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あきはばら博士
…………
「…………」
………………
「……にちは……」
……だれかが、何かを言っている。
「……こんにちは」
だれ、なんだな?
「こんにちは、これであなたに話すのは何回目でしょうか?」
え?
「申し遅れました、僕はあなたをこの世界に連れてきたセレビイです」
セレビイ?
「あなたに伝えたいことは山ほどありますが、まず先程の闘い、お疲れ様です」
あ、……、なんだな……。
「何故あなた達をこの世界に連れてきたか? その理由は、この世界がどのようなものであるか? から話す必要がありますが、多分あなたは大体勘付いているはずです。だからこの場ではそれは割愛いたします、詳しくは女史から話を聞いて下さい」
はい、なんだな。
「なので、ここではドラゴン四天王のリディアでは無い、あの彼について話すことにしましょう」
リディアさん……。
「一言で言えばあの時彼女はバトルで弱った隙に意識と体を乗っ取られて操られていた、ゴーストタイプも存在するポケモンの世界のことだから、その詳細は分からないですが方法はいくらでも思いつく」
確かに、そうだなあ。
「じゃあ誰が彼女にあのようなことを言わせたのか? それは申し訳ないですが、ボクにも分からない。ですが、あの堕天才の知り合いじゃないかと感じています。彼は問題提起をしたかったのだろうと、僕は考えてます」
問題提起?
「DCはポケモン世界を守るために人間世界を襲うと言う、DMはそれはやってはいけないと言う、ボク達はポケモン世界と人間世界は分かり合えると言う。そこにちょっと待って欲しいと言いたかった」
え?
「そもそもポケモン世界なんていらないだろう、なぜポケモン世界をそこまでして残そうと思うのか、こんな存在意義の揺らいだ世界は滅んでしまうべきじゃないのか? と言う考えがあることを伝えたかったのだと思います」
僕はそんなの嫌なんだな。
「なぜ?」
ポケモンが好きだから、無くなって欲しくない。
「……ありがとうございます、うれしい。 ところでタンバ島の謎の石碑がありましたね、あれもリディアではない彼の仕業のようです、何も意味を持たない石碑を用意することで無意味を表現したのでしょうね」
そうなんだ。
「そういういろいろな考え方を知った上で、自分の信じた道をひたすらに突き進む、あなたは夢は自分で創り出すものだって大切なことを分かっていますね」
……うん。
「今の僕には応援することしかできないですれど、あなたならばあのガウリイルに勝てる気がします」
そうかなぁ……?
「次は、実際に会ってお話しましょう、それでは」
…………
……
 気が付いたらベットにいたという話は大きな交通事故に遭って気を失った時なんかによくある話というがのだが、こうして異世界に来てからも体験するとは思わなかった。
「あ、あれ――……」
 ぐるぐると世界が回る、悪い寝起きのときのようにひどい気分で、頭の中に変な光景が終始浮かんでは消えて行き、混乱している。
「ああ ……ええと」
 マルクはベットに寝そべりながら、あやふやな記憶を手繰り寄せて、さきほど自分に起きた出来事を整理してみる。
「……確か、リアーズとリディアとの戦闘をして、辛勝して…… それから、すぐに。 気を失ってしまったんだなぁ」
 未だに気分は優れないのだが、声に出したからか少しだけ落ち着いた。すると、ここは一体どこなのだろうか? とマルクは考える。
 片付けられているもののそれまで誰かがそこで寝泊りをして暮らしていた生活臭のする質素な作りの部屋、そんな部屋のベットにこうして寝かせられたのだろう。部屋の造りからまだDC本部内であることはなんとなく予想が付く。
 横を見ると有留がすやすやと寝ていた、先程の死闘なんてまるで無かったかのように幸せそうな寝息を立てている。レイルとミナヅキとMakotoは、いなかった。僕達はDCに捕まってしまったのだろうか? いや、それならばこんな状況になるはずも無い。となれば、考えられる可能性はただ一つ。
 十分な休養が取れたのか体の痛みはそこまででもなく、マルクは上体を起こす。有留を起こさないようにそおっとベットから下りて、まずはこの部屋から出ることにした、カギが掛かっていなかったようだ、ドアノブを回し扉を開ける。
「……あ、おはようございます。マルクさん」
 ドアの開く音に反応して振り向いたライチュウは、それまでの緊張から拍子抜けするような、まるで久しぶりに気の合う知り合いを見つけた時のように、軽い調子で挨拶をした。自分が知っているライチュウは2人いるが見間違えることは無い、室内だというのに礼儀知らずにコートを羽織っている――
「……秋葉さん」
 マルクは、彼女の名を呼ぶ。人間世界から来た同じ立場でありながら、DCに賛同していた、有留の従姉妹である朱鷺と共に、自分達と敵対していた、あきはばら博士。
 僕は、彼女に聞きたいことがあった。
「何故、僕達を助けたのですか?」
「不正解です」
 秋葉は言う。
「今この場所で、その質問は相応しくないです」
 相応しくない、そういう問題なのだろうか?
 こう疑問を持つことに、正しさとか間違いとかあるのだろうか?とマルクは不可思議に思いつつ、素直に質問を代えてみる。
「何故、ラプラスさんに電話をしたのですか?」
「正解」
 秋葉は嬉しそうに笑った。
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2011/03/03 Thu 23:46 [No.153]