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Sgt.LUKE
この小説は本家「ジョジョの奇妙な冒険」、および荒木飛呂彦先生とはいっさい関係のない二次創作です。
故に、本家「ジョジョの奇妙な冒険」とはかけ離れた部分もあるかもしれませんがご了承ください。
なお、ここは小説専用とさせていただきますので、書き込みはご遠慮ください。
2010/02/13 Sat 15:46 [No.68]
Sgt.LUKE
その男は今日も事務所にいた。
身長一八〇センチくらいで銀色の髪に緑目。全身真っ黒い服に室内でも赤い外套(マント)を羽織るその男――――探偵・ジキルである。
「…………………………」
探偵・ジキルはちょうど先週くらい前に友人のスピードワゴンから頼まれた幽霊事件(ジキルが二秒で命名)を終えたばかり。結局あの事件の詳細はどうだったかと言うと、ジキルはスピードワゴンに『幽霊を発見した』と言ったときから既に『本体』を発見しており、敵を挑発気味にあしらっていたのもアイコンタクトで本体探しに出動させたスピードワゴンの時間を稼ぎ、敵『本体』気付かせないためだった。
その後スピードワゴンに殴り飛ばされた敵本体は自分の『幽霊』を使って盗みをはたらき続けていた事が発覚したため『貧民街の住人から物を取るとは何事だッ』とスピードワゴンによって牢屋にブチ込まれたのである。
もちろん『事件』から今に至るまで何もしてないわけじゃあない。ちゃんと他の依頼もやっていて――現在。黒尽くめゴシック探偵は紅茶片手に今日の新聞を読んでいた。
新聞の見出しにはこんなことが書かれている。
『謎の獣人(じゅうじん)またもや出現』
(……………………………………ハァ)
現代社会なら考えられないことだろうが、この時代は一九世紀である。身も蓋もない噂(うわさ)レベルのことが平気で載ってたりする。
けれども、もう一九世紀だ。特にこの国イギリスはいち早く産業革命が起こり、世界的にもトップに座している。そんな最先端の国がこんな都市伝説じみた情報を世間に流しているということは――――
まさか、本当に…………?
本文はこう書いてある。
『一昨日(おととい)ロンドン市内の某教会付近にて全長ニメートル程の黒い毛を生やした二足の足で立つ奇怪な生物が目撃された。
その生物はここ最近に市内のいくつかの教会付近で目撃されており、その生物の風貌がイヌ科のようなことから生物学者達は早急に調査……』
(……なーんだこりゃ?)
ジキルは紅茶をすすりながら考える。謎の生物?
実を言うと先ほど述べた『他の依頼』というのはこの謎の生物が目撃された教会で請け負っていた仕事だった。だが、自分にはそんな生物見た覚えがない。ジキルはうーん、と頭をよじらせ、
不意に合点がいった。
どうやら自分にはわかってしまったみたいだ。
謎の生物の正体が。
(なーるほど)
ジキルの表情が少し満足げになる。
では一体、その生物の正体は何なのかというと――
ガチャリッ
事務所のドアが開く音がした。
「………………ッ!」
ジキルはその音を聞くとほんの少し真面目な顔つきになって、
「いらっしゃいませ」
2010/02/13 Sat 18:15 [No.69]
Sgt.LUKE
入ってきたのは男だった。
黒い髪に黒い瞳。小柄な体格で身長は一五〇センチ後半から一六〇センチ前半といったところだが、そこまで幼さを感じさせる顔つきではない。推定して一〇代後半から二〇少しくらいだろう。男は事務所に入るや否や辺りを見渡し、一言。
「いい建物だね。趣(おもむき)がある」
? と、ジキルはその言葉の主旨がよくわからず小さく首を傾げた。男は続けて、
「見た感じ、戸や壁が相当風化している。おそらく一六世紀くらいの建物だね。違う?」
「ん? あぁそうだ。相当昔の建物だが、補強や改修をして現在に至っている」
「やっぱり! いやぁいいね。僕はこういう風格を感じさせるものが大好きでね。そうだ――」
「依頼は?」
ジキルが男の言葉を遮るように言葉を発すると、男は『そういやそうだ』と言い、
「ごめんごめん。すっかりここに夢中になってしまってね。僕の名前はハイド・ティエラ」
ハイド、と名乗るその男は己の目を光を浴びた海のようにキラキラ輝かせながら、
「君は最近話題の『獣人(じゅうじん)』って知ってるかい?」
「……、」
『獣人』。
先ほどジキルが目を通していた新聞に書かれてあった都市伝説じみた話だ。ジキルはわずかに眉をひそめて、
「知っているが……それが何か?」
「探してほしい」
ジキルの思考が一瞬停止する。この男は何のためらいもなくあっさり言い放ったのだ。『獣人』を探せと。ジキルはハッ、と我に帰り、
「あのなぁ、それって都市伝説か何かの類だろ? そんなもんに俺も労力使うのは正直嫌だ」
「あのねぇ君。この職業柄、仕事を断るのはどうかと思うよ?」
……確かに。言われてみれば一理ある。と、ハイドはややムッとしたような表情になり、
「それに、『そんなもん』なんて言われるのは少し心外だね」
「そうか?」
ハイドはジキルのその言葉に『あぁそうさ』、と言って更に瞳を輝かせ、
「それに仮に本当にいたとしたら君はゾクゾクしないかい? 僕は間違いなくゾクゾクするね」
(……………………)
ジキルの口から思わずため息が漏れた。厄介な依頼人が来たもんだ、と。
けれど、ジキルは別に『都市伝説』とった類のものは嫌いではない。実際自分も『獣人』なんてものが存在するならば、先程ハイドから言われたように『ゾクゾク』する。そもそも『探偵』なんて仕事も普段味わえないような奇妙な体験がしたくてやっているようなものだ。
ハイドの言う謎の『獣人』ははたして本当にいるのだろうか? それは自分の目で見て確かめなければわからない。こう見えてジキルはどんなことでも己の目で実際に確認しなければあまり納得しない性格の持ち主なのだ。
答えはもう決まっていた。
「これを見ろ」
ジキルは言って目の前の机に紙を広げる。内容はこの街の地図だ。
「『獣人』が出没したのはこのあたりだと聞いている」
ジキルは地図上のいくつかの場所を指し、チェックをつけていく。その様子を見てハイドは、
「それは僕も承知している。それでもって次に出没しそうな場所を前回の現場を元に模索していたところだ」
「そりゃ好都合。だいたい予想はついているのか?」
「まぁね。その『獣人』は教会付近に出没するんだろう? 僕は『獣人』が目的を持って動いているのかどうかはしれないけど、まぁ多分前回の現場の最寄りでいいんじゃあないかな?」
「なんだ。説明しなくてもわかってるのか」ジキルは少し口を歪めて笑い、「じゃあ目的地は――」
二人は地図上の同じ位置を指し、
「「ここだ」」
2010/03/10 Wed 23:20 [No.70]