Net4u レンタル掲示板を作る
ゆな
「ほんの小さな好奇心と恋心、それが全ての始まりだったのです」
たった一人の無垢な少女は何も悪くなかった。ただ彼女は、ひたすらに運が無かったのだ。
「人魚の国ぃ? 何だそりゃ」
「ほれ、東の異人達が暮らす日ノ国は通称そう呼ばれてるんだよ。何でも人魚の肉食って不老不死になったババァが象徴なんだとよ」
「おいおい、どんな御伽噺だそりゃ! それに人魚なんて易々食えるかってーの!」
「確かになぁ。あんなべっぴんさんを食おうって発想の方がやべぇよ」
「ちょっとちょっとー! 人魚話は良いけどさー、そろそろ船動かす用意した方がいいわよー!!」
「は? いきなりどうしたんだい、赤いお嬢ちゃん」
「モンスター警報ー! クラーケンがこっちに来てるのよー!!」
「「はぁ!?」」
物語の舞台は東にある島国こと日ノ国、通称<人魚の国>と呼ばれる場所。そこに降り立つ様々な思惑を持った者たち。
「雷属性の武器を買ったかいがあるってもんよ! おかげで海産物モンスター全滅ウハウハね〜」
「でもハルカは炎属性、水には注意してください。ハルカに何かあったら、私……」
「心配しすぎよ、セイナ。あたしは最強って言われるぐらいの実力をもってるし、魔法の強いあんたもいる。だから絶対大丈夫!」
「は、はい。でもこの地には……おかしな魔力が充満してて……」
「おっ。ってことは水系モンスターの大物がいるってわけぇ?」
突然急増したモンスターを狩りに来た冒険者。
「さすがは英雄だな。お前の名前、こんなところでも売れている」
「女王陛下が宣伝やりまくったからじゃないかな? あたしはそんなに凄い存在じゃないのに」
「だが帝国騎士団代表として、急増したモンスター討伐の助っ人として来たんだ。そこは胸を張れ」
「ありがと、セツナ。でもそれより気になる事柄がいくつかあるんだけど……いい?」
「言ってみてくれ。ネイリの勘は良く当たるからな」
異常事態解決の為、派遣された帝国の戦士。
「おいおいおい、あのガセネタマジっちゅーわけか!?」
「そういう事だ。俺としては国がどう傾こうが知ったこっちゃないが、こいつはきついな……」
「帝国軍の代表がおるから、その情報高く売れるかもしれへんけど……下手にやったらわい等が死ぬで、レオード」
「分かっている。だが成功すれば大儲けできるのも事実だろ、マヨ」
「……この金の亡者が……」
己の欲望の為、国を揺らがす情報を得る商人。
多種多様の思惑が絡み合う中、人魚の国の姫君と出会う事になる。
「いっだああああ!? 何よ、あの鳥モンスター!! このあたしをお寺なんかに叩き落とすなんて、根性腐ってるわ!!」
「あ、あの……」
「何!?」
「貴方様が、わたくしの婿様でございましょうか……?」
「……はい?」
国の未来を背負う運命を抱く姫・スズネ。
ふとした事での“彼”と“彼女”の出会いが、人魚を巡る大きな物語へと転移していく。
「ツッコミ、入れてもえぇか?」
「散々あたしがつっこんだ後だけど、気が済むならどうぞ」
「……なんで、なんで絶世の美姫が……男やねええええええええええええん!?」
「背の高さと声の低さ無かったらアレ騙されるわよねー……。少なくとも外見だけじゃ騙されるわよ」
「やばい、ツッコミ追いつかん! どっからつっこめばえぇか分からん!!」
「とりあえず落ち着いたらどうなの、亡霊もどき」
「スズネさん、城下を見るのは初めてなんですか?」
「はい。わたくし、ずっと社の中で育ってきましたから見るもの全てが新鮮なのです」
「そうなのですか。だったら楽しみましょう、私もこの国に来たの初めてなんです」
「ふふ、それじゃ始めて同士一緒に見てまわりましょう」
「……傍から見てると姉妹の会話だな。片方、男の筈なのに」
「姫をぉぉ!! はよぉ姫を取り戻せぇぇぇ!! あれはわしの、わしの大切な神子よぉ!! あれがなければ、わしはわしはあああ!! げふごほがふっ!!」
「国主様、落ち着いてください! だ、誰かー!!」
「……ひっでぇ取り乱し……。よっぽどお姫様が大切なのか?」
「それだけ、ならいいんだけどね」
「……何?」
この時、彼女達は知らなかった。スズネ姫本人も含めて。
日ノ国にとって、人魚がどういうものなのか。そしてスズネ姫の真の立場を。
「人魚の肉が不老長寿であったり、不老不死であったりするという噂があるのは知ってる?」
「……知っている。そして嘘と真が混ざってしまったが故に曖昧になってしまった事もな」
「何処が嘘で何処が真?」
「お前はどう判断している、ネイリ・グレンベルグ」
「遠回しな答え方をするなら……スズネ姫という存在そのものが答えであり、望み。そして妄想の果て。どうかな、行商人さん?」
「なるほど。どうやら俺とお前は、同じ答えにたどり着いているようだ」
「何故婿様が殺されなければならないのですか!? 婿様の身に何かあったら、わたくし……」
「代々の姫様はこんな事なかったって言ってたわよね。大体が許婚と結婚してるか、あたしみたいな例外とこの国で結ばれているかのどっちかだって」
「は、はい! その通りです!!」
「……多分あたし達、向こう側の結婚条件に当てはまっちゃいけない最悪の事をやらかしてるかもしれないわね。こりゃ、とんでもない陰謀に巻き込まれたかも?」
「こちらとしても小娘を傷つける趣味は無い。だから引き下がれ」
「……嫌です。ここで逃げたら、あなたはハルカとスズネさんを捕まえにいきます。だから引き下がりません」
「全く子供はこういう時馬鹿に頑固だから困る。……出来る限り手加減はしてやるから、程々のところで逃げてくれよ」
「ここで逃げたら、女が廃ります。堕天使さん、あなたが逃げてください」
「……俺が相手でよかったな、お前。これが“ヒーロー”だったら、問答無用のフルボッコタイムになってるぞ」
日ノ国の王家と人魚の肉。切っても切れない絡んだ縁に結ばれたこの二つを巡り、異国の者達は大きく振り回される。
だがその上で、彼等は様々な理由で真実を見つける為に走りゆく。
そして
「貴様が鈴音姫様を浚った南蛮人だな」
「あんた……人間、いや、魔物……!?」
ハルカの前に立ち塞がるのは、化け猫のくノ一でありスズネ姫の護衛であるゼン。
「中々やるじゃないの、猫女。少なくともこのあたし相手に互角にやりあえたの、あんたぐらいよ」
「……ただの怪力馬鹿だと思っていたが、それは訂正するとしよう。貴様、名は?」
「世界最強クラスの美少女剣士、ハルカ・ファルカス様よ! 猫女、あんたは!?」
「本来ならば言ってはならんが……今回だけは特別だ。我が名は日ノ国の姫鈴音様に仕えるくノ一、漸。これより貴様を倒す者の名前だ、脳裏に刻み付けろ!」
「上等! あんたの真っ黒な体、灰まみれにしてあげるわっ!!」
東の異国にて、人魚を巡る物語が奏でられる。
その最中、炎の女剣士は運命にも似た好敵手を手に入れる事になる――。
嘘予告:タイトル未定! うん、自重せずに遊びました!
■
オマケ
「片や炎の巨大剣と無駄な体力、片や無限に出てくる手裏剣にクナイ……。全く正反対だな」
「でもアレって、帝国の天使さんも出来ませんでした?」
「帝国の烏がやってたのは魔力での擬似武器に過ぎない。だがあいつのは武器そのものを生み出し、実体化させた上で自由自在に操っているんだ」
「つまり烏のはリリカルマジカル的感じ、猫のはハガレン的感じ。これで分かる?」
「あ、はい。なんとなくつかめました」
「……あの、行商人様。婿様と漸の戦いを止めないのですか……?」
「人知を超えた女同士の戦いに首突っ込んで死んでたまるか」
「アレに首突っ込めるとしたら、帝国のヒーローだけやろ。わい等じゃまず死ぬ」
「妨害したら後が怖いのでやめておきます」
「セイナちゃんまで!?」
首を突っ込む勇気のある者はあんまりいないようだ。
2011/03/21 Mon 01:04 [No.196]