フィリット
「本当に久し振りだな…ルイージ。」
「…そうだな。ジャグラー、お前とこうして話せるのも……戦争が終わってくれたおかげなんだろう。」
「………だな。」
ふとルイージがフィリットをチラッと見ると、フィリットはまだ少し赤目だった。
「…変わっちゃいないな、フィリットさん。“あの時”もこうして泣いてた。」
「………ぐすっ……そんなに、簡単に変われないよ…」
「まぁ、確かに。」
ルイージが言った「“あの時”」という言葉の意は、フィリットもジャグラーも理解できた。
ルイージがDMかDCに行くか、リディアに選択を強いられたあの時だ。
「…それに、ルイージさんの事で泣いたの……もう1回あるし……ぐす…。」
「…?」
「ルイージさん…リディアと戦ってたんでしょ…?」
「………………………知ってた、のか。」
「うん……。」
「え、どういう事だ!?」
突然の話の流れにジャグラーは混乱する。
「俺は…あれから心変わりしてさ。DCの戦力を少しでも削ろう、って思ってリディアと戦った。」
「な…お前……」
「!……そう、なの?」
「あぁ。見事に、完敗だったけどな。」
ルイージは苦笑いをする。
「俺は結局自分を見失った。いつの間にか、自分が何をしたいのか分からなくなってきて…」
「そっか、それで……そんな時に私達はルイージさんと出会ったんだよ……ルイージさんには、何を話しても通じなかったし……」
「……そうだったのか。」
「うん。その時は、ある作戦の為に仕方無く置いて行っちゃったから……心配したよ…」
「……ありがとう、心配してくれて……」
フィリットとルイージの会話が続く中で、
(「……なんか俺が寝てる間に色々起こってたんだなぁ……」)
と、ジャグラーはそう思いつつ話をボーッと聞いていた。
そしてふと、思い付いた疑問を口に出してみた。
「でさ、ルイージは今何をしてるんだ?」
「え?」
「いやー、何でこんな小さなポケモン達と遊んでるのかなってさ。」
「……あぁ。このポケモン達さ、親をDCに殺されてるんだ。」
「…………それで、代わりに育てるつもりなの?」
「そのつもりだ。」
しばらく、3匹は遊ぶ幼いポケモン達を眺めていた。
「別に、罪滅ぼしとかそういうのじゃなくて、純粋にこの子達に未来を託したいと思うんだ。」
「……大丈夫だよ、ルイージさんなら。頑張ってね。」
「良い子に育てろよ。」
「…あぁ、ありがとう。」
ふぅ、と一息付いて、ルイージは逆に質問する。
「でさ、フィリットさんとジャグラーは何してるんだ?見る所2人で旅してるみたいだけど?」
「え」
「あっ」
一瞬、3人の間に微妙な空気が流れ始める。
「………え、俺何か不味い事言った……?」
「ううん、いや、そういうのじゃないんだけど……///」
「その……なんというか、うん///」
フィリットとジャグラーが顔を真っ赤にする様子を見てルイージは「まさか」と呟く。
「……まさか、2人付き合ってる?」
「(コクリ)」
「(コクリ)」
「マジかよーー!?」
ルイージが叫んだ声が大きかった為に、遊んでいたポケモン達が不思議そうにぞろぞろ集まってきた。
「お兄ちゃんどうしたの?」
「何かあったの?」
「いやなー、このルカリオの兄さんとエーフィのお姉さんが付き合ってるんだってさ」
「狽ソょっ、ルイージ!///」
「ひゅーひゅー」
「よっ、このいろおとこー!」
「ッ……うがぁー!待てぇー!!」
「キャー怒ったー!」
「逃げろー!」
ポケモン達がどこで覚えたのか分からない言葉をあげる。
ジャグラーは恥ずかしさを紛らわす為にポケモン達を追いかけ始めた。
フィリットは沸騰しそうなくらい赤い顔でその様子を見守る。
「…まぁ、あんな奴だけど宜しくな。」
「え…うん……」
会話が途切れ、2人は小さいポケモン達がジャグラーと遊ぶ微笑ましい光景を笑顔で眺めるのだった。
ズゴッ
「いってぇ!」
「あ、ジャグラーさんコケたよ。」
「ブッ、ハハッ!本当だ!」
「笑うなぁーー!!」
END
2011/07/28 Thu 23:04 [No.530]