Net4u レンタル掲示板を作る
Makoto
長く、過酷な道を辿りながらも決して諦めることなく…… 最終決戦がついにピリオドを打たれて、ホッとされてる方も多くいると思います。
そこで、各自のファイターがどのようにエピローグを迎えるのか、練習ついでに途中経過でも、投下して下さると幸いです。
期日が指定された模様です… 4月末には完成して下さると嬉しいです。
2011/03/03 Thu 23:47 [No.154]
あきはばら博士
ガウリイルが死に、デパートコンクエスタはリーダーを失うことになった。
そのリーダー不在になったその場に、朱鷺さんがあるポケモンを連れて現れた。
「ふぉっふぉっふぉっ ワシじゃ、長老じゃ」
フスベの長老の、老カイリュー。
なるほど。DMとも関係が無くDC内部からの反発も無い、尚且つあのドラゴン四天王達も従わせることのできる、DCの建て直しに向けて仮のリーダーとしては彼が一番の適役だろう。
戦いの後片付けは長老の元で(正確にはカール・パライバ・ファビオラの指揮で、長老は後ろで笑っているだけだった)行われた。
僕がマリアと呼んでいたセレビイも解放されて、2匹の空間移動術により人間世界とポケモン世界が繋がった。
1匹だけでも繋げることが出来るが、あれは不安定で普通だとうまくいかないらしい、だからチョウジに閉じ込めて力を増幅させたり、死んで魂だけにならないと元の世界に戻せなかったそうだ。
2匹で負担を分ければ安定して繋ぐことができる、ガウリイルはもう片方のセレビイを捕まえようとしていた理由はそこにあった。
安定して繋げるという事は、好きなようにポケモン世界と人間世界を行き来できるようになるということである。秋葉さんの野望はこうして実現に至ったのだった。
そして……
僕は今、×××にいる。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
まずマルクのエピローグを少し、×××にはポケモン世界の地名が入ります。どうぞ彼を連れまわして下さい。
2011/03/04 Fri 00:13 [No.156]
氷河期の賢者
どなんエピローグポケモン世界編がとりあえず書き終わりましたので投下します。まだ推敲してませんのでご了承を。
気がついたのは全てが終わってからずいぶん後だったらしい。おそらく二日ほどの間、僕は死んだように寝ていたそうだ。ただ、そろそろ元の世界に戻らなきゃいけない時が来て、椎名さんが起こしてくれたそうだ。『めざましビンタ』で。それならもっと早く起こしてくれてもいいのにな、と思い少し憂鬱になったが、朱鷺さんに負けてから外の空気というものを吸っていないので、まだヒリヒリする頬にそっと手を添えながら、起き上がり歩き出した。
外に出ると、数人の戦士がいた。フィッターさん、フリッカーさんの兄弟の姿を見つけた。僕はフィッターさんに『リーフストーム』を教えてもらっている。礼くらい言わなければ。
「フィッターさん、あの、ありがとうございました!その、技を教えていただいて」
「いやいや。結果役に立ったのならそれでいいと思うし、嬉しいよ。どなんさんはどうするのかい?ここに残るの?」
「いえ、僕は帰ります。帰って、なすべきことがあるんです。この世界は楽しいし、これからの復興も見たい。しかも、自分を強く持てる。でも、僕は帰らなきゃ。帰って、僕自身の人生をもう一度歩みなおすんです」
「そうか、頑張って!行き来は自由になるはずだから、またいつでも戻ってられる!」
「はい!ありがとうございます!」
僕はフリッカー兄弟に別れを告げ、この世界での最後の目的地へと向かう。GTSだ。わが師、レッドバーンさんの死没地であり、最後に僕が弔うべき場所。行かなければ。行って報告しなければ。心を揺さぶるものを僕は到底理解できなかった。まだ僕の心は成長していない。その証なのかもしれない。
大都市であるコガネシティ。しかし僕がこの世界に来る前、ここでもものすごく大きな戦いがあったらしい。その爪痕は未だに残っている。大きなビルは悲痛な倒れ方で崩れ、ごちゃごちゃになって眠るように崩壊していた。
「酷いなあ……確かここでPQRさんが死んだ、いや元の世界に戻ったんだっけか。僕は戦いを知らないんだよな」
ついつい呟くが、恥ずかしさも何もない。人間は元の世界に帰っただけだが、ポケモンは違う。ここで幾匹が亡くなったか、僕は想像するだけで恐ろしかった。僕は持ってきていた花を少し出し、ジムの前に手向けた。今僕たちができること。それは故人を弔うことではないか。
僕はGTSにたどり着いた。その殺風景な雰囲気は依然と変わらず、僕がアッシマーさんと練習した時の壁の損傷もそのまま残っていた。まだ修繕が追いついていないのか、そこにいて不安になってしまうような場所だった。僕はよくこんなところで寝ていたな、と思い過去の自分を称賛する。
そしてレッドバーンさんの墓にたどり着く。墓石に刻まれた文字、『情熱の戦士ここに眠る』に染み込んだ汚れを僕は水できれいにして、呼吸を整え、手を合わせる。そして感謝の意を伝える。否、今までさんざん伝えてきたが。同じことを言うわけにもいかず、今日は感謝よりも決意を伝える。
「レッドバーンさん。僕は人間です。ポケモンではないんです。だから僕は戻らなければならない。そして、行き来自由でも僕は多分戻らない。現実から逃げたくないんです。
僕は確かにひきこもりで、今まで逃げてきた。でも、この世界で出会った皆さんは逃げなかった。そして、僕もこの世界では逃げなかった。僕はこの世界では強い――
けど、僕はジュプトルじゃない。何があっても結局人間なんです。また逃げたら、この世界で学んだことを全て捨てることになる。レッドバーンさんの命も。
世界は違うかもしれない。けれどレッドバーンさんには応援してほしいんです。大丈夫。僕強いですから」
僕はそれっきり、言葉を発せなかった。
――泣いてしまった。
瞳から零れる雫をぬぐうこともなく、僕は泣きやむことはなかった。そして、泣きながらその場を去る。何か分からない、こみあげてくるこの気持ち。結局僕は割りきれていなかったのかもしれないけれど、いつかこのことを冷静に見ることができる日が来る、そんな気がしたんです。
2011/03/08 Tue 23:19 [No.169]
ゆな
草むら茂る道路の途中、布の上に商品を置いただけの小さな露店から小さなポケモンのグループが走り去っていく。
その後姿に向かって店員であるヨマワルがぶんぶん手を振って、見送っていった。
「毎度ありー! ジョウト地方のいろんなとこ見に行ってなー!!」
「はーい! ありがとうございまーす!」
「早く行こっ。あたし、コガネ行きたいコガネ!」
「ちょ、置いてかないでよ! 僕、遅いポケモンなんだから!!」
元気のある少年少女の声はヨマワルに礼を言った後、そのまま真っ直ぐ次の町へと向かっていった。その途中で通り過ぎるポケモン達に一々騒ぎながらであり、中々滑稽ではある。
しかしヨマワルは知っている。あのポケモン達はこの世界の住民ではなく、人間世界と繋がってからやってきた人間であるという事を。実際それを知った上で、地図などを売ったのだから。
見えなくなったところでヨマワルは店の方に振り返り、腕を組んで店番をしているニャースに声をかける。先ほどとは一転して不機嫌そうな顔でだ。
「ったくレオード、ちょっとはお前もやれ。わいに押し付けんな」
「俺のキャラじゃないんでね。それに無愛想なニャースより、愛想の良いヨマワルの方が良いだろ?」
「あの子等はニャースのキャラ違うーって騒いどったで?」
「知るか。それに商売はちゃんとやったし、特に問題は無いだろ」
「……微妙に高い値段でな」
「向こうが分からなければ、それで良いだろ?」
「そやな」
そんな小さな会話をしながら、ヨマワルはニャースの隣に座り込む。
この二体は行商『猫旅堂』のレオードとマヨだ。ドリームメイカーズとデパートコンクエスタが大きく争っていた時期、目立たない形であったといえども元人間側に接触し、影でサポートをしてきた。もちろん有料で。
あの戦いが終わった後、彼等の残した借金を返してもらう為に翻弄していたのだが逃げられる+色々とゴタゴタしてる+その他諸々の事情により、すぐに金は戻ってこなかった。
その為、軽い商売を続けながら機会を図ることにした。要するにこちらもほぼ何時もどおりに戻ったわけだ。
マヨは軽くため息をつき、客がいない事を良い事に軽く愚痴る。
「カモ増えたのは嬉しいけど、おおっぴらに出来んのが痛いなー」
「それを考えると、デパートコンクエスタとやりあっていた時期でいたかったか?」
「アホ抜かせ。儲けられるけど、こっちの神経が持たんわ!」
「だろう? これで肯定していたら、お前との縁を切っていたな」
「縁起でもない事抜かすな!」
何時もどおり冷静な態度で物騒な事を口にするレオードに、マヨは手でツッコミ入れながら返す。
普段ならばこのまま何時もの商売の体勢に戻るのだが、戦争の終わった後での平和が響いているのかマヨはニヤリと笑みを浮かべて、レオードに変な事を訪ねてきた。
「もしかしてお前、平和になったからって女捜そうって口か〜?」
「……は?」
「お前にも漸く春が来るのか、そりゃえぇわ! あの子等も恋愛しとったし、感化されても不思議じゃないもんな〜♪」
「おい、いきなりどうした?」
「あ、でもレオードが恋愛なんて始めたら天変地異の前触れやな……」
一人勝手に盛り上がり、自分を見ながらニヤニヤと恋の話をしているマヨ。そんな相棒に対し、レオードは静かに立ち上がると何も言わずに『ツバメがえし』をぶちこんだ。
マヨは浮ついていたせいでか、モノの見事に直撃して少し吹っ飛んでしまった。その後、頭に石をぶつけながらも浮かび上がると涙目でレオードに反論する。
「いったいやないか、ボケェ!? いきなりなにすんねん!?」
「人の話も聞かずに勝手に盛り上がった挙句、馬鹿な事を口にするからだ。他人で変な妄想するな、コイバナ好きが」
「えぇやん。他人の恋愛ほどおもろいもんはあらへんし。お前やてそやろ?」
「馬鹿を抜かすな。俺が他人に興味を持つ時は、そいつをどう利用できるか考える時ぐらいだ」
「相変わらずの悪魔っぷりやな、お前」
にやつきながら言ってくるマヨの言葉をバッサリと切り裂き、再び座り込むレオード。そんな変わらない態度のニャースに、マヨは軽くため息をついてつまらなそうにする。
己の相棒が何処までも冷静で、自分の事にしか興味が無いのはとっくに把握済みだ。あの戦いの時だって、一度もぶれた事は無かった。マヨ自身もそれに乗っかっていた為、今更何かしら言うつもりは無い。
だが平和になった事とおおっぴらに動けない事で退屈しているのもまた事実。それ故にからかって遊ぼうと思ったのだが、やはりレオードは良い反応は示してくれなかった。自分で言っておいてなんだが、彼が恋愛をするというイメージは無かったし、頭に浮かび上げようと思ったら背筋がゾッとする程の違和感が迫ってきた。甘い恋の言葉を囁くレオードなんて、鳥肌でしかない。
自分も的外れな事を言ったもんやなー……。
どこか遠い目をしながら、マヨが心の中で呟いていたその時だった。
「なぁ、そこのニャースにヨマワル」
不意にレオードとマヨに向かって、誰かが話しかけてきた。
二人はすぐさま露店の前に体を向け、商売の体勢に入る。何時の間にか客が来ていたと気づかなかったが、買い物に来たのならばすぐに対応するべきである。
そんな商売人コンビの前に現れた客人は、
「うち、人探してんのやけど知ってたら教えてくれへん?」
訛りのある喋り方をする眼鏡をかけたモウカザル。
2011/03/09 Wed 00:46 [No.175]
ジャグラー
※このエピローグは、フィリットさんとの合作です。
フィリットさんからはすでに許可を頂いてます。
何故フィリットがコガネデパートの屋上に向かっているのか。
それはジャグラーの一言がきっかけだった。
「今日の夕方、コガネデパートの屋上に来てくれないか?・・・待ってるよ」
一体何のつもりでジャグラーはフィリットを呼んだのかは分からない。
だが、おそらく大事なことなのだろうと、フィリットは思った。
「ジャグラーさん、一体どういうつもりなんだろ・・・」
「・・・でも、あのジャグラーさんの目は何か真剣なことを伝えたそうだった・・・もしかして・・・?」
フィリットは色々と彼が言いたい内容を予想しながら階段を上がる。
屋上の階段を上った先にはジャグラーがイスに座っていた。
「あ・・・ジャグラーさん。」
「フィリットさん。」
フィリットが声を出すと、ジャグラーはそれに気づいてフィリットの方を向いた。
彼の顔は真剣な眼差しをしている。
その眼差しを見たフィリットも、真剣な表情になった。
「・・・それで、話って何なの?」
沈黙だけは出さまいとフィリットは本題に入る。
ジャグラーはもう少し後で話そうとしたのか、少しびくっとなる。
「あ、ああ・・・」
ジャグラーは意を決したような表情になり、口を開く。
フィリットはそんな彼をじっと見ていた。
「・・・前に、フィリットさんは俺に自分の道を進めって言ってくれましたよね?」
「うん・・・」
「それでな・・・俺、この世界でやってみたいことがあるんだ」
「やってみたい・・・こと?」
「ああ。・・・このポケモン世界を旅したいんだ。
このジョウトも、カントーも、シンオウも、オーレも。ホウエンも、見たことない地方全てを。
この世界全てを、旅してみたいんだ。・・・あなたと、一緒に。」
「え・・・?」
「フィリットさん。俺はあなたを最初に見たとき、心臓の鼓動が速くなった気がした。
・・・最初は、とくに気にもしなかった。でも、DM本部での戦いで負傷した時にあなたが木の実を持ってきてくれた。
あの頃から、心臓の鼓動が速くなった理由が分かった。・・・最初は戸惑ったんだ。だって、俺はDCの裏切り者。しかもあの頃はDMにいることがいやでいやで仕方なかったからな。
・・・でも、あの時フィリットさんは俺に思いを伝えてくれた。あの時は嬉しかったよ。フィリットさんからそんなこと言われるとは、微塵も思ってなかったんだ。
それで決心したんだ。俺はDMの一員となり、この戦いを終わらせたら、あなたに思いを伝える・・・ってね」
「じゃ、ジャグラーさん・・・」
「・・・それとフィリットさん。これ、受け取ってくれ」
ジャグラーは懐からハート柄のうろこを出す。
ジャグラーがアルスとの戦いの後に手に入れたハートのウロコだ。
「これは・・・ハートのウロコ?」
「ああ。フィリットさんは、ラブカスの風習を知ってるかい?」
「・・・風習?」
「ああ。エメラルドのポケモン図鑑に載ってたんだ。
カップルのどちらかが相手にラブカスを渡すと、そのカップルは永遠の幸せが訪れるらしいんだ。」
「え・・・?」
ジャグラーの言葉に、フィリットは呆然と顔になる。
「・・・フィリットさん、改めて言わせてくれ。
俺は、あなたが好きだ。そして、俺と一緒に、旅をしないか?」
2011/03/09 Wed 21:42 [No.176]
ジャグラー
先ほどの告白のエーフィリット視点です。(フィリットさん執筆)
「今日の夕方、コガネデパートの屋上に来てくれないか?……待ってるよ」
そうジャグラーに言われて、コガネデパートの屋上への階段を上っていくフィリット。
――だけど、一段一段上がるごとに、足が重くなっていく
――どうしてだろう?彼が待ってるのに
言葉を告げた彼の瞳は、何かを決意した瞳だった。
――何か、怖い
そう思いつつ、一段一段上がっていく。
――いや………ジャグラーさんが待ってるんだもの……行かなくちゃ……
何故か、階段を上るのに凄く時間が掛かった気がした。
+ + +
屋上のドアを開いた時、彼はイスに座り待っていた。
「あ………ジャグラーさん……」
私が来たことに気づいたのか、ジャグラーはコチラを向き、言った。
「フィリットさん」
――彼の顔は、前に言葉を告げたあの時の瞳よりも、真剣な瞳だった
そしていつの間にか、私も真剣な表情になった。
「……それで、話って、何なの?」
真剣に向き合っている為、緊張が走って私はすぐさま本題に入ろうとした。
彼はまだ何か覚悟ができてなかったのか、少し驚いた様子だったが
「あ、ああ………」
そう言った後、覚悟を決めた表情になり、口を開いた。
「……前に、フィリットさんは俺に『自分の道を進め』って言ってくれましたよね?」
「うん……」
私が返事したのを確認し、ジャグラーはキッとした顔でこちらを向き、話し始めた。
「それでな……俺、この世界でやってみたいことが…あるんだ。」
「やってみたい……事?」
――あれ…ジャグラーさん………敬語が…無くなった……?
彼の変化を薄々感じながらも私は返事をした。
「……このポケモン世界を……旅したいんだ。
このジョウトも、カントーも、シンオウも、オーレも…ホウエンも。
見たことない地方、全てを。この世界の全てを旅してみたいんだ………
君と、一緒に」
「…………え?」
――今、何て………?
彼は、私が驚いた事を確認しながら、私に背を見せ、語り始めた。
「フィリットさん。俺はあなたを最初に見たとき、心臓の鼓動が速くなった気がした。
……最初は、とくに気にもしなかった。でも、DM本部での戦いで負傷した時にあなたが木の実を持ってきてくれた。
あの頃から、心臓の鼓動が速くなった理由が分かった。」
彼は、昔の思い出を思い出すかの様に、ポツリポツリと話す。
「……最初は戸惑ったんだ。だって、俺はDCの裏切り者。しかもあの頃はDMにいることがいやでいやで仕方なかったからな。
……でも、あの時フィリットさんは俺に思いを伝えてくれた。あの時は嬉しかったよ。フィリットさんからそんなこと言われるとは、微塵も思ってなかったんだ。
それで決心したんだ。俺はDMの一員となり、この戦いを終わらせたら、あなたに思いを伝える……ってね」
――思いを、伝える……?
彼は呆然としている私の方を向いて、手に持っていた七色に光るハート型のウロコ――ハートのウロコを私の前に差し出してきた。
「これ……受け取って欲しい」
「へ……?」
「ああ……ラブカスの風習を知ってるか?フィリットさん」
私は、そんなこと全く持って知らなかったので、首を傾けた。
すると彼は、私に教えてくれた。
「カップルのどちらかが相手にラブカスを渡すと、そのカップルは永遠の幸せが訪れる」
「……ラブカスは持ってこれなかったけど……代わりに、コレを」
――ちょっと、待って、何を
「じゃ、ジャグラー……さん……?」
頭が混乱し始めた。
けれど、彼は私の混乱が収まるまで待ってくれた。
「……大丈夫?」
「……う、うん」
私が返事したのを見て。彼は、一瞬すぅと息を吸う。そして、私の瞳を見て、喋った。
「………改めて、言わせてくれ」
「俺は、貴女が好きだ」
「そして、俺と、一緒に旅をしてくれないか」
「フィリットさん」
+ + +
こんな事になるなんて、これっぽっちも思っていなかった。
でも、この事態を招いたのは、事実上私の身勝手な行動からだったんだ。
先に思いを告げたのは私。
先に彼から離れたのも私。
勝手に、好きになった。
勝手に、いずれ帰ってくるだろう返事を怖がった。
そんな私の事を、彼は好きだと言ってくれた。
私の前で、思いを告げてくれた。
――もう、怖がったらいけない
――逃げちゃ、いけない
私は、決意した。彼がそうしたように。
+ + +
「……フィリットさん?」
彼は、私の顔を覗いてきた。多分、私の事を心配してくれたんだろう。
私は彼と顔を合わせると、瞬時に素早く彼の懐に飛び込んで、彼の頬に口付けをした。
私も、自分がこんな行動に出るなんてちょっと驚いたけど。
「は……っ!?」
一番驚いたのは彼の方だ。青い顔が真っ赤になっていくのが分かる。
そんな彼に向かって、私は言った。
「私も好きだよ、ジャグラーさん」
「………ぁ……」
彼の顔が、さらに赤く染まる。
私の顔も、多分――いや、絶対。赤いと思う。
「……貴方に、ついていくから」
「……フィリットさん…………」
彼は、照れくさそうに笑った。
2011/03/09 Wed 21:44 [No.177]
ジャグラー
「私も好きだよ、ジャグラーさん」
「フィリットさん・・・」
この言葉を聞いて、ジャグラーは照れくさそうに笑う。
―――これで、思い残すことはない・・・。
ジャグラーは机の上に置いてあったデパートのフロアから取っておいたテンガロンハットを被る。
そのテンガロンハットはなんとなく、温かく感じた。
不思議そうに見つめるフィリットに、彼は頬笑みながら言う。
「それじゃあ、行き先はどうする?」
「行き先・・・それじゃあ、あっち!」
フィリットは東の方向に指をさす。
東・・・ここから見れば、ワカバタウンに続いて、そこから海を渡ればカントー地方に行ける。
カントー地方に行ければ、他の地方にも行ける可能性もある。
その方角は、ジャグラーが行きたかった道でもある。
その言葉を聞いたジャグラーは、親指をぐっと突きたてる。
「東か・・・太陽が昇る方向でもあるし、カントー地方に続く道でもあるな。」
「うん。私も、その・・・ジャグラーさんと、色んな地方を見たいから・・・」
「フィリットさん・・・」
二人は顔を赤く染めながらエレベーターに向かう。
が、エレベーターに入る前にふとフィリットは思い出したようにジャグラーに話す。
「所で・・・私達が旅することをみんなに言わなくて、大丈夫なのかな?」
「あ」
思わずジャグラーの顔が青ざめ、ひきつっていく。
―――――しまったぁ、最後の最後でそんな重大な事を忘れるとは・・・!!
「ど、どうしますフィリットさん?こうなりゃ今から直接言って――――」
「あ、待ってジャグラーさん。こういうときは・・・これを使えば、いいんじゃないですか?」
慌てふためくジャグラーをよそに、フィリットは案外落ち着いて周りの物を見ていた。
そして、フィリットの手には一本のペンと一枚の便せんが握られていた。
コガネシティ ポケモンセンター
「えーと・・・ここに置いておくか」
ジャグラーは机の上にそっと便せんを置いた。
そしてすぐに外に出て、コガネデパート前に戻る。
「気付かれなかった?」
「ええ。何とかばれませんでしたよ。・・・にしても、ほんとにいいんですか?みんなに言わないで手紙だけ置いていくなんて」
あの後二人は便せんに旅に出るということだけを書いてポケモンセンターに置くことに決めた。
つまり、それは誰にも言うことなく旅に出るということである。
「大丈夫だよ。誰も反対する人なんて、ここにはいないから。それに・・・」
「それに?」
「・・・誰にも知られずに旅をしたいから、かな?」
顔を赤くしながら、フィリットは微笑む。
その微笑みを見るたびにジャグラーも笑顔になる。
「なるほど。・・・それじゃ、行きますか。」
「うん!」
―――――これからの二人には、様々な出来事が起こるだろう。
時には笑って、泣いて、喜んで、怒って。
色んな事が起きるだろう。
俺たちはそんな体験をしながら、ゆっくりと歩んで行きたい。
俺が一番大好きな人と共に、ゆっくりと歩んで行こう。
「フィリットさん」
「何?ジャグラーさん」
「大好きだ」
フィリットの頬に、ジャグラーは一つ口づけした。
2011/03/09 Wed 21:44 [No.178]
ゆな
品物そのものが目的ではないのか、と思いながらもレオードは無下にせず、冷静に対応する。
「……特徴を言ってもらわないと捜す事は出来ないし、教える事も出来ない。それにポケモンが何か分かるのか?」
「うん、ちゃんと覚えとるよ。一人はだなだな口調のカラカラで、名前はマルク」
「へ? 君、あのガラガラ君の知り合い?」
「ガラガラ? カラカラじゃなくて? ……あの後進化したのか、あいつ。羨ましい」
知ってる名前を耳にし、マヨが反射的に訪ねる。それを聞いてモウカザルの方も首をかしげたものの、すぐに察したのか悔しいような羨ましいような顔でぼやいた。
その話ぶりから、レオードとマヨは目の前のモウカザルがあの戦いの途中で離脱した元人間であることを把握する。カタリから聞いた話であるが、あの戦いの途中で死んでいった元人間は人間の世界でも死んだわけではなく、無理矢理帰されるだけだった筈だ。それなら人間世界と繋がった今ならば、再度ここに来ていてもおかしくはない。
事情を把握するとマヨが面白いもんを見つけたと言わんばかりの態度で、モウカザルに詰め寄っていく。
「どーゆー事情で知り合ったかは知らんけど、場所までは知らんよ? 何々、あの子のガールフレンド〜?」
「ちゃうちゃう。顔見たくなっただけ! うちは途中で死んじゃったからさ、あの後どうなったか聞きたくてね。それから平和になったこの世界も皆と見て回りたいんよ」
「なるほど、そりゃ納得。なら色々見ていかへん? 安いよ安いよ〜!」
「高いよ高いよの間違いだろうが」
ガールフレンドを否定した後、モウカザルがマルクを訪ねた理由を話す。マヨは軽く頷いてそのまま商売の流れに持ち込もうとしたが、キッパリバッサリ言い切られてしまった。
その即答っぷりにマヨは目を丸くし、モウカザルを見る。静観していたレオードは、何時もと変わらない冷静な態度で追求する。
「ほぉ、その根拠はどれからだ?」
「まず傷薬や虫除けスプレーの値段。こいつ等はうちの知ってる値段と同じ。だけど地図や普通の食料品、それらは一見同じように合わせてるようで実際はちょっと高い。物の配置と値札の位置もあるね、上手く誤魔化してる」
「……露店だから、って理由じゃ納得しないか?」
「バーカ、露店だからこそだよ。全ての商品の値段を一々覚えてる人はいないし、正しい価値をキッチリ把握できている奴もいない。分かってるのはたこ焼き屋とかのお祭りで定番のぐらいさ。だから違和感があったんだよ、傷薬と虫除けスプレーの値段はピッタリ合っている癖に他の品物が何処かつりあわない値段だって事がね」
己の憶測でありながらも、広げられた商品を一つ一つ指差していきながらしっかりとした冷静な意見と共に、本来の値段よりも微妙にぼったくっているものだと見破った理由を話すモウカザル。
見た目に似合わず、知恵の働くその様子にレオードは思わず呆気にとられた。法外の値段をぶん取る時はともかく、こういう無特定の客を狙った時のぼったくりは巧妙に誤魔化してきたはずなのに、一瞬で看破されるとは思わなかったのだ。
ほぼ全てを言い当てられてしまい、レオードはらしくも無く少し動揺した声で更に訪ねる。
「これが正しい値段である、とは考えなかったのか?」
「アホ。地図なんて本みたいに分厚いもんじゃない限り、安物に過ぎないだろうが。それにこちとらスーパーの安売り常連なんじゃい、大雑把には見破れるわ」
だからって、一瞬で見破りすぎだろうが。
安物の部分もしっかりと見抜ききったモウカザルの発言に、レオードは頭を抱える。ちらりとマヨを見ると、同じような表情を浮かべていた。どうやら想定外の客の出現に、二人ともやられてしまっているようだ。
さて、どこから反撃するか。レオードが腕を組み、言葉を捜そうとする。そんな中、モウカザルは相手の言葉を待たずにレオードをしっかり見据えて、トドメともいえる言葉を突きつけた。
「だからあんたはそ知らぬ顔で、わざと高い値段で商売をしている。そしてそれを悪いとも思っていない、自分の為の事で他人なんて本当にどうでもいいと思っている。だけど何処か人を試してる。合っている?」
あっさりと、しかし先ほどの値段同様的確な指摘にレオードは勢い良く顔を上げてモウカザルを凝視した。相手は悪戯が成功した子供のように笑っており、レオードの顔を見て益々笑みを深めていた。
何で、こんなにもあっさり見破った? 何度も会っている奴ならともかく、初対面でここまで一瞬で見破れる奴なんていなかったのに、何でだ? どうして、俺の何もかもを人間の女が分かったんだ。
内心で深い困惑に陥りそうになりながらも、レオードは表面上冷静さを繕いながら理由を問う。
「……その、根拠は?」
「あんたの顔を見てたら、なんとなくね。落ち着きすぎているその態度とくだらないと言わんばかりの目つき、それが嫌だったから。後はうちを追い返そうとしなかった事とうちをしっかり観察していたから、かな。普通、こんな客は追い返したいと思うじゃん? でもあんたはそれが無かった。こんなところだよ」
「個人の感情論か」
「えぇやん、感情論で言っても! あんたを納得させたかったし、そう感じたから言いたかったわけ。うち、間違った事言ってる?」
自分の思った事から理由付けて話すモウカザルの態度に、レオードは少し目を丸くする。だが当の彼女はにっこり笑うと迷った素振りも見せず、ハキハキと言い切ってみせた。
その清々しく、自分に自信を持った態度はレオードからすれば目に見張るものだった。普通はこんな感覚を持てる奴なんて、早々いないのにあっさりと現れてしまったからだ。それもあの戦いの最中ではなく、終わって平和になった後でだ。
大人というには幼い理論で、子供というにはとても知恵が動くそんな彼女の姿は、レオードにとって青天の霹靂ともいえた。平和になったからこそ訪れた、この出会いはそうとしか言えなかった。
この瞬間、何かを悟ったようにレオードは笑みをこぼして彼女の言葉の全てを認めた。
「いいや、商売の件も入れてほぼ正解だ。お察しの通り、金にしか興味が無いからこういう商売をしているわけだ。それから、ポケモン観察は商売のついでで得ただけだ。……にしても良く分かったな」
「勘は良い方なんでね。それにしてもあんた等アホやろ」
「は?」
「金ばっか集めてる生き方じゃ、それ以外の事が楽しいと思えんよ。そういう生き方はせこいし、つまんないじゃん。あんた、ニャースなのに雰囲気かっこいいんだからもったいないよ?」
モウカザルの言う台詞じゃないけどね、と付け足しながら笑い声をこぼしながら言った彼女。その口から出された言葉は、きっと純粋な思いからだったのだろう。腹黒い思いなどは全く感じられなかった。
あまりにもあっさりと言われて、レオードは言葉すら出てこなかった。散々自分の中身を見破られただけでなく、その生き方をこんな気軽な形で否定されるとまでは予想できなかったのだ。
さっきのでも十分すぎるほど驚きだったというのに、まさかここまでだったとは、思わなかった。こんなに一瞬で自分の何もかもを見破られた挙句、生き方を否定するだなんて事はマヨでもしなかったというのに。
レオードが言葉も言えず呆然としてる隣、やばいと判断したのかマヨが前に出てモウカザルに向かって注意を入れる。
「モウカザルちゃん、ちょっと言いすぎやで? レオード、怒らせると怖いんやから程ほどにな」
「向こうから聞いてきたんだし、色々言いたかったんやもん。それに悪かったなら謝るから、許してほしいんだけど」
「アホ。わいやなくてレオードに言え。見てるこっちが冷や冷やするような会話しおってからに……」
「ごめんごめん、でもうちは間違った事を言った気は無いよ?」
「反省してないやんか、全然! モウカザルちゃん、どんな教育受けてきたん!?」
本気で冷や冷やしているマヨと軽く笑って流すモウカザル。レオードの心境とは裏腹の何処か愉快な会話を目の当たりにし、レオードはぱちぱちと瞬きしてしまい、受け入れるのに時間がかかってしまった。
そのままゆっくりと頭で受け入れていく中、ショックを受けていた自分が馬鹿馬鹿しく感じてきた。なんてことは無い、あのモウカザルは己の思った事が正しいと判断したから真っ直ぐ言い切っただけにすぎないのだ。自分はその言葉に追いつけず、ただただ振り回されてしまっていただけだった。
あまりに滑稽で、そんな自分は本来ありえないものだっていうのにありえるものになってしまった。このモウカザルが、あっさりとやってみせた。氷のように冷静だったはずの己の心をあっさりわしづかみにした。
そこまで受け入れた途端、レオードは滅多に出さない笑い声を上げた。
「ハハ、ハハハハハハハハハ!! そうか、そういうことか!」
「うわっ、びっくりした!?」
「いきなりどうした、レオード!?」
「天変地異はおきそうだぞ、マヨ」
「「へ?」」
レオードの笑い声とその後の言葉の意味が分からず、マヨとモウカザルは揃って間抜けな声を出す。
そんな二人の様子を他所に、レオードはモウカザルをしっかりと見据えると先ほどのショックが嘘のように落ち着いていて、けれども普段の彼からは想像できないような告白をしてみせた。
「モウカザル、俺はお前に惚れた。何もかも見破った挙句、俺の生き方をハッキリ否定したその強さと明るさにな」
あまりにも唐突な恋の告白が、冷血商人から放たれた。
それが冗談でも何でもないのは、落ち着いていて迷いの無い言葉をモウカザルから目を反らさずに真顔で言い切った事から把握するのは容易だった。
2011/03/09 Wed 23:30 [No.179]
ゆな
いきなりの展開に暫くの間、モウカザルとマヨは固まっていた。が、次の瞬間揃って驚愕の雄叫びを上げた。
「う、うえ、うえええええええええええええ!?」
「はああああああああああ!? ちょ、おま、マジかああああ!?」
「大マジだ。あぁ、そうだ。マルク探しをするついでに、二つ条件を出していいか?」
「え、え、え!?」
「行商『猫旅堂』に加われ。俺の傍に居続けろ。これが、条件だ」
顔を赤くして困惑するモウカザルを他所に、レオードはすっかりペースを取り戻したのか立ち上がって彼女と目線を合わせると、プロポーズともとれる条件を告白してみせた。
さすがに告白された直後でその条件の真意を察する事なんて簡単で、だからこそ余計にモウカザルは顔を赤くしてぶつぶつと呟くしか鳴った。
「……初対面なのに、何でここまで言われなきゃあかんの……」
「モウカザル、答えは?」
「へ!? えと、えと、えーと……!!」
レオードがすっかり何時もの調子で急かす中、モウカザルはあたふたと慌てて言葉を選ぶしかなかった。もちろん顔を真っ赤にしながらだ。
一気に形勢逆転したなー、と最早蚊帳の外のマヨが半分現実逃避する形でぼやいているが、生憎どっちの耳にも届かなかった。
落ち着いた態度のレオードと傍観者に徹する事にしたマヨを見比べ、モウカザルは耐え切れなくなったのか真っ赤な顔のままレオードを指差し、どもりながらも勢い任せで言ってきた。
「う、うちの名前はゆな! あんたの名前は!? 隣に居続けなあかんなら、種族名で呼べんやろ!?」
「あぁ、そうだったな。すまない、俺の名前はレオード」
「わいはマヨって名前や。よろしゅう、マドンナちゃん!」
「マドンナ?」
「この金馬鹿を惚れさせた女の子やからな。それぐらい魅力あるのは天使かマドンナぐらいやろ?」
「えぇ!? ちょ、そこまで言う!? あ、あの、あのねぇ!?」
「それにあのレオードが惚れたって事は嫁決まりっちゅーこっちゃ! ってわわわわ、火炎技出そうとせんといてぇ!?」
「うっせええええ!! う、うちはそこまで言うほど魅力は無いっちゅーねん! これ以上パニックにすんなーっ!!」
今にも全身から火が出てきそうなほど真っ赤になったモウカザルことゆなは半ば八つ当たり気味に、マヨに向かって怒鳴りつける。マヨはあたふた慌てながら、レオードの背後に隠れた。
あまりに分かりやすい隠れ方にレオードがマヨを軽く睨みつけたものの、ゆなが攻撃できずに止まったので細かく言うのは後回しにしてやった。
現状にあうあう言って困惑する彼女に顔を向け、レオードは軽く微笑んで彼女の頬に手を伸ばして撫でながら言う。
「名前を教え合ったんだ。これで一緒に来るだろ、ゆな」
ゆっくりと流れるように、だけどしっかり聞き取れるように口に出されたその言葉はゆなの耳にしっかりと残った。
会ったばかりだというのに自分だけを見つめ、心を落ち着かせながらも逃す気の無い男の姿は口説き文句だけで顔を赤くさせる少女を捕まえるには、十分すぎた。
自分の中では落とされたと自覚しながらも、それを認めるのが癪でゆなはテンプレ的ツンデレ台詞を吐きながら告白を受け入れた。
「……勘違いしないでほしいけど、うちはマルク達を探したいから一緒に行くだけ! あ、あんたに口説かれたわけじゃないから!」
「あんたじゃなくて、レオードな。それと一緒に来る事を断言した以上、誰にも譲る気は無い。俺は気に入ったモノは手放さない主義なんでな」
「へ!? あ、会ったばかりなのに何で!?」
「俺が惚れた女を、俺に惚れさせて一生傍に居させる為だ。そのぐらい察せられると思ったんだがな」
「ば……馬鹿っ!! う、うちは恋愛初めてやから、そんなん無理に決まってんじゃん!!」
「なら好都合だ。一から最期まで、キッチリ教え込んでやる」
慣れない口説き文句に顔を赤くして反論する娘と、そんな様子を可愛らしいと思ってるのかからかいながらも受け入れる男。
ちょこっと前ではありえないと思っていた光景がここに生まれた。人間の世界とポケモンの世界が安定した状態で繋がる事ができたからこそ、生まれた小さく大きな出会いが。
これだけ聞けば、微笑ましいワンシーンである。だがそれをマジマジと見せ付けられたマヨは半目のまま、低いテンションで呟いた。
「桜満開の春が来るのは構わんが、色々と忘れんといてくれよ?」
主にわいの存在とか、な。
少女漫画のようなラブコメから軽く目を反らしながら、ため息をつくマヨ。多分聞こえていない+あえて聞き流しているだろうが、今後の猫旅堂の為にも言っておくべきだとは思ったのだった。
2011/03/10 Thu 00:03 [No.181]
椎名
ガヴイリルが、死んだ。
それが意味するのはつまり、終わりというわけで。
たくさんの犠牲を出した長い長い戦いに、終止符が打たれたということだ。
「……」
私がその知らせを聞いたのは、デパコンの医務室。
そのとき感じたのは達成感……っていうか、なんだかふわふわした実感というか。
いざ終わってみると、なんだかすごく早かったように感じる。
今私の頭の中にはこのポケモン世界に来てからのことが、そうまさしく走馬灯のように浮かんで……あれ、これなんて死亡フラグ?
ふと隣を見れば、どなんさんとフィリットさん……と、なぜかジャグラーさんが眠っている。なにがあったんだろ。
でも、フィリットさんと並んで幸せそうに眠っている様子は、こう、なんというか……
りあじゅーおしあわせに!!
* * *
セイラさんやラプラスさんのようにこの世界でしんでしまった人たちは、元の世界ではしんでいない、つまり生きているそうだ。
今は二匹のセレビィによって二つの世界が繋がっているから、ひょっとするとまた会えるかもしれないし。
……あのときは仕方なかったとはいえ、今度またセイラさんにあえたら謝ろうか。
そのことについてはホッとしたんだけど、しんだけどしんでいないのはいわゆる“元人間”だけであって、ソードさんやリリアさん、ルカさんみたいに、もともとこの世界にいたポケモンのみんなはもう戻っては来ないそうだ。
あとで精神離脱しているかいないか云々みたいな説明を聞いたけど、なるほどさっぱりわからん。
いや、ガヴイリル……ガヴリイル? がまた甦るようなことがあったら、それはそれで問題が出てくるけど。
――と、いうことで。
私は今、渦巻島にいる。
ここで眠っているのは、ソードさんとルカさんだっけ。
リリアさんは確かタンバシティにお墓が建てられたんだっけな……
ひっそりたたずむ小さな墓標を前に、合唱。
洞窟を抜けて、水平線を眺める。いやぁ、世界ってすごく広そうだね。
なんとなく足元の砂を蹴飛ばしてみる。砂が飛び散る。じゃりじゃりする。……当たり前か。
ぼすん、と砂浜の上で仰向けに寝転がってみる。空に輝く太陽が目にまぶしい。目に悪いな。
そのまま、しばらく。なにをするでもなく、ただ寝転がっているだけ。
さすがにじっとしているだけではちりちりするので、たまに寝返りもうってみる。
しかしまあ、耳に響く波の音がなんとも心地いい。ついまどろんでしまう……うっ、寝ないぞ? さすがにここでは寝ないぞ?
さて、戦いは終わった。
ということは、あの声の主の目的は果たされたということだ。
ならば、私はこれからどうするべきなのだろう。
やるべきことが終わったなら、元の世界、私の世界に帰ろうか。
……いや、正直この世界なら勉強もないし一人でも生きていけそうだし楽ではないけど楽しそうだし。
じゃあいっそのこと、この夢のような世界で一生を過ごしてみようか?
……いやいや、元の世界でやり残したっていうか見おさめていないことも結構あるし。あいつら無事にくっついたんだろうか。
いやいやまてまて、そもそもこの世界と元の世界は繋がってるわけだから、行ったり来たりは自由なのよね?
だったら、文字通り行ったり来たりを繰り返せば、ある意味二種類の人生が楽しめたりするんだろうか。
……それはそれで疲れそうだけど。
透き通るような青空を仰いで考えることしばらく。
やっぱり、ここは一度元の世界に帰るべきだろう。
私が生まれて、育った世界。
過去の私があるから今の私がいるわけだから、未来の私は、きっとそこにいるべきなんだろう。
……あーダメだ自分で言っておいてすごく恥ずかしくなってきた。
まあ、まずはセレビィのところに行こう、話はそれからだ。
パッチールこと人間こと椎名麻樹、ただいまより私が進むべき世界に帰ります。
まあ、でも。
時々この世界に遊びに来て、みるのも、悪くはない……よね?
― ― ―
「渦巻島で一匹ニヤつく奇妙なパッチールが出没する」なんて噂はありません。ありませんってば。
エピローグ突入ということでカチャカチャうってみた。
携帯でうったのをコピペしてるから、本編とそぐわない部分もあるかもしれない…
パッ椎名はとりあえず、ソードやリリアなどのお墓参りをしてから一旦人間界に戻る様子。
2011/04/23 Sat 22:27 [No.271]
フィリット web
――太陽
太陽は、とても温かい。どれくらいか分からない程、暖かい。
皆を照らす、太陽。
私は、そんな太陽になれたのかな?
少しでも、皆の為に何かできたのだろうか
私は、泣いてばっかりで。いつも泣いて、泣いて、泣いて。
沢山の事を抱えたのは私だけではないのに、私はそれに耐え切られずに泣いた。
嫌で、嫌で、嫌で。
でも、ある人が言ってくれた。
「悲しかったら空を見てごらん」
ふっと空を見上げると、そこには永遠に広がる青空と、温かく光る太陽と。
こうして見ると、自分が泣いていたのが凄くちっぽけな事だと思えてしまう。
ああ、私は、この大きな戦いでどれだけ成長したのだろうか
そして、私は今。
愛する人と共に居る。
2011/04/25 Mon 22:35 [No.286]
仙桃 朱鷺
戦いが終わり、朱鷺が連れてきた長老さんがDCの立て直し仮リーダーになった。動けなかったから朱鷺が秋葉さんの指示を受けて飛び立つのを見送って待ってたアタシと今2人でいる。
朱鷺は何でか目を合わせない。
「……朱鷺」
「なんでしょうか有留ねぇ様。」
そんなに挙動不審にならなくても……訳は一応聞いたし。あんなに自信満々に動き回っていたのに何でこんなに怯えてるかな。言いたいことはいっぱいあったけどもう終わったからいいかって思う。羅一さんが元の世界で生きてるって話はきけたし、戻ったらメールでもしてみようか。
そんなこと考えていたら朱鷺が落ち着かないようにきょろきょろしてるのが分かった。だからなんでそんなに落ち着かないかなもう、
「あのー、元の世界と何時でも行き来できるようになったわけだし取りあえずまず直ぐに帰りませんか?」
「何でさっきから口調がおかしいの。帰るのは賛成だけど…あ、」
一つやることがある。
「この世界でお世話になった皆や仲良くなった人たちに挨拶に行ってからね。一度帰ると次来た時そろう日が来るかわからないから今がちょうどいいよ。」
「有留ねぇ!!後生だから帰らせて!!皆さんに会うのが怖いんだよ!!」
「分かっててやったことだろ」
「いや!怖い!私は人の悪意や堅い声、怒りを孕んだ声、怒気が混ざった声が聞くだけで竦み上がるほど怖いもん!!」
「ほら、ついて行ってあげるから。アタシも一緒にいるから怖くないでしょー?」
「お家帰って、マンガ読んでラノベ読んで幸せになるんだぁぁぁ!」
「人間関係に挨拶や礼儀は大事でしょうが!!社会人の常識!!」
「学生だから許してよ!!」
「今年就職組の癖に何を言うか。ほら、さっさといくよ!!」
「いやー!!留年するか引きこもってやるぅー!!」
「帰ったときの最初の食事野菜炒めと野菜たっぷりの炊き込みご飯とサラダにするよ?」
「にゃぁぁぁ」
従妹をダメ人間にするわけにはいかない。弱点で悲鳴を上げてしょんぼりしたところで葉っぱを掴んで一緒に人が集まっている方に進みだした。
それに、そんなに怯えなくても理由をちゃんと説明すれば分かってくれる人が大半だと思うし。戦う中でDCからDMに来た人だっているし。大丈夫だってアタシには確信がある。朱鷺はこういう時無駄にマイナス思考だから実際にあった方が分かりやすい。
アタシだって話したい人いるし。朱鷺を連れてさっさと合流しよう。たくさん話をしてから一緒に家に帰ろう。食べたがってたフルーツ入りのヨーグルト作ってあげるから。
@ω@ ΘωΘ JωJ ◎ω◎
エピローグ・・・・・・え、こんな感じになりました。グッダグダになるのは私達だからでしょうか・・・
2011/04/26 Tue 15:00 [No.290]
Makoto
DCの本リーダー、ガウリイルが倒れて散ってから、それから数日が経とうとしていた……
タンバシティの海岸付近にて――
「どうもありがとうー! 船長さんー!」
「あいよ〜、若いの! 旅中気ィ付けてなァ〜!」
渡り船を操縦して送ってくれたヤドキングにお礼を言って、その場を後にしたマコト。彼は花束を左手に持ちながら、駆け足である場所に向かっていた。
左腕に包帯を巻いているものの、事前に秋葉が傷痕をきれいに縫い合わせてくれたから、動かす分にはそれほど問題は無いはずだ。
「よし、そろそろ行こうっかな?」
マコトはそう言うなり、砂浜に足跡をつけながら西の洞窟の方へ急いで行った。
――――――――――――――――――――――――
「ここに来たのはどれくらい前だったっけ……」
天から高く見下ろすかのようにそびえ立っていたDM(ドリームメイカー)本部……跡地。前回の壮絶な戦いの下、ガウリイルの手によって無残にも崩れ去り、瓦礫の山と化してしまった今、かつての伝統がまるっきり無くなってしまっている。
「久しぶりですね… みんな」
地に散らばった石ころを片づけながら、マコトは空に向かって声をかける。
「詳しい話はシャインさんと有留さんから聞きました……。僕が来るまでに、たくさんの犠牲者が出てたとは……」
「メイルさんとPQRさん… そして羅一さん… 一度もお会いできなかったですけど―― 向こうでも、元気で仲良くやってますよね……?」
普段はツンとしていても、あふれんばかりの人なつっこい性格でみんなから愛され、信念も貫き通したニャルマー。のんきで時には三枚目を演じることもあったけど、常に他人の事を中心に考え、守るべきモノを守り通した“紳士”ことグラエナ。そして、有留の師匠兼DMの斬り込み隊長として、戦場の数々を羽ばたいたカモネギ……。
「ピカリーズさん… 蓮華さん… あの時僕のことを温かく迎えてくれて、ありがとう…です…… 今も思い出、決して忘れないよ……!」
実質的DMのサブリーダーとして、戦いのサポート・策謀を手がけてチームを優勢に導いたカポエラー。あげはの友人にして常に仲間を気配る心を大切にして、戦陣でも駆け抜けていたマッスグマ。少しの間だけだったものの、一緒に敵を討ち払い共に悩んできた時間が、その心を強くするきっかけとなったのだから。
「ラプラスさん…… うぅっ… 出来る事なら、もっと早くあなたに会いたかった…です……」
自分の命を犠牲にしてまで、敵味方共に生きることを信条に正義を貫いたライチュウ。彼とはGTSでしか会った事がなかったのだが、優しさと強さの両方を持っていたその凛々しい姿に、マコトはただ純粋に尊敬し、憧れていた。
「…… ぐすっ…… 何で、なんで……?」
何故彼らが死ななければならなかったのか―― その理由は、永遠にマコトにとってわかるはずのない事なのだ。
考えれば考えるほど、胸が締め付けられる感情にかられ、ポタポタと涙がこぼれ落ちる……
2011/04/30 Sat 01:28 [No.298]
Makoto
しばらく時間が経ってから、やっと悲しみから立ち直って涙をぬぐい直したマコトは、一先ず深呼吸をしながら花束を、かつて入口であったであろう場所に置き直し、手を合わせた。これでいくらかは、安らかに眠りに付けることだろう(といっても、既に現実世界に戻っていることを知らないのだが……)。
「ふぅ、これで大丈夫だよね?」
マコトは一息ついて、本部跡地から立ち去ろうとしたその時―― 後ろから小さく話し声が聞こえてきた。
『お前も来るなんて、物好きなポケモンもいるもんだな……』
『私たちだけじゃないって事ですわ。ここに弔いに来るのって』
『……ここでは本当の私の名を言うなよ、ファビオラ』
「……!!」
いつの間に来ていたのだろうか、エルレイドとチルタリスの2匹が花束と数珠みたいな飾り物を手にして歩いてるのが見えた。戦いが終結してDMとDCが和解したとはいえ、油断はできない。
「あなた達…… な、何しに来たんですか!?」
これ以上の悲劇は作らせてなるものか! そう心に決めていたマコトは半ばきっと表情を固くして構えていた。しかし――
「穏やかじゃないですわね…… そこのリオルさん、そんなに緊張しなくてもいいのよ? 戦いはもう終わったんだし」
「我らは弔いに来ただけなのだ…… 無闇に血を流す必要はないだろう?」
「ほら、リラックスリラックスですわ! アイビスも緊張してないの!」
「へ… えぇっ!? クールじゃないの!?」
「だから本当の名を言うなったら! あぁもう、折角なりきってたのに……」
「は、はぁ……」
チルタリス――ファビオラは緊張で顔を引きつっている彼らをなだめて悠々としているが、エルレイド――クール……否、メタモン――アイビスは唐突に話を展開されて困惑している様子。
マコトも、いきなりの急展開に、目をパチクリさせるしかなかった。
その後、彼らも同じように仲間の墓参りに来ていたことを知って赤面しながら謝り続けたマコトと、そんな彼を優しく笑いながらも昔の思い人を想っていたファビオラ、今では変身を解いて付き人を思いながらもどこか目を逸らしていたアイビスとで、それぞれの状況を話し合った上で双方の目的を果たしていった。
「早いものだな……。自分たちが、目的や信念を持って戦いに挑んだ一週間―― いろいろあったのが信じられないな」
「えぇ、前までの戦いがウソのようですわね…… 失ってしまったモノも多いけど、それによって私たちも大きく何かが変わっていった…… 私、この事は忘れないつもりです」
ちなみに後でアイビスにラプラスさんについて話を聞いたところ、彼はクールと死闘ともいえる一騎打ちにて、互いの大技をぶつけ合った末に満身創痍の状態となり、双方ともに力尽きたとのこと…… 唯一その場にいたアイビスは、全く手を出していないというのも素直にうなづける事ができた。
前まで敵味方に分かれて戦ったとはいえ、世界が平穏となると心に安心が生まれていったのだろうか。3人のそれぞれの目は、曇りが及んでいなかった。
「今後も、このような平穏な時間が続くといいなぁ……。僕もこれまでの思い出、忘れないようにするね……!」
3人はゆっくりとうなづき合い、再会を約束してその場を去って行った。いろいろと言葉にしたかった分もあったけど、それは後で帰ってから考えよう―― そうマコトは思い直したのだった。
――フリッカーさんとアッシマーさん、そしてあげはちゃん…… 戦いが終わって一安心してますよね? 今、僕もそちらに行きます……。一緒に生き残れたら、その時は…… どうか友達に……――
僕らの時間は、ここから始まったばかりなのだ!
――――――――――――――――――――――――
◇あとがき
はい、どうも書かせて頂きましたー! 5日目からの参加で身の周りが大きく変わったと感じてるマコリルです。稚拙な部分も多かったですけど、最後まで参加できて嬉しい限りです! 本当にありがとうございました!
毎度の事ですが、修正すべき問題点が見つかりましたら、ご指摘をお願い致します。
2011/04/30 Sat 01:34 [No.299]
ロサラ
この世界を、自分達を混乱に陥れたガウリイルは、打ち破られた。
あの時出会った気弱そうな、だがどこか芯の通ったマルクと名乗るガラガラによって。
ガウリイルの、DCの野望は阻止され、両世界に平和と安息がもたらされた。
だけど。
「――ラプラスさん…」
あの後聞いた話によると、私の知らない所でラプラスさんは犠牲となっていたのだ。
不思議と、涙は流れない。以前の私なら涙を流して叫んで、喚き散らしていたのに。
その理由は、これも誰かから聞かされたのかもしれない。
もしここで死んでしまっても、元の世界では無事だって。死んでなんかいないんだって。
むしろ、その事実に熱い雫が零れ落ちたのを覚えている。
――そして、私は。
+ + +
そよそよと吹いてくる潮風のせいで、右目を隠すように巻きつけた包帯がやけにべたつく様に感じる。
私は、過去に私の運命を変えたかもしれない戦いの名残がまだ残っている、うずまき島へと上陸していた。
どうやら別に花なんて持ってこなくてもよかったのかもしれない。
既に、共に戦った仲間達の墓は、他の人達が添えたのであろう色彩々の花で溢れかえっていた。
だが、無駄という事は無いであろう。私は小さな腕に抱えた目一杯(パチリスの腕に比べれば)の花束のラッピングを開くと、その花の山にさらに追加する。
そして、手を合わせる。まぁメイルさんとセイラさんは向こうの世界で元気に過ごしているのだろうが、ソードさんは、元々こちら側のポケモンなのだ。
だから、ここで死んだら向こうの世界へ飛ばされる訳が無い。即ち、彼女は正真正銘の死を迎えてしまった訳だ。
――思えば、彼女は初めて会った時は敵だったのだ。
それが、様々な試練を、痛みを乗り越えて、絶大な信頼関係が築かれるまでに至って。
最後には、心を壊した悲しい少女によって――。
ソードさんは、戦ったのだ。仲間を守り抜く剣-ソード-として、最期まで戦い抜いた、誇り高き剣。
「……………ごめんなさい」
気がついたら、その懺悔の言葉が口から漏れていた。
別に私が謝ってもソードさんは生き返るわけが無いし、必要ないだろう。だけど、無意識にその言葉は喉を突き上げていた。
誇り高く散ったソードさん、ゆっくり休んでください。きっとそちら側はさぞ賑やかなのでしょう。
素直になれない花嫁、メイルさん。彼女は今頃PQRさんに鋭い(愛の)ツッコミを加えているのだろうか。もう引っ掻く爪は無いから、殴るか蹴るかのどちらか。
壊れてしまったセイラさん。あなたは、何も悪くなかったのです。
強いて言うなら、あなたの罪はその現実を受け止めずに、目を逸らしてしまった事。――辛いのに、変わりはありませんが。
まぁ、それも一つの人生でしょう?
2011/04/30 Sat 17:57 [No.301]
ロサラ
風の噂によれば、どうやらジャグラーさんやフィリットさんは、二人で旅に出てしまうそうだ。
なので、私が人間世界へ帰っても、もう彼らと掲示板で談笑する事など、出来ないのだ。
寂しくない、と言えば嘘になる。
ジャグラーさんは昔から掲示板での付き合いがあったし、フィリットさんも同い年、という事が判明して打ち解けたばかりだったのだ。
もう、あの二人とは会えない。
既に二人は出かけてしまったそうなのでもう直接会って挨拶する事は出来ないので、私は心の中で二人に別れを告げた。
私は、ずっと待ち望んでいた人間世界に帰る事にしよう。
早く学校に行きたいし、録画していた深夜アニメも溜まってきている。
まぁ、それらは単なるおまけの理由でしか無い。
「――寂しがり屋蓮華の為に、私は早く帰るとしますか…でふ」
あの時の戦いからずっと手元にある、彼女自身――彼女の爪を、手の中で抱きしめる。
一足先に散ってしまった私の親友。今頃私がまだ戻っていなくておろおろしているのであろう。
ここで過ごした七日間。
みんなで、戦った。笑った。涙を流した。怒り狂った。悲しんで、悲痛に喚いて、また笑った。
それらは、私が生涯忘れる事の無い、色々な思い出の記憶達。
人間では無い存在になって、授けられた様々な物、様々な思い。
全部、全部。それらはいつか、いつの間にか誰かに語り継がれているのだろうか。
――否、これらは全て秘密にしておく事にしよう。
何も知らない人々の間では、あの不思議なURLについて延々と、様々な疑問や考察が飛び交うのだろう。
そして、色々な夢話が、誰かによって生み出される。
それで、いいのだ。
夢を造る者
それでこそ、『Dream Maker』。
それも、悪くないでしょう?
………でふ。
***あとがき
なんじゃこりゃあああぁあぁっあっあああっ
何か最後勝手に纏めちゃいました本当にすみませんでした色々無理矢理すぎる
遅れた上にこんな出来で…申し訳ない。
執筆中のBGM⇒
2011/04/30 Sat 18:15 [No.302]
サジタリウス
DMとDCの戦いから数カ月・・・
咥えた鉄の棒が印象的なクチートはシンオウ地方のとある森にいた。
「おお、これはいい甘さ。甘党の僕にはたまらないなぁ。」
『彼』がかじっているのはこの地方では有名な「森のヨーカン」である。
森のヨーカンを食べながら『彼』はシンオウ地方観光マップを取り出してチェックを入れ始めた。
「うーん、テレビコトブキにもいったし、炭鉱にもいったし…」
どうやら行った名所にチェックを入れているようだ。
「三つの湖にもいったしな…もう大体の観光名所は行ったかな。あとは―」
目の前の館から上がる悲鳴を聞きながら、『彼』はマップを放り投げた。
「―あとはお馬鹿な敵さんを倒すだけですね。」
――――――――――――――――――――――――――――
館では一匹のサーナイトを、ニヤニヤ笑いを浮かべた数匹のポケモンが取り囲んでいた。
「わ、私をどうするつもりですか!?」
震えながら訊くサーナイトに、この集団のリーダーらしいバクオングがニヤニヤ笑いをより一層強めながら答える。
「いやいや、お前には天国に行ってもらおうかなァと思ってよォ。」
「ま、まさか殺すつもりですか…!?」
「別に殺しゃあしねェよ。ただなァ、俺たちと気持ち良くなって天国に行ってもらおうと思ってなァ。なァ?お前ら。」
バクオングの言葉にほかのポケモンたちも「そうそう」「気持ちよーくな」などと言いながら狭めていく。
「ひっ…キャーーー!」
悲鳴を上げるサーナイトに詰め寄りながらバクオングは楽しそうに言う。
「そんな悲鳴上げても誰も助けなんて来ねェよ。」
その時、扉の外から声が聞こえた。
「それ…フラグですよ?」
扉が蹴破られ、鉄の棒を咥えたクチートが中に入って来る。
「な、なんだてめェ!」
バクオングの言葉に応えるように『彼』は答える。
「只の…DMの残党潰し屋です。此処にDCの残党がいると訊いて来ました。」
「DMの…残党潰しィ!?」
その素っ頓狂な声に『彼』がうなずく。
「はい、素直にお縄につくなら痛い目には合わせませんよ?抵抗するなら多少は手荒にさせて頂きますが…」
「ハッ!お前一人なんかにやられてたまるかってンだ!てめェら、やっちまえ!」
命令を受け向かってくるポケモンたちを見て、彼は溜息をついた。
「はぁ、しかたないな。」
―――――――――――――――――――――――――――――
数分後、『彼』によってバクオングを含むDCの残党達は全員気絶させられていた。
「はい、シンオウ地方の森の洋館で何匹か気絶しているのでテレポートできるポケモンに回収させてください。はい、では。」
ポケギアでしばらく会話していた『彼』は通信を切りサーナイトに話しかける。
「えーと、ひとりで帰れますか?」
「は、はい…」
「よかった、では僕はこの辺で…」
そのまま出口に行こうとした『彼』にサーナイトが訊く。
「あ、あのっ!名前教えてくれませんか!?」
『彼』はその質問に鉄の棒を咥え直し、答えた。
「僕の名前は―――」
―fin―
―――――――――――――――――――――――――――――
しまった…出遅れた…
2011/05/03 Tue 20:22 [No.316]
あさぎり羅一
「DJマグナpresents radio
“LEGENDALY WINGS”!!」
―――――――――――――――――――――――――
「長く、苦しい戦いが……ついに、終わりを迎えました。
マルクとガウリイル。2人の壮絶な闘いはまさに最終決戦に相応しい死闘と言えるでしょう。
ほどなくして現れた長老カイリューによるDCの再建も順調のようです。……新たな一歩を歩み始めたDCのこれからに、僕は期待します。
これでもうDCの恐怖に怯える必要はなくなったのですから。」
―――――――――――――――――――――――――
「この世界にやってきた元・人間のポケモン達も皆、人間界へ帰る事ができたようです。もちろん、リタイアした方々も。
………無事だと知っていても僕は不安でした。多分、心のどこかで『リアイアした人は本当に死んでしまったのではないか』と思ってしまっていたんだと思います。
全員無事に帰還できたという報告を聞いた時は本当に安心しました。おかしいですよね?リアイアしたからって本当に死ぬわけではないというのに。あはは…。
でも、…………………本当に良かった。」
―――――――――――――――――――――――――
「そして、現実世界であきはばら博士から語られる真実・或いは仮説。
結論から言えば、全ての謎が解き明かされた訳ではありませんでした。
ですがDCのガウリイル…そしてDMのゴットフリート、2人は確かな信念を持っていました。それはとても正義や悪といった言葉では表現できない……いや、どちらもそれぞれの正義を信じていただけだったのです。
そもそも語り手であるあきはばら博士の立場は中立。それだけではありません、彼女はマルクが負けた時の事すらも想定していたのです。
全ての出来事は……………………………彼女の掌の上の出来事だったのかもしれません。」
―――――――――――――――――――――――――
「物語が幕を下ろした時、この放送の役目も終わります。
その時“執筆者達”を導いてきたラジオはノイズを発するだけのただの箱と化すでしょう。
僕は導く者、DJマグナ。物語を紡ぐ“執筆者達”の元に現れる存在。
もしかしたら彼らの役目までもが終わったかのように見えるかもしれません。
しかし彼らの執筆は止まらない。
一つの物語が幕を下ろした時、また新たな物語が幕を開ける。そしてまた別の物語が幕を下ろす。それは際限なく続いていく執筆の連鎖。
物語が存在する限り僕も存在し続ける。
いずれ生まれ来る新たな物語を通して、僕は再び“執筆者達”を導く為に現れるでしょう。
それまで、
しばしのお別れです。」
―――――――――――――――――――――――――
「このラジオを聴いてくれた全ての方々に、最大限の感謝を込めて。
本当に、ありがとうございました。
僕ももう行かなければなりません。
次'の'世'界'へ'。
Dream Makersの最新情報をお伝えしてきた番組、LEGENDALY WINGS。パーソナリティはDJマグナでした。
またいつか、どこかで会いましょう。 ――――――――さようなら!」
『“LEGENDALY WINGS” この番組は旅猫堂の提供でお送りしました。』
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2011/05/04 Wed 01:04 [No.318]
あさぎり羅一
既にラジオスタジオ内にスタッフの姿はなく、明かりも全て消えていた。
それでもスタジオの中が完全な暗闇と化していないのは、外の通路の明かりが僅かに入り込んでいるからである。
DJマグナは1人、電磁浮遊でふわふわと移動しながら機材等の最終確認を行っていた。
といっても手も足も無いマグナに出来る事といえば流し見する事くらいだが。
―――コンッ コンッ
放送が終わったスタジオのドアを叩く音。マグナは疑問を抱いたが、入ってきたポケモンの姿を見てすぐに納得した。
「あぁ、あなたでしたか」
逆光のせいでよく見えないが、そのシルエットがランターンのものである事は認識できる。
「―――――――――――――――」
「えぇ、この世界の物語は終わりました。先ほど放送も終了した所です。」
しかしランターンのシルエットの言葉は何故か聞き取る事ができない。
「―――――――――」
「いえ、人間界を始め他の世界から来た方達はもう皆帰っていきました。
残ってるのは多分僕だけじゃないですかね」
言いながらマグナはドアに向けて歩を進め(足は無いが)、ランターンが道を空ける。
通路に出た2人はドアを挟んで正面から向かい合った。それぞれの後方へ目をやると通路が真っ直ぐ伸びている。
「僕もそろそろ行かないと。“執筆者達”が待っていますしね。」
「―――――――――――――」
「らりるれろ! …ってそれは“愛国者達”でしょ!僕が言ってるのは“執筆者達ですってば!……って何やってるんでしょうね僕達」
「――」
相変わらずランターンの言葉は聞き取れない。
しかし口の動きから、笑っている事は見て取れる。
「じゃあ………僕はそろそろ行きますね。次'の'世'界'へ'。」
マグナは話を切り上げ、通路の奥へ進み始めた。
その先に何があるのかを確認する事はできない。
というのも、マグナが向かっている通路の先は光が強過ぎて真っ白にしか見えないのだ。
「――――――――――」
ランターンの言葉にマルマインは足を止め、振り返った。
「心配は無用ですよ!僕達は世界を渡り歩く存在。
いつかまた、同じ世界に辿り着けたる事もあるでしょう!」
言い終わるとマグナは再び歩を進め始めた。それを聞いたランターンはマグナとは反対側の通路へ向けて歩を進めていく。
こちら側も同じく、光が強過ぎて先に何があるのか確認する事はできない。
そんな光に怯む事もなく、ランターンはあっという間に見えなくなってしまった。
「………」
マグナはランターンの気配が消えた事を察知する。が、振り返りもしない。立ち止まりもしない。ただ真っ直ぐ通路を進むのみ。
そして、 DJマグナもまた、
光の中へ消えていった。
2011/05/04 Wed 01:47 [No.319]
ルナサ・クリスティ
この世界を混乱に陥れていたデパート・コンクエスタ。
そしてそのデパート・コンクエスタを率いていたガウリイルは死亡し、長きに渡って行われていたドリーム・メイカーズとデパート・コンクエスタの戦いは収束した。
その後、この世界と元々人間達のいた世界に平和が戻り、セレビィによる空間移動術によって2つの世界は繋がった。
・・・
あの後。
リディアと激闘を繰り広げたあの後。自分が動けなくなっている内に様々なことがあったらしい。
度重なる元人間の離脱。ガウリイルの死亡。デパート・コンクエスタの解体。そして世界の再興。
自分は… 今まで何をしていたのだろうか。
「……」
「生きていい」なんて思えないから一人になった。「寂しい」なんて言えないから心の中で溺れた。
弱い自分を殺したい。しかし殺せない。何故ならそれは自分だから。
「…ハァ」
元の世界に帰っても何も面白いことは無い。仕方がないので他のポケモンや元人間とは誰一人会わず、いや、会えず、一人であてのない旅を始めた。
旅の途中で力無き一般人… いや、一般ポケモンに襲い掛かるDCの残党と出会うこともあった。
「なんだ、テメェ!?」
そして、今も出会っている。
DCの残党であるノクタスとハリテヤマは、睨みを利かせていた。
その後ろには彼らに襲われて怯えている、レベルの低い進化していないべビィポケモンが十数匹。
「あァ?」
手足をダランとさせながらうつむいていたルイージは顔を上げ、ノクタス達を睨み返した。
「ひっ…」
「ひ、怯むな! 奴をぶちのめすんだよ!」
「お、おう…!」
彼の目は死んでいる。それがどういうわけか、相手に対する威圧となっていた。
だが、ノクタス達は臆せずにルイージに襲い掛かってくる。
「うおおぉぉっ!」
ハリテヤマはかわらわりを繰り出そうとするが、ルイージはそれを回避。
「ふん…」
腹に蹴りを一発して浮かせる。
「はぁっ!」
もう一発。先ほどよりも強力なにどげりを繰り出し、ハリテヤマは大きく吹っ飛んでいった。
「やなカンジーっ!?」
「貴様ァ!? よくも相棒を!」
どこかで聞いたことのあるようなセリフを言いながら、ノクタスはミサイルばりを発射するが、ルイージは腕で防御。
その攻撃が止んだ瞬間、ルイージは素早くノクタスに近づく。ノクタスは、ハリテヤマの時のようににどげりが飛んでくるのかと身構えていたが、ルイージはジャンプした。
「な、何!?」
「他愛も無い…。少しはリディアさんを見習うことだね…」
「な、お、お前は一体!?」
「貴様に名乗る名前は無い!」
ブレイズキックを繰り出し、ノクタスもハリテヤマと同じく大きく吹き飛ばされ、星になって消えてしまった。
「……」
脅威は去り、DC残党に怯えていたべビィポケモン達は一斉にルイージの足元に群がっていた。
「おにいちゃん、ありがとう!」
「うわあん、こわかったよお!」
「な、お、おい… 俺は感謝されることなんて何も…」
ルイージは気づいた。ここには彼らの親というべきポケモンが一匹もいなかった。
「なぁ、お前らに聞きたいんだが… 親はどうしたんだ?」
2011/05/04 Wed 10:54 [No.320]
ルナサ・クリスティ
「……」
ルイージが質問をすると同時に、べビィポケモンたちは一斉に黙り込んでしまった。まさかとは思っていたが…
「ぼくたちのおかあさんは… でぱーとこんくえすたにころされたんだ…」
「でも、おれたちだけは…」
「……」
彼らの親はDCによって殺されていた。彼らは戦災孤児だったのだ。
彼らのリーダー格であろう、ピチューは他のポケモン達が泣く中で泣かまいと堪えていたが、感情が抑えきれなくなったのか、泣き出してしまった。
「おまえら! なくんじゃ… うわああん!」
「お、おい… …よし、よし」
ルイージは泣き出すべビィポケモン達を宥めるかのように一匹一匹ずつ頭をなでる。
彼らを放っておくわけにはいかない。そう思ったルイージは決意した。
彼らが成長して大人になるまで彼ら戦災孤児の面倒を見てやろう。
それが唯一自分にできることであり、DCに所属していた自分への贖罪である。
「俺が… お前たちの親代わりになる!」
「え…」
この世界に生まれて今もこうして生きている。
何も知らない小さな子供達が、大きくなって一人だって歩けるのだ。
いつか自分にも命の終わる時が来るだろう。だが、彼ら子供達が大きく成長し、次の未来へと託すように…
「色々と、不慣れなこともあるけど… よろしくな」
「ありがとう、おにいちゃん!」
「そういえばおにいちゃんのなまえは?」
「そういえば名乗ってなかったな。俺は…」
まずは小さな一歩から始めよう。
この先起こるのは楽しい事ばかりではないかもしれない。だけど、悲しい事も皆で乗り越えてみせる。
心の死んでいたルイージの心は再び活動を始めようとしている。彼の目には、久々に笑顔が宿っていた。
「こいつらの成長を見届けるまでは… まだ、満足できないぜ…」
2011/05/04 Wed 10:57 [No.321]