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Re: 『大集合! 愉快なヒコーキ野郎ども!』テスト用短編『前は大水、後ろは大火事』

フリッカー

「機銃撃墜(トリガー・ダウン)! 私の勝ちよ!」
 弾数が0になった瞬間、模擬撃墜を知らせる電子音が鳴って、勝敗は決まった。
 敗北を知った2人の機体は水平飛行に戻った。私もそれに並ぶ形で水平飛行にする。
『ああくそ、また負けちまった……相変わらずストーンは強いな』
「それはもちろん、修練してるから。騎士の家系に恥じない華麗な人でいたいからね!」
 アクアの言葉にそう答えて、私は左へ1回転してみせる。エルロン・ロールは我ながらきれいに決まった。
 でも、その一方で。
『あったまきたあっ!! アイ・ハブ!!』
 ヒートが、その怒りを爆発させながら、そんな事を言った。
 アイ・ハブとは『アイ・ハブ・コントロール』の略で、『私が操縦します』という意味。
 つまり――
『え!? ちょっと待てヒ――うわあっ!!』
 途端、アクアとヒートの機体は急に左に回り始めた。
 驚いた私は、とっさに2人の機体から離れた。
『ちょ、何するんだよヒート!?』
『無様な負け方したら承知しないって言ったでしょバカアクアッ!!』
『わ、わ、わかったからもうやめろ!! このままじゃ落ちる!!』
『あんたが謝るまでやめないんだから!!』
 ぐるぐると何度も回り続ける2人の機体は、機首を下げ始めて高度を落とし始めている。
 実は、ヒートは訳あって操縦を認められていない。でも頭のいいヒートはマニュアルを読んである程度の操縦法を理解したらしく、怒るとこうやって操縦を奪い取る事がある。
 でも、知識として覚えても実際にやってみなければ身に付かないのが操縦というもの。だからヒートが操縦すると、こういう事になる。
『俺が、俺が悪かった!! 反省してるから!! だから、もうやめてくれっ!!』
 それでも、こうなってしまった以上アクアには謝るしか選択肢がない。
 すると、機体の回転が止まり、機首も引き起こされて水平に戻った。私もすぐに、その隣につく。
『本当に、反省してるのね?』
 そうじゃなかったらまたやるよ、と言わんばかりの声で、ヒートは問う。
『……あ、ああ。ごめんな、ヒートの指示に答えられなくて……ヒートの指示に答えられるようにならなきゃ、パートナー失格だもんな』
『え……』
 パートナー。
 その言葉を聞いて、急にヒートが黙り込んだ。
 明らかに普段とは違う反応。気になったけど、マスクのせいで素顔は見えない。
『……ヒート? どうした?』
『わ――わかればいいのよ、わかればっ!!』
 ぷい、と何かを隠すようにそっぽを向くヒート。
 その様子を、アクアは不思議そうに見つめていた。
『な――何見てるの!!』
『あ、いや! 別に変な意味はなくてだな……』
『こっち見てないでちゃんと前見て操縦しなさいよ!! じゃないとまた――』
『ま、待て待て待て待て!! ちゃんと操縦する!! アイ・ハブ!! アイ・ハブ!!』
 でも、それは一瞬だけ。
 気が付けば、会話はいつもの2人のものに戻っていた。少し違うような気もするけど。

 やれやれ、このコンビはほんと、仲がいいんだか悪いんだか。
 それはともかく、少しは並んで飛ぶこっちの『かなめ石』としての苦労も考えて欲しいな。



今回登場したF−16 ブロック50アドバンスドの写真
http://www.f-16.net/gallery_item90286.html(複座型)
http://www.f-16.net/gallery_item45124.html(単座型)

2011/11/17 Thu 23:00 [No.726]