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Re: 『大集合! 愉快なヒコーキ野郎ども!』テスト用短編『前は大水、後ろは大火事』

フリッカー

『あ、ああ……すまないストーン』
『そもそもあんな起こし方するからこんな事になるのよ、バカアクア!!』
『――って勝手に俺のせいにするな!!』
『その通りなんだから当たり前でしょ!!』
『ああそうかい!! そんな寝るのが好きならずっとそこで永眠してろ!!』
『あっ!! 今何気にひどい事言ったなーっ!!』
 でも、ヒートの余計な一言で再びくすぶり始める戦火の炎。
 それが広がってとんでもない事になる前に、私はバイザーを下ろしてまた2人をロックオンする。
 再びコックピットに警報音が鳴り、2人が静かになる。
「……2人共、本気で落とされたい?」
 ああ、できるものなら本当にミサイル撃って撃墜してやりたい。そうでもしないとこいつら絶対に懲りない。うん、そうするべきだ。こいつら一回、木端微塵になるべきだ。
 そんな思いに駆られながら、操縦桿のミサイル発射ボタンに手をかけそうになる親指を、私は理性で抑え込んでいた。
 そのまま、しばしの沈黙。
「私達は空に寝に来た訳でも、口喧嘩しに来た訳でもないでしょ。ヒートを起こしたのは、もう模擬戦始める時間になったからよ」
『……あ、そっか! ごめん!』
 ようやく思い出したヒートは、すぐに私に謝った。
「わかったら始めるわよ。準備して」
『うん! さ、早く準備してバカアクア!』
『な、なんでそこでバカって言うんだよ?』
『いいからするのっ!!』
『……ラジャー』
 場の空気を読んだのか、アクアはヒートの発言に反論する事なく模擬戦の準備を始めた。

 私達の乗る戦闘機の名前は、F‐16ファイティング・ファルコン。長すぎるから私達は『バイパー』の愛称で呼んでいる。
 細長い機首の下に口のように付けられた空気取り入れ口と、胴体と翼を繋ぐなめらかなボディラインが特徴。
 小型軽量で値段もお手頃な事から、世界中で4300機以上が売れて、初登場から30年経った今でも売れ続けているベストセラー戦闘機だ。
 一口にF‐16と言ってもいろいろある。常に第一線級の能力を維持するために何度も改良が繰り返されたからだ。
 私達ボルドニア空軍が使うのは、『ブロック50アドバンスド』という最新バージョン。
 新型のレーダーやヘッドマウントディスプレイといった装備が採用されて、その能力は最新鋭戦闘機にも全く後れを取らない。背中にはコンフォーマル燃料タンクという追加の燃料タンクも装備できるんだけど、これを装備したらせっかくのきれいなフォルムが台無しになるから、個人的にはあまり装備したくない。
 特に様変わりしたのが、アクアとヒートの乗る複座型。
 本来は教官を乗せて操縦訓練に使う複座型だけど、ブロック50アドバンスドでは背中から盛り上がった背骨(ドーサルスパイン)に追加の電子機器を詰め込んで、複座戦闘機としても使用可能にしている。
 考える頭脳が2つ、作業する手が4本に増える訳だから、当然できる事が増える。特に空中戦では2人いた方が強いなんて話もある。
 ある、んだけど――

『マスターアーム、オン。異常はないな?』
『当たり前でしょ! アクア、無様な負け方したら承知しないんだからね!』
『……そうならないよう努力します』
『何そのやる気なさそうな言葉! 普通に「はい」ってなんで答えないの!』
『あ、はい』
『「あ」が余計!』
 そんなアクアとヒートのやり取りを聞いていると、こんなコンビで大丈夫かなって心配になってくる。
 考えても仕方がないので、私もチェックをする。
 マスターアームスイッチは、ちゃんとオンになっている。これは武器のセーフティだ。オフになっていたら、当然武器を撃つことはできない。
 計器盤の多機能ディスプレイを使って、武器を確認。これも異常なし。
 そして最後に、速度と高度を合わせる。
『エリアル1(ワン)、速度と高度確認(スピード・アンド・エンジェル)、左へ(オン・レフト)』
「エリアル2(ツー)、速度と高度確認(スピード・アンド・エンジェル)、右へ(オン・ライト)」
 ヒートと最終確認を交わす。
 そして。

2011/11/17 Thu 22:57 [No.724]