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ジャグリオとエーフィリットのエピローグ

ジャグラー

先ほどの告白のエーフィリット視点です。(フィリットさん執筆)

「今日の夕方、コガネデパートの屋上に来てくれないか?……待ってるよ」

そうジャグラーに言われて、コガネデパートの屋上への階段を上っていくフィリット。

――だけど、一段一段上がるごとに、足が重くなっていく

――どうしてだろう?彼が待ってるのに

言葉を告げた彼の瞳は、何かを決意した瞳だった。

――何か、怖い

そう思いつつ、一段一段上がっていく。

――いや………ジャグラーさんが待ってるんだもの……行かなくちゃ……

何故か、階段を上るのに凄く時間が掛かった気がした。

+   +   +

屋上のドアを開いた時、彼はイスに座り待っていた。

「あ………ジャグラーさん……」

私が来たことに気づいたのか、ジャグラーはコチラを向き、言った。
「フィリットさん」

――彼の顔は、前に言葉を告げたあの時の瞳よりも、真剣な瞳だった

そしていつの間にか、私も真剣な表情になった。

「……それで、話って、何なの?」
真剣に向き合っている為、緊張が走って私はすぐさま本題に入ろうとした。

彼はまだ何か覚悟ができてなかったのか、少し驚いた様子だったが

「あ、ああ………」
そう言った後、覚悟を決めた表情になり、口を開いた。

「……前に、フィリットさんは俺に『自分の道を進め』って言ってくれましたよね?」
「うん……」
私が返事したのを確認し、ジャグラーはキッとした顔でこちらを向き、話し始めた。

「それでな……俺、この世界でやってみたいことが…あるんだ。」
「やってみたい……事?」

――あれ…ジャグラーさん………敬語が…無くなった……?

彼の変化を薄々感じながらも私は返事をした。

「……このポケモン世界を……旅したいんだ。
 このジョウトも、カントーも、シンオウも、オーレも…ホウエンも。
 見たことない地方、全てを。この世界の全てを旅してみたいんだ………

 君と、一緒に」

「…………え?」

――今、何て………?

彼は、私が驚いた事を確認しながら、私に背を見せ、語り始めた。

「フィリットさん。俺はあなたを最初に見たとき、心臓の鼓動が速くなった気がした。
 ……最初は、とくに気にもしなかった。でも、DM本部での戦いで負傷した時にあなたが木の実を持ってきてくれた。
 あの頃から、心臓の鼓動が速くなった理由が分かった。」

彼は、昔の思い出を思い出すかの様に、ポツリポツリと話す。

「……最初は戸惑ったんだ。だって、俺はDCの裏切り者。しかもあの頃はDMにいることがいやでいやで仕方なかったからな。
 ……でも、あの時フィリットさんは俺に思いを伝えてくれた。あの時は嬉しかったよ。フィリットさんからそんなこと言われるとは、微塵も思ってなかったんだ。

 それで決心したんだ。俺はDMの一員となり、この戦いを終わらせたら、あなたに思いを伝える……ってね」

――思いを、伝える……?

彼は呆然としている私の方を向いて、手に持っていた七色に光るハート型のウロコ――ハートのウロコを私の前に差し出してきた。

「これ……受け取って欲しい」
「へ……?」

「ああ……ラブカスの風習を知ってるか?フィリットさん」

私は、そんなこと全く持って知らなかったので、首を傾けた。
すると彼は、私に教えてくれた。

「カップルのどちらかが相手にラブカスを渡すと、そのカップルは永遠の幸せが訪れる」

「……ラブカスは持ってこれなかったけど……代わりに、コレを」

――ちょっと、待って、何を

「じゃ、ジャグラー……さん……?」
頭が混乱し始めた。

けれど、彼は私の混乱が収まるまで待ってくれた。

「……大丈夫?」
「……う、うん」

私が返事したのを見て。彼は、一瞬すぅと息を吸う。そして、私の瞳を見て、喋った。

「………改めて、言わせてくれ」

「俺は、貴女が好きだ」

「そして、俺と、一緒に旅をしてくれないか」

「フィリットさん」

+   +   +

こんな事になるなんて、これっぽっちも思っていなかった。

でも、この事態を招いたのは、事実上私の身勝手な行動からだったんだ。

先に思いを告げたのは私。

先に彼から離れたのも私。

勝手に、好きになった。

勝手に、いずれ帰ってくるだろう返事を怖がった。

そんな私の事を、彼は好きだと言ってくれた。

私の前で、思いを告げてくれた。

――もう、怖がったらいけない

――逃げちゃ、いけない

私は、決意した。彼がそうしたように。

+   +   +

「……フィリットさん?」
彼は、私の顔を覗いてきた。多分、私の事を心配してくれたんだろう。

私は彼と顔を合わせると、瞬時に素早く彼の懐に飛び込んで、彼の頬に口付けをした。

私も、自分がこんな行動に出るなんてちょっと驚いたけど。

「は……っ!?」

一番驚いたのは彼の方だ。青い顔が真っ赤になっていくのが分かる。

そんな彼に向かって、私は言った。

「私も好きだよ、ジャグラーさん」

「………ぁ……」

彼の顔が、さらに赤く染まる。
私の顔も、多分――いや、絶対。赤いと思う。

「……貴方に、ついていくから」

「……フィリットさん…………」

彼は、照れくさそうに笑った。

2011/03/09 Wed 21:44 [No.177]