フリッカー
※このエア小説は、皆さんの脳内でお楽しみください。
オレの名はミラノ。あちこちを旅しながら、生きるために盗みをやっている盗賊だ。
でも、全部の人から盗る訳じゃねえ。昔のオレと同じように苦しんでいたヤツから盗る趣味なんて持ってねえ。オレは人の生活を苦しめるようなヤツからモノを盗んで、生きてきた。
オレが今盗賊をやらないと生きていけねえのも、そんなヤツのせいだったから――
そんな中で、オレは彼女と出会った。
突如ファンタジニア王国に侵攻してきたという、新生ブロンキア帝国軍にアジトを焼かれた、あの満月の夜――
「きれいな嬢ちゃんだな……」
「お願いです! 帝国から王都パルティナを解放するために、協力してください!」
「じゃあ、お前の城をよこせ。オレ達の新しいアジトにしてやる」
帝国軍の侵攻によって崩壊したファンタジニア王国の王女、ユグドラ=ユリル=アルトワルツ。
王国が崩壊したという話は聞いていたが、どうして王女様がこんな辺境の地にやってきたのかはわからねえ。
だが、オレにとっては絶好の獲物だった。
無き国の王族なんて、大した事ねえはずだ。王都奪還に協力するふりをして、王都に着いたら城を奪い取ってやろうと。
そういう訳で、オレはユグドラの手を取った。
だが――
「あんなに美しかった王都は、帝国軍に全て蹂躙されてしまったの。そして、私の父上と母上までも――」
「な――!? お前の父さんと母さんは、死んだのか!?」
「ええ、帝国軍の手によって……焔帝ガルカーサの手で……! 私は許せない、帝国軍の事が――!」
「ユグドラ……」
オレは気付いちまった。ユグドラの心に潜む、深い悲しみに。
だからだろうか。ユグドラはどんな戦いでも、その手に持つ聖剣『グラン・センチュリオ』の力を純粋に信じていた。
そして普段の穏やかさとは裏腹に、戦い方にも激しさを感じさせた。
「寄らば、斬ります!!」
その言葉を、戦いの時口癖のように言っていたユグドラ。
その裏には、帝国軍によって全てを失い、奪われた事でできた深い傷跡があった。
オレと同じだ――
「力ずくで止めるしか、方法はないみてえだな……!」
「どうして……どうしてあなた達ウンディーネと戦わなければならないの――?」
「……方法は1つしかねえ。黒薔薇と白薔薇、どちらか一方を潰すんだ」
「そんな、でも――」
「下手に両方相手にしたら、向こうは手を組んで一斉に反撃してくるかもしれねえ。そうなったら、オレ達の戦力じゃ勝ち目はねえ。どうする、ユグドラ?」
王国解放を目指す戦いは、決して楽なものじゃなかった。
ファンタジニア王国解放軍のリーダーとして、ユグドラは何度も苦しい決断を迫られた。
気が付けば、オレはもう城を奪う事なんてどうでもよくなっていた。
「どうしてミラノは、そんな判断ができるの……?」
「世の中に平等なんてものはねえ。あるのは強いヤツしか生き残れねえ、弱肉強食の世界だけさ……」
全てを失った傷跡を胸に、戦い続けるあいつの事が放っておけねえ。
「焔帝ガルカーサ……父上と母上の仇……!!」
「よせ、ユグドラッ!!」
「やああああああああっ!!」
だから、オレは――
エア小説版ユグドラ・ユニオン
ファーストシーズン:解放編
「派手に何か盗ってきなっ!!」
「我が聖剣の下に革命をっ!!」
聖剣『グラン・センチュリオ』。
そして、魔法の力を秘めたカード。
生存と破滅の狭間で、その力は何を導くのか――
2011/08/15 Mon 00:05 [No.563]