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あんびしゃん(氷河期の賢者
――フリスビーである。
そうだ、フリスビーをすればいいじゃないか。ピザで。
「ちょっと待ちなされそこの巨人!」
振り返るとなんとなんと、そこにはシルクハットをかぶった紳士が空中でボディビルディングをしているではありませんか。一体私に何の文句があるというのでしょう。
「ピザじゃねえ。ピッツァだ……」
なんだ思ったよりワイルドじゃないか。
紳士は高速回転し、台風十二号とともに姿を消した。瞬間最高風速は25キロピッツァ毎時。台風もピンキリである。
そうかピッツァか。ならいいだろう。しかしトッピングがしたい。諸君よ、そうは思わんか?……そう、思わないのね。
「緊急地震速報です! 台風十三号が、西に北上しています!」
――どういうこった。
結局トッピングはしないわけだが、どうするか。というか私はフリスビーのやり方をしらない。一説によると、フリスビーの板はチャンピオンベルトに装着できないらしい。
「それー」
背後にはガキがいた。おもむろにものを投げている。
「何をやっている、少年よ」
「野球! そしてそのおなかに、どストライーク!」
腹に硬球がめり込まなかった。受け止めて縫い目をほどいた。いつの間に器用になった私の腹。
「いいかい、巨人! ものはこうやって投げるんだ!」
ガキはボールを投げた。――ジャイロボールだと……こいつ、できる。
私は少年の真似をしてフリスビーを放る。
――フリスビーは地面にめり込み、そのまま新世界を作った。少年は唖然とした。そして抵抗。いややめてくれ。
「なら! それ!」
少年はトマトを取り出した。――なぜ。
「これで、トッピングするんだ」
「ありがとう少年」
しかし、私のフリスビーはマグマに食べられている。
マグマとトマトって同じ系統の色だよね。
「フリスビーはだめか」
トマトを眺めつつ呟いてみる。素人でもできるようなこと――
さっきグーグルで調べてもまともな結果が出なかったから、ヤ●ーで検索してみることにする。ワードは『やせる・スポーツ』。
結果はマラソンがいいという結論だ。マラソンってなんだろう。もしかして短い距離を思いっきり走る競技だろうか。
確か知り合いに走ることが不得意だとかいう奴がいたので聞いてみることにする。
「大山西海畠山、どうやったら早く走れると思う?」
「うーん、とりあえず顔を左右に思いっきり振って走るといいんじゃないかな。あとは足と手を一緒に出す。そうするとカッコいいと思うよ」
私にとって大山西海畠山は親友なので、彼を信じて走ってみる。大山西海畠山にタイムを計ってもらい、五十メートルを走ってみることにする。私はマラソンをマスターすることができるのだろうか。
しかし走るのが面倒になったので、先ほどほらったトマトで醤油を作ってみた。駄目だった。
気を取り直していざ五十メートル。
顔は左右に、手足は一緒に出す! 風邪を感じる。風邪をひいたようだ。どうでもいいや。
「すごいぜ、十八秒だ!」
大山西海畠山は喜んでいた。ということは私は、マラソンマスターになったのだろうか。
予備知識がないというのはいいものだ。それを純粋な形で楽しめるのだから。
短い距離を全力でダッシュする競技、マラソン。私はそれを極めた。その事実だけが、今の私を鼓舞している。
私は家に帰り、ダンベルを持ち、ダンベルを置き、ピザを持ち、口の中に入れた。また、私はポテトを持ち、口の中に入れた。
今日の私は素晴らしい。大変満足している。今日マラソンをしたから、これでやせることができるはず。ピザが美味しい。トマトも美味しい。ふふふ、全ての歯車がかみ合った瞬間である――
一ヶ月後、私の腹は体の周りを一周していた。おかしい。一度マラソンをすればやせると聞いていたのだが。私は大山西海畠山を一生恨むことにした。
「台風情報です、台風十二号は北西に南下しています。近畿地方から長州藩に向かって移動していますので、現地のリポーターの方はご注意ください!」
2011/09/02 Fri 22:20 [No.617]