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宮野
ポケ書で小説を書いてる宮野です。
- Story ストーリー -
季節は春。始業式直前の金曜日。歌う事と小説を読むのが大好きな桐鐫学園高等部1年生の少女・ユウ・エトミヤは、ある夜、空を舞う黒い騎士姿と緑色の瞳をした少年に遭遇する。その後を追ったユウは幻想空間『ナイトバニシング』に入ってしまう。本来、この場所は少年だけしか入られない場所だが、ユウだけが例外で……。そこで紫色の騎士のもう一人の少年に襲われるが、黒の騎士(シュルツ能力者)=シン・カミナギに救われる。
「此処は本来は君が入っちゃいけない……」
彼は『神威』と名乗り、『ナイトヴァレリオン』という争いに参加していると告げる。戦闘終了後、彼は記憶を消す事が出来る勾玉『蒼穹の勾玉』でユウの記憶を消す。
土曜日、イズミ・エリと出掛けたユウ。その途中、大樹から降りられなくなった子猫を発見したユウ。木に登り、子猫を助けたのは良いが、誤ってバランスを崩してしまい、落ちてしまうが、一人の少年に救助された。
「大丈夫ですか……?」
ユウが目を開けると、昨日図書館で出会った少年がいた。だが、ユウはその事を覚えていなかった。互いに自己紹介をする3人。ユウが家に帰ると彼女の弟・タクトは苛立っていた。
休日明けの月曜日、始業式。ユウとエリは2年生に進学する。学園を満喫するユウ。新入生がやって来る事に喜ぶユウだが、転入してきたのは昨日出会った少年・シン・カミナギだったのだ! 驚くユウだが、彼女はナギに次第に惹かれていく。その夜、図書館に向かった2人は、詩樹玖の襲撃を受ける。その正体は、ユウの弟、タクトだったのだ……!!
昼の顔はシン・カミナギ、夜の顔はシュルツ能力者・神威となり、エレイシアを10個集め、願いを叶う為に戦いに身を投じる。図らずもユウも巻き込まれてしまうのだった……。
2011/05/09 Mon 00:57 [No.325]
宮野
- キャラクター -
・主要人物
ユウ・エトミヤ(荏宮 祐)
主人公。私立桐鐫学園に通う高等部2年の16歳。歌う事と小説を読むのが大好きな少女。一人称は「あたし」か「私」。両親が海外旅行で家を開けている為に現在は弟のタクトと2人暮らし。性格は元気で明るい。妄想癖が強く、親友のイズミ・エリに呆れるほど。成績優秀だが運動は大の苦手。ひょんな事から神威=ナギと出会い、エレイシアを巡る戦いに巻き込まれてしまう。料理が苦手。エリ、ナギとは同クラス。演劇部所属。
なお、口が悪いのは父親譲りとの事。タクト曰く「料理の腕は交通事故レベル」。
シン・カミナギ(神凪 慎) / 神威(かむい)
ヒロイン。桐鐫学園高等部に転校生として転入してきた少年。高等部2年生。16歳。通称「ナギ」。剣道部に所属している(第2章では掛け持ちで演劇部に入られている)。氷・結晶を自由に操るシュルツ(レインウォールズ)を使用する能力者。一人称は「僕」。心優しく、おっとりしている性格だが、キレると凄まじく怖い。また、重度の天然ボケと大食いの持ち主。礼儀正しく、誰に対しても丁寧な口調で話す。成績優秀・容姿端麗・運動神経抜群で女子生徒達の憧れの的。両親は既に亡くなっており、現在は義理の父・リク・ツナシとの2人暮らし。料理の腕前はかなりのもの。
実は孤児であり、11年前にリクによって引き取られた。桐鐫市の事は良く分からず、重度の世間知らず。アホ毛が表情によって動く。
シュルツ時での性格は冷徹な性格となり、一人称が「俺」に変化。黒い騎士服を身に纏い、瞳の色がエメラルドに近い緑色に変化する。ユウ曰く「ギャップを感じる」。体術・剣術に長けている。武器は白色の銃・スノウクィーン。普段は銃の形をしているが、「ソードモード」の掛け声で剣型に変形する事が出来る。その為か臨機応変に戦える。
リオのコスプレ被害者(殆ど声優ネタ関連)。
タクト・エトミヤ(荏宮 鐸斗) / 詩樹玖(しずく)
桐鐫学園中等部の3年生。15歳。ユウの弟。姉とは対照的に運動神経抜群だがその反面勉強が苦手。極度のシスコン。感情の起伏が激しく、めまぐるしく表情が変わる。一人称は「俺」。幼少期は泣き虫だったという。料理の腕前は一流。演劇部所属。口が悪い姉のユウ、凄まじい天然を誇るナギに呆れつつも「俺が仕切らなきゃ」とリーダーシップを取ろうとする。
炎を操るシュルツ(ファイアフォニック)を使用する能力者。武器は銀色の二刀流剣・エーシュヴェルツ。変身しても性格は変わらない。水色がかった青色の騎士の姿をしている。ユウにその事を隠していたが、神威(ナギ)戦でバレてしまう。激しい戦闘の末に武器が壊され、姉に励まされて神威と一緒に戦う事を決意する。
リク・ツナシ(都梨 陸)
シン・カミナギの義父。27歳。大学生風の外見だが、れっきとしたナギの義理の父。容姿はナギにそっくりだが、瞳の色が違う(ナギは明るい赤色、リクは青色)。明朗活発&超ポジティブな性格。イタズラが好きで、ナギをからかって楽しんでいる。反面、冷徹な面もあり、ギャップが激しい。隣の県出身だが、5年前に桐鐫市に引っ越してきた。
シュルツ能力者だったが、現在は引退をしている。高校生(16歳)の頃にナギを引き取り、以降2人暮らし。
イズミ・エリ(和泉 慧莉)
ユウの中等部時代の同級生で、桐鐫学園高等部2年の16歳。ユウの妄想癖に呆れている。運動神経が抜群で、運動部に所属している。
グスク・リオ(城 莉愛)
高等部2年生。ユウ達より1つ年上の17歳。城財閥の令嬢。心優しきお嬢様でもあるが、ちょっとズレた所もある。ナギにコスプレをさせる程のコスプレマニア。ナギとは隣の県で出会った間柄。一人称は「私(わたくし)」。
シンク・ミナ(咸 薪玖)
高等部2年で16歳。内気で大人しい性格。ケントと一緒にいる事が多い。
ユキジマ・ファード・ケント(Yukijima Fald Kento)
高等部2年生。17歳。シンクの親友で、日系アメリカ人。明るく活発な性格。
ヒトミ・イリノ(入埜 瞳)
桐鐫学園の教師で担当教科は国語。27歳。私生活ではだらしないが、生徒達の信頼は厚い。
・演劇部『星遊飛行』
アズサ・キリサキ(錐咲 梓紗)
高等部3年で部長。シュルツ能力者の事を良く知っている。
ミズキ・シホ(瑞姫 志穂)
高等部1年生。ユウ達の後輩に当たる。
ツヅミ・チカ(水留 知佳)
高等部2年生(ユウ達とは別クラス)。
2011/05/09 Mon 00:58 [No.326]
宮野
- 用語集 -
桐鐫市(きりのみし)
物語の舞台。ナギは隣の県から此処に引っ越してきた。
ナイトバニシング (Knight Vanishing) / 市立桐鐫図書館(しりつきりのみとしょかん)
幻想空間。普段は市立図書館になっている。夜になるとナイトヴァレリオンの騎士達が戦いを繰り広げている。本来は少年しか入れないが、少女ユウのみが入ってしまう。
シュルツ
ナギ達の事。変身すると騎士姿になり、瞳の色と性格が丸っきり変わったりと、多種多難。基本的に『シュルツ能力者』と呼ばれる。ナギを『神威』、タクトを『詩樹玖』で呼んだりと、偽名を使う事が多い(ナギ曰く「本名を言うと罰を受ける」)。夜か、ナイトバニシング内でしか変身が出来ない。過去にナギの義父リク・ツナシもシュルツ能力者だったが、現在は引退している。属性を操る事が出来る。
シルシ
シュルツ能力者に付けられた証。ナギは右腕に結晶の形をしたシルシ、タクトは胸に炎の形をしたシルシを付けられている。
ナイトヴァレリオン
遥か昔に行われたシュルツ能力者によって起こした聖戦。能力者の年齢は中学生〜高校生の少年達。それから1000年後の現代で再び聖戦が始まる。
蒼穹の勾玉(そうきゅうのまがたま)
ナギが所持している青い勾玉。特定の人物に触れると光り出し、気を失うと同時に記憶を消去する。
エレイシア
この世界の重要なキーアイテム。宝石のような形をしている。ナギ達シュルツはこれを巡って戦っている。10個集めれば願い事が叶えられるが、それを狙っているものもいる。
私立桐鐫学園(しりつきりのみがくえん)
ユウ達が通う私立法人。隣には市立図書館(ナイトバニシング)がある。寮があるが、家から通う事が多い。学年によって、ネクタイの色が違う(男女共通)。1年生は白色、2年生はエメラルド、3年生は水色となっている。
キャラクターテンプレート
『通称』シュルツ能力者でのコードネームもお願いします
『名前』日本名はカタカナ表記で
『性別』男のみで
『年齢』14〜18で(中等部〜高等部ぐらい)
『性格』個性的大歓迎
『口調』
『一人称等』
『参考台詞』4つ以上で
『容姿』シュルツ能力者(騎士姿)の方も詳しく。
『備考』
2011/05/09 Mon 01:00 [No.327]
kaku
『通称』ヤーニングジョーズ
『名前』サメジマ・アギト
『性別』男
『年齢』17
『性格』普段は、物静かで真面目なメガネ君だが、変身すると凶暴になり、話が通じなくなる。
『口調』『一人称等』僕 君 彼(彼女)
『参考台詞』「そういう行為は、感心しないな」
「私語を慎みなさい。今は授業中だ」
「エトミヤユウ・・・・忠告しておく。余計なことには、首を突っこまないことだ」
「ピィーーーーーヤァアアーーーーー!!!」
『容姿』七三にメガネの最高に優等生なルックス。背は180cmくらい。目付きが鋭い。
変身時は、フルヘッドのガスマスクに海パン一丁という異様な出で立ちになる。ガスマスクの頭頂部には、鮫の背ビレを思わせる飾りがついている。
『備考』ユウのクラスの委員長にして、シュルツの一人。
地面に潜り、まるで水中のように泳ぐことができる。その際は、頭の背ビレだけを付き出して、まるで鮫のようになる。
また、奥の手として、サメ型のロボットに変形することができる。この際は、泳ぐスピードが格段に上がる他、ダイヤモンド並みの硬さを誇る鮫肌や、鉄をカステラのように切り裂く無数の牙など、驚異的な武装の数々を持つようになる。
スタドラでいうと、オンディーヌのサイバディみたいな感じの能力。
2011/05/09 Mon 01:25 [No.328]
亜雲AZ
亜雲AZです。こういうのは大丈夫ですかね?なんか反則くさい気がするんですが…; 問題なければ使ったげてくださいな。ではどぞ。
『通称』ミミック☆ピコ
『名前』カンザキ ハルカ(神崎 遥)
『性別』男(普段は女を装ってる)
『年齢』16
『性格』素直で人一倍優しい心を持つ。成績は優秀で文武両道。変身するとぶりっ子で頭がちょっと(?)痛い子になる。性格自体はそれほど変わらないが利益優先な一面があり、他人の犠牲をなんとも思わない無邪気な残酷さを持つ。
『口調』です口調。口癖は「なのです」。変身時は「キャハ」と笑ったり「ぷぅ〜」と言って怒ったりする。
『一人称等』一人称は「私」。人は「さん」付けで呼び変身時は呼び捨て。
『参考台詞』「私可愛いもの大好きなのです!」
「残念ですぅ〜」
「私も皆が大好きなのです!」
「皆さん落ちついて欲しいのですっ!」
変身時「私は『ミミック☆ピコ』!地上最強の魔法少女なのです!」
「くらうのですっ!必殺『震滅鉄砕断』!!」
「他人がどうなろうがかんけいないでしょ?私は願いを叶えたいがけなのです」
「キャハハハッ!死んじゃえぇ〜!」
「ぷぅ〜〜!とっとと死んで欲しいのです!」
『容姿』身長は156cm程度。視力は両目共2以上で瞳の色は黒。女学生の制服を着ている。髪はこげ茶色の肩甲骨あたりまで伸びてる癖っ毛のないストレート。そこらのアイドルよりもアイドルらしいかわいらしい容姿をしており、ファンクラブがあり男女共に人気。変身時は某大型女子アイドルグループのような服装になり、体も女性となる。服は見た目によらず非常に高い硬度を誇り、身軽。髪も変化し、腰あたりまであるツインテールとなり、色はピンク。リボンの色は黄色。瞳の色も血の如く赤い色に変化し、星の模様が浮き出ている。
『備考』高等部1年生。体は男、心は女であり、普段は女の子として生活している。学園のアイドルともいえる存在(当然素性は誰も知らない)。趣味はお菓子作り。生まれてからずっと女として生きたいと願っており、それゆえ願いは「本物の女の子になりたい」。そのためか変身時は体が女性となるという前代未聞のシュルツ能力者。
戦闘能力は高く操る属性は「大地」。武器はかわいらしいピコピコハンマー。だが鉄板仕込みで重く、殺傷能力は高い。先端は銃口になっており「大地震弾(だいちしんだん)」という球状の震動波を放つ。必殺技は「震滅鉄砕断(しんめつてっさいだん)」。また、ハンマーを振り落として衝撃波を放って攻撃したり、相手の動きを止めることができる。素早い上にパワーがあり、本人曰く「地上最強の魔法少女」。
2011/05/12 Thu 20:25 [No.337]
宮野
プロローグ「聖戦」
遙か昔、戦争があった。後に『ナイトヴァレリオン』と呼ばれる聖戦。戦っているのは12〜18歳までの少年達。
彼らはシュルツ能力者となり、過酷な戦いを繰り広げた。敗北した者は光となり消滅する。
戦いは激化していき、やがて終わった。願いが叶う宝石エレイシアを巡って、この聖戦に勝利した者は願いを願った。その内容は
不 老 不 死 。
見事その願いが叶い、彼は不老不死となった。
そして現在――――――――再び聖戦――ナイトヴァレリオンが始まる。
2011/07/17 Sun 01:26 [No.448]
宮野
第一章「出会い」
★桐鐫市(きりのみし)某所 エトミヤ家・ユウの部屋(平日・夜)
「今日も徹夜で頑張るぞ……」
少女は部屋で勉強をしていた。
彼女の名はユウ・エトミヤ。16歳。春に高校2年になったばかりだ。元気で明るい性格だ。
両親は海外旅行で家を開けている為に弟・タクトと二人暮らしをしている。
「……とは言っても、窮屈過ぎるんだよなぁ。外の空気吸おうと」
と言い、ユウは立ち上がり窓を開け、外の空気を吸う。窓を閉めようとした瞬間、ユウは一人の影を見る。
「え、何!? あたしを見た……?」
黒い髪に、エメラルドに近い緑色の瞳をした少年。服装は銀色の甲冑を身に纏い、黒色のマント――騎士姿。
年齢はユウと同い年と見られる。少年は家の屋根を軽々と跳び、図書館へ向かった。
「凄い、あの子……。でも、図書館に何か用があるのかな……。よし、追ってみようか!」
彼女は彼の後を追い、興味津々で図書館へ向かう。
★桐鐫市・私立桐鐫図書館(平日・夜)
「って、閉まってるし……当たり前か……」
図書館へは行ったものの、閉まっていた。平日は朝10時から夕方6時、土日は朝9時から夕方5時まで開館している。
だが彼女はくじけなかった。普段は閉まっていたドアを開けてしまった―――――――。
中へ入ると、本棚はあったが、室内は変わっていた。
「ど、どうなってるの……? と、とにかく次に行こう……ってうわあ!!」
エントラスに入ると先ほど見た黒い騎士姿の少年と紫色の騎士姿の少年が銃と大鎌を持ち、戦いを繰り広げていたのだ。しかも彼女の目の前で。
「へえ……中々やるじゃないか」
「……それはお互い様だ」
会話を交えながら、銃声と鎌の音が響く。
「凄い! あんなの、見た事が無い!!」
ユウは驚いていない、寧ろ喜んでいるのように我を忘れて、歩きながら2人に近づく。
「誰……? どうして女の子が……何をしているんだ、君!」
一人の少年がユウに呼び掛けるが、ユウは聞く耳を持たない。
「貰ったあああぁぁぁ!」
「くっ、『ディヴィニバリア』!」
鎌から発生した衝撃波が、ユウに迫ろうとしたが、彼が発した橙色のバリアが発生するが、爆発が起こり、バリアは消え、その衝撃で本棚がユウに向かって倒れる。
「……危ない!」
急いで彼女を庇う少年。煙が充満し、辺りが見えなくなる。
「え、あたし一体何を?」
煙が消えた後、我に返ったユウが見たのは大鎌を持った少年が目の前にいた。下を見ると、さっき庇った銃を持った少年が倒れていた。
「くっ、やるな……」
「お、重い……」
「! す、すまない……」
ユウを庇った少年は、すぐに謝る。とそこへ大鎌をユウに向かって攻撃態勢をする少年が……。
「その子見た事無いな……さっさと始末しようか。その前に、こいつを倒すか。覚悟しな、神威」
「……始末するのは、貴様の方だ」
再び銃声と鎌の声が響き渡る。しかし少年――神威の蹴りの一発で鎌を蹴り飛ばした。
「し、しまった……」
「もらった……!」
少年の胸に銃を向け、青白い光が彼を包み込む。
「え、ええっ!? どうなってんの、これ……?」
驚くユウ。
『邪悪な心に使わせない……心の宝石、全ての力を解放し、元の姿に戻れ』
彼の胸から現れた金色の宝石―――エレイシアを抜き取られていたのだ。
「これが……あんたの輝き……」
「返せ……返してくれよ……」
うつ伏せに倒れた少年。ユウはただただ見守るだけだった。
「だが、この力を邪悪な事に使ってはいけない……永遠に封印する――終わりだ、リーズ」
「俺はあいつを守りたくって、この戦いに入ったのに……くそおおお!!」
大鎌を持つ少年――リーズは悲鳴を上げ、消滅した。
「消えた……!?」
リーズが消えた事に驚くユウ。
「不思議だな……俺達の空間に何故入ったんだ?」
「何故って……こっちが聞きたいよ! 今のは何なの? あの男の子は!? いや、それより君は……」
パニックに陥るユウ。と此処で鐘の音が響く。
「……ごめん、君を巻き込んでしまった。だけど、俺の姿を見なかった事にして欲しい。その方が良いと思う」
と言い、神威は銃の宝玉から青い勾玉を取り出し、ユウに見せる。勾玉が光り出す。
「あ、あれ……記憶が……どうしちゃったんだろう……」
「ごめん……」
ユウは気を失う。図書館に居た事、彼を見てしまった事を全て忘れる―――その勾玉は、特定の人物の記憶を消去させる、『蒼穹の勾玉』。
「おやすみ……」
2011/07/17 Sun 01:27 [No.449]
宮野
第二章「再会」
★桐鐫市・某所 エトミヤ家・2階 ユウの部屋(土曜日・朝)
小鳥のさえずりが聞こえる。
少女はベットからゆっくりと起き上がる。とそこへコンッと音が何回も聞こえた。
「タクトでしょ、入って」
ガチャっとドアが開いた。入って来たのはユウの弟・タクト・エトミヤ。中等部3年の少年だ。
「姉さん、ご飯作ったから。それと俺、用事でいないから」
「ありがと、タクト。今日はあたしも友達と一緒に買い物行くから」
「……そう。それじゃ、行ってくるよ」
と言い、タクトは1階の玄関に向かって外に出た。
「さてと、あたしも行きますかっ!」
パジャマから私服に着替え、髪止めをし、階段を下り外に1階のリビングで朝食を取り、出かける。
★桐鐫市・桐鐫公園(土曜日・朝)
親友・イズミ・エリを待つユウ。待つ間に、ユウは昨日の夜の事を覚えていなかった。
「あの時、確かあたしと同年齢の子が……あれ、覚えてないや……」
悩むユウ。そこに、エリが合流した。
「お待たせ、ユウ! 待った?」
「待ってないよ。あさっては始業式だね」
「そうだけど、嬉しい事に転入生が来るって!」
「うそ!? マジで?」
「本当よ。あさってが楽しみだね!!」
「うん!」
月曜日は桐鐫学園の始業式。同時に新入生が来る事に楽しみにしている2人。
★桐鐫市・大樹の森(土曜日・昼前)
「エリ、何買ったの?」
「えっと、アクセサリーと後色々。ユウは?」
「ヘアピンと帽子」
買い物を済ませた2人。店を後にし、移動すると……。
「ニャア……」
「子猫が! どうしよう……」
大樹に子猫が降りられなくなっていたのだ。慌てるエリ。ユウは決心する。
(あたし、子猫を助ける!)
心に誓い、ユウは木を登る。
「あ、あんた何やってんの!?」
「子猫が降りられないから可哀想だもん! だからあたしがやる!」
エリの制止も聞かず、ユウは子猫を救出する為に木を登る。
「ほら、もう大丈夫だから。あたしが守るから」
子猫に話しかけるユウ。
「無茶よ! あんた体力が無いって……」
「平気だって! ……あっ」
子猫を助けたのは良いが、誤ってバランスを崩し、落下してしまう。
「いやああああああ!」
「ユウ!」
子猫を庇い、自分だけ死ぬしか無い……。そう思うユウは目をゆっくり閉じる。そこへ……。
「危ないっ!」
フードを被った少年が駆け寄り、ユウをお姫様だっこして、間一髪でユウと子猫を救助した。
「大丈夫ですか……?」
ユウが目を開けると、そこには一人の少年が。髪の色は紫がかった漆黒で寝癖が立っており、瞳の色は明るい赤色。フードを被っていたが、彼女を救助した時に外れ、アホ毛が露出。年齢はユウ・エリと同年代だろうか。
「ううっ……」
「ユウ! 気が付いたのね!」
「エリ……。そうだ、子猫は大丈夫なの!?」
目を覚ましたユウは子猫を心配する。
「大丈夫よ、ユウ。この人が助けてくれたから」
「良かった、無事で……。助けてくれてありがとう」
「とにかく無事で良かったです……」
子猫は怪我無く、ユウも少年に助けてもらった。
「名前……聞いて無かったよね。あたし、ユウ・エトミヤ。よろしく」
「私はイズミ・エリ。ユウは無茶するからいけないのよ。よろしくね!」
「僕はシン・カミナギです。こちらこそ、よろしくお願いします」
お互いに自己紹介する3人。とそこへナギの携帯が鳴る。
「す、すいません。電話が……」
慌てて携帯を取り出すナギ。
「はい、もしもし。あ、お父さん?」
電話の声はナギの義父・リク・ツナシ。声・容姿はナギとそっくりだ。
『ナギ、今どこに居るの? 早くしないと帰るよ』
「あ、はい。今行きます!」
電話を切るナギ。
「さっきの電話はお父さん……?」
「あ、はい。それじゃ、僕はこれで……」
「うん。さっきは助けてくれてありがとうね! また会えると良いね!」
フードを被るナギ。ユウとエリは彼を手を振りながら見送る。
ユウが家に帰って来ると、玄関にはタクトの姿が。
「遅いよ! 姉さん!」
「ごめん、いっぱい買い物したから……」
「それはいいけど……」
苛立っていたタクトだが、ユウの笑顔を見てイライラしていた表情は消えた。
「月曜日は始業式! そして、高等部に転入生が入ってくる! あたし楽しみでさぁ!!」
「そう……。ごめん、テンション上げられないんだ俺……」
転入生が来る事にテンションが上がるユウ。対照的にタクトは低かった。
そして月曜日―――。
2011/07/17 Sun 01:29 [No.450]
宮野
桜の舞う市立桐鐫学園。始業式が始まった。
(校長の話長いんだよなぁ〜……)
といい、あくびをするタクト。中学3年となった彼は、来年で高校生になる。一方のユウというと……。
校長のスピーチが終わり、教室に戻る生徒達。ユウはタクトと廊下を歩いていた。
「相変わらずだよね、校長の話。長くて眠りそうだったよ」
「あんた、深夜に何やってたのよ?」
「いや、ゲームを……」
「目悪くなるからやっちゃダメでしょ! 昔母さんに言われたでしょ。『ゲームは1日1時間』って」
「母さんの話なんか聞きたくないし……。姉さんはお母さん気質だし……。それじゃ俺は中等部の校舎に戻るよ」
「悪かったわね」
姉弟の会話はこうである。
高等部の校舎に戻ったユウ。転入生が来るといい、テンションが上がっていた。
「おはよう、ユウ!」
声をかけてきたのはエリ。ユウとは中等部時代からの同級生だ。
「おはよう、エリ。今日転入生来るんだよね」
「そうだね。あたしも楽しみだよ」
★桐鐫学園 - 高等部2年2組 - 教室内
「うわあ。見た事無い人達がいっぱい……」
新しいクラスはユウとエリ以外、新しい人ばかり。早速挨拶をする2人。
「あら、初めまして。私は城財閥の令嬢、グスク・リオと申します。宜しくお願いしますわ」
「ぼ、僕はシンク・ミナです……」
「ミナ、そんなに緊張しなくても良いんじゃないのか? 俺はユキジマ・ファード・ケント!」
「私はユウ・エトミヤ。みんなよろしくね」
「あたしはイズミ・エリ。友達増えてラッキーだよ、あたし!」
と自己紹介。
リオは城財閥の令嬢。シンクは内気で大人しい少年。ケントは日系アメリカ人でシンクの親友。どれも個性的な人ばかりだ。
「転入生ですか?」
「うん。3人は知ってるの?」
「いや、聞いてないけどな。お、先生が来たぞ」
教室のドアが開き、担任が入ってきた。
「今日から君達のクラスを担当する事になったヒトミ・イリノです。皆さんよろしくね」
担任の名前はヒトミ・イリノ。担当教科は国語だ。
「始業式に続いて、転入生を紹介するわ」
「誰だろう。ワクワクしてきた」
ユウは楽しみで仕方が無かった。
「ナギくん、入ってちょうだい」
彼女の一言で、転入生が教室に入る。
「え、ええっ!?」
「ウソ!?」
「そこの2人、静かにして!」
驚くユウとエリ。ヒトミに怒られたが……。
「今日からこの学園に転入生として来たシン・カミナギです。宜しくお願いします」
ユウとエリが、金曜日に出会った少年が転入生だったのだ。良く見ると、右腕には包帯が巻かれているのが分かる。
「じゃ、ナギくんの席は……。ユウさんの席の隣ね」
席はユウの隣席。ユウは最初は驚いていたが……。
「あ、リオさん。お久しぶりです」
「ナギ様、お久しぶりですわ。私も驚きましたわ」
「ナギ君、リオさんと知り合いなの?」
「はい。隣の県で出会ったんです」
「俺はユキジマ・フォード・ケント。でこっちがシンク・ミナ」
「ナギくん、よろしくね」
「はい、皆さんよろしくお願いします!」
こうして、彼女達の青春を謳歌する学園生活が始まったのだった―――。
2011/07/17 Sun 01:30 [No.451]
宮野
桐鐫学園 放課後
時刻は夕方。授業が終わり、生徒達は家、または寮に帰る。が、ユウ、リオはナギを待ってた。
「ねぇ、ナギくん」
「はい、何でしょうか?」
ユウがナギに語りかけた。
「一緒に来て!」
「え、ええっ!? 僕、これから剣道部に……」
「案内しますわ」
事情を知らないまま、ナギをユウとリオは一緒に連れて行く。剣道部(すぐに入部届けしたという)に入ったばかりの彼を2人が引っ張る。
桐鐫学園 - 演劇部『星遊飛行(せいゆうひこう)』
「さっ、着いたよ」
「お、お邪魔します……」
恐る恐る教室に入るナギ。そこには1人の少女が。
「夢じゃない。じゃあ何なのか。彼は魘されて目を覚ました。変な夢を見たキースは、その夢が何なのか、その真実を突き止めた」
彼女の演技に部員は拍手を挙げる部員達。少女がナギを見た。
「姉さん、リオさん、先輩」
「タクト君もいるのですか?」
「姉さんからあなたの名前を聞きました。俺、タクト・エトミヤ。よろしく」
「シン・カミナギです。改めてよろしくお願いします」
タクトがナギに挨拶。
「いらっしゃい。演劇部『星遊飛行』にようこそ! 私は3年で部長のアズサ・キリサキ」
「彼がシン・カミナギくん」
「初めまして」
アズサに挨拶するナギ。
「お初にかかります、1年のミズキ・シホです」
「初めまして……2年のツヅミ・チカです」
「こちらこそ、よろしくお願いします」
エトミヤ姉弟、シホ、チカはここの部員で、部長のアズサが仕切っている。
「ねえ、ナギ君。君、シュルツ能力者でしょ?」
「え……どうして?」
「ユウから聞いたの」
「あたしが話したの。大丈夫、ここのみんなは全部知ってるから」
(え……!? 確かエトミヤさんの記憶は消えた筈なのに……どうして……?)
ユウが神威=ナギと出会った金曜日の夜に記憶を失ったが、取り戻した事に驚くナギ。
ナギは、右腕の包帯を外し、氷の形をした「シルシ」を部員達に見せる。
(やっぱり奴もシルシ持ち……)
タクトは彼に何らかの感触を感じた。
「それがシルシ?」
「不思議ですね……」
「生まれ付きこのシルシは付いてなかったんですけど……」
ナギのシルシを見て興味津々の部員達。
「本当だ、シルシが重なっているー」
「こんなの聞いた事が無い……」
「あの、隠しても良いですか……?」
チカとシホはナギのシルシを見て興味を示す。
「シュルツ能力者は何処かにシルシを示さなきゃいけない。色々聞きたい事があるけど…まずはお礼を言わなきゃね」
「あ、いえ……もう包帯巻いても良いですか?」
アズサはナギにシュルツ能力者の事を話す。
「金曜日の夜、図書館にいたんでしょ?」
「え……どうして、知っているのですか? 確かに僕は金曜日の夜に図書館にいましたが……」
「……やっぱりね。あの図書館は、夜になると『ナイトバニシング』になるの。あそこはシュルツ能力者がエレイシアを巡って戦ってるの」
「あ、あの……もうちょっと分かりやすく説明をお願いします……」
「それで聖戦は終わるの? 叶えれば聖戦は終わる。でも10個集めて願いを叶えば再び聖戦が始まる。それを巡って奴らがこの街にいるの」
「あ、貴方達は一体……?」
「演劇部よ」
ユウに誘われたナギは、剣道部との掛け持ちで演劇部『星遊飛行』に入部する事に……。
2011/07/17 Sun 01:31 [No.452]
宮野
その日の夜。シャワーを浴びた後、ユウは自分の部屋のベッドで学園でナギと再会した事を振り返る。
「まさか、ナギ君が転校生だったなんて、本当に驚いたなぁ」
髪を乾かしながら、パジャマ姿へと着替えるユウ。とその時、ゴトッという音が聞こえた。
何事か、と思い襖(ふすま)を開けるユウ。そこには5、6人の少年達がいた。
「な、何なの、あんた達……人の家に勝手に入り込んで……」
「ハロー☆」
少年達は何の忠告も無しに、ユウを連れ去ろうとする。突然の襲撃に、ユウは悲鳴をあげる。
「連れて行け!」
「いやああああっ!」
一方、部活からの帰りの中、ユウの悲鳴を聞いたナギ。急いでエトミヤ家に行くナギ。
「あの声は、エトミヤさん!?」
「あんた達、何のつもりなの!? あたしをどうする気!?」
「…………」
無言でユウを連れ去ろうとする少年達。と、竹刀で1人の少年を凄まじい威力で気絶させた。
「大丈夫ですか、エトミヤさん! 助けに来ました!」
「ナギ君!」
「貴方達は一体……」
(シン・カミナギ……何故此処にいる!?)
竹刀を構えてユウを助けようとするナギ。
「どうしてナギ君があたしの家にいる訳!?」
「い、いや、エトミヤさんの悲鳴を聞いてて……それで……」
助けに来たのは良いが、事情を知らないユウ。とそこへ……。
「食らえ、“エレコムナックル”!」
「くっ、何てパワーなんだ!」
竹刀でガードするものの、凄まじい攻撃を誇る拳に苦戦するナギ。
「ナギ君、後ろっ!」
「ッ!」
「後ろに気付かないお前はドジだな!」
後ろにいたもう1人の少年に背中に攻撃を受けたナギはそのまま気絶してしまった。
「ナギ君ッ!」
同時にユウも攻撃を食らい気絶してしまった。
★同時刻 図書館
目を覚ましたユウ。ナギも一緒だが彼は未だに気を失っている。
「此処は、図書館……何で……?」
「お前達は此処で消えなければならない。お偉いさんの命令でね」
「お偉いさんの命令……? あたしが何をしたって言うの!?」
「さぁ、消えて貰おうか!」
「待って下さい!」
目を覚ましたナギがユウの目の前に現れる。
「貴様、動けるのか!?」
「ナギ君! ああっ!!」
ユウが1人の少年に腕を掴まれる。
「その人を離して下さい!」
「駄目だね。こいつは消えるんだから」
「そういう訳だ。“ウォールランス“!」
無数の草の葉の刃がナギに襲い掛かり、その振動で爆発する。
「ナギ君ッ!!」
「ははっ、いい様だ」
悲鳴を上げるユウ。
「いい加減にしてください……エトミヤさんが何をしたって言うんですか?」
「き、貴様、まだ動けるのか!?」
白煙の影からナギが無傷で現れる。彼の表情は怒りで満ちている。そしてユウは学園の廊下でナギの言葉を振り返る。
(あんたって、一言で言い返せば『おっとりしていて、天然で世間知らず』だよね。でも、健気な一面もある)
(……『健気』って、そんな事は皆さんからは聞いてないですよ)
(そういや、金曜日の夜にあんたと初めて会った時、どことなくナギ君に見えた筈……)
(……え? それって……?)
(……勘だよ、勘。だから、あたしがあんたを守る)
「エトミヤさんは僕を守るって言ってました。だから、今度は僕がエトミヤさんを守ってみせる!」
右腕に付けていた包帯が外され、シルシが青白く光った。
「貴様、もしかして……!?」
「ナギ君……!?」
ナギの発言した言葉「エンゲージ」の後に、氷の氷柱と結晶がナギの周り一帯に広がる。
「貴様ぁぁっ! シュルツ能力者か―――!?」
「……貴様に言われたくない」
現れたのは、ナギに見えるが、性格と衣装・瞳の色が違う人物。
「あれは、神威……くん……?」
そう、シン・カミナギはシュルツ能力者でコードネームは『神威』。ユウは驚きながら見ていた。
これが戦いのゴングが鳴り響いた。
(シュルツ……能力者……)
2011/07/17 Sun 01:32 [No.453]
宮野
夜の図書館で始まった聖戦。シン・カミナギ君―――いや、コードネーム『神威』は、冷徹に戦いを有利に進めた。6対1という圧倒的な不利の中、彼は果敢に1人で6人の相手をしていた。あたしはただ、その戦闘をただ見守るだけだった。
自分は見ているだけで歯痒く感じる。目の前でナギ君が変身して、驚いた。それより、あの男6人組は何者なんだよ。変な技を使って、ナギ君を倒そうとした。
それよりも、ナギ君、口調変わってない? 二人称が「貴様」とか。……でもそういうナギ君も格好いい。剣道部だけど、なんで銃を使っているの? ゲームでいう「銃剣士」ってトコ?
銃声と剣の音が響く中、あたしは避難した。巻き込まれないように。戦えない。あたしは弱くて、頭は良いけど、運動はからっきしダメ。タクトと比較しても、絶対にあたしが負ける。どうしようもないよね、あたしって。と、1人の少年があたしに向かってこう言った。
「圧倒的に不利だ……。6人であの女を狙うぞ!」
ひ、卑劣すぎる。どこまでも汚い手を使って、あたしを消そうとしたその時……!
「凍り付け、『氷山消滅(アイス・ジャッジメント)』」
山の型(かたち)をした氷が一段と大きくなり、1人を即座に氷漬けとなった。まるで氷山のように。
「こ、地面が凍っている!?」
フィールドは辺り一面が雪景色に。流石のあたしも寒かった。気温の調整できるなんて。
「みんな、撤退だ!」
1人を除き5人はすぐに撤退した。……1人残ったんだけど。あたしがその1人を見つめたら……既に何かを抜き取られ、眼を閉じたままだった。
「…………無事か」
あたしは神威に、あの1人の少年が氷漬けになっているのと聞くと……。
「……既に能力の宝石は抜いた。すぐに溶けて明日には普通の少年になる」
宝石……? 金曜日に見たあの宝石の事? ダメだ、頭がこんがらがっちゃになってしまう。落ち着けあたし、気持ちの整理を掴め、あたし―――!
そうこう言っている内に、神威は能力……いや、変身を解除し、元のシン・カミナギ君に戻った。
「……無事ですか、エトミヤさん!」
さっきの『無事』と同じ台詞ですけど。やっぱりナギ君って天然だ。
「……すっかり暗くなったな」
「……送りましょうか?」
そういって、あたしとナギ君はそれぞれの家に帰った。
家に帰ると、居間にナギ君が使っている木刀が壊れていた。あの戦いであの威力だもんね。
「姉さん、何処行ってたの?」
あたしの弟、タクト・エトミヤ。中等部3年の15歳。あたしと対照的に運動は良いけど勉強はダメ。どっかのアニメで良く見る子だな。
「……図書館だけど」
「こんな夜に?」
ううっ、睨まれてる……。つーか、あたしを疑うな! そういえば、ナギ君は何しているんだ?
「遅くなってすいません!」
ナギ君は家に帰り、急いで晩ごはんの支度をする。学園のジャケットとネクタイを外し、白いシャツとエプロン姿は、神々しい。そして、首にぶら下がっている蒼い宝玉は、能力者の証だけど、あたしも分かんない。
「おかえり、シン。あれ、剣道で使っている木刀はどうしたんだ?」
「あ……」
話しかけたのは、ナギ君の父、リク・ツナシさん。というより、ナギ君そっくり! 声と容姿の見分けが付けられない! どちらが息子か父かあやふや。
木刀、あたしの家に置いてあるけど、先端の部分がぶっ壊れてるし……。あたし、手先が不器用だけど、治してみせる。
「シン、まさかとは思うけど、能力者と戦ったの?」
「え……あ、はい」
あたしもいたけど、あたしの事は話さなかった。
「学園を謳歌する日にそんな事が起きたとはね……。今日は早く食べて寝なさい」
「分かりました。そうします」
早寝早起きは健康の素! って、それ元気なおじいちゃんとおばあちゃんに言う言葉じゃないか! 何やってんだろうあたし……。
はあ、明日は早いし、早く寝ようっと……。
2011/07/17 Sun 01:33 [No.454]
宮野
第三章「嫉妬と襲撃」
昨夜の襲撃から1日経った。一体シュルツ能力者って何なのって良く分かんないけど、属性を操る事が出来るのは知っているけど。後エレイシア。10個集めれば願いが叶うけれど、未だに謎に包まれているのよね……。はあ、否応無しに巻き込まれてしまったあたしが馬鹿だ……。
それに、昨夜ナギ君の所持していた剣道で使っていた木刀、壊れているけど……あたしが治したけど、指の傷が痛い。絆創膏(ばんそうこう)何枚使ったんだろう……。というよりフツー治せないよね、木刀。
★火曜日 朝 桐鐫学園 2年2組 教室内
「ナギ君、これ」
「あ……それ……」
あたしはナギ君に修理した木刀を渡した。
「ありがとうございます……昨日は父さんにこっ酷く叱られちゃって……」
「あたしが治したから。感謝しなさいよ(うう、指が痛い……)」
「えっ!? エトミヤさんが治したんですか?」
「まあね。不器用だけど……」
「……ありがとう……ございます……」
涙を浮かべるナギ君。なにそれ可愛い。……って何言ってんだあたし。
★演劇部「星遊飛行」
演劇部の教室を入った途端、アズサさんが「演劇が決まった」との報告が入った。
「部長、今度の演劇は何ですか?」
シホがアズサに話しかける。
「ふふっ……聞いて驚け……今回の演劇は――」
「どうせハードル高いんでしょ?」
アズサの話を全く聞いていないタクト。と、タクトの頭に何かがぶつけた音が。
バシッという音が。学園指定の深緑色のスリッパだ。痛がるタクト。何文句言ってんだよあんたは。
「何か言った?」
「す……すいません……」
すぐに謝るタクト。素直じゃないんだから……。
「コホン。改めて今回の演劇は『ロミオとジュリエット』! という事で、役は既に決めているわ!」
演劇は『ロミオとジュリエット』。この作品は悲劇とされ、シェイクスピア死後に刊行された全集のような重厚な悲劇とは見なされていない。何かハードル高そうに見えるけど…………。
「役は主人公のロミオ役にはナギ君、あなたがやってくれない?」
「え、僕ですか!?」
「ちょっと待って下さい! なんで先輩が?」
「タクト君はちょっと……ね」
ロミオ役にはナギ君が選ばれた。反対的にタクトは役を奪われて悔しがっていた。
「じゃあ、ジュリエット役には……ユウ、あなたがやって。キスシーンあるからね」
「ちょっ、部長! ナギ君とキスですか!?」
何で部長はあたしをジュリエット役に選んだのかは良く分からないけど、ロミオ役のナギ君とのキスシーンをやるって……。
「本番は来月。それまでは練習よ!」
来月の本番までにセリフ覚えないと、どうしようもないよね。
「ん? タクト、どうしたの?」
「別に……」
ナギ君に嫉妬の表情を見せるタクト。
「あ、あの……タクト君……」
「……あなたに興味はありません。先に失礼します」
タクトは早めに部屋を出た。
「何よ、今日のタクト。態度悪いなぁ」
「僕がロミオ役になったから、タクト君は役を奪われた……きっと、僕を恨んでいると思います……」
「そんな事はないと思うよ! タクトはああ見えて、根は優しいんだよ。ちょっと捻くれているけど……。だから、元気を出してよ、ナギ君」
多分あたしが悪いと思うんだ。子供の頃は泣き虫で、どうしようもなく姉のあたしにすがったタクト。表情がころころ変わって、怒ったり、泣いたり、笑ったりもする。誰かを恨んだりするのは、あまりにも無いと思うんだけどなぁ……。やっぱり、性格はお父さんの影響かな。あたしもお父さんの影響で、口が悪くなって性格もタクトと同じになっているし。やっぱり姉弟って似ていると思う。あたしが言うんじゃないけど。
とりあえず、劇の本番は来月。それまでに練習しないとね。
2011/08/22 Mon 02:02 [No.572]
宮野
『……あなたに興味はありません。先に失礼します』
学校の帰り道。タクトは結局、中等部の友達と一緒に帰ってしまった。あたしはナギ君と一緒に帰った。何でナギ君にそんな態度で怒っているの? あたしにはさっぱり分からないよ……。
「……あの、タクト君ってどんな人なんですか?」
「え!? うーん……」
ナギ君がタクトの事をあたしに問いかけた。そういえばナギ君はタクトの事を知らなかったんだっけ。
「あいつは単純でバカで体力があって頭が悪い!」
「えっ!?」
ナギ君が驚いた。そんなに驚かなくても……。
「……でも、あたしが小学6年の頃、病気になった時にタクトが必死に看病してくれたんだ。あいつは料理もできるし、結構面倒見はいいんだよ? でも……」
「……どうしたんですか?」
「この頃から、何かあいつの様子がおかしいんだ。最近あたしに辛く当たるし……」
「僕が来たから、そのせいでしょうか……」
「そ、そんなに落ち込まないで! 第一、ナギ君が落ち込んだら……あたしも辛くなるよ……」
「すみません……」
ナギ君はあたしに対して謝った。優しく慈悲深く芯の強い性格。あたしはナギ君とは正反対の性格だけど。
2つの道の左側に、ナギ君の家がある。あたしとタクトの家は右側。左側に人影が見える……。とすると声がする。
「シン! ここだよ。迎えに行くって言ったじゃないか」
「と、父さん!?」
え、え―――――――――っ!?!? この人がナギ君のお父さん!? そっくりなんですけど―――!! あたしは驚きを隠せなかった。
「ユウ・エトミヤちゃん……だっけ? 初めましてだね」
「え、ええ……は、初めまして!」
緊張するあたし。全身が震えてしまった。ううっ……。
「僕はリク・ツナシ。よろしくね」
ナギ君のお父さん、リク・ツナシさん。身長と瞳の色以外、外見そっくりで見分けがつけらない……。
「今日はありがとうございました、エトミヤさん。木刀、直していただいて」
「へ? 木刀? あの子に直してもらったのか?」
「え、ええ……」
直すのに何時間もかかったけど、まいいか……。
家に帰ったあたしは、タクトの様子を見る。
「ね、タクト……って、何処行くの?」
「……姉さんには関係ない」
「もうすぐ暗くなるのよ! あたしは……」
「姉さんは先輩の事が好きで、俺の事が嫌いなんだろ!?」
タクトの発言に、あたしは驚きを隠せない。
「ちょ、何言ってるの!? ナギ君は……」
「姉さんなんか、大っっっ嫌いッ!!」
と言って、彼はドアを強く叩きつけて何処かへ行ってしまった……。
「何よ……バカ……」
2011/09/20 Tue 02:56 [No.697]
宮野
タクトはあたしとの会話もなく、1日、2日も家に帰ってこなかった。すぐ帰ってくるっていうのに、と心の底から思っていた。でも、何日も家には、彼の姿がいなかった。
「……あたしのせいかな」
自分がバカだった。ナギ君が来た当初から、タクトの様子が変だった。あたしの頬に、一粒の涙がこぼれた。そして、所持していた携帯で、ナギ君に電話をかけた。
『はい、シン・カミナギです』
「……もしもし……ナギ君?」
『エトミヤさん? どうしたんですか?』
声をからしながら、ナギ君に事情を話すあたし。
「タクトがいなくなった……」
『え!? ど、どうして……?』
「分かんないのよ。いきなりアイツが『姉さんなんか大嫌い』と言って、家を出て……。もう、何日も帰ってこない……」
『……タクト君を捜しましょう』
「え!? 無理だって」
いきなりのナギ君の発言に吃驚(びっくり)した。
『きっと、原因は僕にあるんです。だから……』
「……わかった。でも、タクトがどこにいるのかがわからない」
『図書館にいると思います。きっと、僕に戦いを望んでいると思いますから……』
図書館にタクトがいる? でも、なんで……。まさか、彼も……。
その夜、図書館――ナイトバニシングに向かったあたしとナギ君。というより、ナギ君、何そのコスチューム。本人に聞くと……。
「あ、その……リオさんが……」
どうやら、リオさんが用意したものらしい。どこかのアニメで見た学生服らしい。
「学園の制服じゃないのね。何か似合うじゃん」
「ど、どうも……」
図書館に到着したあたし達は、炎の弾が2人に向かって爆発した。
「っ!」
煙から影が見える。その姿は、騎士の服を着た……。
「う、嘘でしょ……」
あたしは一瞬、目を疑った。
「シン・カミナギ……いや、神威! どうして……姉さんと一緒にいる!?」
「……タクト君、こんな戦いはもう止めましょう! どうして戦わなきゃいけないんですか!?」
「うるさいッ!! お前なんか……いなければいけないんだ!」
二刀流の剣と炎を操る彼は、ナギ君に襲いかかった。
「タクト……ウソでしょ? 何で、能力者に……」
タクトが能力者と知って驚愕してしまった。何であんたがそこにいるの……?
「くっ!」
タクトの攻撃で、破片がナギ君の左足に被弾した。凄まじい威力だ。
「ナギ君!」
あたしはとっさにナギ君のところに向かった。
「姉さん! 何で……アイツを庇うんだ!?」
「あたしは彼に助けてもらった。あたしは……」
「エトミヤさん……早く逃げてください。エン……ゲージ!」
ナギ君は怪我を押して変身した。傷つく事でも戦うって、どうかしてるよ……この戦い。
そして、神威とタクト――詩樹玖の戦いが始まった。
2011/11/01 Tue 00:04 [No.709]
宮野
ナギ君が変身した途端に詩樹玖の片手剣が神威に降りかかった。防御しても素早い身のこなしを誇る彼の剣術にひたすら攻撃のチャンスを伺う神威。
なんで、同じ部の人間が戦うのと、あたしは心を痛める。「そんなの、おかしいよ」とあたしはつぶやく。
「炎塵爆砕戒〈フレイム・アサルト〉!」
「衝雹異端娼〈せっひょういたんしょう〉!」
2つの技が交互に発動するが、交互に消してしまった。
「お前って奴はぁー!!」
「………………………」
詩樹玖の叫びに、神威は無言で銃を乱射する。
一方、あたしは本棚に避難し、2人の能力者の戦いを見るしかなかった。
「あんたみたいな男が、姉さんと一緒にいるなああああああぁぁぁぁッ!!」
「……うるさいやつは、嫌いだ。」
熱い口調は、全て水に流す神威。銃声と剣の金属音が響く。
あたしは、神威に彼――詩樹玖を止めるように言った。
「ナギ君……ううん、神威。お願い」
「姉さん!? なんでだよ……」
「タクト! あんただって……あたしの事、わかってくれないくせに!!」
あたしはタクト=詩樹玖に対して必死に説得するも……。
「……うわああああああああああっ!!」
詩樹玖は両腕に持つ剣を1つにし、両手剣のような装備となり、神威に襲いかかる。あたしの声を聞いてもなお戦い続けるなんて……。
「スノウクイーン、ソードモード発動」
今まで銃だった武具が、一瞬にして剣となった。何でも変形できるのね、その武具。
「大剣はスキが大きい。一気に決めさせてもらう……!」
神威の発言に、詩樹玖は叫びながら技の名前を叫ぶ。
「くらえ! 炎塵咆哮斬<ブラスト・ヴァニッシュ>!!」
炎を纏った大剣を上空から攻撃する彼の必殺奥義。しかし、その攻撃を神威はかわしてしまう。
「降り注げ、氷の刃。<クラスター・レインソード>」
剣の雨が降り注ぎ、詩樹玖の持つ双剣にヒビが生じる。
「なっ!?」
「タクト、もうやめようよ。シンとなんで戦うの……? あたしの声を、聞いて……いや……聞けえぇーッ!!」
神威の技と、あたしの発言にタクトは……。
「姉さん……! 俺は……!!」
「そんなのどうだっていいんだよ! あたしはシンや星遊飛行のみんなとの絆を切り裂くというの!? だったら、ハッキリする! 男なら! ねっ。だから……一緒に戦って、シンと」
「……俺は、姉さんを守りたくってこの戦いに参加したんだ。だけど……」
「男ならハッキリしてよ! あたしは、あんたがいなきゃいけないんだよ!! シン、彼の武具を、壊して……」
「……わかった。降り注げ、氷の意思! 破翔・蒼影斬<はしょう・そうえいざん>!」
素早いスピードで氷の破片が降り注いだ後、直後に十文字に切り裂く奥義。詩樹玖の双剣は跡形もなく、消えた。
2011/11/12 Sat 18:37 [No.711]
宮野
「神威……俺は……」
「……何もいうな」
終了後、シンとタクトは能力者の姿で話しかける。というよりシンより年下の癖に……。
「もういいでしょ。あんた達が戦うわけないのに」
「姉さん……」
あたしはタクトを励ます。と―――――
ガチャ……という音が聞こえて、中から入ってきたのは―――――――
「あれ、もう終わっていたの?」
「ツ、ツナシさんっ!!??」
入ってきたのは、シンの養父、ツナシ・リクさん。どうしてここにっ!?
「あれ、3人いるじゃん。神威はシン、詩樹玖はタクト君。そして……どうしてここにユウちゃんがいるの?」
「うっ……そ、それは……」
焦るあたし。事情を話すと……。
「か、勝手にここの扉が開いて……それで……」
「なるほどね。それと、そろそろ2人とも、変身を解除して。そんな格好じゃ疲れるよ?」
「お、俺は……」
「わかった」
最初にシンが変身を解除した。タクトは戸惑っていた。
よくみると、神威とシンの時では瞳の色が違うのがわかる。でも性格が変わるのって、何かあったのかな……。
―――あたしが不本意にここに入ってきたのは、あたしが何か特殊な能力を持ってるのかな……?
「……お、お父さん!? ……うわっ!」
シンが勝手にこける。なんでこけるの……?
「先輩……しっかりしてくださいよ!」
タクトに突っ込まれる。ボケとツッコミのコンビだなこりゃ。
「シン、いじられてるよ。さて、そろそろ話そうか。ここの施設について」
「ううっ……」
ツナシさんはここの施設――図書館に何度かかよっている。そしてもう一つの姿―――ナイトバニシング内で起こる聖戦。あたしにはよく分からないけど……。そして、エレイシアは色んな願いをかなうもの。10個集めれば願いを叶える事ができるが、それを狙っている人物もいる……。シンとタクトはそれを巡って聖戦に参加していたんだね……。
「よ、よくわからなかったけど……ありがとうございます」
「いいんだよ。……あれ? タクト君。解除しないの?」
「い、今します!!」
「姉さん……今まで隠しててごめんなさい」
能力者の事を隠していたタクト。あたしは涙をうかべてしまった。
「いいんだよ……もう……」
「うん……姉さん、好きだよ」
「……そろそろ帰ろうか。僕もうお腹ペコペコだよ」
「父さん……子供みたいに言わないでください」
ツナシさんの発言にシンが突っ込んだ。いじられ役とツッコミ役っていいよね。……って何を言ってんのあたし。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
図書館を出たあたし達4人は、それぞれの家へ戻った。「夕食はまだ?」というあたしの発言に、タクトは苦笑いをして「はいはい、作りますよ」という。ちょっとムッとしたけど、姉弟っていいよね。これから続くと良いな……。
2011/11/12 Sat 18:38 [No.712]
宮野
PHESE-03.5 「心の欠片 - 感情喪失」
『もし……あなたの欠片がなくなったら、あなたはどうするの?』
「……え?」
シンの夢に現れる謎の少女。銀――いや、プラチナブロンドの髪をしており、瞳の色はシンと同じ赤色をしている。謎の言葉を言い、最後にもう一言を言う少女。
『欠片が四散したら、あなたは何をしますか? そして――』
「待ってください! あなたは一体……」
夢から醒めた時には、朝日が既に昇っていた。時刻は朝7時。
「……何だったんだろう、今の夢は……」
シンは夢に出た少女の事を気になっていた。
1階に降り、リクに朝の挨拶をする。
「おはよう、シン! ……なんか、元気ないみたいだね」
「あ……お、おはようございます……」
シンは辛辣な顔をしていた。あの夢に出てきた銀色の少女―――自分に何かが潜んでいるのかと、リクに話そうとする。
「……シン、それ本当なの?」
「本当です。夢で見たんです。教えてください、父さん……」
「…………今は教えられないんだ。そういえば、9時にリオちゃんがここに来るよ」
「そう……ですか……(結局、答えが見つからなかった……)」
結局、銀髪の少女の事は話せずに時間が経過した。日時は土曜日。リオがリク――ツナシ家にくるという。
そして9時。時間通り、リオが彼の家に入った。
「おはようございます、ナギくん、ツナシさん」
「おはよう……ございます」
「あら? ナギくん、元気ないですね。どうしたんですか?」
「こっちの事だから、気にしないで。そういえばシンに話していなかったな」
「え?」
テンションの低いシンは言葉に「……」を多用してしまう。そしてリクはシンに向かって話す。
「『心の欠片』って知ってる?」
(心の欠片……!? 夢で言ってた……)
「それが全部砕けると、感情を失うって聞いたよ」
「怖いですね……でも、どうしてここで話すのですか?」
「どうして……父さんが知っているのですか?」
シンはリクに何故『心の欠片』の事を知っているのかを問う。
「そ、それは……友達だった子がこの話を言ったんだ」
「お友達が、ですか?」
「そう。今はもういないけどね……」
一気に場の空気が暗くなる。
「……暗い話はここまでにして! 後は2人で遊んできなさい!」
暗い話が一気にぶっ飛ぶ。シンとリオは、外に出る。リクの家には何故かリオの執事が運転する車が。後ろのドアの中は、シン専用の服装が。どうやら、能力者の神威=(イコール)シンに憧れて……いるのかは不明だが、どこかの作品の色んなコスチュームがある。リオ曰く「コスプレ衣装」との事。
(結局、『心の欠片』しか話せなかった……。でも、あの子は僕に対して言っていた……)
『もし……あなたの欠片がなくなったら、あなたはどうするの?』
『欠片が四散したら、あなたは何をしますか? そして――』
「……どうしたんですの? ナギくん」
「い、いえっ! 何でも……何でもありませんから……」
未だに『心の欠片』について引っかかるシン。俯(うつむ)いたまま10時を迎えたのだった……。
2011/12/07 Wed 22:50 [No.747]
宮野
思い悩むシンの所に、ユウとタクト姉弟が現れる。姉はラフな格好に青色のジャケット、弟は長袖に白のジャケット。かなりラフな衣装だ。
「あ、エトミヤさん、タクト君……おはようございます」
「おっはよう、シン!」
「おはようございます、先輩」
挨拶をする3人。ちなみにシンの衣装は青いマフラー、白い上着(シャツ)、藍色のズボンに茶色のブーツ、青いジャケット。かなり暖かそうな衣装だ。
「どうしたの、シン。何かあったの?」
ユウが問いかける。
「あ、いえ、その……なんでもないです……」
シンの俯いた発言に、ユウは……。
「男なら、ハッキリする!」
「え!?」
ユウの発言に、驚くシン。
「悩み事があったら、あたしに言って」
「は、はい……」
シンは悩んでいる事をユウに話す。
2011/12/08 Thu 03:22 [No.748]
宮野
(上の続きです)
「……なるほどね。夢の中で女の子が現れて、『心を失う』と言ったんだね……」
「はい……」
「でも、その女の子は何か事情があるんだと、あたしは思うよ」
夢に現れ、シンに意味深な発言を言う女の子の言葉に悩み続ける彼に、ユウはアドバイスを受ける。
「心を失うのは、そんなに簡単じゃないと思うんです」
「タクト君?」
タクトが言う。その発言にリオが驚く。
「心を失えば、取り戻せばいいんです」
「あんたなあ……簡単じゃないんだぞ。心を取り戻すのは」
「う……」
「……そうなんですか?」
タクトの発言にユウが突っ込む。
時間は過ぎ、時刻は昼3時。
風が強く吹き、草が生い茂る。晴れていて快晴。澄んだ青い空は観る者を圧倒する。
「さて、どうしよっかな……」
「姉さん、買い物行こうぜ」
「まだ早いだろ。夕方って言ったじゃないか」
タクトの言葉にユウがまたもや突っ込む。姉弟の会話はこうである。そんな2人をシンは笑む。
「あ、あれ? さっきまで空が青かったのに……」
しかし空は一変。暗く灰色の曇った色に変化。雨が降るのかと思いきや……。
「見つけたぞ、『銀色の髪をした少女』を宿す者よ」
「な、だ、誰だよ!?」
現れたのは、赤色のフードを被った謎の青年。見た目は人間に近いが、随所に機械の腕や武器が残る。ユウの発言を無視し、青年はシンを狙いを定める。
(『銀色の髪をした少女』……!? 夢で見たあの子……!?)
「先輩、逃げろ! こいつは……」
タクトは二刀流の剣を装備する。
「貴様は震えているな。だがもう遅い」
赤色の雷がタクトに直撃する。手も出せずに倒れるタクトをユウが看護する。
「ぐあああああっ!」
「タクト君!!」
「タクト!? 一体あんたは何なんだ!?」
「教える必要はない。シン・カミナギ……」
シンはタクトに近づく。青年はシンに再び狙いを付ける。
「お前の『心の欠片』は崩壊させてもらう! 死斬硬破斬<しざんこうはじん>」
「あ、ああ……! あうっ!」
連続で切り込む剣技。シンの体に斬り込まれ、服もボロボロになった。防御も出来ない技に、シンは気を失う。
「シン!! おい、しっかりしろよ!」
「これで役目は果たした。せいぜい感情が砕けるまで放っておくか」
「こ……この……野郎……!!」
「女性が怒ると怖いな……可愛らしく生きろ」
「うるさいッ!!」
シンを傷つけた青年。彼の挑発にユウは怒りを放つ。そして……。 彼女の身体から青い電撃が放つ。彼女の体質が変わってしまう。
「あたしは弱くて、何もできやしないんだ……彼を守る事なんて……」
「ううっ……」
気を失っていたタクトは、シンを見て彼のとこへ行く。
「先輩!? だ、大丈夫ですか!?」
気を失ったシンをただ観るしかないタクト。前を振り向くと、ユウが何らかの力を発動をしているのを目撃する。「電撃」、または「雷」。すなわち電気を操る能力。
「ね、姉さん……!?」
タクトは驚く。
「お前は、あたしが絶対に倒す!!」
覚醒したユウ。タクトは驚きを隠せなかった。
「ふっ、勝負はお預けだ。だが、彼を見ろ。もうすぐ心が消える……」
青年はユウが覚醒した事を尻目に姿を消す。
「くそっ!! あいつはあたしが絶対に倒してやる!」
ユウは彼を敵と認識し、心に誓った。
「先輩! あ……」
タクトの目の前でシンの心の欠片が崩壊し、四散してしまった。欠片はどこかへ飛び散ってしまう。シンは感情の殆どを喪失してしまったのだ。
「う、嘘……でしょ……そんな……シンの欠片が消えた……? 嘘だ、嘘だあああああ!!」
急いでシンが倒れている場所に行くが、時すでに遅く、泣け叫ぶユウ。涙が止まらなかった。自分が歯がゆい。
そして、責任を押し付けられた彼女は―――。
「……姉さん……」
「……ツナシさんに言おう。全部の事」
「だけど……!」
「あたしが悪いんだ! あたしが……全部悪いんだ……」
リクのとこへ行こうとするユウ。シンを抱えながら、急いでリクの家に向かう。
2011/12/08 Thu 03:23 [No.749]