宮野
第三章「嫉妬と襲撃」
昨夜の襲撃から1日経った。一体シュルツ能力者って何なのって良く分かんないけど、属性を操る事が出来るのは知っているけど。後エレイシア。10個集めれば願いが叶うけれど、未だに謎に包まれているのよね……。はあ、否応無しに巻き込まれてしまったあたしが馬鹿だ……。
それに、昨夜ナギ君の所持していた剣道で使っていた木刀、壊れているけど……あたしが治したけど、指の傷が痛い。絆創膏(ばんそうこう)何枚使ったんだろう……。というよりフツー治せないよね、木刀。
★火曜日 朝 桐鐫学園 2年2組 教室内
「ナギ君、これ」
「あ……それ……」
あたしはナギ君に修理した木刀を渡した。
「ありがとうございます……昨日は父さんにこっ酷く叱られちゃって……」
「あたしが治したから。感謝しなさいよ(うう、指が痛い……)」
「えっ!? エトミヤさんが治したんですか?」
「まあね。不器用だけど……」
「……ありがとう……ございます……」
涙を浮かべるナギ君。なにそれ可愛い。……って何言ってんだあたし。
★演劇部「星遊飛行」
演劇部の教室を入った途端、アズサさんが「演劇が決まった」との報告が入った。
「部長、今度の演劇は何ですか?」
シホがアズサに話しかける。
「ふふっ……聞いて驚け……今回の演劇は――」
「どうせハードル高いんでしょ?」
アズサの話を全く聞いていないタクト。と、タクトの頭に何かがぶつけた音が。
バシッという音が。学園指定の深緑色のスリッパだ。痛がるタクト。何文句言ってんだよあんたは。
「何か言った?」
「す……すいません……」
すぐに謝るタクト。素直じゃないんだから……。
「コホン。改めて今回の演劇は『ロミオとジュリエット』! という事で、役は既に決めているわ!」
演劇は『ロミオとジュリエット』。この作品は悲劇とされ、シェイクスピア死後に刊行された全集のような重厚な悲劇とは見なされていない。何かハードル高そうに見えるけど…………。
「役は主人公のロミオ役にはナギ君、あなたがやってくれない?」
「え、僕ですか!?」
「ちょっと待って下さい! なんで先輩が?」
「タクト君はちょっと……ね」
ロミオ役にはナギ君が選ばれた。反対的にタクトは役を奪われて悔しがっていた。
「じゃあ、ジュリエット役には……ユウ、あなたがやって。キスシーンあるからね」
「ちょっ、部長! ナギ君とキスですか!?」
何で部長はあたしをジュリエット役に選んだのかは良く分からないけど、ロミオ役のナギ君とのキスシーンをやるって……。
「本番は来月。それまでは練習よ!」
来月の本番までにセリフ覚えないと、どうしようもないよね。
「ん? タクト、どうしたの?」
「別に……」
ナギ君に嫉妬の表情を見せるタクト。
「あ、あの……タクト君……」
「……あなたに興味はありません。先に失礼します」
タクトは早めに部屋を出た。
「何よ、今日のタクト。態度悪いなぁ」
「僕がロミオ役になったから、タクト君は役を奪われた……きっと、僕を恨んでいると思います……」
「そんな事はないと思うよ! タクトはああ見えて、根は優しいんだよ。ちょっと捻くれているけど……。だから、元気を出してよ、ナギ君」
多分あたしが悪いと思うんだ。子供の頃は泣き虫で、どうしようもなく姉のあたしにすがったタクト。表情がころころ変わって、怒ったり、泣いたり、笑ったりもする。誰かを恨んだりするのは、あまりにも無いと思うんだけどなぁ……。やっぱり、性格はお父さんの影響かな。あたしもお父さんの影響で、口が悪くなって性格もタクトと同じになっているし。やっぱり姉弟って似ていると思う。あたしが言うんじゃないけど。
とりあえず、劇の本番は来月。それまでに練習しないとね。
2011/08/22 Mon 02:02 [No.572]