Net4u レンタル掲示板を作る
池田
再び、爆発音が響き、白い閃光が瞬いた。
「何!?」
スイレンは、光のほうへと走った。
幸い、洞窟の中の至る所に照明が置かれているので、目指す方向を見失うことはない。
そして、建物からかなり離れたところまで来た時、スイレンの目に飛び込んできたのは、驚くべき光景であった。
そこでは、なんと、戦闘が行われていたのだ。
「うおおお!!よくも!よくもオレの友を!!」
「これ以上の侵入を許すな!基地を守れ!!」
「撃て!!撃てー!!」
様々なポケモンたちが、必死に、わざを放っている。彼らは皆味方同士のようだ。そして、そんなポケモンたちと相対するのは、驚くことに、たった一匹のポケモンであった。
「ぐはぁあああああ!!」
灰色の龍のような姿をしたそのポケモンが、白い霧を吐き出した。
すると、今まで攻撃していたポケモンたちが血相を変えて逃げ出す。
「ま、まずい!アレにふれるな!!」
「総員、退避!!」
「だめだ!!逃げ切れない!!」
しかし、ポケモンたちの逃げ足よりも、霧の広がるスピードが上だった。霧はたちまちポケモンたちを覆い隠す。
やがて霧が晴れると、ポケモンたちは真っ白な氷と化していた。その氷を、龍のようなポケモンが、踏み潰す。
「あっ!!」
今まで立ち尽くしていたスイレンは我に帰り、思わず声をあげた。10ほどのポケモンが、一瞬の内に、殺されたのだ。
「くっ……行かないと……!」
何故こんな事態になっているのかは分からない。龍の正体も、それと戦うポケモンたちが何者なのかも分からない。ただ、先程上で起きた爆発の原因は、間違いなくこの龍にある。根拠はないが、スイレンの勘がそう告げていた。これを、放っておく訳にはいかない。
「うっ……おおおおお!!」
異様な怪物に恐れを感じながらも、スイレンは飛び出した。
そして、とりあえず、一匹のポケモンを霧から救い出した。
背後では、またも一瞬の内に、何匹ものポケモンたちが凍りづけになり、そして砕かれて死んだだろう。しかし、そこに構っている場合ではない。まずは、今助けたこの命を、救わなければならないのだ。
「下ろせ!!私の仲間が……仲間が!!」
背中に乗せたポケモンが、暴れた。仲間が殺されているのだから、当然だろう。
「ダメ……ダメなの!!あなただけでも、逃げて!お願いなの!」
龍から離れながら、スイレンは必死に言い聞かせる。とにかく、ひとりでも救いたかった。
そんな、心の叫びに返ったのは、意外な言葉だった。
「なのって……あなた、スイレン!?」
「え!?」
突然自分の名を呼ばれ、スイレンは驚いた。
そして、先ほどの建物とは逆側、洞窟のさらに奥へと進み、龍から十分に離れたところで、スイレンは背中のポケモンをおろした。
そのポケモンは、青い蜥蜴のような姿をした、美しいポケモンであった。スイレンには、そのポケモンに見覚えがあった。
「レナ……さん、なの」
そう、それは、かつてドリームメーカーに抵抗していたレジスタンス組織のリーダー、レナであった。
「やっぱり……やっぱり、スイレン!!」
思いがけぬ再開に、しかしふたりは喜んでいられない。スイレンがすべきことは、状況の確認である。
「あの……ここ、一体何なの?どうしてレナさんが、ここに……」
「……ここは、レジスタンスの基地。フキヨセの拠点が使い物にならなくなったから、当面はここを使うことにしたの」
「基地……だったの」
ここは、空色の襲撃により一夜にして破壊された拠点の代わりに使われる、基地であった。あれ以後もレジスタンスは元人間と協力していたため、どこを拠点にして活動しているのか謎であったが、こうして仮の住まいを作り出していたのだ。ホワイトフォレストの下にこんな洞窟があることなど、ほとんどのポケモンには知られていなかっただろうから、正に絶好の隠れ家だろう。
しかし、本当に知りたい謎は、これではない。
「じゃあ、あの龍は……何!?」
スイレンは、思わず、語調を強めた。
そんな、誰にも知られぬ基地を襲撃しているあのポケモンは、何者なのか。ドリームメイカーズの残党という可能性もある。放っては置けない。
だが、レナは舌を向き、肩を震わせながら、小さな声で言った。
「……分からない」
「そんな、分からないって……」
「本当に……分からないの!!」
レナは、叫ぶように、言った。彼女らしからぬ、感情的な態度だ。
2011/09/16 Fri 21:14 [No.693]