Makoto
しばらく時間が経ってから、やっと悲しみから立ち直って涙をぬぐい直したマコトは、一先ず深呼吸をしながら花束を、かつて入口であったであろう場所に置き直し、手を合わせた。これでいくらかは、安らかに眠りに付けることだろう(といっても、既に現実世界に戻っていることを知らないのだが……)。
「ふぅ、これで大丈夫だよね?」
マコトは一息ついて、本部跡地から立ち去ろうとしたその時―― 後ろから小さく話し声が聞こえてきた。
『お前も来るなんて、物好きなポケモンもいるもんだな……』
『私たちだけじゃないって事ですわ。ここに弔いに来るのって』
『……ここでは本当の私の名を言うなよ、ファビオラ』
「……!!」
いつの間に来ていたのだろうか、エルレイドとチルタリスの2匹が花束と数珠みたいな飾り物を手にして歩いてるのが見えた。戦いが終結してDMとDCが和解したとはいえ、油断はできない。
「あなた達…… な、何しに来たんですか!?」
これ以上の悲劇は作らせてなるものか! そう心に決めていたマコトは半ばきっと表情を固くして構えていた。しかし――
「穏やかじゃないですわね…… そこのリオルさん、そんなに緊張しなくてもいいのよ? 戦いはもう終わったんだし」
「我らは弔いに来ただけなのだ…… 無闇に血を流す必要はないだろう?」
「ほら、リラックスリラックスですわ! アイビスも緊張してないの!」
「へ… えぇっ!? クールじゃないの!?」
「だから本当の名を言うなったら! あぁもう、折角なりきってたのに……」
「は、はぁ……」
チルタリス――ファビオラは緊張で顔を引きつっている彼らをなだめて悠々としているが、エルレイド――クール……否、メタモン――アイビスは唐突に話を展開されて困惑している様子。
マコトも、いきなりの急展開に、目をパチクリさせるしかなかった。
その後、彼らも同じように仲間の墓参りに来ていたことを知って赤面しながら謝り続けたマコトと、そんな彼を優しく笑いながらも昔の思い人を想っていたファビオラ、今では変身を解いて付き人を思いながらもどこか目を逸らしていたアイビスとで、それぞれの状況を話し合った上で双方の目的を果たしていった。
「早いものだな……。自分たちが、目的や信念を持って戦いに挑んだ一週間―― いろいろあったのが信じられないな」
「えぇ、前までの戦いがウソのようですわね…… 失ってしまったモノも多いけど、それによって私たちも大きく何かが変わっていった…… 私、この事は忘れないつもりです」
ちなみに後でアイビスにラプラスさんについて話を聞いたところ、彼はクールと死闘ともいえる一騎打ちにて、互いの大技をぶつけ合った末に満身創痍の状態となり、双方ともに力尽きたとのこと…… 唯一その場にいたアイビスは、全く手を出していないというのも素直にうなづける事ができた。
前まで敵味方に分かれて戦ったとはいえ、世界が平穏となると心に安心が生まれていったのだろうか。3人のそれぞれの目は、曇りが及んでいなかった。
「今後も、このような平穏な時間が続くといいなぁ……。僕もこれまでの思い出、忘れないようにするね……!」
3人はゆっくりとうなづき合い、再会を約束してその場を去って行った。いろいろと言葉にしたかった分もあったけど、それは後で帰ってから考えよう―― そうマコトは思い直したのだった。
――フリッカーさんとアッシマーさん、そしてあげはちゃん…… 戦いが終わって一安心してますよね? 今、僕もそちらに行きます……。一緒に生き残れたら、その時は…… どうか友達に……――
僕らの時間は、ここから始まったばかりなのだ!
――――――――――――――――――――――――
◇あとがき
はい、どうも書かせて頂きましたー! 5日目からの参加で身の周りが大きく変わったと感じてるマコリルです。稚拙な部分も多かったですけど、最後まで参加できて嬉しい限りです! 本当にありがとうございました!
毎度の事ですが、修正すべき問題点が見つかりましたら、ご指摘をお願い致します。
2011/04/30 Sat 01:34 [No.299]