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ジャグラー
「私も好きだよ、ジャグラーさん」
「フィリットさん・・・」
この言葉を聞いて、ジャグラーは照れくさそうに笑う。
―――これで、思い残すことはない・・・。
ジャグラーは机の上に置いてあったデパートのフロアから取っておいたテンガロンハットを被る。
そのテンガロンハットはなんとなく、温かく感じた。
不思議そうに見つめるフィリットに、彼は頬笑みながら言う。
「それじゃあ、行き先はどうする?」
「行き先・・・それじゃあ、あっち!」
フィリットは東の方向に指をさす。
東・・・ここから見れば、ワカバタウンに続いて、そこから海を渡ればカントー地方に行ける。
カントー地方に行ければ、他の地方にも行ける可能性もある。
その方角は、ジャグラーが行きたかった道でもある。
その言葉を聞いたジャグラーは、親指をぐっと突きたてる。
「東か・・・太陽が昇る方向でもあるし、カントー地方に続く道でもあるな。」
「うん。私も、その・・・ジャグラーさんと、色んな地方を見たいから・・・」
「フィリットさん・・・」
二人は顔を赤く染めながらエレベーターに向かう。
が、エレベーターに入る前にふとフィリットは思い出したようにジャグラーに話す。
「所で・・・私達が旅することをみんなに言わなくて、大丈夫なのかな?」
「あ」
思わずジャグラーの顔が青ざめ、ひきつっていく。
―――――しまったぁ、最後の最後でそんな重大な事を忘れるとは・・・!!
「ど、どうしますフィリットさん?こうなりゃ今から直接言って――――」
「あ、待ってジャグラーさん。こういうときは・・・これを使えば、いいんじゃないですか?」
慌てふためくジャグラーをよそに、フィリットは案外落ち着いて周りの物を見ていた。
そして、フィリットの手には一本のペンと一枚の便せんが握られていた。
コガネシティ ポケモンセンター
「えーと・・・ここに置いておくか」
ジャグラーは机の上にそっと便せんを置いた。
そしてすぐに外に出て、コガネデパート前に戻る。
「気付かれなかった?」
「ええ。何とかばれませんでしたよ。・・・にしても、ほんとにいいんですか?みんなに言わないで手紙だけ置いていくなんて」
あの後二人は便せんに旅に出るということだけを書いてポケモンセンターに置くことに決めた。
つまり、それは誰にも言うことなく旅に出るということである。
「大丈夫だよ。誰も反対する人なんて、ここにはいないから。それに・・・」
「それに?」
「・・・誰にも知られずに旅をしたいから、かな?」
顔を赤くしながら、フィリットは微笑む。
その微笑みを見るたびにジャグラーも笑顔になる。
「なるほど。・・・それじゃ、行きますか。」
「うん!」
―――――これからの二人には、様々な出来事が起こるだろう。
時には笑って、泣いて、喜んで、怒って。
色んな事が起きるだろう。
俺たちはそんな体験をしながら、ゆっくりと歩んで行きたい。
俺が一番大好きな人と共に、ゆっくりと歩んで行こう。
「フィリットさん」
「何?ジャグラーさん」
「大好きだ」
フィリットの頬に、ジャグラーは一つ口づけした。
2011/03/09 Wed 21:44 [No.178]