フィリット
<ジャグフィリが旅の途中でバシャージに会う話>
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炎タイプの彼はいつも熱くて。
格闘タイプでもある彼はいつもハキハキしてて。
彼が私達側に居る時間は短かったけれど、彼はいつもそんな感じだった事を覚えている。
そんな彼から、あの熱気と明るさが消えた時はとても驚いた。
信じられなかったし、信じたくも無かった。
あの時、私はそんな彼を置いて行くしかなかった。
私の心には、彼を残した事への後悔しか残らなかった。
残らなかった、筈なのに。
それなのに。
私は、彼の事を脳の隅に追いやってしまっていた。
私自身の幸せに浸っていて。
彼の事を、いつしか思わなくなった。
……たとえ大好きな人と幸せになったとしても……
忘れてはいけない事なのに。
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私とジャグラーさんが旅を始めて、数ヶ月経ったある日。
「フィリットさん、少し休憩しないか?」
「そうだね、ジャグラーさん。」
ふと、足を止めて近くにあった樹にもたれる様に私達は座り込む。
こうしてジャグラーさんとのんびり旅をするのはとても楽しい。
ふと、耳を澄ますとどこからか子供の笑い声が聞こえてきた。
「あれ、向こうでポケモンが遊んでる。」
「…本当だ。いいなぁこういうのって」
その声を、微笑みながら聞いていると。
「………あれ?」
「…どうしたの?」
ジャグラーさんがふと、そう言い出した。
「いや、なんか…別の声が聞こえる気が……」
「?」
少し耳を澄ましてみると。
――ほら、早く!
――キャハハ!遅いよー
――お兄ちゃん、置いてくよー!
――ハハッ、ほら待て待てー!
「……?!」
私はその微かな声に懐かしさを感じた。
どこかで、聞いた事のある声。
「……………まさか…」
「?」
ジャグラーさんは聞き取れなかったらしいけど、私は聞き取れた。
種族がエーフィとあり耳が大きかったからなのか、偶然なのかは分からないけれど。
しっかりと、聞き取った。
あの声は。
何度も聞いた事のある……
「ルイージ、さん……!?」
「何だって…!?ちょ、フィリットさん!」
私は自然と、その声の方向へ駆け出していた。
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「ほらー!捕まえた!」
「うわ、捕まっちゃったー!!」
「もう一回やろ、鬼ごっこー!」
小さいポケモン達と一緒に遊ぶ、明らかに大きいポケモン。
その姿は炎タイプと格闘タイプを併せ持つポケモン、バシャーモ。
いうまでもなく、元人間のDr.ルイージだ。
「ほら、行く……!」
ルイージの目線の先には。
1匹のエーフィと、ルカリオ……
ルカリオは、自分の友で。
エーフィは、自分の行くべき道を照らしてくれた人で。
「ジャグラー…にフィリット、さん………?!」
「!…やっぱり、ルイージさんだ…!」
「ルイージ?!ルイージなのか…!」
久々の再会に、それぞれが言う。
そんな中で。
「ルイージさん…良かった………無事、だったんだ、ね……」
フィリットは、ボロボロと泣き出す。
「ちょ、フィリットさんどうしたんだ…!?」
「……ちょっと、話をしようか。」
ジャグラーは慌てるが、ルイージは冷静にさっき一緒に遊んでいたポケモン達を呼ぶ。
「お兄ちゃん、どうしてエーフィのお姉ちゃん泣いてるの?」
「……色々あったんだ。俺はちょっと話をしなきゃいけないから、皆で先に遊んでてくれ。」
「うん、分かったー。」
幼いポケモン達はしぶしぶ遊び始める。そんな中で3人は座って話し始めた。
2011/07/28 Thu 22:52 [No.529]