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あきはばら博士
(これで良しっ)
スイレンは素早く地面を前に蹴ってバックステップをする。
相手の回復手段が限られているからあの時の戦いのようにやどりぎのたねを植えつければ回避と回復に徹していれば良い、例え鬼火と毒々を使われてもアロマセラピーがある。
「あ、れ?」
十分な距離を取るための2回目のバックステップはうまく決まらなかった、まるで着地直前に相手に引き寄せられたかのような……。
「冷凍パンチ――」
ヤグルマの冷気を帯びた拳が正面から目の前に迫っていた。
「っ!」
とっさに足を折り横に転がることで緊急回避を行う。
この感覚はかつて味わったことがある――かげふみ。いや、くろいまなざし――相手の離脱を防いで離れられなくする効果。
スイレンは騙まし討ちを発動させるが、その攻撃に対して炎のパンチで相殺されて少しダメージを受ける。
こんなことになるならばかぎわけるを使うべきだったと後悔した。
近距離での物理攻撃のぶつけ合い。
やどりぎのたねで回復している気がしない。
体重差もあって当たり負けをして、
このままだとじりじりと体力を奪われていく。
しかしこのままじゃいけない、頭を少し下げてツノのハッパを茂らす、そして駆ける。
「ウッドホーンっ!」
その攻撃はヤグルマにしっかりと命中した、これ以上無いクリティカル、文句無しの攻撃だった。
だが何かがおかしい、攻撃が当たった感触はあるのだが、ダメージを与えた感触が無――――。
――立ったまま叩き潰された。
大きく体を捻り地面に押し潰すように繰り出されたヤグルマのしっぺがえしが、クリーンヒットした。
強いダメージで動けないスイレンに非情にも炎のパンチが続けて打ち込まれ、不運にも火傷を負ってしまう。
その後は一方的な試合展開だった。
* *
「もういいか」
きずだらけのボロボロになって床に伏して、スイレンはようやく何をされたのかが把握できた。
やどりぎのたねとウッドホーンを始めとする草技を無効化する手段、彼は最初からこれを狙っていたのだったのだ。
影と影を交錯させるスキルスワップによる特性:そうしょくの奪取。
ただ、いまさら気がついてももう遅かった。
「これで戦いは終わりだ、君と君の仲間達は元の世界に戻すし、ドリームメイカーズも解散して計画は取り止めにしよう。君も健闘してよくやったようだが、結果として私のほうが一枚上手だったようだ、私の勝ちだ。リベンジは受け付けよう。
ああ、そういえば伝え忘れていたことがあったな、アルビノ氏から依頼されてポケモンがいる人間世界を目指しこの企画を推し進めていたが、頼まれただけではなくちゃんと私の意志によるもので計画を進めていたということ勘違いしては欲しくない、私は私の意志でポケモンの世界を実現したいと思っていた。しがいないおっさんの捨てきれない子どもの夢だったがな…」
ヨノワールの表情は分かりにくいが、彼は笑っているようだった。
スイレンは顔に複雑そうな表情を浮かべていた、戦いは終わったけれど、私は勝てなかった……。
「さて」
とヤグルマはスイレンに向かって歩き出す、そのとき。
2011/09/03 Sat 23:20 [No.630]