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ジャグラー
「死者が蘇る・・・しかも、スケルトンや屍兵のような形ではなく、生前と同じ状態で・・・。だけど、ネクロマンサーでもこんな高度な魔術は扱えないのに、誰がやったのかしら?」
ミラノとキリエの二人を見て、ロザリィは呟く。
彼女の脳裏には、かつてお互い争うこともなくロズウェルと話していた事が思い浮かぶ。
彼女の知ってる中でネクロマンサーは彼が一番だった。
だから彼女はロズウェルの事を思い出した。
「・・・そんなわけ、ないわね。だって、あいつはもう死んじゃってるんだし・・・。それに、あのネシアというのももういないし。きっと、何かの間違いね」
「何が間違いだって?」
「決まってるでしょ。あのユグドラが持ってた剣の力か何かで・・・え?そ、その声って・・・」
突如後ろから聞こえた声にどこか懐かしい感覚を持ったロザリィは、後ろを振り返る。
そこには、胸に黒色の薔薇のクレストをつけ、ネクロマンサー独特の杖を持ったひとりの若い男がいた。
男はロザリィの元に近づき、彼女の顔を覗き込む。
「白薔薇の頃に比べて、ずいぶんと高飛車な性格から変わったんじゃないか?ロザリィ」
「・・・う、うるさいわね!そういうあんたこそ、生き返ったからってバナナン食べまくってたんでしょ?」
「人聞きの悪いことを言わないでくれ。私は目が覚めたらここにいたんだ。バナナンは黒薔薇に戻ってから食うさ」
「ああそう。変な事言って悪かったわね。・・・ロズウェル・・・生きてたのね」
「正確に言えば、生き返ったの方が正しいな。一度亡霊になった後にユグドラお姫様に浄化させられたからね。」
「どっちにしろ、生き返ったんだからどっちでもいいのよ、馬鹿」
ロザリィは、この時初めて王国軍の男達と一緒にいて今まで感じることのなかった胸のざわめきを感じた。
「・・・キリエ殿に、ロズウェル殿も生き返っているとは・・・。しかし、このような魔術を一体誰が・・・?」
ミラノやロザリィ達を見て、デュランが疑問を言う。
聖剣は封印され、誰かを生き返らせる手段は彼からしてみれば何もなかった。
だが、すでに2人が生き返っている。
彼からしてみればかなり謎だった。
デュランがそのような独り言を言うと、クルスはその言葉に答えを投げかける。
「多分、聖剣の最後の力か何か・・・じゃないのかな?」
「クルス殿?・・・聖剣の力、ですか?」
「ああ。あくまでも僕の推理にしか過ぎないが・・・あの剣は、封印される前に何か力を発揮したんじゃないか?
例えば、あの剣に切られた人間が蘇るとか・・・」
「なるほど・・・信じがたいですが、そのような事もあり得ますね。ありがとうございます、クルス殿」
「あくまでも推理だから本当かどうかは微妙だけどね」
そうですね、とデュランが言うと彼はユグドラの元へと向かい始めた。
2011/06/21 Tue 23:14 [No.396]
ジャグラー
ユグドラ達が去り、ヘヴンズゲートはまたいつもの静けさを取り戻した。
マリエッタは、ユグドラが封印した聖剣、グラン・センチュリオの元に近いた。
「ユグドラ王・・・あなたがこの地上世界を武力のない平和な世界を築き上げる・・・それは、誰もが成し遂げれなかった偉大な事です。
しかし、あなたは誰からにも言われたわけでもなく、自らの決断でこの聖剣を手放しました。
あなたならば、叡智で地上世界を治める事も不可能ではないでしょう」
マリエッタがそう言い終えると、台座に封印されていた聖剣が光り始める。
光り始める、とは言っても宝玉がかすかながらに光るだけのものだった。
この光を見たマリエッタは、一言つぶやいた。
「・・・聖剣の、最後の力が発揮されたようですね」
ユグドラ達は無事ヘヴンズゲートから地上世界に降りることに成功した。
後ろを振り返れば、青い海が一面に広がっている。
先ほどまで彼女らがいた、アンカルジアはマリエッタの言うとおり、海の底に沈んでしまっていた。
「・・・帰ってきたのですね。」
「はい、姫様。・・・姫様?」
デュランの言葉に返事をせず、ただ燃え尽きたブロンキア城をユグドラは眺め続けている。
彼女がどんな事を思っているのか、デュランには理解できた。
彼女は王とは言え、まだ20にも満たさない少女。
戦いが終わったとは言え、あまりにも犠牲は大きすぎた。
こんな血みどろの戦いを経験して、ユグドラの心情がどんなことになっているか、デュランには分かっていた。
デュランだけではない。同じような経験をしているミラノも、ラッセルも、クルスも、ニーチェも。
この王国軍の兵達は皆ユグドラと同じ修羅場をくぐりぬけたから、デュラン以外の者もユグドラの心情を理解でき、彼女と似た心情になっていた。
「(父上・・・母上・・・ようやく、パルティナに平和が訪れそうです・・・どうか、天国で私を見守ってください・・・。
キリエさん・・・あなたが望んでいた、争いのない世界を必ず、作り上げて見せます・・・。ロズウェルさん・・・私がやったことは、許される事ではありません。ですが・・・どうか、ロザリィさを守ってあげてください。)」
「お、おい!なんだあれは!?」
皆が黙りこんでいた中、一人の兵士が空を見て叫ぶ。
「おい、あれって・・・!」
「く、クリフライダーだ!」
それに続いて次々と兵士達が騒ぎ始める。
帝国軍の残党の襲撃かと予想したラッセルとクルスは、すでに武器を構えている。
しかし、ミラノはそれを止めた。
「やめろ!・・・あのクリフライダー、どこかで見たことがあるんだ。」
「ミラノ殿・・・見たことがあるとは?」
「ああ。ここからじゃよく見えないが、おそらくあのグリフォンに乗っている人間は・・・俺の、大事な仲間だ」
ミラノはそう言うと、クリフライダーを見て手を振った。
クリフライダーはそれに反応して降りてくる。
ミラノはその反応に顔に笑みを浮かべ、ユグドラはまさか、と驚いた顔をする。
クリフライダーは、ゆっくりと地面に着地し、グリフォンの上に乗っていた少女は、ミラノの元に駆け寄った。
「ミラノーっ!」
「キリエ・・・!」
クリフライダーの正体は、凱旋門でミラノ達のために命を散らしたキリエだった。
キリエの後ろでは、彼女の相棒とも言えるグリフォン、アルがじっとミラノを見つめている。
ミラノは、自分の胸の中で涙を流しているキリエの頭をそっと撫でる。
「だけど、どうしてここまで・・・?それに、お前は凱旋門のアンクカノンに特攻して・・・」
「ウチにも分からない。でも、気が付いたらアルと一緒に凱旋門の前で気絶してたの。不思議だけど、ミラノ達がどこにいるのか何となく分かってたから、そっちに行って、今に至るの」
「そうか・・・でも、お前が生き返ってくれてよかった。・・・おかえり、キリエ」
「うん・・・ただいま、ミラノ」
2011/06/21 Tue 23:13 [No.395]
ロサラ
風の噂によれば、どうやらジャグラーさんやフィリットさんは、二人で旅に出てしまうそうだ。
なので、私が人間世界へ帰っても、もう彼らと掲示板で談笑する事など、出来ないのだ。
寂しくない、と言えば嘘になる。
ジャグラーさんは昔から掲示板での付き合いがあったし、フィリットさんも同い年、という事が判明して打ち解けたばかりだったのだ。
もう、あの二人とは会えない。
既に二人は出かけてしまったそうなのでもう直接会って挨拶する事は出来ないので、私は心の中で二人に別れを告げた。
私は、ずっと待ち望んでいた人間世界に帰る事にしよう。
早く学校に行きたいし、録画していた深夜アニメも溜まってきている。
まぁ、それらは単なるおまけの理由でしか無い。
「――寂しがり屋蓮華の為に、私は早く帰るとしますか…でふ」
あの時の戦いからずっと手元にある、彼女自身――彼女の爪を、手の中で抱きしめる。
一足先に散ってしまった私の親友。今頃私がまだ戻っていなくておろおろしているのであろう。
ここで過ごした七日間。
みんなで、戦った。笑った。涙を流した。怒り狂った。悲しんで、悲痛に喚いて、また笑った。
それらは、私が生涯忘れる事の無い、色々な思い出の記憶達。
人間では無い存在になって、授けられた様々な物、様々な思い。
全部、全部。それらはいつか、いつの間にか誰かに語り継がれているのだろうか。
――否、これらは全て秘密にしておく事にしよう。
何も知らない人々の間では、あの不思議なURLについて延々と、様々な疑問や考察が飛び交うのだろう。
そして、色々な夢話が、誰かによって生み出される。
それで、いいのだ。
夢を造る者
それでこそ、『Dream Maker』。
それも、悪くないでしょう?
………でふ。
***あとがき
なんじゃこりゃあああぁあぁっあっあああっ
何か最後勝手に纏めちゃいました本当にすみませんでした色々無理矢理すぎる
遅れた上にこんな出来で…申し訳ない。
執筆中のBGM⇒
2011/04/30 Sat 18:15 [No.302]
椎名
ガヴイリルが、死んだ。
それが意味するのはつまり、終わりというわけで。
たくさんの犠牲を出した長い長い戦いに、終止符が打たれたということだ。
「……」
私がその知らせを聞いたのは、デパコンの医務室。
そのとき感じたのは達成感……っていうか、なんだかふわふわした実感というか。
いざ終わってみると、なんだかすごく早かったように感じる。
今私の頭の中にはこのポケモン世界に来てからのことが、そうまさしく走馬灯のように浮かんで……あれ、これなんて死亡フラグ?
ふと隣を見れば、どなんさんとフィリットさん……と、なぜかジャグラーさんが眠っている。なにがあったんだろ。
でも、フィリットさんと並んで幸せそうに眠っている様子は、こう、なんというか……
りあじゅーおしあわせに!!
* * *
セイラさんやラプラスさんのようにこの世界でしんでしまった人たちは、元の世界ではしんでいない、つまり生きているそうだ。
今は二匹のセレビィによって二つの世界が繋がっているから、ひょっとするとまた会えるかもしれないし。
……あのときは仕方なかったとはいえ、今度またセイラさんにあえたら謝ろうか。
そのことについてはホッとしたんだけど、しんだけどしんでいないのはいわゆる“元人間”だけであって、ソードさんやリリアさん、ルカさんみたいに、もともとこの世界にいたポケモンのみんなはもう戻っては来ないそうだ。
あとで精神離脱しているかいないか云々みたいな説明を聞いたけど、なるほどさっぱりわからん。
いや、ガヴイリル……ガヴリイル? がまた甦るようなことがあったら、それはそれで問題が出てくるけど。
――と、いうことで。
私は今、渦巻島にいる。
ここで眠っているのは、ソードさんとルカさんだっけ。
リリアさんは確かタンバシティにお墓が建てられたんだっけな……
ひっそりたたずむ小さな墓標を前に、合唱。
洞窟を抜けて、水平線を眺める。いやぁ、世界ってすごく広そうだね。
なんとなく足元の砂を蹴飛ばしてみる。砂が飛び散る。じゃりじゃりする。……当たり前か。
ぼすん、と砂浜の上で仰向けに寝転がってみる。空に輝く太陽が目にまぶしい。目に悪いな。
そのまま、しばらく。なにをするでもなく、ただ寝転がっているだけ。
さすがにじっとしているだけではちりちりするので、たまに寝返りもうってみる。
しかしまあ、耳に響く波の音がなんとも心地いい。ついまどろんでしまう……うっ、寝ないぞ? さすがにここでは寝ないぞ?
さて、戦いは終わった。
ということは、あの声の主の目的は果たされたということだ。
ならば、私はこれからどうするべきなのだろう。
やるべきことが終わったなら、元の世界、私の世界に帰ろうか。
……いや、正直この世界なら勉強もないし一人でも生きていけそうだし楽ではないけど楽しそうだし。
じゃあいっそのこと、この夢のような世界で一生を過ごしてみようか?
……いやいや、元の世界でやり残したっていうか見おさめていないことも結構あるし。あいつら無事にくっついたんだろうか。
いやいやまてまて、そもそもこの世界と元の世界は繋がってるわけだから、行ったり来たりは自由なのよね?
だったら、文字通り行ったり来たりを繰り返せば、ある意味二種類の人生が楽しめたりするんだろうか。
……それはそれで疲れそうだけど。
透き通るような青空を仰いで考えることしばらく。
やっぱり、ここは一度元の世界に帰るべきだろう。
私が生まれて、育った世界。
過去の私があるから今の私がいるわけだから、未来の私は、きっとそこにいるべきなんだろう。
……あーダメだ自分で言っておいてすごく恥ずかしくなってきた。
まあ、まずはセレビィのところに行こう、話はそれからだ。
パッチールこと人間こと椎名麻樹、ただいまより私が進むべき世界に帰ります。
まあ、でも。
時々この世界に遊びに来て、みるのも、悪くはない……よね?
― ― ―
「渦巻島で一匹ニヤつく奇妙なパッチールが出没する」なんて噂はありません。ありませんってば。
エピローグ突入ということでカチャカチャうってみた。
携帯でうったのをコピペしてるから、本編とそぐわない部分もあるかもしれない…
パッ椎名はとりあえず、ソードやリリアなどのお墓参りをしてから一旦人間界に戻る様子。
2011/04/23 Sat 22:27 [No.271]
あきはばら博士
アイビスは“インファイト”で殴りかかる。
「は、ああああああ!!!」
この状況下で守りに入ると削り落とされることは、ジャグラーがカール戦で身をもって知っている。
ここはジャグラーも“インファイト”で応酬せざるを得なかった。
「――二段突き!」
「ゲホっ」
「下段払い!」
「ぐっ」
「三段返し斬り!」
「うごごっ」
「巧み追拳っ!!」
「ぐあぁ」
……とは言え、やや一方的である。
「ややや、やるなクール…お前が誰であろうとも、あの人の為にお前を倒して生きて帰る!!」
負けるわけにはいかないと、声を震わせて、さっきよりも強い“インファイト”を繰り出す。
「私を倒すだと? その傷だらけの体で、勝てると、思っているのかっ!」
「舐めるなあ!!」
アイビスの顔面をぶん殴るが
「ふんっ」
そのまま“しねんのずつき”で迎えうたれる。
そのインファイトの隙をジャグラーは見逃さなかった。
「甘いぜ……倍返しだぁ!!」
ここぞというタイミングでジャグラーは“カウンター”を打ち込もうとする。
避けることができない絶好のタイミング!
ただ、問題は『相手の両腕が空いている』ことだった。
「……読んでいましたよ」
ジャグラーの腕を逆手に捉えて、攻撃を流しつつ、足払いと共にジャグラーを投げ払う。
(……読まれていた!?)
投げられた後、ゴロゴロと転がって受け身をとるが、そこに複数の“サイコカッター”が、ジャグリオに向けて飛ぶ。
「!?冗談じゃねえ、あんなのに当たったら真っ二つじゃねえか!」
“かげぶんしん”で回避して、分身をサイコカッターに突っ込ませて相殺させる。 アイビスは少し離れたところから“サイコカッター
”を撃ち続ける。
アイビスはメタモンだ、体力が常人の半分くらいしかないため、接近戦を続けるのにも限界がある。このまま行けばジャグラーよりも先に削り負けてしまう。自然とアイビスに冷や汗が浮かんでくる。
だが、そこで勝負は意外な形で決着が付くことになった。
「……くっ!」
と、ジャグラーがサイコカッターから避けるために“あなをほって”地中に逃げたのだった。
「……墓穴を掘ったか?」
アイビスは“じしん”を撃ち込む。
地中にいる限りジャグラーは絶対に避けることができない、それまでの戦いで受けたダメージでそれがとどめの一撃となった。
こうかはばつぐんだ!
――あれ、ここはどこだろう?確か、朱鷺さんにやられて……そのあとに誰かがラプラスさんが死んだなんてことを言ってきて……
――大きな衝撃があった、地面が揺れた? 地震かな?
――あれ……?何か、見える……?ルカリオと、エルレイド……?あれ、でもあのルカリオは……
――いけない。ここで見るだけなんて……助けなきゃ!
「……ふう ……か、勝った。でしょうか?」
アイビスは地面に潜ったジャグリオを引っ張り上げて、ため息をつく。
「これが、もしも…… クール様だったら、きっと簡単に勝てたのでしょうか……?」
そして満身創痍の自分を見る。
「やだ……まだ死にたくはない……」
「……ああ、私にはまだまだ、 クール様には、到底敵わないです」
自分を軽く自嘲するように、そっと微笑みを浮かべる。
「く・・・そが・・・」
ジャグラーはアイビスの顔を殴ろうとするが、腕に力が入らない。
「有言実行ほど難しいことはないな。私の勝ちだ。さて」
そこで腕の刃を振り上げた。
「ッ!!」
彼女の体はいつの間にか動いていた。 部屋から出て、ルカリオの前に出る。そして、ルカリオを守るように“リフレクター”を展開す
る…!
「!?」
突然展開されたリフレクターにに驚き、ハッとしてアイビスは部屋の入り口の影を振り返る。
「あ……う……?」
半ば覚悟を決めたジャグラーも驚く。
――この時、どうしてボロボロだったのに動けたのかわからなかった。
――不思議に思った。普通なら動くことすらままならないのに。激痛を感じるのに。
――ただ助けたい、その気持ちだけで動いた。痛みは感じなかった。
――そして、ドアを思い切り開け、今まさに刃が振り下ろされようとしているエルレイドの前に立ち――
一体、何が起こったのかジャグラーには自分でも理解ができなかった。
突然ドアが開いて、一匹のエーフィが彼の目の前に現れ、リフレクターで庇ってくれた。
だが、このエーフィは……もしかして。
「シャドーボールっ!!」
「ぬぅ……!」
(間違いない。この人は、俺が絶対に守り抜くと決めた――)
「フィリット……さん……!」
今まで何度か、歴史の資料でジャンヌ・ダルクなどの戦う女性をジャグラーは見たことがある。
その時キレイだな、と何度か思ったことがある。
しかし、そんなのとは比べ物にはならないくらい、今の彼女は美しかった。
「おとなしく寝てると思ってましたが動けたのですか……」
アイビスには焦っていた、これ以上は戦えそうもないのに連戦は辛い。
「電光石火…!!」
フィリットはアイビスに向かって“電光石火”を放ち、突き飛ばすことでアイビスとジャグリオとの距離を取らせる。
「まったくもって予想外だ」
とフィリットから少し距離を取り、アイビスは苦々しく呟く。
「……フィリット、さん。……だめだ…逃げ…ろ」
「ううん逃げない……ここで、逃げられないっ!」
「フィリットさんが、敵う相手じゃないんだ…」
「で、でも」
「あ」
アイビスはそこで彼の言っていた『大切な者』が誰かを悟った。
ならば、これ以上は無粋だろう。その痛みは与えるものじゃない。クールではなくアイビスの考えとして、ここは身を引くべきだと思っ
た。
「……指令にない戦いをする気はない」
なるほど確かに、守れる力はあったようだ。彼自身は負けたが、このまま戦った場合は確実にアイビスは彼女に負けるだろう。
自分が死んではいけない。これはクール様からの命令だ。
「悔しいがここで身を引こう。止めはさせなかったがもうその状態では邪魔はできまい、目標は達した離脱する」
アイビスは“テレポート”を使い、姿をくらませた。
「ッ……逃げた………っと…!!」
アイビスがテレポートで離脱したことを見送ったあと、フィリットはすぐにルカリオ――ジャグラーの元へ駆け寄る。
「ジャグラーさん……ジャグラーさんだよね!?」
「フィリットさん……フィリットさん!……わああああああぁぁぁぁぁ!!」
「え、ちょ・・・じゃ、ジャグラーさん!?」
ジャグラーは、フィリットに抱きついて泣いてしまった。
正直、泣きたいほど怖かった。……せっかく最愛の人と出会えたのに、ここで死ぬのが怖かった。死にたくない。生きたい。
普段は泣かないのだから、ここで思い切り泣いておこう。そうジャグラーは思った。
「大丈夫だよ、ジャグラーさん。大丈夫……もう何も怖いものはないから……」
よしよし、とフィリットはジャグラーの頭を撫ぜていた。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
あれから何分か経っただろうか。
俺の涙も止まり、フィリットさんはさっきからずっと笑顔でこちらを見つめている。
「ねえ、ジャグラーさん。」
「ん?何だい、フィリットさん。」
「一つ聞きたいことがあるんだけど・・・」
「?」
「なんでGTSで治療してたジャグラーさんが、ここにいるの!?」
・・・え、今まで気づいてなかったの!?いや、それともあえて突っ込むのを待ってた!?
まあ・・・どっちにしろ、驚いても仕方ないよな。だってあの時はすでにフィリットさんはいなかったし。
「実は、GTSに突然押し掛けてきたヨマワルとニャースの行商が来てな。そいつらに、アイテムをもらったんだ。それを使ってここまで
元気になったんだ。」
「そうなの・・・よかった・・・本当に、無茶ばかりして・・・あの時、私がいなかったらどうなってたかわかるでしょ・・・?」
フィリットさんの目から、涙が出てくる。
・・・やっぱり、無茶したのがまずかったのかな。
「ラプラスさんも死んで・・・ひっく・・・ジャグラーさんまで死んじゃったら・・・私、どうすればいいのかわからないよ・・・!」
「え・・・?ラプラスさんが・・・!?」
あのラプラスさんが死んだ・・・?ウソだろ・・・?
いや・・・でも、あの時のクールはわずかだが、波動が違っていた。ということは、ラプラスさんと戦って・・・。
でも・・・あのラプラスさんが死ぬはずが・・・。
「フィリットさん」
「・・・!」
俺はフィリットさんを引き寄せて抱きしめる。
ポケモンとは言え、温かい。人と同じくらいだろうか。
「フィリットさん。俺は、あなたが俺に思いを告げてくれた時、俺は嬉しかった。あなたがそんな風に思ってくれることがうれしかった。
俺も、あなたのことが好きだ。」
「・・・!」
「だから、フィリットさん。俺はあなたを守り続ける。あなたを残して、死んだりはしないよ。」
「ジャグラーさん・・・」
俺はフィリットさんを強く抱きしめた。
俺はもう彼女を悲しませない、心の中でそう誓った。
2011/04/13 Wed 01:08 [No.235]
あきはばら博士
クールに変身してエルレイドの姿になっているアイビスは、途中である違和感がして来た道を戻り、先程のジャグラーの部屋の前に立つ
。
そして、超能力で中に誰がいるかを調べ取る。
……いる。
「……やはり、おかしい、人数が多い」
―――カギはかかっていない。アイビスはそっと扉を開けた。
そこにいたのは、パッチール、ジュプトル、エーフィ、トロピウス、そしてルカリオ。
全員に生命の炎は消えてない、前者3人は分かる、突入して来た者と種族が一致する。トロピウスの朱鷺も分かる、前者3人らと戦って
勝った上で捕虜として監視していたのだろう。
だが、あのルカリオは……かつてDCにいたジャグラーだ。
彼は確か、カールと刺し違えて重傷だと聞いていたが、そんな体で何故戻ってきたのだろうか。
おそらく、監視していたトロピウスの朱鷺と戦い気絶させた後、ここでぬくぬくと休眠を取っているのだろうと、アイビスは考えた。
のんきに眠っているルカリオを“サイコキネシス”で持ち上げ、部屋の外に放り出す。そして、部屋を出てドアを閉めた。
「いっつつ……くそ、誰だ……?」
「お前もかのファビオラ氏のように、ひっそりと暮らしていれば手出しをしなかったものを。何故わざわざ我々に牙を向ける?」
「!……クール!?」
どうやら先ほど放り投げた時の衝撃で目を覚ましたようだ。
クールの姿に変身しているアイビスを見ると、すぐに戦闘態勢に入った。
「目が覚めたようだな。いまさら戻ってきてなんとする? お前の居場所はここにはないぞ」
「……ふん決まっているだろ。俺がここに戻って来た理由は、仲間の手助けさ。俺一人だけ寂しくベッドで待っているというのはごめんだ
からな」
「それで倒された仲間を回収してきたというところか?」
アイビスは腕を組み一瞥する。
「少し違うな。護衛、ガードマンさ。生憎ここにいる人達は生きててもらいたいからな」
「そうか、そういうからにはその者たちを巻き込みたくないんだろう?」
アイビスは静かに殺気を放出する。
「違うな。“お前が俺に倒される”のさ。それに俺にはまだやりたい事もあるし、あの人に伝えたい事もあるからな!」
「伝えたいこと、か……。 ならばお前に、一つ聞くことがある」
「ん?」
「……何故、お前は裏切った揚句かつての仲間と戦う道を選んだ? お前がカール氏の独断で切り捨てられた事は知っている。私に助けを
求めるか、そのまま戦いの舞台から降りればどうにかしてやったものを……」
「ああ、俺も一度は考えたよ。DCに戻ろうともした。……けどな、それをするということは、誰かが悲しむんだよ」
「何?」
「こんな俺でも、仲間だと思ってくれる人達がいる。こんな俺のことを好きだと思っている人がいる。そんな人達を置いて、今更DCに戻
るなんて……絶対に出来ない」
……予想外だ。まさかあのジャグラーがそんなことを言うとは。
少し奴を低く評価していたようだな……。だが……。
「それに……俺にも絶対守りとおさなければならない大切な人がいるんだ。……俺は、その人のためにDMの一人として戦う。その人のた
めにも、俺は両腕が千切れたって戦い続ける!これが俺の正義だ。俺が貫き通すと決めた、正義だ!!」
「黙れ! お前に愛する者の何を語れるのだ、必死になって戦ってそれで護れるものだと思っているのか! それがお前の正義ならば。…
…いいだろう」
アイビスは、彼女が愛した者と同じ形の腕の刃を、ジャグラーに真っ直ぐ向ける。
「大切な人を守る、それも正義の一つだが。青二才が言う世迷い事じゃない、その正義の重みに負けて貫き通すことなく、ここで散ること
になるだろう!」
もはや話など無用、腕の刃を構える。
「行くぜ、クール!」
「来い、ジャグラー!」
「らああああああぁぁ!!」
叫び声と共にジャグラーの腕から波動が放出される。
ルカリオが得意とする“はどうだん”だ。
しかし、アイビスにはその程度の技は通用しない。
「ふんっ」
“はどうだん”の波動を“リーフブレード”で真っ二つに切り裂く。
さらに、そこから“サイコカッター”を繰り出し、一気にジャグラーを追い詰める。
「ッ!」
だが、その攻撃は相手の影をしっかりと捕らえていたが、素通りする結果に終わる。
「何!?……」
“かげぶんしん”と“みがわり”を複合させのだろうとアイビスは瞬時に判断を下す。
(どこでそんな技を……!? ……やはり、甘く見すぎていたか)
“かげぶんしん”単体では時間がたてば消滅する上に、攻撃されればすぐにばれてしまう為、時間稼ぎにはあまり向かない。
しかし、そこに“みがわり”の効果を加えれば時間がたっても消えず、本物そっくりの分身が出来上がる。
だが、それには身代わりの効果と影分身の能力を調整する必要がある。それを軽々こなすとは……。
「言っただろ、クール。俺は大切な人を守るために戦い続けると。そのためなら俺はどんな技だって使う。」
「そんな技で倒せるような私だと思わないほうがいい」
アイビスは高まる気持ちを落ち着かせ、めいそうに入る。
「そうかい。最初からそんなこと思ってないからな」
波動の力で骨棍棒に似た物を作り出す。武器にもなる“ボーンラッシュ”の準備である。
「その杖、ボーンラッシュか……」
腕の刃を光らせて、構える。
「おらあ!!」
「ふんっ」
脳天目掛けて振りかざされた骨杖を、アイビスは頭上に光る刃の両腕を添えることで、防ぐ。
「甘いっ」
そして流れるように、アイビスはそのまま前へと踏み込んで“つじぎり”をする。
「いっ…!っつー…やりやがったな!!」
「望むところだ」
ジャグラーは接近したポジションを生かすために“インファイト”へと移行するが。アイビスも同じ技“インファイト”を繰り出す。
「あがががが っ…!くそ…!」
インファイトの打ち合い。
格闘技はルカリオにとって弱点もあるために、インファイトの打ち合いではジャグラーが圧倒的な不利となるのだ。
こちらの攻撃がすることで相手は一定範囲に近づいてこれずに続いている状況下で手を休めてしまうのは危ないとは言え。この状態は明
らかに不味い。
「冗談じゃねえ…ここで死ぬことはダメなんだよ!」
ジャグラーは“インファイト”をやめて“こらえる”を繰り出す。
「お前をこのデパートコンクエスタに連れてきたのは私だったな、だがどうした? あの時のような眼が、無いではないか」
アイビスはジャグラーが狙うカウンターを読んだ上で、“インファイト”を解除してバックステップをする。
「お前の考えなど、お見通しだ」
すばやく“サイコキネシス”を叩き込む。
「…っ…あの頃の俺は、腐ってたからな。だけど、今は違う!」
中距離からの攻撃を耐えながら話す。
「今の俺には、守りたい仲間が!大切な人がいる!だから昔の俺とは目が違うんだ!」
「ほう、 ならばこんなお前には、本当に、大切な人や愛すべき人を守るだけの力があるというのか?」
「あるさ!だから俺は、お前を倒し、生きて帰る!!」
ジャグラーの瞳を見つつ、アイビスは応える。
「立ち向かえる力、守るための力。守っていくことそれは攻撃を叩き出すより難しいものだ。助けになる。力になる。心に身体が追いつい
ていなければ、それは単なる弱い者の遠吠えだ!
(だから自分はあの方の支えになると決めていて表には出ないようにしていた!!自分にはあの方の横に立って戦うための力が圧倒的に足
りない!!)
そんな遠吠え戯言など、私には通じぬ」
アイビスは、下から上へと直線を何度も描くように素早く腕を振り上げる奇怪な舞、つまり“つるぎのまい”に移行する。
「遠吠えかどうかは、決めつけるにはまだ早いんだよ!」
“りゅうのはどう”をジャグラーは発射する。
「そう、確かに早いかもしれませんね」
しかし、それを“サイコキネシス”で相殺する。
(ジャグラー、貴方がポケモンになってから暫くたったとはいえ元人間。そこまでその力を使いこなすようになるとはまったく。侮れない
ものです。私も隠していた自分が出てしまって、クール様にはなりきれずにいます。しかしこれは自分の勤め、少なくともこの戦いの最後
までは“クール”として戦うことにしましょう)
「構えなさい。 言うだけの理想で終わるか意志が肉体を凌駕するか。私には今信念がある。さぁ、お前の信念はどこまでだ? 吠えるだ
けならだれにでも出来る。続きをしようじゃないか」
「……ああ。いいだろう。…行くぞ!!」
たっ、と
駆け出してジャグラーは“シャドークロー”を仕掛ける。
アイビスはリーフブレードでそれを受けるが、ジャグラーは“みがわりかげぶんしん”のテクニックを再度使用して、技のタイミングをずらしてインファイトを叩き込もうとする。
それは実体であるために、必中技をもってしてもジャグラーを捉えることが出来ない。先程のインファイト合戦で相手の防御は大きく下がっている、クリティカルヒットすればジャグラーが大きく有利になれるだろう。
だが、アイビスは速攻先制技である“かげうち”を瞬時に使用することで、相手の技の発動時に攻撃を挟み込んだ。
つまり、身代わり分身はタイミングを外し、インファイトは使うことが出来ず失敗することとなったのだ。
気がつけばジャグラーの目の前にアイビスはいた。
ここはインファイト圏内だ。
2011/04/13 Wed 01:07 [No.234]
ジャグラー
なんかもう一人キャラを追加したい気分になったので。
名前:セクト
性別:♂
種族:ルカリオ(色違い)
性格:冷静で哲学的。一度決めた事は徹底にやる完璧主義者。どんな相手でもニコニコ笑顔で相手をする。怒ることはまずない。
イライラしている時は語尾に「〜〜なんですよねぇ」と言う。
多少面倒くさがりなところがあり、簡単なことを部下や他人を使ってやらせることもある。
たまに腹黒いことを言うことがある。
口調:敬語使い。よく話す時に最初に「さて、」や「ふふっ、」と言うことがある。
一人称は僕、自分、二人称はあなた、○○さん、三人称はあの人。
参考台詞:「僕ですか?僕はセクトですよ。」
「ふふっ、戦いというのは腕の強さで決まるものではありません。いかに頭脳を使って相手を混乱させるか、なのですよ」
「戦いというのは、相手の一歩先を読むぐらいでは戦いとは言えません。二歩も三歩も四歩も先を読まなければ、ならないのですよ」
「さて、優れた戦術家というものは仲間をいかに上手く動かせるかが問われます。・・・何故ここで言うかは分かりますよね?ええ、あなたが予想した通りのことです。今あなたの周辺には、私の部下が待機しています。一歩でも動けば、一斉攻撃を喰らうハメになりますよ」
「降参してくれませんかね?私は殺生は嫌いなんですよ。今なら私がかくまってあげることもできます。毎日栄養の整った物も食べれますよ?」
「正義の反対はまた正義。そう、悪というのはみんなが生み出した、エゴなんですよ。本当はみんながやっていること、考えていることすべてが正義なんです。」
「さて、無駄に体力を減らすのはこれぐらいにして・・・少しばかり、眠っていただきましょうか」
「僕からしてみれば、あなたはただ私の掌の上で踊ってるだけなんですよ。」
「僕はやることを決めたら完璧にやりきらないと気が済まない性格なんですよねぇ。だから、あなたがここで素直に負けを認めてくれたらありがたいんですが。」
「僕の予想からすれば、敵は間違いなくこのルートを通って攻めてきます。そこで、反対のルートにいる勢力をこのルートに回し、返り討ちにします。」
「言いましたよね?戦いは力ではなくいかに頭がいいか、と。あなたの敗因は力一辺倒になったからですよ。」
備考:DMの幹部であり、哲学者。幹部と言っても、下っ端達をまとめるリーダー程度の地位。要するに下級クラスの幹部。
下っ端達からは『知将』と呼ばれている。その名の通り敵の裏をかくような作戦ばかりを考えるからそう言われるようになったらしい。
本人自身もそのことを認めていて、なんとも思ってない。
ポケモン世界に元人間がやってきたことに深く興味を抱いており、反乱分子の討伐と共に調査も進めている。
戦闘では絶対に相手を殺さず、必ず生かすようにしている。これは彼自身が殺生が嫌いなのと、重要な情報を持っている可能性があるため、その情報を得るために殺さないからである。
戦闘面では“さきどり”や“かげぶんしん”、“どくどく”などを使ってじわじわと相手を追い詰めていき、最後に“はっけい”でマヒさせて動けなくし、捕獲するという戦法をとる。
ちなみに名前の由来は頭脳派を英訳したBrain sect(頭脳派)のsect(読みはセクト)から。
役割:敵ポケモン
2011/03/29 Tue 21:28 [No.213]
ジャグラー
※途中アイビス視点から別の視点に変わります。
「らああああああぁぁ!!」
叫び声と共にジャグラーの腕から波動が放出される。
ルカリオが得意とする“はどうだん”だ。
しかし、私にその程度の技は通用しない。
「ふんっ」
“はどうだん”を“リーフブレード”で真っ二つに切り裂く。
さらに、そこから“サイコカッター”を連続で繰り出し、一気にジャグラーを追い詰める。
「ッ!」
「何!?・・・“かげぶんしん”と“みがわり”を複合させた!?・・・どこでそんな技を・・・!?」
・・・やはり、甘く見すぎていたか。
“かげぶんしん”単体では時間がたてば消滅する上に、攻撃されればすぐにばれてしまう為、時間稼ぎにはあまり向かない。
しかし、そこに“みがわり”の効果を加えれば時間がたっても消えず、本物そっくりの分身が出来上がる。
しかし、それには身代わりの効果と影分身の能力を調整する必要がある。それを軽々こなすとは・・・。
「言っただろ、クール。俺は大切な人を守るために戦い続けると。
そのためなら俺はどんな技だって使う。」
「なんとでも言え。貴様がその正義が口だけでないか、今ここで確かめてやる!!」
正義正義と叫ぶあの男に、分からせる必要がある。
奴は大切な人がいると言っていた。・・・ということは、だ。
その大切な人は・・・あの中にいる!
本当に正義を持った男ならば、奴は必ず守りに入る!
「はあぁぁ!!」
「っ!?・・・しまった!」
どうやら成功のようだな。
私の放った“サイコカッター”は、奴がいた部屋に向かっている。
あのまま放っておけば扉を貫通して部屋の中で眠っている奴らに当たってしまうだろう。
だが、奴が本当に自分の正義を貫くというのなら・・・
「ぐっ・・・!」
「・・・ほう」
やはり、予想通りだ。
私の放ったサイコカッターは、ドアの前に立ったジャグラーによって防がれた。
だが、それこそが私の望んだこと。
この隙を突いて、私は一気にジャグラーの懐へ入る。
「どうやら、本当に貴様なりの正義を貫くつもりだったようだな・・・だが、それが命取りになった。」
「ふざ、けんな・・・!」
「・・・何を言おうとも、貴様はここまでだ。貴様の首をガウリイル様に届けねばならんのでな!」
そして私は一気に“インファイト”で奴を吹き飛ばした。
鳩尾にくらわせてやった上に、効果は抜群だ。そう耐えられるものではない。
「さあ、ジャグラー。年貢の納め時だ。」
「ごほっ・・・くそっ・・・」
――――あれ、ここはどこだろう?確か、朱鷺さんにやられて・・・そのあとに誰かがラプラスさんが死んだなんてことを言ってきて・・・
――――あれ・・・?何か、見える・・・?ルカリオと、エルレイド・・・?あれ、でもあのルカリオは・・・
――――いけない。ここで見るだけなんて・・・助けなきゃ!
この時、どうしてボロボロだったのに動けたのかわからなかった。
不思議に思った。普通なら動くことすらままならないのに。激痛を感じるのに。
ただ助けたい、その気持ちだけで動いた。痛みは感じなかった。
そして、私はドアを思い切り開け、今まさに刃が振り下ろされようとしているエルレイドの前に立ち――
一体、何が起こったのか自分でも理解ができなかった。
突然ドアが開いて、一匹のエーフィが俺の目の前に現れ、リフレクターで俺を庇ってくれた。
だが、このエーフィは・・・もしかして。
「“シャドーボール”!!」
「ぬぅ・・・!」
間違いない。この人は、俺が絶対に守り抜くと決めた――
「フィリット・・・さん・・・?」
今まで俺は何度か、歴史の資料でジャンヌ・ダルクなどの戦う女性を見たことがある。
その時俺はキレイだな、と何度か思ったことがある。
しかし、そんなのとは比べ物にはならないくらい、今の彼女は美しかった。
「く・・・だが、まあいい。奴を倒すことはできなかったが・・・最低限の目的は果たせた・・・!」
「待ちなさい!!」
クールが去っていく。最低限の目的とは何なのかは知らないが、多分俺の戦闘不能だろう。
だが、今はそんなことはどうでもよかった。
「フィリットさん・・・フィリットさん!・・・わああああああぁぁぁぁぁ!!」
「え、ちょ・・・じゃ、ジャグラーさん!?」
思わず俺は、フィリットさんに抱きついて泣いてしまった。
正直、泣きたいほど怖かった。・・・せっかく最愛の人と出会えたのに、ここで死ぬのが怖かった。死にたくない。生きたい。
普段は泣かないのだから、ここで思い切り泣いておこう。そう思った。
「大丈夫だよ、ジャグラーさん。大丈夫・・・もう何も怖いものはないから・・・」
あれから何分か経っただろうか。
俺の涙も止まり、フィリットさんはさっきからずっと笑顔でこちらを見つめている。
「ねえ、ジャグラーさん。」
「ん?何だい、フィリットさん。」
「一つ聞きたいことがあるんだけど・・・」
「?」
「なんでGTSで治療してたジャグラーさんが、ここにいるの!?」
・・・え、今まで気づいてなかったの!?いや、それともあえて突っ込むのを待ってた!?
まあ・・・どっちにしろ、驚いても仕方ないよな。だってあの時はすでにフィリットさんはいなかったし。
「実は、GTSに突然押し掛けてきたヨマワルとニャースの行商が来てな。そいつらに、アイテムをもらったんだ。それを使ってここまで元気になったんだ。」
「そうなの・・・よかった・・・本当に、無茶ばかりして・・・あの時、私がいなかったらどうなってたかわかるでしょ・・・?」
フィリットさんの目から、涙が出てくる。
・・・やっぱり、無茶したのがまずかったのかな。
「ラプラスさんも死んで・・・ひっく・・・ジャグラーさんまで死んじゃったら・・・私、どうすればいいのかわからないよ・・・!」
「え・・・?ラプラスさんが・・・!?」
あのラプラスさんが死んだ・・・?ウソだろ・・・?
いや・・・でも、あの時のクールはわずかだが、波動が違っていた。ということは、ラプラスさんと戦って・・・。
でも・・・あのラプラスさんが死ぬはずが・・・。
「フィリットさん」
「・・・!」
俺はフィリットさんを引き寄せて抱きしめる。
ポケモンとは言え、温かい。人と同じくらいだろうか。
「フィリットさん。俺は、あなたが俺に思いを告げてくれた時、俺は嬉しかった。あなたがそんな風に思ってくれることがうれしかった。
俺も、あなたのことが好きだ。」
「・・・!」
「だから、フィリットさん。俺はあなたを守り続ける。あなたを残して、死んだりはしないよ。」
「ジャグラーさん・・・」
俺はフィリットさんを強く抱きしめた。
俺はもう彼女を悲しませない、心の中でそう誓った。
あとがき
とりあえず一言だけ。
なぁにこれぇ。
2011/03/22 Tue 00:30 [No.203]
ジャグラー
お待たせしました。
ジャグリオVSクール(アイビス)が完成しました。
アイビス視点&アイビス(クール)独り語り風です。
――――――――
私はかつてジャグラーがいた部屋の前に立つ。
そして、超能力で中に誰かいないか調べた。
・・・いる。
「・・・やはり、中に気配を感じる。・・・もう逃げられんぞ」
―――カギはかかっていない。奴は確実にここにいる。
私は勢いよくドアを開けた。
そこには、戦いの場所となっているシロガネ山から切り離れたような空間だった。
ベッドの上で一見すれば死んでいるように見えるパッチールに、ジュプトル。
だが、この2匹は生きている。まだ生命の炎は消えてはない。
そして、もう一つのベッドで寄り添うように眠っているエーフィとルカリオ。・・・間違いない、あのルカリオこそジャグラーだ。我がDCの裏切り者。
・・・しかし、妙だ。ジャグラーがいるのはまだしも、エーフィやパッチール、ジュプトルまでいる?
しかもここにいる4匹は全員DMのはずだ。
まさか、ジャグラー以外の裏切り者がいるというのか?・・・いや、考えすぎか。
まあいい。今はここにいる、裏切り者を片付けるまでだ。
こいつらはそのあとだ。
私は、のんきに眠っているルカリオを“サイコキネシス”で持ち上げ、部屋の外に放り出す。そして、私も部屋を出てドアを閉めた。
「いっつつ・・・くそ、誰だ・・・?」
「ファビオラのように、DCを抜けてもひっそりと暮らしていれば手出しをしなかったものを。何故わざわざDMに寝返って我々に牙を向ける?」
「!・・・クール!?」
どうやら先ほど放り投げた時の衝撃で目を覚ましたようだ。
こちらの姿を見ると、すぐに戦闘態勢に入った。
「ジャグラー、戦う前に一つ聞くことがある。
・・・何故、お前は裏切った揚句かつての仲間と戦う道を選んだ?お前がカールの独断で切り捨てられた事は知っている。私に助けを求めるか、そのまま戦いの舞台から降りればどうにかしてやったものを・・・」
「ああ、俺も一度は考えたよ。DCに戻ろうともした。・・・けどな、それをするということは、誰かが悲しむんだよ」
「何?」
・・・予想外だ。まさかあのジャグラーがそんなことを言うとは。
ふ、少し奴を低く評価していたようだな・・・。
「こんな俺でも、仲間だと思ってくれる人達がいる。こんな俺のことを好きだと思っている人がいる。そんな人達を置いて、今更DCに戻るなんて・・・絶対に出来ない。」
「それに・・・俺にも絶対守りとおさなければならない大切な人がいるんだ。・・・俺は、その人のためにDMの一人として戦う。その人のためにも、俺は両腕が千切れたって戦い続ける!これが俺の正義だ。俺が貫き通すと決めた、正義だ!!」
「・・・そうか。それがお前の正義か。・・・いいだろう。」
もはや話は無用、私は腕を構えて戦闘態勢に入る。
大切な人を守る、それも正義の一つだ。
だがお前はその正義を貫き通すことなく、ここで散ることになる!
「行くぜ、クール!」
「来い、ジャグラー!」
2011/03/17 Thu 22:47 [No.188]
ジャグラー
「私も好きだよ、ジャグラーさん」
「フィリットさん・・・」
この言葉を聞いて、ジャグラーは照れくさそうに笑う。
―――これで、思い残すことはない・・・。
ジャグラーは机の上に置いてあったデパートのフロアから取っておいたテンガロンハットを被る。
そのテンガロンハットはなんとなく、温かく感じた。
不思議そうに見つめるフィリットに、彼は頬笑みながら言う。
「それじゃあ、行き先はどうする?」
「行き先・・・それじゃあ、あっち!」
フィリットは東の方向に指をさす。
東・・・ここから見れば、ワカバタウンに続いて、そこから海を渡ればカントー地方に行ける。
カントー地方に行ければ、他の地方にも行ける可能性もある。
その方角は、ジャグラーが行きたかった道でもある。
その言葉を聞いたジャグラーは、親指をぐっと突きたてる。
「東か・・・太陽が昇る方向でもあるし、カントー地方に続く道でもあるな。」
「うん。私も、その・・・ジャグラーさんと、色んな地方を見たいから・・・」
「フィリットさん・・・」
二人は顔を赤く染めながらエレベーターに向かう。
が、エレベーターに入る前にふとフィリットは思い出したようにジャグラーに話す。
「所で・・・私達が旅することをみんなに言わなくて、大丈夫なのかな?」
「あ」
思わずジャグラーの顔が青ざめ、ひきつっていく。
―――――しまったぁ、最後の最後でそんな重大な事を忘れるとは・・・!!
「ど、どうしますフィリットさん?こうなりゃ今から直接言って――――」
「あ、待ってジャグラーさん。こういうときは・・・これを使えば、いいんじゃないですか?」
慌てふためくジャグラーをよそに、フィリットは案外落ち着いて周りの物を見ていた。
そして、フィリットの手には一本のペンと一枚の便せんが握られていた。
コガネシティ ポケモンセンター
「えーと・・・ここに置いておくか」
ジャグラーは机の上にそっと便せんを置いた。
そしてすぐに外に出て、コガネデパート前に戻る。
「気付かれなかった?」
「ええ。何とかばれませんでしたよ。・・・にしても、ほんとにいいんですか?みんなに言わないで手紙だけ置いていくなんて」
あの後二人は便せんに旅に出るということだけを書いてポケモンセンターに置くことに決めた。
つまり、それは誰にも言うことなく旅に出るということである。
「大丈夫だよ。誰も反対する人なんて、ここにはいないから。それに・・・」
「それに?」
「・・・誰にも知られずに旅をしたいから、かな?」
顔を赤くしながら、フィリットは微笑む。
その微笑みを見るたびにジャグラーも笑顔になる。
「なるほど。・・・それじゃ、行きますか。」
「うん!」
―――――これからの二人には、様々な出来事が起こるだろう。
時には笑って、泣いて、喜んで、怒って。
色んな事が起きるだろう。
俺たちはそんな体験をしながら、ゆっくりと歩んで行きたい。
俺が一番大好きな人と共に、ゆっくりと歩んで行こう。
「フィリットさん」
「何?ジャグラーさん」
「大好きだ」
フィリットの頬に、ジャグラーは一つ口づけした。
2011/03/09 Wed 21:44 [No.178]