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ジャグラー
「姫様」
ブロンキア城を眺めていたユグドラに、デュランは声をかける。
ユグドラは一瞬体を震わせ、彼の方に体を向ける。
「どうしました、デュラン?」
「いえ・・・先ほど、クルス殿が何故死んだはずのキリエ殿達が生き返ったのか予測していたのを聞いて、少し思う所がありまして。」
「思う所・・・?」
「はい。クルス殿は、これは聖剣が封印される前に最後の力が発揮されて起きたものではないのかと言ってました」
「グラン・センチュリオが・・・?」
「はい。それで私は思ったのです。もしかすると、この戦いで聖剣の前に散っていった者達が皆、蘇っているのではないかと・・・。
キリエ殿もネシアに操られた時に姫様の聖剣によって魂を解放され、ロズウェル殿も姫様の剣によって散って行きました。
ということは、あの焔帝ガルカーサやエンベリア王国のエメローネ殿も、皆蘇っているはずです」
「じゃあ、この戦いで死んでいった人達が生きかえれば、色んな人達の心に残った傷跡も治せるのね!」
「はい。もしそうであれば、そうなるでしょう。
上手く行けば、帝国とも公国とも休戦協定を結べ、争いも起きなくなるかと思います。」
「・・・よかった。もう、誰も斬ることもなくなるのですね。」
ユグドラの笑顔に、デュランは釣られて笑みを浮かべた。
「ねえ、ミラノ。ミラノはこれからどうするの?」
キリエとミラノは彼女の相棒である、アルの上に乗って話していた。
どことなく、キリエはミラノの隣に寄っている。
「そうだな・・・ユグドラからパルティナにある城を一つもらうと約束してるし・・・それに、盗賊団の居場所もないから、そこを根城にするんだ。
キリエは、どうするんだ?
ロスト・アリエスに帰るのか?」
「え!?あ、そ、その・・・う、ウチはね・・・」
ミラノがキリエの質問に答えると、彼はキリエに質問する。
キリエは少し頬を赤くしてなかなか言いそうにない。
「どうしたんだよ、キリエ。顔赤くして」
「ウチは、ミラノと一緒にいたいの・・・」
「え?」
「う、ウチはミラノと一緒にいたいの!ウチはミラノの事が好き、だから!ウチはもうミラノから離れたくないの!」
胸の内をすべて吐き出すようにキリエは叫ぶ。
突然の彼女の叫びと、その叫んだ言葉にミラノは呆然とした。
アルもキリエの叫びで少々驚いている。
「キリエ・・・」
「ねえ、ミラノ・・・もうウチはミラノと離れ離れになるのいやだよ。
もう戦いもしたくない・・・ミラノと一緒にいたいよ・・・。
一緒に、ウチの故郷で暮らそうよ・・・。」
キリエの目から、次第に涙が出始める。
言い終えた後は嗚咽を漏らしながら下を向いてしまった。
ミラノが声をかけるが、反応はしてくれない。
そんな彼女を見て、ミラノはこう言った。
「・・・キリエ。お前が、俺の事をそう思っててくれたなんて思ってもなかった。
ありがとな、キリエ。うれしいよ。
・・・でも、一緒に暮らせるかどうかはまだ分からない。
城の事もあるし、コブン達の事もあるからさ。
だから・・・少し、時間をくれないか」
「ミラノ・・・うん、うん!大丈夫だよ!
すぐに言わなくても、大丈夫だよ・・・!
ウチは、ミラノの答えを待ってるからね!」
ミラノの言った言葉に嬉しそうな顔をしながらミラノにそう言うと、キリエはアルから降りてミステールの所に向かっていった。
一人残されたミラノは、これからどうするか考えた。
「ユグドラが戦いのない平和な世界を作るんだから・・・俺達盗賊団はお役御免だしなぁ。
でも、城は捨てがたいし、コブン達の事もある。
あいつらにはちゃんとした所を用意してやりたい。
でも、キリエのあの顔は真剣だったし・・・うーん・・・」
2011/06/21 Tue 23:14 [No.397]