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椎名
衝撃が空気を鳴らす。ついで、ガラガラと岩が崩れる音。断続的に続くそれらは、じわじわと、しかし確実に、『獣』が迫ってくることを意味していた。
ガラガラと崩れる音が聴こえるたびに、岩陰に身を潜めているアルシェはびくりと身を揺らす。
そのたびに本能が、アルシェの身――あるいは命が危険だと警鐘を鳴らす。しかしここはヒトの手が入っていない洞窟の中、いわば天然の迷宮だ。正直、自ら傷を追っているこの状況では、下手に動くことができない。
思考を巡らせていると、また岩が崩れる音。改めて現実を突き付けられた気がして、小さく舌打ちする。あれは、私程度の実力でかなう相手ではなかったのだ。
つい数日までの自分が馬鹿みたいだ。周りよりも実戦の成績が良くて、トップを取ってきたのに、いざホンモノの戦いになってみればどうだ。このざまだ。ポカブもおだてりゃ木に登る、とはまさにこのことか。
一人で勝手に舞い上がっていたのだと思うと、それまで培ってきた自信とやらが非常に馬鹿馬鹿しく思えてくる。
どうせこのままでいても、ろくな処置もできない――だったら、最後くらい派手に散ってやろうか。あの化け物に一矢報いるか、せめて後世延々と残る傷でもつけばいい。
半ば自暴自棄になって立ちあがり、『獣』が通るであろう岩道に立ちふさがる。そのまま目を閉じて、一つ深呼吸。
ゆっくりと瞼を開き、目の前の黒く塗りつぶされた空間を睨みつけた。
+ + +
小さな小部屋ほどのスペースに、一人の青年が座り込んでいる。その視線の先にあるのは、子どもが一人通れるかどうかという大きさの穴だった。一瞥しただけではわからないが、しばらく見ていると時々そこから土がかきだされる。穴から土が出てそれが繰り返されるだけの単調な光景を、青年は何をするでもなくただぼうっと見ていた。
ふと、定期的にかきだされる土が止まる。しばしの沈黙ののち、青年が見ていた穴から何者かが這い上がってきた。まだ幼さが残る顔つきの少年だ。年は十代中ごろといったあたりだろうか。
少年を見るなり、それまで穴を見るだけだった青年は小さく顔をゆがめて一言はなつ。
「遅ぇ」
「はっ、ただ穴の周り見はってただけの人が何言ってんのさ。僕は肉体労働が苦手なのにこんなやたら長い穴を掘らせるとかさぁ、酷使しすぎだと思うんだよね。僕まだ子供だし?」
「黙れよ年齢詐称。どうせ見た目だけの話だろ、おまえはどー考えても中身がガキじゃねーよ」
「誰が年齢詐称だ、誰が」
少年は立ち上がり服についた砂などを軽く払いながら毒づく。しかし青年は素知らぬ顔だ。
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一気に描けると思ったら時間が着て途中中断した代物。話はあるけど、文章にならないorz
2011/02/04 Fri 23:22 [No.112]