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宮野
(上の続きです)
「……なるほどね。夢の中で女の子が現れて、『心を失う』と言ったんだね……」
「はい……」
「でも、その女の子は何か事情があるんだと、あたしは思うよ」
夢に現れ、シンに意味深な発言を言う女の子の言葉に悩み続ける彼に、ユウはアドバイスを受ける。
「心を失うのは、そんなに簡単じゃないと思うんです」
「タクト君?」
タクトが言う。その発言にリオが驚く。
「心を失えば、取り戻せばいいんです」
「あんたなあ……簡単じゃないんだぞ。心を取り戻すのは」
「う……」
「……そうなんですか?」
タクトの発言にユウが突っ込む。
時間は過ぎ、時刻は昼3時。
風が強く吹き、草が生い茂る。晴れていて快晴。澄んだ青い空は観る者を圧倒する。
「さて、どうしよっかな……」
「姉さん、買い物行こうぜ」
「まだ早いだろ。夕方って言ったじゃないか」
タクトの言葉にユウがまたもや突っ込む。姉弟の会話はこうである。そんな2人をシンは笑む。
「あ、あれ? さっきまで空が青かったのに……」
しかし空は一変。暗く灰色の曇った色に変化。雨が降るのかと思いきや……。
「見つけたぞ、『銀色の髪をした少女』を宿す者よ」
「な、だ、誰だよ!?」
現れたのは、赤色のフードを被った謎の青年。見た目は人間に近いが、随所に機械の腕や武器が残る。ユウの発言を無視し、青年はシンを狙いを定める。
(『銀色の髪をした少女』……!? 夢で見たあの子……!?)
「先輩、逃げろ! こいつは……」
タクトは二刀流の剣を装備する。
「貴様は震えているな。だがもう遅い」
赤色の雷がタクトに直撃する。手も出せずに倒れるタクトをユウが看護する。
「ぐあああああっ!」
「タクト君!!」
「タクト!? 一体あんたは何なんだ!?」
「教える必要はない。シン・カミナギ……」
シンはタクトに近づく。青年はシンに再び狙いを付ける。
「お前の『心の欠片』は崩壊させてもらう! 死斬硬破斬<しざんこうはじん>」
「あ、ああ……! あうっ!」
連続で切り込む剣技。シンの体に斬り込まれ、服もボロボロになった。防御も出来ない技に、シンは気を失う。
「シン!! おい、しっかりしろよ!」
「これで役目は果たした。せいぜい感情が砕けるまで放っておくか」
「こ……この……野郎……!!」
「女性が怒ると怖いな……可愛らしく生きろ」
「うるさいッ!!」
シンを傷つけた青年。彼の挑発にユウは怒りを放つ。そして……。 彼女の身体から青い電撃が放つ。彼女の体質が変わってしまう。
「あたしは弱くて、何もできやしないんだ……彼を守る事なんて……」
「ううっ……」
気を失っていたタクトは、シンを見て彼のとこへ行く。
「先輩!? だ、大丈夫ですか!?」
気を失ったシンをただ観るしかないタクト。前を振り向くと、ユウが何らかの力を発動をしているのを目撃する。「電撃」、または「雷」。すなわち電気を操る能力。
「ね、姉さん……!?」
タクトは驚く。
「お前は、あたしが絶対に倒す!!」
覚醒したユウ。タクトは驚きを隠せなかった。
「ふっ、勝負はお預けだ。だが、彼を見ろ。もうすぐ心が消える……」
青年はユウが覚醒した事を尻目に姿を消す。
「くそっ!! あいつはあたしが絶対に倒してやる!」
ユウは彼を敵と認識し、心に誓った。
「先輩! あ……」
タクトの目の前でシンの心の欠片が崩壊し、四散してしまった。欠片はどこかへ飛び散ってしまう。シンは感情の殆どを喪失してしまったのだ。
「う、嘘……でしょ……そんな……シンの欠片が消えた……? 嘘だ、嘘だあああああ!!」
急いでシンが倒れている場所に行くが、時すでに遅く、泣け叫ぶユウ。涙が止まらなかった。自分が歯がゆい。
そして、責任を押し付けられた彼女は―――。
「……姉さん……」
「……ツナシさんに言おう。全部の事」
「だけど……!」
「あたしが悪いんだ! あたしが……全部悪いんだ……」
リクのとこへ行こうとするユウ。シンを抱えながら、急いでリクの家に向かう。
2011/12/08 Thu 03:23 [No.749]
宮野
思い悩むシンの所に、ユウとタクト姉弟が現れる。姉はラフな格好に青色のジャケット、弟は長袖に白のジャケット。かなりラフな衣装だ。
「あ、エトミヤさん、タクト君……おはようございます」
「おっはよう、シン!」
「おはようございます、先輩」
挨拶をする3人。ちなみにシンの衣装は青いマフラー、白い上着(シャツ)、藍色のズボンに茶色のブーツ、青いジャケット。かなり暖かそうな衣装だ。
「どうしたの、シン。何かあったの?」
ユウが問いかける。
「あ、いえ、その……なんでもないです……」
シンの俯いた発言に、ユウは……。
「男なら、ハッキリする!」
「え!?」
ユウの発言に、驚くシン。
「悩み事があったら、あたしに言って」
「は、はい……」
シンは悩んでいる事をユウに話す。
2011/12/08 Thu 03:22 [No.748]
宮野
PHESE-03.5 「心の欠片 - 感情喪失」
『もし……あなたの欠片がなくなったら、あなたはどうするの?』
「……え?」
シンの夢に現れる謎の少女。銀――いや、プラチナブロンドの髪をしており、瞳の色はシンと同じ赤色をしている。謎の言葉を言い、最後にもう一言を言う少女。
『欠片が四散したら、あなたは何をしますか? そして――』
「待ってください! あなたは一体……」
夢から醒めた時には、朝日が既に昇っていた。時刻は朝7時。
「……何だったんだろう、今の夢は……」
シンは夢に出た少女の事を気になっていた。
1階に降り、リクに朝の挨拶をする。
「おはよう、シン! ……なんか、元気ないみたいだね」
「あ……お、おはようございます……」
シンは辛辣な顔をしていた。あの夢に出てきた銀色の少女―――自分に何かが潜んでいるのかと、リクに話そうとする。
「……シン、それ本当なの?」
「本当です。夢で見たんです。教えてください、父さん……」
「…………今は教えられないんだ。そういえば、9時にリオちゃんがここに来るよ」
「そう……ですか……(結局、答えが見つからなかった……)」
結局、銀髪の少女の事は話せずに時間が経過した。日時は土曜日。リオがリク――ツナシ家にくるという。
そして9時。時間通り、リオが彼の家に入った。
「おはようございます、ナギくん、ツナシさん」
「おはよう……ございます」
「あら? ナギくん、元気ないですね。どうしたんですか?」
「こっちの事だから、気にしないで。そういえばシンに話していなかったな」
「え?」
テンションの低いシンは言葉に「……」を多用してしまう。そしてリクはシンに向かって話す。
「『心の欠片』って知ってる?」
(心の欠片……!? 夢で言ってた……)
「それが全部砕けると、感情を失うって聞いたよ」
「怖いですね……でも、どうしてここで話すのですか?」
「どうして……父さんが知っているのですか?」
シンはリクに何故『心の欠片』の事を知っているのかを問う。
「そ、それは……友達だった子がこの話を言ったんだ」
「お友達が、ですか?」
「そう。今はもういないけどね……」
一気に場の空気が暗くなる。
「……暗い話はここまでにして! 後は2人で遊んできなさい!」
暗い話が一気にぶっ飛ぶ。シンとリオは、外に出る。リクの家には何故かリオの執事が運転する車が。後ろのドアの中は、シン専用の服装が。どうやら、能力者の神威=(イコール)シンに憧れて……いるのかは不明だが、どこかの作品の色んなコスチュームがある。リオ曰く「コスプレ衣装」との事。
(結局、『心の欠片』しか話せなかった……。でも、あの子は僕に対して言っていた……)
『もし……あなたの欠片がなくなったら、あなたはどうするの?』
『欠片が四散したら、あなたは何をしますか? そして――』
「……どうしたんですの? ナギくん」
「い、いえっ! 何でも……何でもありませんから……」
未だに『心の欠片』について引っかかるシン。俯(うつむ)いたまま10時を迎えたのだった……。
2011/12/07 Wed 22:50 [No.747]
宮野
「神威……俺は……」
「……何もいうな」
終了後、シンとタクトは能力者の姿で話しかける。というよりシンより年下の癖に……。
「もういいでしょ。あんた達が戦うわけないのに」
「姉さん……」
あたしはタクトを励ます。と―――――
ガチャ……という音が聞こえて、中から入ってきたのは―――――――
「あれ、もう終わっていたの?」
「ツ、ツナシさんっ!!??」
入ってきたのは、シンの養父、ツナシ・リクさん。どうしてここにっ!?
「あれ、3人いるじゃん。神威はシン、詩樹玖はタクト君。そして……どうしてここにユウちゃんがいるの?」
「うっ……そ、それは……」
焦るあたし。事情を話すと……。
「か、勝手にここの扉が開いて……それで……」
「なるほどね。それと、そろそろ2人とも、変身を解除して。そんな格好じゃ疲れるよ?」
「お、俺は……」
「わかった」
最初にシンが変身を解除した。タクトは戸惑っていた。
よくみると、神威とシンの時では瞳の色が違うのがわかる。でも性格が変わるのって、何かあったのかな……。
―――あたしが不本意にここに入ってきたのは、あたしが何か特殊な能力を持ってるのかな……?
「……お、お父さん!? ……うわっ!」
シンが勝手にこける。なんでこけるの……?
「先輩……しっかりしてくださいよ!」
タクトに突っ込まれる。ボケとツッコミのコンビだなこりゃ。
「シン、いじられてるよ。さて、そろそろ話そうか。ここの施設について」
「ううっ……」
ツナシさんはここの施設――図書館に何度かかよっている。そしてもう一つの姿―――ナイトバニシング内で起こる聖戦。あたしにはよく分からないけど……。そして、エレイシアは色んな願いをかなうもの。10個集めれば願いを叶える事ができるが、それを狙っている人物もいる……。シンとタクトはそれを巡って聖戦に参加していたんだね……。
「よ、よくわからなかったけど……ありがとうございます」
「いいんだよ。……あれ? タクト君。解除しないの?」
「い、今します!!」
「姉さん……今まで隠しててごめんなさい」
能力者の事を隠していたタクト。あたしは涙をうかべてしまった。
「いいんだよ……もう……」
「うん……姉さん、好きだよ」
「……そろそろ帰ろうか。僕もうお腹ペコペコだよ」
「父さん……子供みたいに言わないでください」
ツナシさんの発言にシンが突っ込んだ。いじられ役とツッコミ役っていいよね。……って何を言ってんのあたし。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
図書館を出たあたし達4人は、それぞれの家へ戻った。「夕食はまだ?」というあたしの発言に、タクトは苦笑いをして「はいはい、作りますよ」という。ちょっとムッとしたけど、姉弟っていいよね。これから続くと良いな……。
2011/11/12 Sat 18:38 [No.712]
宮野
ナギ君が変身した途端に詩樹玖の片手剣が神威に降りかかった。防御しても素早い身のこなしを誇る彼の剣術にひたすら攻撃のチャンスを伺う神威。
なんで、同じ部の人間が戦うのと、あたしは心を痛める。「そんなの、おかしいよ」とあたしはつぶやく。
「炎塵爆砕戒〈フレイム・アサルト〉!」
「衝雹異端娼〈せっひょういたんしょう〉!」
2つの技が交互に発動するが、交互に消してしまった。
「お前って奴はぁー!!」
「………………………」
詩樹玖の叫びに、神威は無言で銃を乱射する。
一方、あたしは本棚に避難し、2人の能力者の戦いを見るしかなかった。
「あんたみたいな男が、姉さんと一緒にいるなああああああぁぁぁぁッ!!」
「……うるさいやつは、嫌いだ。」
熱い口調は、全て水に流す神威。銃声と剣の金属音が響く。
あたしは、神威に彼――詩樹玖を止めるように言った。
「ナギ君……ううん、神威。お願い」
「姉さん!? なんでだよ……」
「タクト! あんただって……あたしの事、わかってくれないくせに!!」
あたしはタクト=詩樹玖に対して必死に説得するも……。
「……うわああああああああああっ!!」
詩樹玖は両腕に持つ剣を1つにし、両手剣のような装備となり、神威に襲いかかる。あたしの声を聞いてもなお戦い続けるなんて……。
「スノウクイーン、ソードモード発動」
今まで銃だった武具が、一瞬にして剣となった。何でも変形できるのね、その武具。
「大剣はスキが大きい。一気に決めさせてもらう……!」
神威の発言に、詩樹玖は叫びながら技の名前を叫ぶ。
「くらえ! 炎塵咆哮斬<ブラスト・ヴァニッシュ>!!」
炎を纏った大剣を上空から攻撃する彼の必殺奥義。しかし、その攻撃を神威はかわしてしまう。
「降り注げ、氷の刃。<クラスター・レインソード>」
剣の雨が降り注ぎ、詩樹玖の持つ双剣にヒビが生じる。
「なっ!?」
「タクト、もうやめようよ。シンとなんで戦うの……? あたしの声を、聞いて……いや……聞けえぇーッ!!」
神威の技と、あたしの発言にタクトは……。
「姉さん……! 俺は……!!」
「そんなのどうだっていいんだよ! あたしはシンや星遊飛行のみんなとの絆を切り裂くというの!? だったら、ハッキリする! 男なら! ねっ。だから……一緒に戦って、シンと」
「……俺は、姉さんを守りたくってこの戦いに参加したんだ。だけど……」
「男ならハッキリしてよ! あたしは、あんたがいなきゃいけないんだよ!! シン、彼の武具を、壊して……」
「……わかった。降り注げ、氷の意思! 破翔・蒼影斬<はしょう・そうえいざん>!」
素早いスピードで氷の破片が降り注いだ後、直後に十文字に切り裂く奥義。詩樹玖の双剣は跡形もなく、消えた。
2011/11/12 Sat 18:37 [No.711]
宮野
タクトはあたしとの会話もなく、1日、2日も家に帰ってこなかった。すぐ帰ってくるっていうのに、と心の底から思っていた。でも、何日も家には、彼の姿がいなかった。
「……あたしのせいかな」
自分がバカだった。ナギ君が来た当初から、タクトの様子が変だった。あたしの頬に、一粒の涙がこぼれた。そして、所持していた携帯で、ナギ君に電話をかけた。
『はい、シン・カミナギです』
「……もしもし……ナギ君?」
『エトミヤさん? どうしたんですか?』
声をからしながら、ナギ君に事情を話すあたし。
「タクトがいなくなった……」
『え!? ど、どうして……?』
「分かんないのよ。いきなりアイツが『姉さんなんか大嫌い』と言って、家を出て……。もう、何日も帰ってこない……」
『……タクト君を捜しましょう』
「え!? 無理だって」
いきなりのナギ君の発言に吃驚(びっくり)した。
『きっと、原因は僕にあるんです。だから……』
「……わかった。でも、タクトがどこにいるのかがわからない」
『図書館にいると思います。きっと、僕に戦いを望んでいると思いますから……』
図書館にタクトがいる? でも、なんで……。まさか、彼も……。
その夜、図書館――ナイトバニシングに向かったあたしとナギ君。というより、ナギ君、何そのコスチューム。本人に聞くと……。
「あ、その……リオさんが……」
どうやら、リオさんが用意したものらしい。どこかのアニメで見た学生服らしい。
「学園の制服じゃないのね。何か似合うじゃん」
「ど、どうも……」
図書館に到着したあたし達は、炎の弾が2人に向かって爆発した。
「っ!」
煙から影が見える。その姿は、騎士の服を着た……。
「う、嘘でしょ……」
あたしは一瞬、目を疑った。
「シン・カミナギ……いや、神威! どうして……姉さんと一緒にいる!?」
「……タクト君、こんな戦いはもう止めましょう! どうして戦わなきゃいけないんですか!?」
「うるさいッ!! お前なんか……いなければいけないんだ!」
二刀流の剣と炎を操る彼は、ナギ君に襲いかかった。
「タクト……ウソでしょ? 何で、能力者に……」
タクトが能力者と知って驚愕してしまった。何であんたがそこにいるの……?
「くっ!」
タクトの攻撃で、破片がナギ君の左足に被弾した。凄まじい威力だ。
「ナギ君!」
あたしはとっさにナギ君のところに向かった。
「姉さん! 何で……アイツを庇うんだ!?」
「あたしは彼に助けてもらった。あたしは……」
「エトミヤさん……早く逃げてください。エン……ゲージ!」
ナギ君は怪我を押して変身した。傷つく事でも戦うって、どうかしてるよ……この戦い。
そして、神威とタクト――詩樹玖の戦いが始まった。
2011/11/01 Tue 00:04 [No.709]
宮野
『……あなたに興味はありません。先に失礼します』
学校の帰り道。タクトは結局、中等部の友達と一緒に帰ってしまった。あたしはナギ君と一緒に帰った。何でナギ君にそんな態度で怒っているの? あたしにはさっぱり分からないよ……。
「……あの、タクト君ってどんな人なんですか?」
「え!? うーん……」
ナギ君がタクトの事をあたしに問いかけた。そういえばナギ君はタクトの事を知らなかったんだっけ。
「あいつは単純でバカで体力があって頭が悪い!」
「えっ!?」
ナギ君が驚いた。そんなに驚かなくても……。
「……でも、あたしが小学6年の頃、病気になった時にタクトが必死に看病してくれたんだ。あいつは料理もできるし、結構面倒見はいいんだよ? でも……」
「……どうしたんですか?」
「この頃から、何かあいつの様子がおかしいんだ。最近あたしに辛く当たるし……」
「僕が来たから、そのせいでしょうか……」
「そ、そんなに落ち込まないで! 第一、ナギ君が落ち込んだら……あたしも辛くなるよ……」
「すみません……」
ナギ君はあたしに対して謝った。優しく慈悲深く芯の強い性格。あたしはナギ君とは正反対の性格だけど。
2つの道の左側に、ナギ君の家がある。あたしとタクトの家は右側。左側に人影が見える……。とすると声がする。
「シン! ここだよ。迎えに行くって言ったじゃないか」
「と、父さん!?」
え、え―――――――――っ!?!? この人がナギ君のお父さん!? そっくりなんですけど―――!! あたしは驚きを隠せなかった。
「ユウ・エトミヤちゃん……だっけ? 初めましてだね」
「え、ええ……は、初めまして!」
緊張するあたし。全身が震えてしまった。ううっ……。
「僕はリク・ツナシ。よろしくね」
ナギ君のお父さん、リク・ツナシさん。身長と瞳の色以外、外見そっくりで見分けがつけらない……。
「今日はありがとうございました、エトミヤさん。木刀、直していただいて」
「へ? 木刀? あの子に直してもらったのか?」
「え、ええ……」
直すのに何時間もかかったけど、まいいか……。
家に帰ったあたしは、タクトの様子を見る。
「ね、タクト……って、何処行くの?」
「……姉さんには関係ない」
「もうすぐ暗くなるのよ! あたしは……」
「姉さんは先輩の事が好きで、俺の事が嫌いなんだろ!?」
タクトの発言に、あたしは驚きを隠せない。
「ちょ、何言ってるの!? ナギ君は……」
「姉さんなんか、大っっっ嫌いッ!!」
と言って、彼はドアを強く叩きつけて何処かへ行ってしまった……。
「何よ……バカ……」
2011/09/20 Tue 02:56 [No.697]
宮野
第三章「嫉妬と襲撃」
昨夜の襲撃から1日経った。一体シュルツ能力者って何なのって良く分かんないけど、属性を操る事が出来るのは知っているけど。後エレイシア。10個集めれば願いが叶うけれど、未だに謎に包まれているのよね……。はあ、否応無しに巻き込まれてしまったあたしが馬鹿だ……。
それに、昨夜ナギ君の所持していた剣道で使っていた木刀、壊れているけど……あたしが治したけど、指の傷が痛い。絆創膏(ばんそうこう)何枚使ったんだろう……。というよりフツー治せないよね、木刀。
★火曜日 朝 桐鐫学園 2年2組 教室内
「ナギ君、これ」
「あ……それ……」
あたしはナギ君に修理した木刀を渡した。
「ありがとうございます……昨日は父さんにこっ酷く叱られちゃって……」
「あたしが治したから。感謝しなさいよ(うう、指が痛い……)」
「えっ!? エトミヤさんが治したんですか?」
「まあね。不器用だけど……」
「……ありがとう……ございます……」
涙を浮かべるナギ君。なにそれ可愛い。……って何言ってんだあたし。
★演劇部「星遊飛行」
演劇部の教室を入った途端、アズサさんが「演劇が決まった」との報告が入った。
「部長、今度の演劇は何ですか?」
シホがアズサに話しかける。
「ふふっ……聞いて驚け……今回の演劇は――」
「どうせハードル高いんでしょ?」
アズサの話を全く聞いていないタクト。と、タクトの頭に何かがぶつけた音が。
バシッという音が。学園指定の深緑色のスリッパだ。痛がるタクト。何文句言ってんだよあんたは。
「何か言った?」
「す……すいません……」
すぐに謝るタクト。素直じゃないんだから……。
「コホン。改めて今回の演劇は『ロミオとジュリエット』! という事で、役は既に決めているわ!」
演劇は『ロミオとジュリエット』。この作品は悲劇とされ、シェイクスピア死後に刊行された全集のような重厚な悲劇とは見なされていない。何かハードル高そうに見えるけど…………。
「役は主人公のロミオ役にはナギ君、あなたがやってくれない?」
「え、僕ですか!?」
「ちょっと待って下さい! なんで先輩が?」
「タクト君はちょっと……ね」
ロミオ役にはナギ君が選ばれた。反対的にタクトは役を奪われて悔しがっていた。
「じゃあ、ジュリエット役には……ユウ、あなたがやって。キスシーンあるからね」
「ちょっ、部長! ナギ君とキスですか!?」
何で部長はあたしをジュリエット役に選んだのかは良く分からないけど、ロミオ役のナギ君とのキスシーンをやるって……。
「本番は来月。それまでは練習よ!」
来月の本番までにセリフ覚えないと、どうしようもないよね。
「ん? タクト、どうしたの?」
「別に……」
ナギ君に嫉妬の表情を見せるタクト。
「あ、あの……タクト君……」
「……あなたに興味はありません。先に失礼します」
タクトは早めに部屋を出た。
「何よ、今日のタクト。態度悪いなぁ」
「僕がロミオ役になったから、タクト君は役を奪われた……きっと、僕を恨んでいると思います……」
「そんな事はないと思うよ! タクトはああ見えて、根は優しいんだよ。ちょっと捻くれているけど……。だから、元気を出してよ、ナギ君」
多分あたしが悪いと思うんだ。子供の頃は泣き虫で、どうしようもなく姉のあたしにすがったタクト。表情がころころ変わって、怒ったり、泣いたり、笑ったりもする。誰かを恨んだりするのは、あまりにも無いと思うんだけどなぁ……。やっぱり、性格はお父さんの影響かな。あたしもお父さんの影響で、口が悪くなって性格もタクトと同じになっているし。やっぱり姉弟って似ていると思う。あたしが言うんじゃないけど。
とりあえず、劇の本番は来月。それまでに練習しないとね。
2011/08/22 Mon 02:02 [No.572]
宮野
夜の図書館で始まった聖戦。シン・カミナギ君―――いや、コードネーム『神威』は、冷徹に戦いを有利に進めた。6対1という圧倒的な不利の中、彼は果敢に1人で6人の相手をしていた。あたしはただ、その戦闘をただ見守るだけだった。
自分は見ているだけで歯痒く感じる。目の前でナギ君が変身して、驚いた。それより、あの男6人組は何者なんだよ。変な技を使って、ナギ君を倒そうとした。
それよりも、ナギ君、口調変わってない? 二人称が「貴様」とか。……でもそういうナギ君も格好いい。剣道部だけど、なんで銃を使っているの? ゲームでいう「銃剣士」ってトコ?
銃声と剣の音が響く中、あたしは避難した。巻き込まれないように。戦えない。あたしは弱くて、頭は良いけど、運動はからっきしダメ。タクトと比較しても、絶対にあたしが負ける。どうしようもないよね、あたしって。と、1人の少年があたしに向かってこう言った。
「圧倒的に不利だ……。6人であの女を狙うぞ!」
ひ、卑劣すぎる。どこまでも汚い手を使って、あたしを消そうとしたその時……!
「凍り付け、『氷山消滅(アイス・ジャッジメント)』」
山の型(かたち)をした氷が一段と大きくなり、1人を即座に氷漬けとなった。まるで氷山のように。
「こ、地面が凍っている!?」
フィールドは辺り一面が雪景色に。流石のあたしも寒かった。気温の調整できるなんて。
「みんな、撤退だ!」
1人を除き5人はすぐに撤退した。……1人残ったんだけど。あたしがその1人を見つめたら……既に何かを抜き取られ、眼を閉じたままだった。
「…………無事か」
あたしは神威に、あの1人の少年が氷漬けになっているのと聞くと……。
「……既に能力の宝石は抜いた。すぐに溶けて明日には普通の少年になる」
宝石……? 金曜日に見たあの宝石の事? ダメだ、頭がこんがらがっちゃになってしまう。落ち着けあたし、気持ちの整理を掴め、あたし―――!
そうこう言っている内に、神威は能力……いや、変身を解除し、元のシン・カミナギ君に戻った。
「……無事ですか、エトミヤさん!」
さっきの『無事』と同じ台詞ですけど。やっぱりナギ君って天然だ。
「……すっかり暗くなったな」
「……送りましょうか?」
そういって、あたしとナギ君はそれぞれの家に帰った。
家に帰ると、居間にナギ君が使っている木刀が壊れていた。あの戦いであの威力だもんね。
「姉さん、何処行ってたの?」
あたしの弟、タクト・エトミヤ。中等部3年の15歳。あたしと対照的に運動は良いけど勉強はダメ。どっかのアニメで良く見る子だな。
「……図書館だけど」
「こんな夜に?」
ううっ、睨まれてる……。つーか、あたしを疑うな! そういえば、ナギ君は何しているんだ?
「遅くなってすいません!」
ナギ君は家に帰り、急いで晩ごはんの支度をする。学園のジャケットとネクタイを外し、白いシャツとエプロン姿は、神々しい。そして、首にぶら下がっている蒼い宝玉は、能力者の証だけど、あたしも分かんない。
「おかえり、シン。あれ、剣道で使っている木刀はどうしたんだ?」
「あ……」
話しかけたのは、ナギ君の父、リク・ツナシさん。というより、ナギ君そっくり! 声と容姿の見分けが付けられない! どちらが息子か父かあやふや。
木刀、あたしの家に置いてあるけど、先端の部分がぶっ壊れてるし……。あたし、手先が不器用だけど、治してみせる。
「シン、まさかとは思うけど、能力者と戦ったの?」
「え……あ、はい」
あたしもいたけど、あたしの事は話さなかった。
「学園を謳歌する日にそんな事が起きたとはね……。今日は早く食べて寝なさい」
「分かりました。そうします」
早寝早起きは健康の素! って、それ元気なおじいちゃんとおばあちゃんに言う言葉じゃないか! 何やってんだろうあたし……。
はあ、明日は早いし、早く寝ようっと……。
2011/07/17 Sun 01:33 [No.454]
宮野
その日の夜。シャワーを浴びた後、ユウは自分の部屋のベッドで学園でナギと再会した事を振り返る。
「まさか、ナギ君が転校生だったなんて、本当に驚いたなぁ」
髪を乾かしながら、パジャマ姿へと着替えるユウ。とその時、ゴトッという音が聞こえた。
何事か、と思い襖(ふすま)を開けるユウ。そこには5、6人の少年達がいた。
「な、何なの、あんた達……人の家に勝手に入り込んで……」
「ハロー☆」
少年達は何の忠告も無しに、ユウを連れ去ろうとする。突然の襲撃に、ユウは悲鳴をあげる。
「連れて行け!」
「いやああああっ!」
一方、部活からの帰りの中、ユウの悲鳴を聞いたナギ。急いでエトミヤ家に行くナギ。
「あの声は、エトミヤさん!?」
「あんた達、何のつもりなの!? あたしをどうする気!?」
「…………」
無言でユウを連れ去ろうとする少年達。と、竹刀で1人の少年を凄まじい威力で気絶させた。
「大丈夫ですか、エトミヤさん! 助けに来ました!」
「ナギ君!」
「貴方達は一体……」
(シン・カミナギ……何故此処にいる!?)
竹刀を構えてユウを助けようとするナギ。
「どうしてナギ君があたしの家にいる訳!?」
「い、いや、エトミヤさんの悲鳴を聞いてて……それで……」
助けに来たのは良いが、事情を知らないユウ。とそこへ……。
「食らえ、“エレコムナックル”!」
「くっ、何てパワーなんだ!」
竹刀でガードするものの、凄まじい攻撃を誇る拳に苦戦するナギ。
「ナギ君、後ろっ!」
「ッ!」
「後ろに気付かないお前はドジだな!」
後ろにいたもう1人の少年に背中に攻撃を受けたナギはそのまま気絶してしまった。
「ナギ君ッ!」
同時にユウも攻撃を食らい気絶してしまった。
★同時刻 図書館
目を覚ましたユウ。ナギも一緒だが彼は未だに気を失っている。
「此処は、図書館……何で……?」
「お前達は此処で消えなければならない。お偉いさんの命令でね」
「お偉いさんの命令……? あたしが何をしたって言うの!?」
「さぁ、消えて貰おうか!」
「待って下さい!」
目を覚ましたナギがユウの目の前に現れる。
「貴様、動けるのか!?」
「ナギ君! ああっ!!」
ユウが1人の少年に腕を掴まれる。
「その人を離して下さい!」
「駄目だね。こいつは消えるんだから」
「そういう訳だ。“ウォールランス“!」
無数の草の葉の刃がナギに襲い掛かり、その振動で爆発する。
「ナギ君ッ!!」
「ははっ、いい様だ」
悲鳴を上げるユウ。
「いい加減にしてください……エトミヤさんが何をしたって言うんですか?」
「き、貴様、まだ動けるのか!?」
白煙の影からナギが無傷で現れる。彼の表情は怒りで満ちている。そしてユウは学園の廊下でナギの言葉を振り返る。
(あんたって、一言で言い返せば『おっとりしていて、天然で世間知らず』だよね。でも、健気な一面もある)
(……『健気』って、そんな事は皆さんからは聞いてないですよ)
(そういや、金曜日の夜にあんたと初めて会った時、どことなくナギ君に見えた筈……)
(……え? それって……?)
(……勘だよ、勘。だから、あたしがあんたを守る)
「エトミヤさんは僕を守るって言ってました。だから、今度は僕がエトミヤさんを守ってみせる!」
右腕に付けていた包帯が外され、シルシが青白く光った。
「貴様、もしかして……!?」
「ナギ君……!?」
ナギの発言した言葉「エンゲージ」の後に、氷の氷柱と結晶がナギの周り一帯に広がる。
「貴様ぁぁっ! シュルツ能力者か―――!?」
「……貴様に言われたくない」
現れたのは、ナギに見えるが、性格と衣装・瞳の色が違う人物。
「あれは、神威……くん……?」
そう、シン・カミナギはシュルツ能力者でコードネームは『神威』。ユウは驚きながら見ていた。
これが戦いのゴングが鳴り響いた。
(シュルツ……能力者……)
2011/07/17 Sun 01:32 [No.453]