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宮野
夜の図書館で始まった聖戦。シン・カミナギ君―――いや、コードネーム『神威』は、冷徹に戦いを有利に進めた。6対1という圧倒的な不利の中、彼は果敢に1人で6人の相手をしていた。あたしはただ、その戦闘をただ見守るだけだった。
自分は見ているだけで歯痒く感じる。目の前でナギ君が変身して、驚いた。それより、あの男6人組は何者なんだよ。変な技を使って、ナギ君を倒そうとした。
それよりも、ナギ君、口調変わってない? 二人称が「貴様」とか。……でもそういうナギ君も格好いい。剣道部だけど、なんで銃を使っているの? ゲームでいう「銃剣士」ってトコ?
銃声と剣の音が響く中、あたしは避難した。巻き込まれないように。戦えない。あたしは弱くて、頭は良いけど、運動はからっきしダメ。タクトと比較しても、絶対にあたしが負ける。どうしようもないよね、あたしって。と、1人の少年があたしに向かってこう言った。
「圧倒的に不利だ……。6人であの女を狙うぞ!」
ひ、卑劣すぎる。どこまでも汚い手を使って、あたしを消そうとしたその時……!
「凍り付け、『氷山消滅(アイス・ジャッジメント)』」
山の型(かたち)をした氷が一段と大きくなり、1人を即座に氷漬けとなった。まるで氷山のように。
「こ、地面が凍っている!?」
フィールドは辺り一面が雪景色に。流石のあたしも寒かった。気温の調整できるなんて。
「みんな、撤退だ!」
1人を除き5人はすぐに撤退した。……1人残ったんだけど。あたしがその1人を見つめたら……既に何かを抜き取られ、眼を閉じたままだった。
「…………無事か」
あたしは神威に、あの1人の少年が氷漬けになっているのと聞くと……。
「……既に能力の宝石は抜いた。すぐに溶けて明日には普通の少年になる」
宝石……? 金曜日に見たあの宝石の事? ダメだ、頭がこんがらがっちゃになってしまう。落ち着けあたし、気持ちの整理を掴め、あたし―――!
そうこう言っている内に、神威は能力……いや、変身を解除し、元のシン・カミナギ君に戻った。
「……無事ですか、エトミヤさん!」
さっきの『無事』と同じ台詞ですけど。やっぱりナギ君って天然だ。
「……すっかり暗くなったな」
「……送りましょうか?」
そういって、あたしとナギ君はそれぞれの家に帰った。
家に帰ると、居間にナギ君が使っている木刀が壊れていた。あの戦いであの威力だもんね。
「姉さん、何処行ってたの?」
あたしの弟、タクト・エトミヤ。中等部3年の15歳。あたしと対照的に運動は良いけど勉強はダメ。どっかのアニメで良く見る子だな。
「……図書館だけど」
「こんな夜に?」
ううっ、睨まれてる……。つーか、あたしを疑うな! そういえば、ナギ君は何しているんだ?
「遅くなってすいません!」
ナギ君は家に帰り、急いで晩ごはんの支度をする。学園のジャケットとネクタイを外し、白いシャツとエプロン姿は、神々しい。そして、首にぶら下がっている蒼い宝玉は、能力者の証だけど、あたしも分かんない。
「おかえり、シン。あれ、剣道で使っている木刀はどうしたんだ?」
「あ……」
話しかけたのは、ナギ君の父、リク・ツナシさん。というより、ナギ君そっくり! 声と容姿の見分けが付けられない! どちらが息子か父かあやふや。
木刀、あたしの家に置いてあるけど、先端の部分がぶっ壊れてるし……。あたし、手先が不器用だけど、治してみせる。
「シン、まさかとは思うけど、能力者と戦ったの?」
「え……あ、はい」
あたしもいたけど、あたしの事は話さなかった。
「学園を謳歌する日にそんな事が起きたとはね……。今日は早く食べて寝なさい」
「分かりました。そうします」
早寝早起きは健康の素! って、それ元気なおじいちゃんとおばあちゃんに言う言葉じゃないか! 何やってんだろうあたし……。
はあ、明日は早いし、早く寝ようっと……。
2011/07/17 Sun 01:33 [No.454]