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あきはばら博士
「(と、とにかく、早くこの場から離れないと……!)」
「痛い……」
「? ……様子が……」
様子がおかしい……?
「痛い……痛い、痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!! あ”あ”ぁははああぁひゃああ”はっっ!!!! お兄さんの事許さないよ、絶対に飲ませて貰うから!!!」
「(飲ませる? 何を? まさか…………血を?)」
クラウドの顔の血の気がひいた。
「…………狂ってる……!」
「あはははひゃぁあ”あ”あ”あ”はははっっ!!!」
先程よりも無茶苦茶なナイフの太刀筋は、クラウドの読みを狂わせる。
相手はまるでさきほどまでに受けた技の数々のダメージなど無いかのような元気の有り様だった、形勢逆転されたのかもしれない。
サイコのナイフは致命傷にならないまでも、体を少しずつ傷付け、赤い線を残して行く。
「うっ くっ……!」
クラウドはとにかく、相手の攻撃を受けないようにと[影分身]を作り出す。
相手の攻撃が空振りしたことを確認して、こちらの体勢を立て直す。バッと距離を取って、更に[影分身]を積み、相手を見据える。
その時、脇腹に何かが刺さった感触が走った。
「あっ……! そ、こ、かぁ〜〜……!」
相手に必ず当たる技……[シャドーパンチ] + ナイフinハンド
クラウドの体から赤い血液がドロドロと流れ出る。
「鮮血飲ませてね!!!!」
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「がはっ! はぁはぁ……」
メイルは地面に仰向けの状態で、肩で息をしていた。受けたダメージと疲労で、立ち上がる体力も使い果たしていた。
「さてと」
フィーレンは言う。
「では、メイルさん、失礼ながら。とどめを刺させてもらいますわ」
メイルには言い返す力も残っていない。
怒りで暴走状態になっていたところをフィーレンにあしらわれしまい自滅してしまったことが、メイルの敗因だった。
その証拠にフィーレンはほとんど息が上がってなく、完全に主導権はフィーレンの物になっていた。
「フィレ姉さ〜〜ん!!!」
遠くからやんちゃそうな男の子の声が聞こえくる。
眼をわずかに開けると、全身が紅く染まったゴーストがいた。
「あら、サイコ……そっちは終わったの?」
「うん!」
「(終わった? 何が?)」
「で、これは…… 僕が飲んでいいの?」
「ええ、結構よ、好きにしていいわよ」
「(飲む? って?)」
そう言い残して、フィーレンはそこから去る。
「(ああ…… 死ぬっていうことは……)」
「やったぁ! いただきま〜〜〜す!!」
メイルは最後の意識でこう思った。
――こんなに嫌なことなんだね。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
そこからちょっと歩いた場所に、一人のラルトスがいた。
「こんにちは、聖さん」
メイルとの戦いを終えたフィーレンはそのラルトス、聖に挨拶をした。
「……終わったのか?」
「ええ、終わりましたわ。 ……ただ、そんなこと報告するまでもないことだと思いますわね」
聖がいるこの場所は、先ほどのメイルとクラウドの戦いの両方が良く見えるところだった。実際に自分の目で確認しないと納得できないタチらしい。
「一応だ」
聖は短く返事をする。
「貴方の依頼では、あのラルトスさんがいるチームを分断させて、シャワーズさんとブラッキーさんを始末するという依頼でしたわね」
「ああ」
「ただ、その次のことには勝手ながら反対いたしますわ…… さすがに相手は女の子ですし、やりすぎと思います」
「そこは貴女方には頼んでいない、それは俺がやるから、貴女方には関係ない話だ」
そう言って、聖はフィーレンに何かを手渡す。
「いえ、重ねて言いますが報酬は結構ですわ。 サイコには良いストレス解消になっただろうし、私としても暇つぶしになりましたし、それだけで十分」
「いいから、貰って置け。 ここで受け取ってもらえないと俺の主義に反する」
聖のその眼を見て、フィーレンは「では」と言い、それを受け取る。
フィーレンとサイコが帰ったことを確認した後、眠らせてある輝を見つめる。
頼ろうとしていた者達が、眼が覚めたら凄惨な亡骸になっていたとすれば、彼女はどうなるのだろうか?
と、考えながら。
2011/09/02 Fri 23:59 [No.618]