こすか。
手を伸ばして肩を軽く叩く――なんて事はできない。そんな事したらアクアがわき見運転する事になるし、そもそも計器盤に阻まれて手が届かない。
となると、方法は間接的なものに限られてくるわけで――
『仕方ない。ちょっと荒っぽくなるけど――』
こほん、と軽く咳払いをしてから、大きく息を吸うアクア。
何をするか予想がついた私は、すぐにスピーカーのボリュームを下げた。
『ヒートッ!! こら起きろっ!!』
アクアの怒鳴り声は、それこそ耳元に大きく響いたに違いない。
『ひゃあっ!?』
それに驚いたヒートは、甲高い悲鳴を上げてがばっ、と顔を起こした。マスクとバイザーがなければ、さぞかし面白い顔が見られたに違いない。
『い、いきなり何するの!! びっくりしたじゃない!!』
子供のものとしか思えない高い声を上げながら、ヒートはバイザーを上げてアクアに反論する。かーっ、っていう擬態語が聞こえてきそうなほどに。
露になったその大きな瞳は、比喩ではなく、本当に子供のものだった。
『……っ、居眠りしてたから起こしただけだよ。リーダーさんが大事な時に居眠りしてたら大問題だぞ?』
『だからって、さっきみたいな起こし方はないじゃない!! 安眠妨害はんたーい!!』
『じゃあどうしろって言うんだ!! そもそも堂々と安眠なんて問題発言じゃないか!!』
『安眠に問題も何も関係ない!!』
あーあ、また始まった。2人の口喧嘩。
これが、リーダー機の日常的な光景だ。
前の席に座るのは、操縦担当のベンノ・ホフシュナイダー、TACネーム『アクア』。実力はまだ発展途上中のヒヨッコだけどがんばり屋さん。
後ろの席に座るのが、ナビゲート担当のエーファ・コリント、TACネーム『ヒート』。一応私達のリーダーという事になっているんだけれど、問題があるのは見ての通り。
この2人は、何かある度にこうやって口喧嘩してばっかりだ。陸でも空でも関係なく。
「やれやれ……」
このままだと果てしなく続くかもしれない口喧嘩を止めるべく、私は行動を開始した。
もちろん、別の機体のコックピットにいる以上、直接的に止めるなんて不可能だ。だから止める方法は自然と間接的なものになる。
左側のスロットルレバーを引いて、減速。私の機体はゆっくりとリーダー機から離れていく。
その間に、マスターアームスイッチを入れて、ヘルメットのバイザーを下ろす。
視界に重なって映る円の中に、リーダー機を入れる形で顔を向ける。
途端に、高いトーン音が鳴る。
同時に、リーダー機のコックピットでロックオン警報音が鳴り響く。
『あ!?』
『え!?』
それで、2人はようやく静かになった。この時だけ声を揃える辺り、2人は仲がいいのか悪いのかよくわからない。
「はいはい、2人共そこまで! そのままだと気が付いたら燃料切れになって何もせずに帰還するハメになって上官さんに燃料を無駄使いするなー、ってこっぴどく怒られる事になっちゃうでしょ!」
ロックオンを解除してバイザーを上げながら、私は言う。
2011/11/17 Thu 22:54 [No.723]
フリッカー
『あ、ああ……すまないストーン』
『そもそもあんな起こし方するからこんな事になるのよ、バカアクア!!』
『――って勝手に俺のせいにするな!!』
『その通りなんだから当たり前でしょ!!』
『ああそうかい!! そんな寝るのが好きならずっとそこで永眠してろ!!』
『あっ!! 今何気にひどい事言ったなーっ!!』
でも、ヒートの余計な一言で再びくすぶり始める戦火の炎。
それが広がってとんでもない事になる前に、私はバイザーを下ろしてまた2人をロックオンする。
再びコックピットに警報音が鳴り、2人が静かになる。
「……2人共、本気で落とされたい?」
ああ、できるものなら本当にミサイル撃って撃墜してやりたい。そうでもしないとこいつら絶対に懲りない。うん、そうするべきだ。こいつら一回、木端微塵になるべきだ。
そんな思いに駆られながら、操縦桿のミサイル発射ボタンに手をかけそうになる親指を、私は理性で抑え込んでいた。
そのまま、しばしの沈黙。
「私達は空に寝に来た訳でも、口喧嘩しに来た訳でもないでしょ。ヒートを起こしたのは、もう模擬戦始める時間になったからよ」
『……あ、そっか! ごめん!』
ようやく思い出したヒートは、すぐに私に謝った。
「わかったら始めるわよ。準備して」
『うん! さ、早く準備してバカアクア!』
『な、なんでそこでバカって言うんだよ?』
『いいからするのっ!!』
『……ラジャー』
場の空気を読んだのか、アクアはヒートの発言に反論する事なく模擬戦の準備を始めた。
私達の乗る戦闘機の名前は、F‐16ファイティング・ファルコン。長すぎるから私達は『バイパー』の愛称で呼んでいる。
細長い機首の下に口のように付けられた空気取り入れ口と、胴体と翼を繋ぐなめらかなボディラインが特徴。
小型軽量で値段もお手頃な事から、世界中で4300機以上が売れて、初登場から30年経った今でも売れ続けているベストセラー戦闘機だ。
一口にF‐16と言ってもいろいろある。常に第一線級の能力を維持するために何度も改良が繰り返されたからだ。
私達ボルドニア空軍が使うのは、『ブロック50アドバンスド』という最新バージョン。
新型のレーダーやヘッドマウントディスプレイといった装備が採用されて、その能力は最新鋭戦闘機にも全く後れを取らない。背中にはコンフォーマル燃料タンクという追加の燃料タンクも装備できるんだけど、これを装備したらせっかくのきれいなフォルムが台無しになるから、個人的にはあまり装備したくない。
特に様変わりしたのが、アクアとヒートの乗る複座型。
本来は教官を乗せて操縦訓練に使う複座型だけど、ブロック50アドバンスドでは背中から盛り上がった背骨(ドーサルスパイン)に追加の電子機器を詰め込んで、複座戦闘機としても使用可能にしている。
考える頭脳が2つ、作業する手が4本に増える訳だから、当然できる事が増える。特に空中戦では2人いた方が強いなんて話もある。
ある、んだけど――
『マスターアーム、オン。異常はないな?』
『当たり前でしょ! アクア、無様な負け方したら承知しないんだからね!』
『……そうならないよう努力します』
『何そのやる気なさそうな言葉! 普通に「はい」ってなんで答えないの!』
『あ、はい』
『「あ」が余計!』
そんなアクアとヒートのやり取りを聞いていると、こんなコンビで大丈夫かなって心配になってくる。
考えても仕方がないので、私もチェックをする。
マスターアームスイッチは、ちゃんとオンになっている。これは武器のセーフティだ。オフになっていたら、当然武器を撃つことはできない。
計器盤の多機能ディスプレイを使って、武器を確認。これも異常なし。
そして最後に、速度と高度を合わせる。
『エリアル1(ワン)、速度と高度確認(スピード・アンド・エンジェル)、左へ(オン・レフト)』
「エリアル2(ツー)、速度と高度確認(スピード・アンド・エンジェル)、右へ(オン・ライト)」
ヒートと最終確認を交わす。
そして。
2011/11/17 Thu 22:57 [No.724]
フリッカー
『3(スリー)、2(ツー)、1(ワン)、戦闘開始(ファイツ・オン)!!』
ヒートの合図で、私達は同時に散開した。
私は右へ、アクアとヒートは左へ。
ある程度距離を取ってから、反転して互いに向かい合うように操縦する。
正面に2人の機体が見えた。
まずい。高度が自分より上だ。高い位置にいるという事は、それだけ有利な位置にいるという事。ただ、こっちが探知しやすくなるというメリットはある。
2人の機体が、真上を通り過ぎた。これでいよいよ戦闘開始だ。
すぐさま左旋回。体がGでシートに押し付けられる感覚。
そんな状態の中で、私は2人の機影を探す。
いた。真上だ。
幸い、後ろにはいなかったけど、だからと言って油断はできない。
それを証明するかのように、ロックオン警報音が鳴り響く。
『エリアル1、ミサイル発射(フォックス・ツー)!!』
アクアの声が響く。
ヘッドマウントディスプレイとそれに対応するミサイルのおかげで、正面180度以内の視界に入っていれば、敵を見るだけでロックオンする事ができる。後ろにつかなければ撃てないなんて常識は、少なくともミサイルにはもう通用しない。
そんな事は私もわかってる。だからこそ、私は反射的に右旋回しながらフレアを発射した。
機体の下からばらまかれる赤い火の玉。このおかげで、模擬発射されたミサイルをかわす事ができた。
「ふん、アクアの早とちり」
私は得意げに言ってやった。
『何やってるのバカアクア!!』
『くそ、もう1回だ!』
向こうのコックピットではそんなやり取りが交わされていた。
振り向くと、2人の機体が完全に私の後ろについている。向こうの攻撃はまだ終わっていない。
向こうの動きは気になるけど、いつまでも後ろを向いて飛んでいたらわき見運転になって危ないから、私は前を向かざる得ない。こうやっててもちゃんと後ろを見てくれる人がいる複座型が、一瞬だけうらやましくなった。
でも慌てちゃいけない。フレアを連続で撒きながら、私は反撃のチャンスを待つ。
アクアはさっきフレアでかわされた事にびびっているのか、なかなか撃ってこない。
『何やってるの!! もっと近づいてガンを撃つの!!』
『言われなくてもわかってるって!! 黙ってないと舌噛むぞ!!』
そうしている間にも、2人は相変わらずのやり取り。
焦っているのは見え見えだけど、こっちにもそれを聞いて楽しむほど余裕はない。
フレアの弾数は当然限られている。切れてしまっても状況が変わらなかったら、私はもう撃たれるしかなくなる。
落ち着いて振り向き、2人の機体の動きを確認する。距離は、さっきよりも縮まっている。
私はわざと、機体を水平にした。
『動きが鈍った!!』
当然、その隙にアクアが食らいついてくる。
その一瞬の油断を信じて、私はスロットルを押し込んで、操縦桿を思い切り引いた。
私の機体は一気に急上昇。そして機首を青空の真ん中で輝く太陽に向けた。
『うっ……!?』
『いけない!!』
2人の声で確かな手応えを感じた。太陽に向けて飛んだ事でうまく2人の目をくらませた。
そのまま私は宙返り。真上に地上が見えてくる。さらに引き起こすと、私を見失って立ち往生状態になっている2人の機体が見えた。
その隙、逃さない!
「ミサイル発射(フォックス・ツー)!!」
そのままロックオンして、ミサイルを発射。
でも、2人の機体もすぐにフレアを撒いた。そして少し遅れてから右旋回。さすがヒート、気付くのが早い。
でも、私はすぐに2人の後ろについた。今度は私が追いかけ回す番だ。これでもう私のターンだ。
『どこ!? どこにいる!?』
『後ろ後ろ!! 早くかわして!!』
ヒートの言葉でようやく位置に気付いたのか、2人の機体が急旋回。それに、私もしっかりついていく。
その間に、私は機関砲に切り替える。
正面にあるヘッドアップディスプレイに映るのは、漏斗型の照準器ファンネル。風になびく旗のように伸びているファンネルの両端に合わせるように、私は狙いを定める。
『何やってるの!! 減速してバカアクア!!』
『こんな時に無茶言うな!!』
こんな時にもそんな事を……
それでも私は容赦なくトリガーを引いた。
バルカン砲の模擬発射。弾数は見る見るうちに減っていく。これが現実なら、2人の機体がハチの巣になっていくのが見えただろう。
2011/11/17 Thu 22:59 [No.725]
フリッカー
「機銃撃墜(トリガー・ダウン)! 私の勝ちよ!」
弾数が0になった瞬間、模擬撃墜を知らせる電子音が鳴って、勝敗は決まった。
敗北を知った2人の機体は水平飛行に戻った。私もそれに並ぶ形で水平飛行にする。
『ああくそ、また負けちまった……相変わらずストーンは強いな』
「それはもちろん、修練してるから。騎士の家系に恥じない華麗な人でいたいからね!」
アクアの言葉にそう答えて、私は左へ1回転してみせる。エルロン・ロールは我ながらきれいに決まった。
でも、その一方で。
『あったまきたあっ!! アイ・ハブ!!』
ヒートが、その怒りを爆発させながら、そんな事を言った。
アイ・ハブとは『アイ・ハブ・コントロール』の略で、『私が操縦します』という意味。
つまり――
『え!? ちょっと待てヒ――うわあっ!!』
途端、アクアとヒートの機体は急に左に回り始めた。
驚いた私は、とっさに2人の機体から離れた。
『ちょ、何するんだよヒート!?』
『無様な負け方したら承知しないって言ったでしょバカアクアッ!!』
『わ、わ、わかったからもうやめろ!! このままじゃ落ちる!!』
『あんたが謝るまでやめないんだから!!』
ぐるぐると何度も回り続ける2人の機体は、機首を下げ始めて高度を落とし始めている。
実は、ヒートは訳あって操縦を認められていない。でも頭のいいヒートはマニュアルを読んである程度の操縦法を理解したらしく、怒るとこうやって操縦を奪い取る事がある。
でも、知識として覚えても実際にやってみなければ身に付かないのが操縦というもの。だからヒートが操縦すると、こういう事になる。
『俺が、俺が悪かった!! 反省してるから!! だから、もうやめてくれっ!!』
それでも、こうなってしまった以上アクアには謝るしか選択肢がない。
すると、機体の回転が止まり、機首も引き起こされて水平に戻った。私もすぐに、その隣につく。
『本当に、反省してるのね?』
そうじゃなかったらまたやるよ、と言わんばかりの声で、ヒートは問う。
『……あ、ああ。ごめんな、ヒートの指示に答えられなくて……ヒートの指示に答えられるようにならなきゃ、パートナー失格だもんな』
『え……』
パートナー。
その言葉を聞いて、急にヒートが黙り込んだ。
明らかに普段とは違う反応。気になったけど、マスクのせいで素顔は見えない。
『……ヒート? どうした?』
『わ――わかればいいのよ、わかればっ!!』
ぷい、と何かを隠すようにそっぽを向くヒート。
その様子を、アクアは不思議そうに見つめていた。
『な――何見てるの!!』
『あ、いや! 別に変な意味はなくてだな……』
『こっち見てないでちゃんと前見て操縦しなさいよ!! じゃないとまた――』
『ま、待て待て待て待て!! ちゃんと操縦する!! アイ・ハブ!! アイ・ハブ!!』
でも、それは一瞬だけ。
気が付けば、会話はいつもの2人のものに戻っていた。少し違うような気もするけど。
やれやれ、このコンビはほんと、仲がいいんだか悪いんだか。
それはともかく、少しは並んで飛ぶこっちの『かなめ石』としての苦労も考えて欲しいな。
終
今回登場したF−16 ブロック50アドバンスドの写真
http://www.f-16.net/gallery_item90286.html(複座型)
http://www.f-16.net/gallery_item45124.html(単座型)
2011/11/17 Thu 23:00 [No.726]