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架空マン
なんと余計なことをするのだ!
祐二は、憤った。勢い余って、手に握りしめたエロ本を破った。
ビリ、というかすかな音が、ドアの外にも聞こえてきた。明らかに、なにか紙を破いた音だ。
祐二は子供の頃から、気に入らないことがあると暴れた。自分を制御できない部分があったのだ。そのくせ、人見知りをするものだから、そういった衝動はもっぱら家の中で暴走するようになっていた。
紙を破る音を聞き、父親は思った。ああ、また祐二が暴れる!実際には、勢い余ってエロ本を破いただけだというのに、父親も母親も、そう思っていた。それほどまでに、祐二には信用がなかったのである。
「祐二!なにしとんや!」
父親は、勢い良くドアを開けた。
驚いたのは、祐二である。特に何もしていないのに、父親が血相を変えて部屋の中に入ってきたのだ。祐二に取って、自室は、絶対不可侵の聖域であった。何者も侵せぬ、侵すことは許されぬ。それは親とて同じことである。それなのに、父親が、凄まじい形相でいきなり入り込んできた。そんな父親の姿は、アテナイへ侵攻するスパルタ軍の如く、恐ろしいものに映った。
「うわあああ!!」
祐二は思わず、手元にあるペットボトルを開け、その内容物を父親の顔面にかけた。
黄色い液体が顔にかかった父親は、その場で倒れてもんどりうった。液体は、祐二の尿であった。
「臭!!うわ!!」
「お父さん!お父さん!!」
転げまわる父親にしがみつき、なんとか鎮めようとする母の姿を見て、祐二は後悔した。己はなんということをしてしまったのだ。そう考えると、とてもその場には居られなかった。
「もうええ!!もうええわ!!」
祐二はそう言うと、部屋から出た。
「ゆうちゃん!待ちなさい!ゆうちゃん!」
背後から母親の声が聴こえるが、祐二は無視した。
祐二は走り、廊下を抜け、居間を抜け、玄関から外へと飛び出した。祐二の家族は団地住まいだったが、部屋は一階にあったので、玄関を出ればすぐに外なのだ。
祐二は、21の時に大学をやめて以来、約9年ぶりに外へ出た。そして、団地の前を走る国道へと裸足のまま躍り出た……その時!
ビュン!
団地の近くの公園で缶蹴りをしていた子どもが蹴った缶がものすごい勢いで飛んできて、祐二の頭を直撃した!
「うっ!」
缶が頭にあたった祐二は、その場に崩折れ、動かなくなった。
そのまま、祐二は、死んだ。
2011/06/30 Thu 23:51 [No.412]