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kaku
「……そう、ね」
ほむらは、迷った。
(今日はもう……このまま学校サボって、ラブホ行こうかな)
ほむらは今、とても大胆だった。
というか、ほむらは、さやかたちのラブラブぶりを見た後はいつも、そういう思考を始める。そして、勢いだけでまどかを呼び出すが、土壇場で勇気がなくなって、結局コクれないのだ。
だが、テンションの上がったほむらは、そんな常の失敗など忘れている。
(よし、決めた!!ラブホ行こう!!)
ついに決意したほむらは、まどかの肩をつかみ、まどかの両目を凝視した。
「ほむら……ちゃん?」
まどかは、ほむらのただならぬ様子に驚きつつも、内心、喜んでいた。遂にこの時が来たのかと、胸を弾ませていた。まどかもまた、ほむらと同じく、奥手なために自分の想いを伝えられずに居るのだ。相手から迎えに来てくれるのなら、それは願っても居ないことだった。
「まどかちゃん……あのね、あの……」
遂に、その提案をしようとした時だ。
「あなたたち!」
ほむらの肩を、だれかが叩いた。
「ひっ!?」
誰も居ないと思って大胆になっていたほむらは、まさに驚心動魄、心臓が止まる思いを味わった。
振り返ると、そこに居るのは巴マミ。
「いちゃつくのもいいけど、学校に遅れるわよ」
巴マミは、杏子と同じことを言った。
「はぁい……」
「ほむぅ……」
すっかりテンションの下がったほむらとまどかは、しょぼくれながら、巴マミと一緒に通学路を歩く。
(ああ、やっぱり私はだめなんだほむぅ……巴マミが来たって、無視してまどかちゃんをラブホに誘えばよかったのに……こんなだったら、いつまでたってもまどかちゃんと恋人になんてなれないよぅ……)
そんなことを呟くのは、心のなかだけでの話。
体の方は、大きな溜息を一つ漏らしただけだ。
巴マミは、そんなほむらの耳元に顔を寄せ、まどかには聞こえない声でささやいた。
「別に、そんなに急がなくていいんじゃないかしら。あんまり急かしたら、鹿目さんだって、焦っちゃうんじゃないかな」
「え……?」
巴マミの言葉に、ほむらは驚いた。まるで、自分の心を見透かされたような気がした。巴マミは、ほむらがまどかをラブホに誘おうとしていたことなど知らない。それでも、ほむらがあまりにもいろいろすっ飛ばしたことを考えているのを、見抜いていたのだ。
「ごめん、遅れそうだから、私先に行くね!!」
ほむらにそれだけ言うと、巴マミは、走りだした。
(急ぐことは、ない……)
ほむらは、巴マミの言葉を心のなかで反芻した。今自分にできることを考えた。そして、ひとつの結論を、出した。
「まどかちゃん!!」
「は、はい!?」
ほむらが突然名前を呼んだので、まどかは驚いて、妙に上擦った感じの声で返事をした。そして、深呼吸して、ほむらは続けた。
「……手、繋いでいかない?」
一瞬、まどかは黙った。ほむらが何を言ったのか認識するまでに、一瞬という時間が、必要だったのだ。だが、一度そのことばを飲み込めば、心が暖かい感情で満たされるのを感じた。
「……うん!」
最高の笑顔でそう言うと、まどかはほむらの手を握った。
ほむらの手は、冷たくて、そして、とてもあたたかかった。
2011/04/21 Thu 01:28 [No.263]