Net4u レンタル掲示板を作る
サントアンヌ号
「…………さてと、そろそろ思考を現実に戻そうかな」
そんな事を呟きながら私はゆっくりと閉じていた目を開き、もう一度周囲に視線を向けた。
相も変わらずどこかの百貨店内の映像が目から入り込み、脳内で『これが今見ている光景だ』という情報が嫌でも正確に処理されていく。
テンションに流されずにじっくり思案する性格ゆえか、友人から良く『お前の思考はプログラムみたいだな』などと冗談に例えられていた事もあったのだが、今の自分がポリゴン2の姿に変わっている事を知ってからは、更に脳内がプログラム化されてしまったのかもしれないと思ってしまう。
そんな非現実的な出来事に遭遇してしまった事を幸運と呼ぶべきか不幸と呼ぶべきかのボーダーラインも分からぬまま、私はもう一度“あの時”の出来事を回想してみた。
* * *
「……ん?」
仕事から帰った後、マイパソがあるプライベートルームでネトゲでの作業が一段落してからビールとツマミで休憩中(オヤジ臭いとか言ったヤツ表出ろ!)、良く行くサイトのページの一つであるポケボードに奇妙なスレが立っていたのを見付けてしまった。
“奇妙”と言っても、タイトルはシンプルに「助けてください」という新規スレで、中身はURLだけという意味不明なモノだったが。
しかしそれが全ての部屋にあるというのだから、ある意味“奇妙”という表現がしっくりしてしまう。
HN『サントアンヌ号』としてそれなりの間このサイトに通っていた自分としては多少気になるものの、“その手の人間”に対してはスルースキルを発動させる事を決め込んでいる性格ゆえに、その問題に対しては放っておく事にした。
というより運営掲示板があるプクリン部屋では削除依頼がわんさか来ているのだから、わざわざ自分も同じ依頼を出してまで削除要請スレに無駄なレスを増やす必要性が無い、というのが本音であるが。
あれこれ考えたが、とりあえずもう一度、さっきの奇妙なスレに行ってみる事にした。
何かしらの変化があるかもしれないという考えもあったが、例のURLをもうちょっと見てみたいという好奇心も多少なりともあったのだ。
そして例のスレに入ってみたが、未だに存在しているそのURLは、全く変わった様子も無くただそこにあり続けている。
これが新喜劇のコントだったら『押すなよ、絶対押すなよ!』と言いながらも普通にURLを押してしまうのがお約束であるのだが、あいにくリアルの私にはそんなお約束など無い(というよりそんな疑わしいモノには触れるつもりは無い)ので端から押す気などはゼロだ。
だがまぁ、世の中には『ケアレスミス』という言葉があったもので……
本当に自分は押す気などは無かったのだが、マウスの読み込み間違いと言えば良いのかもしれない。
『戻る』にポインタを合わせようとマウスを左上に動かそうとしたら何故か例のURLの所で止まってしまい、更に運悪く視線は部屋にある液晶テレビの方に向けていた為に気付かなかったのだ。
後は……説明するまでも無く、そのままクリックしてしまったのである。
2011/08/31 Wed 00:50 [No.605]