椎名
ガヴイリルが、死んだ。
 それが意味するのはつまり、終わりというわけで。
 たくさんの犠牲を出した長い長い戦いに、終止符が打たれたということだ。
「……」
 私がその知らせを聞いたのは、デパコンの医務室。
 そのとき感じたのは達成感……っていうか、なんだかふわふわした実感というか。
 いざ終わってみると、なんだかすごく早かったように感じる。
 今私の頭の中にはこのポケモン世界に来てからのことが、そうまさしく走馬灯のように浮かんで……あれ、これなんて死亡フラグ?
 ふと隣を見れば、どなんさんとフィリットさん……と、なぜかジャグラーさんが眠っている。なにがあったんだろ。
 でも、フィリットさんと並んで幸せそうに眠っている様子は、こう、なんというか……
 りあじゅーおしあわせに!!
  *  *  *
 セイラさんやラプラスさんのようにこの世界でしんでしまった人たちは、元の世界ではしんでいない、つまり生きているそうだ。
 今は二匹のセレビィによって二つの世界が繋がっているから、ひょっとするとまた会えるかもしれないし。
 ……あのときは仕方なかったとはいえ、今度またセイラさんにあえたら謝ろうか。
 そのことについてはホッとしたんだけど、しんだけどしんでいないのはいわゆる“元人間”だけであって、ソードさんやリリアさん、ルカさんみたいに、もともとこの世界にいたポケモンのみんなはもう戻っては来ないそうだ。
 あとで精神離脱しているかいないか云々みたいな説明を聞いたけど、なるほどさっぱりわからん。
 いや、ガヴイリル……ガヴリイル?  がまた甦るようなことがあったら、それはそれで問題が出てくるけど。
 ――と、いうことで。
 私は今、渦巻島にいる。
 ここで眠っているのは、ソードさんとルカさんだっけ。
 リリアさんは確かタンバシティにお墓が建てられたんだっけな……
 ひっそりたたずむ小さな墓標を前に、合唱。
 洞窟を抜けて、水平線を眺める。いやぁ、世界ってすごく広そうだね。
 なんとなく足元の砂を蹴飛ばしてみる。砂が飛び散る。じゃりじゃりする。……当たり前か。
 ぼすん、と砂浜の上で仰向けに寝転がってみる。空に輝く太陽が目にまぶしい。目に悪いな。
 そのまま、しばらく。なにをするでもなく、ただ寝転がっているだけ。
 さすがにじっとしているだけではちりちりするので、たまに寝返りもうってみる。
 しかしまあ、耳に響く波の音がなんとも心地いい。ついまどろんでしまう……うっ、寝ないぞ? さすがにここでは寝ないぞ?
 さて、戦いは終わった。
 ということは、あの声の主の目的は果たされたということだ。
 ならば、私はこれからどうするべきなのだろう。
 やるべきことが終わったなら、元の世界、私の世界に帰ろうか。
 ……いや、正直この世界なら勉強もないし一人でも生きていけそうだし楽ではないけど楽しそうだし。
 じゃあいっそのこと、この夢のような世界で一生を過ごしてみようか?
 ……いやいや、元の世界でやり残したっていうか見おさめていないことも結構あるし。あいつら無事にくっついたんだろうか。
 いやいやまてまて、そもそもこの世界と元の世界は繋がってるわけだから、行ったり来たりは自由なのよね?
 だったら、文字通り行ったり来たりを繰り返せば、ある意味二種類の人生が楽しめたりするんだろうか。
 ……それはそれで疲れそうだけど。
 透き通るような青空を仰いで考えることしばらく。
 やっぱり、ここは一度元の世界に帰るべきだろう。
 私が生まれて、育った世界。
 過去の私があるから今の私がいるわけだから、未来の私は、きっとそこにいるべきなんだろう。
 ……あーダメだ自分で言っておいてすごく恥ずかしくなってきた。
 まあ、まずはセレビィのところに行こう、話はそれからだ。
 パッチールこと人間こと椎名麻樹、ただいまより私が進むべき世界に帰ります。
 まあ、でも。
 時々この世界に遊びに来て、みるのも、悪くはない……よね?
  ― ― ―
「渦巻島で一匹ニヤつく奇妙なパッチールが出没する」なんて噂はありません。ありませんってば。
エピローグ突入ということでカチャカチャうってみた。
携帯でうったのをコピペしてるから、本編とそぐわない部分もあるかもしれない…
パッ椎名はとりあえず、ソードやリリアなどのお墓参りをしてから一旦人間界に戻る様子。
2011/04/23 Sat 22:27 [No.271]