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Re: 短編スレ三冊目

フィリット

<ジャグフィリが旅の途中でバシャージに会う話>

 +  +  +

炎タイプの彼はいつも熱くて。
格闘タイプでもある彼はいつもハキハキしてて。
彼が私達側に居る時間は短かったけれど、彼はいつもそんな感じだった事を覚えている。

そんな彼から、あの熱気と明るさが消えた時はとても驚いた。
信じられなかったし、信じたくも無かった。

あの時、私はそんな彼を置いて行くしかなかった。
私の心には、彼を残した事への後悔しか残らなかった。

残らなかった、筈なのに。

それなのに。

私は、彼の事を脳の隅に追いやってしまっていた。
私自身の幸せに浸っていて。
彼の事を、いつしか思わなくなった。
……たとえ大好きな人と幸せになったとしても……

忘れてはいけない事なのに。

 +  +  +

私とジャグラーさんが旅を始めて、数ヶ月経ったある日。

「フィリットさん、少し休憩しないか?」
「そうだね、ジャグラーさん。」

ふと、足を止めて近くにあった樹にもたれる様に私達は座り込む。
こうしてジャグラーさんとのんびり旅をするのはとても楽しい。

ふと、耳を澄ますとどこからか子供の笑い声が聞こえてきた。

「あれ、向こうでポケモンが遊んでる。」
「…本当だ。いいなぁこういうのって」

その声を、微笑みながら聞いていると。

「………あれ?」
「…どうしたの?」

ジャグラーさんがふと、そう言い出した。

「いや、なんか…別の声が聞こえる気が……」
「?」

少し耳を澄ましてみると。

――ほら、早く!
――キャハハ!遅いよー
――お兄ちゃん、置いてくよー!

――ハハッ、ほら待て待てー!

「……?!」

私はその微かな声に懐かしさを感じた。
どこかで、聞いた事のある声。

「……………まさか…」
「?」
ジャグラーさんは聞き取れなかったらしいけど、私は聞き取れた。
種族がエーフィとあり耳が大きかったからなのか、偶然なのかは分からないけれど。
しっかりと、聞き取った。

あの声は。
何度も聞いた事のある……

「ルイージ、さん……!?」

「何だって…!?ちょ、フィリットさん!」

私は自然と、その声の方向へ駆け出していた。

+  +  +

「ほらー!捕まえた!」

「うわ、捕まっちゃったー!!」
「もう一回やろ、鬼ごっこー!」

小さいポケモン達と一緒に遊ぶ、明らかに大きいポケモン。
その姿は炎タイプと格闘タイプを併せ持つポケモン、バシャーモ。
いうまでもなく、元人間のDr.ルイージだ。

「ほら、行く……!」

ルイージの目線の先には。
1匹のエーフィと、ルカリオ……

ルカリオは、自分の友で。
エーフィは、自分の行くべき道を照らしてくれた人で。

「ジャグラー…にフィリット、さん………?!」

「!…やっぱり、ルイージさんだ…!」
「ルイージ?!ルイージなのか…!」

久々の再会に、それぞれが言う。
そんな中で。

「ルイージさん…良かった………無事、だったんだ、ね……」
フィリットは、ボロボロと泣き出す。

「ちょ、フィリットさんどうしたんだ…!?」
「……ちょっと、話をしようか。」
ジャグラーは慌てるが、ルイージは冷静にさっき一緒に遊んでいたポケモン達を呼ぶ。

「お兄ちゃん、どうしてエーフィのお姉ちゃん泣いてるの?」
「……色々あったんだ。俺はちょっと話をしなきゃいけないから、皆で先に遊んでてくれ。」
「うん、分かったー。」
幼いポケモン達はしぶしぶ遊び始める。そんな中で3人は座って話し始めた。

2011/07/28 Thu 22:52 [No.529]