Net4u サービスを終了します
Makoto
――――――――――――――――――――――――
「……行ったわよ、あの子どもたち」
「あの隠し階段、ようやく気付いて降りて行ったか……。幾ら何でも鈍くさ過ぎだろ、おい!」
「ホントなりよ。呑気に自己紹介なんかやってる場合じゃないなりって! それにここジメジメしてるし… 隠れるオイラたちの身にもなれって言いたいなり」
「言い合うのも結構だけど、感謝しなさいよね? ばれない様に鍾乳石にへばりついてるだけでも大変だったんだから」
 いつから潜んでいたのだろうか、天井から声をかける水色の触手を持ったくらげポケモン――メノクラゲ。
 その声に呼応するように、洞穴の外から紫色の体毛と触覚が立っているどくがポケモン――ドクケイルと小柄な蜘蛛のような姿をしたいとはきポケモン――イトマルがいそいそと姿を現した。
「おしゃべりはここまでだ2匹とも。早く捕まえないと、ほら、あの方の目標に刺し障ることになるぜ? おれは先に後を付けてるからな」
「あ、ちょっと待ちなさいよガノム! 全くワタシの話を聞かずに、勝手に突っ走って……」
「早く行こうなり、ヴィスパ! フフフのフ〜、久々に腕が鳴るなりよー」
「もう、パルまで乗り気なんだから」
 毒気のある皮肉をぶちまけながら、先に階段を降りていくドクケイル――ガノム。
 そんな彼に呆れながら文句を言うメノクラゲ――ヴィスパ。しかしお茶目に後押しをしていくイトマル――パルに押されて、しぶしぶ彼女もガノムの後に続いたのだった。
――――――――――――――――――――――――
 洞穴の中を降りて行くうちに、少しずつあたり一面が暗くなっていく。それに応じて、目も徐々に暗闇に慣れていき、瞳孔も広くなっていった。
 途中道を渡る途中で、見慣れないタネが地面に落ちているのを見つけて、シフォンは自分のポシェットにそのタネを積め込んでいった。見た目は黒いストライプみたいな感じのタネなのだが、どんな効果なのかは全然見当もつかない。
「何かのお守りに役立つかもしれない。一応入れておこっと」
 ようやく広い場所につき当たったところで、リュカたち一行は一旦足を休めることにした。
「おかしいなぁ。いつもなら、ズバットか何かが飛び出してきそうな暗い場所なのに」
「“音”そのものが聞こえてこないよね…… 聞こえるとしたらボクたちの声が反響するのと、天井から落ちてくる水滴だけだもの」
「うぅん…… 何かちょっと怖いね……」
 不思議なことに、ここでは野生のポケモンたちと一匹も出くわさなかったのだから、緊張して洞穴の中を探検していったのに何か拍子抜けした気分である。
2011/07/18 Mon 22:09 [No.458]
Makoto
名前:スイレン
性別:♀
種族:シキジカ(場面によっては、メブキジカに進化も?)
性格:
 好奇心旺盛で、わんぱくな性格の女の子。
 自分を強く見せようと時に強がって、他人より先にリードを持とうとする男勝りな所も見せる。しかし、根が純粋な性格のせいでイマイチ強気になれないせいか長くは保てず、いつの間にか三枚目に回ってしまうことも。また、どこか引っ込み思案な所があるせいか、皆を苛立たせてしまうこともしばしば。
 本来は繊細で恥ずかしがり屋といった、ごく普通の性格な為、未知なる体験で自分を大きく変えていきたいという願望を持っている。
 本人はまだ気づいていないものの、周囲への影響力を少なからず持っていて、人心を救うことが多い。
口調:
 普段は元気かつ直情的な女の子口調を使っている(その際はタメ口で、目上目下だろうとお構いなし)。しかし落ち込んでいる時では、遠慮がちになって口調も穏やかになるなど、全体的に浮き沈みが激しい。たまに語尾に「〜なの」とつけるのが特徴。
 一人称は「ボク、アタシ(気分で使い分けている。普段はアタシ)」、二人称は「君、アナタ」、「相手の名前、〜(くんorちゃんorさん)」。三人称は「あの人」を使う。
参考台詞:
「ヤッホー! アタシはスイレンっていうの。見ての通り可愛いシキジカなんだよー」
「ここからはボクに任せてなの! とっておきの近道を知ってるんだ!」
「自然は大切にしなくちゃね。――って言ってるそばから何草いじりしてんの!」
「ほらそこ、シャンとしなさいな。気持ちが暗くなってたら、楽しい事見つけられないよ?」
「ねぇ、アナタは何のために戦ってるの? こんな戦いを続けて、何の意味があるっていうの!?」
「ホントは、虚勢を張って強がってたの。だって…… 怖がってただ怯えるだけって、ボクそんなの嫌だもん……」
「犠牲を伴う世界平和なんて、そんなのいらない! アタシは… みんなの笑顔の為に戦い続ける……これがアタシの答えなのッ!」
「あぅ〜、思い出させないでよぅ…… は、恥ずかしい……」(その際に丸まってます。)
備考:
 最近になってポケ書の掲示板に参加しだしたポケモン好きの一人。年齢は中学2年生あたりと思われる。
 例え目上の人が相手でも、友達感覚で対等に接しようとするため、知らないうちに反感を買ってしまうことも。恥ずかしくなると、膝を抱え体を丸くしてボールのようになるクセがある。
 基本は物怖じをせずに、とことん目標に向けて突き進む頑張り屋さん。
 ちなみにポケモンのゲーム歴はDP(ダイヤモンド世代)からやってきているので、ある程度ポケモンの知識は身についている。
役割:元人間(主人公格)
2011/07/17 Sun 01:42 [No.455]
Makoto
――――――――――――――――――――――――
 洞穴の中、思い思いにリンゴやきのみなどを口に頬張りながら、3匹はそれぞれ状況を説明し、その後簡単に自己紹介を済ませていた。
「どうして、キミみたいな幼い子がこんな森の中に?」
「この森の…… どこかにね、ねがいぼしがいるって聞いてね…… おかあさんと一緒に探してたの……」
「ねがいぼし? もしかして、“ねがいごとポケモン”ことを言ってるのかい?」
「うん、一度でいいから見てみたいなぁーってずっと思っててね。願い事は… まだ考えてる途中なの」
「ふぅーん。願い事を叶えてくれるポケモンなんだ…… 何か楽しそうだね」
「それでね…… 森の中いっぱい歩いてるうちに、知らない道に来て……。いつの間にか、わたち一人になっちゃってて……」
「そこでボクたちと出会ったって訳なんだ……」
 偶然とはいえ、奇跡的に出会った交錯するはずのないポケモンたち。もし雨が降らずに森から脱出できていたら、今みたいに奇妙な出会い方をすることも無かっただろう。
「あの、わたち…ルリリのヒメっていうんです……。あなたたちの名前は?」
「えっと… ボクはリュカ、ピカチュウのリュカだよ」
「ボク、ピチューのシフォンっていうの! リュカ兄ちゃんの妹なのー」
「リュカくんとシフォンちゃんっていうんだぁ……! 素敵な名前だね、みんな!」
「そういうヒメちゃんだって…… いい名前じゃない!」
「ありがと…… あの、わたちのこと“ヒメ”って呼び捨てにしてくれても構わないよ?」
「それだったら、ボクらのことも同じくでいいよ。その方がお互い呼びやすいでしょ、ヒメ!」
「フフ、それもそうだね……。わかったよ、リュカ、シフォン!」
 自己紹介してから打ち解けるまで、それほど時間はかからなかったようだ。なんだろう、こうやって話してると自然と温かくなってくる。そんな気がした。
 すっかり仲良しになった、リュカとシフォンとヒメは久々にクスクスと笑顔をこぼしていく。
「さて、どうしようか? このまま雨が止むまでじっとしてる?」
「闇雲に外に出ても迷うばかりだし、仕方ないよね。でも、3匹一緒だったら全然怖くないもん!」
「だけどこの洞穴、何もなかったしなぁ……」
「えっと… 寝てる間に地面が一部くぼんでる所は見つけたけど、それが一体何なのかは――」
「!? ちょっと待ってシフォン!」
 不意に叫ぶように声をかけたヒメに、びっくりしたリュカたちが思わず目を向ける。
「ねぇ、その“くぼんだ地面”って所に連れてって!」
 不思議に思いながらも、ピカチュウ兄妹はヒメの言う通りにして、その場所に案内してあげた。
 もしかしたら。ヒメは、そのくぼんでいる地面に“あわ”を吹き付けてみた。散らばる小石や砂が水泡によって飛ばされ、その下にふたのようなものが出てきた。
 それをリュカとシフォンで力を絞って引き上げてみると、何と地下に続いてく階段が見つかったではないか!
「こんな所に、隠し階段が!」
「さっきまで何もなかったのに、どうして?」
「不自然に草地の色が違っているときは、違う道が見つかるかもっておかあさんがいってたの。何事も観察力が必要なんだって」
「ヒメってすごいなぁ… 可愛いだけじゃなくしっかりしてるんだ……」
「……今度は危なくなったら一旦引き返そうね、リュカ兄ちゃん」
「分かってるよ、シフォン。あの時は不注意だったからね」
「ねぇ、早速入ってみようよー?」
 この先にはいったい何があるんだろうか? 未知な場所への好奇心が勝った3匹は、ゆっくりと階段の方に足を踏み入れていった。
2011/07/15 Fri 00:35 [No.440]
Makoto
「う… うーん…。寝てたのか、ボクたち……」
 しばらくして、もぞもぞとリュカが起き出した。
 何で、涙なんか流してたんだろう。こんなの、兄としてみっともないじゃないか。リュカはしきりに顔を拭って涙を振り払った。
「やっぱり…… 無いか、きのみバッグ……。きっと雨の中でどこかに落としちゃったんだ……」
 先ほどの雨で気が動転していて急いでたとはいえ、なぜもっと早く気にしようとしなかったんだろう。きのみバッグの中身は無事だろうか……リュカの心に深々と突き刺さる。
 何よりもそれ以前に…… ボクたちは、本当に森から脱出して家に帰り着くことができるのだろうか?
「ダメだなぁ、ボクは。こんなんじゃ、パパとママの約束果たせてないじゃな―― あれ、シフォン?」
 ふと物思いに耽っていたリュカは、即座に現実に引き戻された。先ほどまで胸元で一緒に寝ていたシフォンが、いつの間にかいなくなっているではないか!
 いつもなら自分のもとに離れることのない妹を何度も世話しているだけに、この不安は計り知れない。
「どこにいっちゃったんだ!? シフォン、シフォンー!!」
 洞穴の外で、慌てて帰ってくるシフォンの姿を見つけて、急いで飛び出したリュカ。
「シフォン、どこにいってたの!? 心配したんだよ?」
「外で泣き声が聞こえたの。助けなきゃって思って…… その…… ご、ごめんねリュカ兄ちゃん!」
「ハァー、ともかくキミが無事でよかったよ……」
 息を切らしながら事情を説明するシフォンに、ホッと胸をなでおろすリュカ。と、ここでシフォンの左手側に目を向けた。後ろからポケモンの気配がするようだ。
「あれ? そのポケモンって……」
「この子、一人でずっと森をさまよってたの……。もう大丈夫だよー、お兄ちゃんたちも一緒だからね」
「ぐすっ…ぐすっ…… ひとり、とっても怖かったよぉ……!」
 シフォンに呼ばれて、一匹のみずたまポケモン――ルリリが泣きながら洞穴に入ってきた。どうやらリュカたちと同じ迷子組、ということで間違いはなさそうだ。
 とりあえず生き残りが僕たちの他にもいた。その事実はリュカたちに安心の表情を与えるきっかけとなった。
 しかし、今さら一人増えたからといって状況が変わる訳ではない。一歩間違えれば、このまま倒れてしまうって可能性も考えられる。まさに万事休す、といった状態である。
「大丈夫かい? こんなビショビショになって……」
「えっ…えっ……。ねがいぼし、探してたの…… でも、おかーさんとはぐれちゃって……」
「! それ、ボクたちもほぼ同じだ…… 森から出ようとしたときに急に雨が降っちゃって、この有り様で……」
「何か、悲しいよね。帰り道もわかんなくなってて……」
「わたちたち、これからどうなるの? ううぅ…… もう、家に帰れないのかなぁ……」
「パパ…… ママ…… きっと、心配してるんだろうな……」
 きゅるるるる〜〜〜。
 どこかでかわいらしい音が聞こえた。どうやら誰かの腹の虫らしい。
 タイミングを読まない空腹を知らせる音に、一時吹き出しそうになった3匹。
「今の、わたちのお腹の……。うぅ……お腹すいたよぉ……」
「先に……ご飯食べようか? 実は、まだ何も食べてないんだよねボクたち…… 話はその途中からでいいでしょ?」
「そうしようよ。あの、とりあえず何か食べよう? お腹ペコペコだよー」
 その後、ルリリの腹の虫に続いてリュカとシフォンもお腹も鳴り出して、半ば恥ずかしそうにしながらリンゴやきのみの数々を取り出したのは言うまでもない。
2011/07/15 Fri 00:34 [No.439]
Makoto
――――――――――――――――――――
 しばらく眠っている時、洞穴の中でぽつりと水滴が落ちる音がした。
 その音に、むくっとシフォンが起き出し、ふわぁーと大きくあくびをした。事前に足の傷を治してもらった際に体力を回復したおかげもあってか、体が自然に軽くなっているのを感じた。
 リュカは横になって寝息を立ててまだグッスリだ。そっと近付いて顔を見てみると… 目から一筋の涙が流れているのが見えた。
 涙を浮かべながら眠っているリュカの目を、シフォンはそっと拭い、優しく声をかける。
「どうしたの? お兄ちゃん……?」
「ごめんよ……シフォン。つらい思いをさせて……」
 呟くように寝言を言いながら、リュカは静かに体を震わせている。
 これまで不安が溜まっていた気持ちが爆発したのだろうか、最後がやや涙声になっていた。
「ボクが、森の奥まで行こうって言ったばかりに……。パパ、ママ…… 心配…掛けて…… ほんと…に…」
「リュカ兄ちゃん……」
 いつもは感情的になることなく、にっこりして幼き妹を思いやっていたリュカ。
 心細さや不安に気が挫けそうになりながらも、決して誰かに八つ当たりすることなく、必死に自分たちを励ましながら今日まで何とか頑張ってきた。
 そんな気丈な兄ちゃんが、一人で寝てる時には我慢を解いて静かに涙している…… シフォンはきゅんと胸が痛くなる思いを感じた。
(兄ちゃんはずっとボクのことを励ましてくれたんだ…… 今度は… ボクが助けなくちゃ!)
 ふと、シフォンは周りの様子を探ろうとキョロキョロと見渡してみる。この洞穴は、何ヶ月か前にできていたものらしく、風化しているものはほとんど見られない。試しにコツコツと叩いてみる。コンコンっと反響する音が返ってきた。今度は洞穴の壁を押してみる。思ったより丈夫でそう簡単に崩れなさそうだ。
 これ以上調べても何もなかったため、先ほど寝ていた場所に戻ってみた。外を見てみると、空は夜になっていて森一面が黒くなっているようだ。雨は相も変わらず激しく降り続いている。この分では当分止みそうにないだろう。
(そういえば…… あのぎゅうぎゅうに押し込まれてた、きのみバッグはどうしたのだろうか? 走っている時、リュカ兄ちゃん肩にかけて持っていったはずなのに)
 シフォンはゆっくりと辺りを回りながらもう一度確かめてみた。しかし結局見つからなかった。
 先ほどの雨で気が動転していたせいか、きのみバッグをどこかに落としてきてしまったみたいだ。後でリュカ兄ちゃんと一緒に探しに行かなくては。
 でも、雨が降っていることには動くことができない。またうっかり水で滑ってけがしても格好がつかないからだ。
>(ここら辺は、時間がある時に地の文を入れる予定…)
 誰かが、外で泣いてる声がするようだ。ひょっとしたらボクたちと同じ迷子なのかな?
 ――ひっく… エッエッ…… おかあさーん…… どこにいるのー……――
「誰? どこにいるのー?」
 注意深く耳を澄ましながら、シフォンは遠くから聞こえる“コエ”に呼びかける。周りには誰もいない。
 ――空が… 星空も… ねがいぼしも全然見えないよお…… おかあさーん…… エーン、エーン……――
「待ってて! 今シフォンが行くから!」
 ひょっとしたら同じく迷子になった他のポケモンもいるかもしれない。そう思ったシフォンは、寝ているリュカを起こさないようにそっと洞穴を抜け出した。
 雨は、ひと時も止むことなく降り続けていた。
2011/07/15 Fri 00:31 [No.438]
Makoto
――――――――――――――――――――
「ふぅ、助かった…。こんな所に洞穴があったなんて」
 滑りこむようにして洞穴に入ったリュカたちは、ホッと安堵のため息をつく。偶然見つけたとはいえ、それなりに人並みの大きさであったため、隠れる場所にも打って付けとなっていたからだ。
「と、まずその前に…… “フラッシュ”!!」
 リュカは深く息を吸い込むと、ほっぺの電気袋を光らして“フラッシュ”の閃光を洞穴の中へ照らしていく。これで暗闇で目を凝らさないと見えにくいような場所も、たちまち明るくなって問題なく見渡せるようになった。
「一先ず応急処置を済ませなきゃ…… 今はこれ位しかできないけど、ちょっと我慢して?」
「うぅっ…… 痛いよ、足が痛いよぅー……」
 痛む足を押さえながらすすり泣いているシフォンを優しく気遣いながら、リュカは先ほどきのみバッグから落ちた時に拾っていたオレンのみを使って傷を癒し、止血を進めていった。
 擦り傷の痛みが引いて行って、悲しい気持ちも少しずつ平静を取り戻していく。
「……ありがと、リュカ兄ちゃん。ぐすっ……まだちょっと痺れが残ってるけど……」
「これで幾らかは安心だな……。ぬれた体を乾かさなくちゃ」
「あーん、ビショビショだよー……」
 濡れた体を震わせて水気を払ってから、リュカたちはしばらく雨宿りをすることに決めた。雨は未だに止む気配が見えない。でも、このまま野宿で水浸しになったまま眠るよりはまだマシというべきか。
 雨の中をずっと走りまわっていて疲れ切っていた二匹は、くたくたの身をごろりと横たえ、何も食べずにそのまま眠ってしまった。
2011/07/15 Fri 00:29 [No.437]
Makoto
――――――――――――――――――――――――
周囲が少しずつ暗くなって、明かりの欲しい位に森は静けさに包まれた。遠くではヨルノズクの鳴く声がこだましているようだ。
「あれ、ここってさっきも通らなかった? 何か同じところをぐるぐる回ってるような……」
「そんなはずないと思うけど…… ねぇ、止まってないでとにかく帰ろうよ。ここ、何か気味が悪いもん」
 しばらく歩いているうち、二匹はこの森の異常に気がついた。自分たちは森の出口に向かって歩いてるはずなのに、家への道が見つからない。
 いや、森から抜け出すどころか、むしろ反対にどんどん森の奥深くに入って行っているみたいだ……
 ――もしかして、ボクたち“迷子”になっちゃった……!?――
 一瞬いやな走馬灯が流れたリュカたちは、すごい勢いでその妄想を頭を横に振って打ち消す。しかし、その行為は徒労に終わるばかりだった。
 先立つ焦りが、彼らを更に追い立てていく。
「どうしよう…… シフォンたち、このままお家に…帰れないの……?」
「大丈夫だよ。きっと帰る道は見つかる。それに、まだ帰れないって決まった訳じゃないさ。前を向いて、元気出していこ!」
「う、うん……」
 不安で胸を詰まらせるシフォン。リュカはそんな妹をなだめすかして、元気よく歩き出そうとした……と、その時。
 ピカッ―― ゴロゴロ……ピッシャーンッッ!!
「キャッ、カミナリ!?」
「……ちょっと待って…… み、水!?」
 稲光が迸り、どこかで耳をつんざく雷が落ちたと思いきや、人よりも一丈大きい木々や草達がそよそよと風でなびいて、突如激しい雨が降り出してきた。
 上を見てみると、先ほど晴れていた青空はどこへやら、いつの間にか白く分厚い雨雲に覆われていた。あぁ、何て場の悪い!
「ウソ!? さっきまで、あんなに晴れてたのに……?」
「確か……こっちの道から森を出れたはず……。シフォン、早く! このままだとボクたち、帰れなくなる!」
「あ、待ってよリュカ兄ちゃん! ホントにこの道で合ってるのー?」
 先ほどまでの余裕と自信も、突如襲った大雨のせいで打ち消されたリュカたちは我先にと駆けだした。走っている途中、後ろの方でバシャッという音がしたが、二匹はそんな事お構いなしだった。
 ポワルン天気予報ではそんな事全く言ってなかったから、傘も合羽も持ってきていないのだ。更に彼らは森の奥底に初めて踏み込んだせいもあり、本来分かるはずの方位が全く分からなくなってしまっている。
「あぁっ!」
「! シフォン!!」
 走っている最中、ふと叫び声がしたかと思うと、シフォンが勢いあまって転んでいた。その際に水しぶきが上がって更に体をぬらしていく。
「痛ッ……! うぅっ、水で滑って転んじゃった……」
「しっかりして! 大丈夫?」
「リュ、リュカ兄ちゃん…… 痛いよー!!」
 とうとう痛さに耐えかねて泣き出してしまったシフォン。
 シフォンの足には擦り傷が…… どうやら転んだ拍子に固い石かなんかでケガをしてしまったみたいだ。
「今は悩んでる場合じゃないな……。シフォン、ボクの背中に乗って!」
「ぐすっ…… う、うん……」
 降りしきる雨に身をぬらしながら、それぞれのポケモンたちは森の中を当てもなく、しかし無我夢中で走っていく。どうして急に雨なんか降ってきちゃったんだろう。前まであんなに青空がきれいに映っていたのに。お天道様はイジワルだ。
 気まぐれな天気に恨みつつ、彼らはみちなる道をひたすら走り続けていった。どこでもいい、何でもいいから雨宿りできる場所を探さなければ。
 そんな姿を、遠巻きに見つめながら静かにほくそ笑んでいるポケモンがいた。グネッとしている体を持つそれは、ウミウシポケモン――トリトドン。
 普段は図体が大きくてノロノロとしているが、雨の影響でその動きが活発化しているのだ。
 ――おぉ、慌ててる慌ててる。これで我らの目的に、また一歩近づいたな。後でこの事を親分様に教えてやるか。――
 トリトドンはクルッと後ろを振り向いて、這いずるように歩きながらその場を去っていった。
2011/07/15 Fri 00:27 [No.436]
Makoto
コンテスト用シナリオの途中経過にて。
少しずつ、シナリオのボリュームを増やしてくつもりですナリ。
まずは序盤から……
――――――――――――――――――――――――
 そよそよと風が草を靡くとある小さな森の中。
 水色のポシェットを左肩にかけた一匹の“こねずみポケモン”がしきりに辺りを見回しながら、二つ足でパタパタと走っていく。その小さな手には桃のような形のきのみを抱きかかえている。
「お兄ちゃん、こっちこっち! チーゴのみが落ちてるよー!」
 淡い黄色の体毛と黒のギザギザ模様の持つ、そのこねずみポケモン――ピチューは、地面に落ちてるきのみを見つけては、ぴょんぴょんと後ろに向かって呼びかけた。
「今行くよー! ちょっと待っててー!」
 ここで、後ろから緑色のリュックサックを背中にかけたもう一匹の“ねずみポケモン”――ピカチュウが返事を返しながら、せわしく跳びはねるピチューのもとへ駆けつける。
 右肩に収穫したきのみを入れるためのバッグを掛け、両手に黄色い梨みたいなきのみとサクランボのように葉っぱの付いたきのみ、それぞれを抱えながら。
 合流したピカチュウたちは、ふと手に持っているきのみを互いに見つめ合い、クスッと微笑む。それからバッグの中に、収穫された数々のきのみを次々に入れていった。
「シフォンってさ、いつも決まってモモンのみを中心に持ってくるよね。本当に甘いものが好きなんだ?」
「えへへ、最初に拾うのは桃色のきのみからって決めてるのー! そういうリュカ兄ちゃんもさ、一度にきのみたっくさん持ってきすぎだよー」
「あは、バレちゃったか。実は、知らないきのみが無いかなーって夢中で探してたら、いつの間にか手元にはこんな風に」
「こういうの、“ケンキュウネッシン”っていうんだよね。もうシフォンにはとっくに気がついてたよ?」
「こっちはいっぱい拾いまくっててそれ所じゃなかったんだぞー? まぁ、数ではキミには負けてないけどね」
「あ! もう、また兄ちゃんのイジワルが始まったー」
 ピカチュウとピチュー――リュカとシフォンは互いにそう言って顔をふくらます。言葉ではじゃれ合いながらも、怒ってる様子はみじんもない。
 彼らは二つ違いの兄妹だった。幼いころから仲良しで、野原で友だちと遊ぶ時も、今のように森にきのみを拾いに行く時も、小さなポケモンバザーの店まで必要な冒険セットを買いに行く時も、いつも一緒にいて離れるときは滅多にないのである。
「うーん。もうちょっと集められるかな? まだバッグの中余裕があるし」
「え、結構いっぱい拾ったと思うんだけどなぁ……。いつもの道だったらもう調べ尽くしちゃったもん」
 リュカがバッグの中のきのみを眺めながら、そっとシフォンに声をかけた。そんなシフォンの方は、あまり乗り気でない様子。
「じゃあさ、もうちょっと森の奥まで行ってみようか? 探検の一つだと思えば、きっと楽しいよ」
「暗くなったら早く帰ってきてってパパ言ってるのにー…」
「大丈夫だよ! パパにはボクがよく言っとくから。“森のきのみがいっぱい落ちてたよ”ってさ!」
「まぁ、兄ちゃんが一緒だし。大丈夫だよね!」
 好奇心いっぱいなリュカの言葉に、シフォンは半ば押し切られる形で了解した。そしてリュカはきのみバッグを掛け直すと、シフォンと一緒に森の奥へどんどん進んでいく。
 その時、道端に生えている雑草たちが風にあおられ、身を横に垂れていった。
――――――――――――――――――――――――
 森を奥へと進みこんだリュカたちは、散らばっている自然の恵みのきのみを二匹がかりで集めていき、先ほどと同じく合流してバッグの中へ入れていった。途中小腹が空いた為、両親がお弁当にと持たせてくれたリンゴを半分ずつ食べ、残りは後で食べようと思い思いのバッグにしまった。それぞれリュカは小さなリュックサック、シフォンは小さなポシェットの中へ。
 もうきのみバッグはこれ以上入り切らないほど、きのみが頭まで乗っかって――あ、上からポロッとオレンの実が落っこちた。それにしても、きのみに対しての執念はすごいものがある。とりあえず二匹とも。少しは加減ってものを知りなさい。
 そんなツッコミも空しく、リュカはきのみバッグを力強く閉めていく。
「ねぇ、行ってみてよかったでしょ! これなら、家のきのみ料理の材料には当分困らないな」
「そうだね、パパとママもきっと喜んでくれるよ! リュカ兄ちゃん!」
「さ、日が沈み切る前に帰ろ、シフォン!」
 二匹は、意気揚々と森から出て帰ろうと帰り支度を整え、そして歩き始めた。無事に家が帰れたかどうかは―― ここからが本当の物語の始まりとなるのである。
2011/07/12 Tue 23:59 [No.423]
Makoto
今頃になって一応本編の続き物を作ってみましたけど、まだ本調子じゃないなぁ…… 唐突で申し訳ないですが、アドバイスや意見などがありましたら是非とも御願いします。;
――――――――――――――――――――
 道端の野良猫とすれ違いながら、ゴミ箱に乗って高い塀と屋根を伝って渡り、そして飛び降りまた回り道。旧市街の細道を越え、ユウキは道なりにどんどん小さな道の中を突き進む。
 しばらく走って、スタミナの限界を感じた彼は一旦立ち止まり、辺りを見回した。
「おかしいぞ。ここに来てカラスの鳴く声さえ聞こえてこない……」
 いつもなら路地裏の電柱の上のカラスたちが、夕刻を告げるけたたましい鳴き声を上げているはずなのに。
 普段通っている道とは違う、何か冷たく張り裂けるような空気。まるで自分の知らない世界に迷い込んだような感覚だ。
「考えもなしに、追いかけるのがマズかったかな」
 知らない場所を奥深くまで一人で踏み込んだ経験の無いユウキにとっては、怖さを隠せずにはいられなかった。暗く狭い道から、突然変な無法者に出くわさないか。途方もない心配が彼の決意を揺らぎをかけていく。
 しかし、ここで立ち止まる訳にはいかない。あの“コエ”は、かすれながらも「助けて」とハッキリと言っていた。姿が見えないとはいえ、誰かが危険な目に会っているのを放っておけるのだろうか。いや、放っておけない!
 一回深呼吸をして落ち着かせて、また走り出す。見えない“コエ”を目指して道なる道を突き進んで。
――――――――
「ふぅ、こんな所に公園があるなんて、知らなかったな」
 しばらく進んで、ユウキは小さな公園に行き着いていた。いや、公園跡地と言った方がいいかもしれない。
「それにしても…… 汚いなぁ、ここ掃除されてないんじゃないかぁ?」
 誰も使われていない寂れた遊具の集まり…… ブランコと思われる遊び場は錆びていて、鉄のチェーンは切れかかっているようだ。すべり台やタイヤの置かれている空地も、今では雑草や蔦にまみれてしまっている。これではとても子供が楽しめる環境とは言えないだろう。
「おーい、誰かいるのかー?」
 何度か呼びかけてみるが、返ってくるのは公園の周りに茂っている木々のさざめきばかり。鳥の声の聞こえない揺らぐ木々には、一層不気味なものがある。
 見つけたのは小さな手入れのされてない公園だけか。やっぱりあの“コエ”は幻だったのか…… でも、後で日記にこの事を書き記そう。
 そう思ったユウキは来た道を引き返そうとした。と、その時。
 小さな砂場に、何か小っちゃくて丸いものが見えた気がした――
――――――――――――――――――――
2011/07/01 Fri 23:53 [No.413]