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たろー
ジャグラーの男性陣が主体のイメージ文章があると助かるという意見があったので、男性陣向けに書いてみました。
前回の空気感、情景感で概ね心地よいのですが、あまりそれに縛られて身動きとれなくなるのも嫌なので、もう少し懐を広げて深める目的で男性陣には別のアプローチで書いてみました。前回よりミクロな描写です。
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虫の標本の束を見た。それは大量に棄てられていた。
250円で消費される注射器の中身の液体は、防黴剤と鉄の味。
羽のある脚の長い虫を踏み潰したこともある。動きはのろまで、間抜けな飛び方で、水辺が好きなやつ。
蛇口の近くで見つけた時に、思い切り太腿の伸縮を感じながら、(親指の付け根で踏み抜いた。)地面を靴の裏で叩いた。とてもまろやかな心踊る心地の潤んだ金属音が響き、何度聞いてもどこに在ったかわからない。
踏み叩く度に薄いソールの運動靴は、硬い鉄の格子に蹴り返されて、耳鳴りのような痛みが脛まで登るが、その感覚はあずきのようにざらついて甘く、赤い。真っ赤。鮮魚のエラの紅。
けれどももしも、私が目を瞑って、触覚の細さを思い出したなら、その先端はまた忙しなく上下している。思い返せば細すぎて、風に煽られては頼りなく、泣きたくなるほどか弱い息をしていた。
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2012/10/10 Wed 01:10 [No.112]