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ジャグラー
ユグドラ達が去り、ヘヴンズゲートはまたいつもの静けさを取り戻した。
マリエッタは、ユグドラが封印した聖剣、グラン・センチュリオの元に近いた。
「ユグドラ王・・・あなたがこの地上世界を武力のない平和な世界を築き上げる・・・それは、誰もが成し遂げれなかった偉大な事です。
しかし、あなたは誰からにも言われたわけでもなく、自らの決断でこの聖剣を手放しました。
あなたならば、叡智で地上世界を治める事も不可能ではないでしょう」
マリエッタがそう言い終えると、台座に封印されていた聖剣が光り始める。
光り始める、とは言っても宝玉がかすかながらに光るだけのものだった。
この光を見たマリエッタは、一言つぶやいた。
「・・・聖剣の、最後の力が発揮されたようですね」
ユグドラ達は無事ヘヴンズゲートから地上世界に降りることに成功した。
後ろを振り返れば、青い海が一面に広がっている。
先ほどまで彼女らがいた、アンカルジアはマリエッタの言うとおり、海の底に沈んでしまっていた。
「・・・帰ってきたのですね。」
「はい、姫様。・・・姫様?」
デュランの言葉に返事をせず、ただ燃え尽きたブロンキア城をユグドラは眺め続けている。
彼女がどんな事を思っているのか、デュランには理解できた。
彼女は王とは言え、まだ20にも満たさない少女。
戦いが終わったとは言え、あまりにも犠牲は大きすぎた。
こんな血みどろの戦いを経験して、ユグドラの心情がどんなことになっているか、デュランには分かっていた。
デュランだけではない。同じような経験をしているミラノも、ラッセルも、クルスも、ニーチェも。
この王国軍の兵達は皆ユグドラと同じ修羅場をくぐりぬけたから、デュラン以外の者もユグドラの心情を理解でき、彼女と似た心情になっていた。
「(父上・・・母上・・・ようやく、パルティナに平和が訪れそうです・・・どうか、天国で私を見守ってください・・・。
キリエさん・・・あなたが望んでいた、争いのない世界を必ず、作り上げて見せます・・・。ロズウェルさん・・・私がやったことは、許される事ではありません。ですが・・・どうか、ロザリィさを守ってあげてください。)」
「お、おい!なんだあれは!?」
皆が黙りこんでいた中、一人の兵士が空を見て叫ぶ。
「おい、あれって・・・!」
「く、クリフライダーだ!」
それに続いて次々と兵士達が騒ぎ始める。
帝国軍の残党の襲撃かと予想したラッセルとクルスは、すでに武器を構えている。
しかし、ミラノはそれを止めた。
「やめろ!・・・あのクリフライダー、どこかで見たことがあるんだ。」
「ミラノ殿・・・見たことがあるとは?」
「ああ。ここからじゃよく見えないが、おそらくあのグリフォンに乗っている人間は・・・俺の、大事な仲間だ」
ミラノはそう言うと、クリフライダーを見て手を振った。
クリフライダーはそれに反応して降りてくる。
ミラノはその反応に顔に笑みを浮かべ、ユグドラはまさか、と驚いた顔をする。
クリフライダーは、ゆっくりと地面に着地し、グリフォンの上に乗っていた少女は、ミラノの元に駆け寄った。
「ミラノーっ!」
「キリエ・・・!」
クリフライダーの正体は、凱旋門でミラノ達のために命を散らしたキリエだった。
キリエの後ろでは、彼女の相棒とも言えるグリフォン、アルがじっとミラノを見つめている。
ミラノは、自分の胸の中で涙を流しているキリエの頭をそっと撫でる。
「だけど、どうしてここまで・・・?それに、お前は凱旋門のアンクカノンに特攻して・・・」
「ウチにも分からない。でも、気が付いたらアルと一緒に凱旋門の前で気絶してたの。不思議だけど、ミラノ達がどこにいるのか何となく分かってたから、そっちに行って、今に至るの」
「そうか・・・でも、お前が生き返ってくれてよかった。・・・おかえり、キリエ」
「うん・・・ただいま、ミラノ」
2011/06/21 Tue 23:13 [No.395]