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  1. 漆黒の獣(ビースト) その2(-)
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  3. ジョジョの奇妙な冒険 PartX ブリザードオブアイス 第二話 漆黒の獣(ビースト)(-)
  4. 探偵事務所へようこそ その4(-)
  5. 探偵事務所へようこそ その3(-)
  6. 探偵事務所へようこそ その2(-)
  7. 探偵事務所へようこそ その1(-)

漆黒の獣(ビースト) その2

Sgt.LUKE

入ってきたのは男だった。
 黒い髪に黒い瞳。小柄な体格で身長は一五〇センチ後半から一六〇センチ前半といったところだが、そこまで幼さを感じさせる顔つきではない。推定して一〇代後半から二〇少しくらいだろう。男は事務所に入るや否や辺りを見渡し、一言。
「いい建物だね。趣(おもむき)がある」
 ? と、ジキルはその言葉の主旨がよくわからず小さく首を傾げた。男は続けて、
「見た感じ、戸や壁が相当風化している。おそらく一六世紀くらいの建物だね。違う?」
「ん? あぁそうだ。相当昔の建物だが、補強や改修をして現在に至っている」
「やっぱり! いやぁいいね。僕はこういう風格を感じさせるものが大好きでね。そうだ――」
「依頼は?」
 ジキルが男の言葉を遮るように言葉を発すると、男は『そういやそうだ』と言い、
「ごめんごめん。すっかりここに夢中になってしまってね。僕の名前はハイド・ティエラ」
 ハイド、と名乗るその男は己の目を光を浴びた海のようにキラキラ輝かせながら、
「君は最近話題の『獣人(じゅうじん)』って知ってるかい?」
「……、」
 『獣人』。
 先ほどジキルが目を通していた新聞に書かれてあった都市伝説じみた話だ。ジキルはわずかに眉をひそめて、
「知っているが……それが何か?」
「探してほしい」
 ジキルの思考が一瞬停止する。この男は何のためらいもなくあっさり言い放ったのだ。『獣人』を探せと。ジキルはハッ、と我に帰り、
「あのなぁ、それって都市伝説か何かの類だろ? そんなもんに俺も労力使うのは正直嫌だ」
「あのねぇ君。この職業柄、仕事を断るのはどうかと思うよ?」
 ……確かに。言われてみれば一理ある。と、ハイドはややムッとしたような表情になり、
「それに、『そんなもん』なんて言われるのは少し心外だね」
「そうか?」
 ハイドはジキルのその言葉に『あぁそうさ』、と言って更に瞳を輝かせ、
「それに仮に本当にいたとしたら君はゾクゾクしないかい? 僕は間違いなくゾクゾクするね」
(……………………)
 ジキルの口から思わずため息が漏れた。厄介な依頼人が来たもんだ、と。
 けれど、ジキルは別に『都市伝説』とった類のものは嫌いではない。実際自分も『獣人』なんてものが存在するならば、先程ハイドから言われたように『ゾクゾク』する。そもそも『探偵』なんて仕事も普段味わえないような奇妙な体験がしたくてやっているようなものだ。
 ハイドの言う謎の『獣人』ははたして本当にいるのだろうか? それは自分の目で見て確かめなければわからない。こう見えてジキルはどんなことでも己の目で実際に確認しなければあまり納得しない性格の持ち主なのだ。
 答えはもう決まっていた。
「これを見ろ」
 ジキルは言って目の前の机に紙を広げる。内容はこの街の地図だ。
「『獣人』が出没したのはこのあたりだと聞いている」
 ジキルは地図上のいくつかの場所を指し、チェックをつけていく。その様子を見てハイドは、
「それは僕も承知している。それでもって次に出没しそうな場所を前回の現場を元に模索していたところだ」
「そりゃ好都合。だいたい予想はついているのか?」
「まぁね。その『獣人』は教会付近に出没するんだろう? 僕は『獣人』が目的を持って動いているのかどうかはしれないけど、まぁ多分前回の現場の最寄りでいいんじゃあないかな?」
「なんだ。説明しなくてもわかってるのか」ジキルは少し口を歪めて笑い、「じゃあ目的地は――」
 二人は地図上の同じ位置を指し、
「「ここだ」」

2010/03/10 Wed 23:20 [No.70]

漆黒の獣(ビースト) その1

Sgt.LUKE

その男は今日も事務所にいた。
 身長一八〇センチくらいで銀色の髪に緑目。全身真っ黒い服に室内でも赤い外套(マント)を羽織るその男――――探偵・ジキルである。
「…………………………」
 探偵・ジキルはちょうど先週くらい前に友人のスピードワゴンから頼まれた幽霊事件(ジキルが二秒で命名)を終えたばかり。結局あの事件の詳細はどうだったかと言うと、ジキルはスピードワゴンに『幽霊を発見した』と言ったときから既に『本体』を発見しており、敵を挑発気味にあしらっていたのもアイコンタクトで本体探しに出動させたスピードワゴンの時間を稼ぎ、敵『本体』気付かせないためだった。
 その後スピードワゴンに殴り飛ばされた敵本体は自分の『幽霊』を使って盗みをはたらき続けていた事が発覚したため『貧民街の住人から物を取るとは何事だッ』とスピードワゴンによって牢屋にブチ込まれたのである。
 もちろん『事件』から今に至るまで何もしてないわけじゃあない。ちゃんと他の依頼もやっていて――現在。黒尽くめゴシック探偵は紅茶片手に今日の新聞を読んでいた。
 新聞の見出しにはこんなことが書かれている。
『謎の獣人(じゅうじん)またもや出現』
(……………………………………ハァ)
 現代社会なら考えられないことだろうが、この時代は一九世紀である。身も蓋もない噂(うわさ)レベルのことが平気で載ってたりする。
 けれども、もう一九世紀だ。特にこの国イギリスはいち早く産業革命が起こり、世界的にもトップに座している。そんな最先端の国がこんな都市伝説じみた情報を世間に流しているということは――――
 まさか、本当に…………?
 本文はこう書いてある。
『一昨日(おととい)ロンドン市内の某教会付近にて全長ニメートル程の黒い毛を生やした二足の足で立つ奇怪な生物が目撃された。
 その生物はここ最近に市内のいくつかの教会付近で目撃されており、その生物の風貌がイヌ科のようなことから生物学者達は早急に調査……』
(……なーんだこりゃ?)
 ジキルは紅茶をすすりながら考える。謎の生物?
 実を言うと先ほど述べた『他の依頼』というのはこの謎の生物が目撃された教会で請け負っていた仕事だった。だが、自分にはそんな生物見た覚えがない。ジキルはうーん、と頭をよじらせ、
 不意に合点がいった。
 どうやら自分にはわかってしまったみたいだ。
 謎の生物の正体が。
(なーるほど)
 ジキルの表情が少し満足げになる。
 では一体、その生物の正体は何なのかというと――

 ガチャリッ

 事務所のドアが開く音がした。
「………………ッ!」
 ジキルはその音を聞くとほんの少し真面目な顔つきになって、
「いらっしゃいませ」

2010/02/13 Sat 18:15 [No.69]

ジョジョの奇妙な冒険 PartX ブリザードオブアイス 第二話 漆黒の獣(ビースト)

Sgt.LUKE

この小説は本家「ジョジョの奇妙な冒険」、および荒木飛呂彦先生とはいっさい関係のない二次創作です。
故に、本家「ジョジョの奇妙な冒険」とはかけ離れた部分もあるかもしれませんがご了承ください。
なお、ここは小説専用とさせていただきますので、書き込みはご遠慮ください。

2010/02/13 Sat 15:46 [No.68]

探偵事務所へようこそ その4

Sgt.LUKE

「くっ……貴様ァッ!」
 探偵を睨みつけながらドブのように濁った声で幽霊は吼える。
 その顔は苦痛に歪んでいた。
「許さんッ! ぜぇぇぇぇぇぇぇったいに許さんッ!」
「別にいいよ。許されなくたって」
「許さん許さん許さんッ!」
「………………………………」
 ハァ、とジキルは幽霊の様子に心底呆れたように溜息をつき「そろそろいいか?」
 ジキルのその言葉に幽霊は眉をひそめる。ジキルはやれやれといった表情でハッキリと

「そろそろ撃(う)ってもいいかなぁ?」

 瞬間、幽霊の足が爆発したかのように探偵のところへ向かう。
「マジで許さんッ!」
「あーもうホンットやかましいなぁお前!」
 いい加減しびれを切らしたのか、ジキルは拳銃を構える。狙いは相手の頭部。一撃で仕留めよう、って概念だ。
 猪のように一直線に走ってくる幽霊に引き金を(トリガー)を引く。乾いた炸裂音とともに三発の銃弾が放たれ、その軌道が相手の頭部に向かって真っ直ぐに伸びていく。幽霊は血を噴き出し、ギャアァと悲痛な叫びを上げるが――

 ――幽霊は倒れない。
 被弾したのは幽霊の手だった。

「ヘヘヘヘヘヘヘヘ」幽霊は険悪な笑みを浮かべながら「もうこの手は役にたたねぇからよォ被弾したってかまわねぇよなぁぁぁぁ」
 正確には被弾したというよりガードされていた。先刻ジキルに撃ち抜かれ、潰れたトマトのように真っ赤になった手で。
 探偵と幽霊との距離は十分に肉弾戦が出来るほどにまで縮まっていた。幽霊はその距離感に思い切り口を歪める。
(………………………………………………………………マズイ)
 探偵が思った瞬間、幽霊の蹴りが探偵の腹に思い切り刺さる。
「がはぁッ!」
 ゴキリィッ、と生々しい音とともにジキルは2メートル程先まで放り飛ばされる。そんなジキルを見た幽霊は
「ちったぁ効いたかァテメェ?」幽霊は何かの呪文を紡ぐように不快な声で「いくらその銃弾が速かろうがお前自身は常人だよな?」
「……………………」
「ん? 何だぁまだやる気か?」
「そこ」
 探偵は少し離れた場所にある橋を指差す。橋は家の二階分くらいの高さで架かっており、虹を思わせるような曲線を描いている。
「そこにいるよな?」探偵は凍りつくような冷たい声で
「本体」
 ――その橋には確かに人が立っている。
 何の特徴も無いような男が一人。
 幽霊はジキルのその言葉を聞いて、
「あぁそうだ。『本体(おれ)』は橋(あそこ)にいる。だが、俺が負ることはないッ! なんせ本体(おれ)は橋(ここ)にいるし、幽霊(そいつ)は橋の下(そこ)にいるんだからなァーッ!」
「ほう、そうかい」
「……………………ッ」
 ゾクリ。本体の『男』は不意に体を強(こわ)ばらせた。そう、どこから見ても追い詰められているように見える探偵。けれどもその表情は、
 あまりにも余裕すぎる。
 人はあまりに追い詰められた時、『覚悟』を決め冷静になることがある。だが――
 探偵の表情に『覚悟』という色は見られない。
 それは明らかに『余裕』だった。
 ゾワリ、と『男』の体を恐怖が包む。まるで見えない何かに体を蝕(むしば)まれていくような、そんな感覚。まるで禁句(タブー)を思わず言ってしまったかのような――
(禁句(タブー)……だと?)
 …………『男』は遂に気付いてしまった。
 自分が致命的なミスを犯してしまったことを。
 知らず知らずのうちに禁句(タブー)を言ってしまったことを。
「スピードワゴンッ!!」
 閃光のようにジキルの声が『男』のいる橋の方へ飛んだ瞬間、

「あいよ」

 後方から若い男の声。『男』は振り返りたくないはずなのにその後方(げんじつ)に思わず目を向けてしまう。
 そこには顔に大きな傷の入った男――スピードワゴンが立っていた。
「おい、オメェ」スピードワゴンは口の端を歪め、目の前の『男』に
「覚悟しろや」

 グシャリッという鈍重な音とともに『男』は吹き飛ばされた。

2010/02/12 Fri 21:28 [No.67]

探偵事務所へようこそ その3

Sgt.LUKE

それは、『幽霊』と呼ぶにはあまりに歪(いびつ)だった。
 奇妙な目、機械のように光沢のある体。人間というより『亜人』といった感じだ。
 探偵・ジキルはそんなおかしな『幽霊』に少しずつ近づいていく。
「おい、お前よぉ」
 と、ジキルはだるそうな声で、
「ここで何してんだ?」
「…………………………」
 返事は無い。ジキルは『幽霊』が何か喋るのを促すように
「なぁ、黙ってないで何か言ってくれよ」
「…………………………」
 それでも返事はない。ジキルはこのほとんど沈黙の空間に疲れたように一度溜息をつき、

「――――いい加減喋れ。この野郎」

 瞬間、乾いた炸裂音とともにジキルから何か高速の物体が飛び出し、幽霊の体を貫く。沈黙を徹していた幽霊はたまらずグッ、という呻(うめ)き声をあげた。
「おやおやぁ」ジキルは口の端を少し歪め、「ようやく喋る気になったか、幽霊さん?」
「くっ……」
 幽霊が初めて自ら声を出す。
「貴様、何をした……?」
「…………」
「答えろッ!」
 探偵はそんな幽霊の様子を眺め、歌うように
「弾丸」
 ……。幽霊は訝(いぶか)しげに眉を顰(ひそ)める。と、ジキルは幽霊の心情を察したのか、幽霊に自分の手を見せ、
「弾丸だよ」
 手には拳銃が握られていた。拳銃は黒塗りの鉄のように黒く、光沢があり、銀で獣を象(かたど)った装飾が施されてある。六発装填のリボルバー型(タイプ)だ。
 なかなかクールなその外見は鑑賞用にもってこいだが、奇妙なことに何故か銃口と弾倉が三つもある。
「正確には『銃弾』」ジキルは拳銃を指しながら、「この銃、三つも銃口があるだろ? 見ておわかりの通り一回引き金(トリガー)を引くだけで三発同時に発射されるんだ」
 探偵はくるくると手の中の拳銃を回しながら、
「俺はコイツを『666(ザ・ナンバー・オブ・ザ・ビースト)』と呼んでいる」

(何なんだよ……コイツぁ……)
 スピードワゴンは目の前の光景に思わず身震いした。ぞくぞく、と背筋に氷の塊を詰められたような感覚。今、スピードワゴンは恐怖しているッ。
 自分には見えない幽霊が恐ろしい訳ではない。
 自分には見えないはずの幽霊と平然とやりとりしている、あの探偵が恐ろしいのだ。
 そしてすでにその探偵は幽霊に対して銃弾を浴びせている。何か――
(――何か、特殊なモノなのかなぁ?)
 幽霊は見えないが、ジキルのあの奇妙な拳銃を見ることはできた。だが――
 だが、それだけだ。
 自分では『見ること』は可能でも、この状況で何もできない。スピードワゴンは己の直感でそう気づいていた。
 クソッ! と奥歯を噛み締める。
 何か役に立ちたい。
 何か手助けをしたい。
 けれども、何もできない。
「スピードワゴンッ!」
 不意に声が砲弾の如く飛んできた。それは探偵の声。
(何だッ!?)
 探偵がこちらを凝視している。まるで何か合図しているかのように。何か伝えたいかのように。
「……………………ッ!」
 スピードワゴンはハッ、として、思わず駆け出す。足の向く方向は食屍鬼街(オウガー・ストリート)のさらに奥。ジキルたちがいる場所のさらに奥。凍りつくように冷たい道を全力疾走する。
「…………ッ!」
 幽霊は自分の横を通り抜けようとするスピードワゴンを排除しようと、目の前の探偵に構わず、スピードワゴンに接近する。だが、単に見えないだけなのかスピードワゴンは何も気にしていない様子。
「ククククク」
 幽霊はそんなスピードワゴンを憐(あわ)れむように笑い、手を振りかざして、
「闘いにおいて『よそ見』って行為はッ――――」
 その手を振り下ろす。
「『死』を意味するんだぜェェェェェェェッ!!」
 グシャァッ! という音とともに、スピードワゴンは血を噴き出し、地面に転がる。

 ――――転がる、はずだった。
「なッ……………」
 幽霊は思わず絶句する。何故なら、
 血を噴き出しているのは振り下ろした自分の手だったからだ。
「なんだとォォォォォォォォッ!」
 絶叫。そのトマトをぶちまけたように紅(あか)い手は正三角形を思わせる三つの穴が空き、硝煙がプスプス、と出ている。
「知らないのか?」
 幽霊の前方の探偵は歌うように、「闘いにおいて『よそ見』って行為は『死』を意味するんだぜ」
 ジキルは再び手の中の銃をくるくると回し、そして幽霊の頭部のあたりへ銃口を向けると、刃物のような声で

「次は当てるぞ」

2010/02/10 Wed 19:45 [No.66]

探偵事務所へようこそ その2

Sgt.LUKE

食屍鬼街(オウガー・ストリート)
それはロンドンで最も恐れられる場所。肌を切るような風、鼻をつんざく血の匂い――そして、常に立ちこめる悪気。一般人がここへ足を踏み入れるとまず無事でいられないというのは身体的に危険というのがもちろんであるが、この空間に精神をやられ、まいってしまうというのもあるだろう。まぁ「この二人」にはそんなこと一切ないが……

「よし!」
静かな街に響き渡る声。スピードワゴンである。
「さっそく調査してくれよッ! ジキル」
「あぁわかった。だが――」
「ジキル」と呼ばれるその男は正直に訊く。
「どのへんなんだ? その……『幽霊』とやらが出る場所は……」
「……あぁ悪い。もう少し先に行ったところだ。ついてきなよッ!」
スピードワゴンは小走り気味に進む。
この街の通路は迷路のように入り組んでおり、慣れない者が一度迷い込むとなかなか抜け出せない。けれど、スピードワゴンにとっては我が家同然のこの街。もはや彼に「迷う」という言葉はない。

しかし、本日は少し勝手が違った。

「おっかしいなぁ?」
「どうした?」
「いや、たぶん迷っちまったみてーなんだ」
「珍しいな……お前にしては」
「まったくほんとうだぜッ! 『幽霊』か何かの仕業なんじゃねーの?」
「『幽霊』か…………」
「このタイミングで『幽霊』なんて出たら逆に笑っちまうねッ!俺はッ!!」
今度は笑い声が響き渡る。だが、その声は突然途切れるようにおさまった。
「どうした!?」
ジキルは鋭い声でスピードワゴンに問う。
「おぉ……ぉ…………」
えらくうろたえた様子。スピードワゴンの顔からは嫌な汗が噴き出している。
「聞こえなかったかよぉ〜〜……今………」
「何がだ?」
「音だぜッ! 『音』」
「『音』……だと?」
「あぁそうだぜッ! なにか『ヒタッ、ヒタッ』って音が聞こえるんだよ」
途端、ジキルはをグルッと一周して辺りを見渡す。しかし、何も見当たらず、彼の赤い外套が風に靡くだけであった。
「どこにいる?」
「わからねぇ……だがよぉ、『音』はするんだぜッ!! 『音』はッ!!」
「違う」
……………………
「はぁ? オメー何のこと……――」
「お前はどこに『立っている』と訊いているんだ」
「――っ!」
「『幽霊』とやらは発見した。――っでどこにいる? そこでいいか?」
そうするとジキルはスピードワゴンの前方方向へと歩いていく。状況がうまく把握できないスピードワゴンはあっけにとられていたが、すぐに呼び止めた。
「お、おいッ!」
「……どうした?」
「とりあえず『幽霊』を見つけたのはわかったッ。だがよぉ……『対策法』はあるのかッ!? 『解決策』はあるのかッ!?」
「……ああ」
ジキルは再び歩を進める。
「ブッ倒してやる…………俺の『能力』でなッ!!」

2009/12/23 Wed 04:04 [No.60]

探偵事務所へようこそ その1

Sgt.LUKE

探偵とは実にうさんくさい職業である。
もし、あなたが見知らぬ人から「私は探偵ですが……」と怪しげに話しかけられたらどう思うだろうか? 大抵の人は不審がるとおもう。テレビのドラマなんかで見るとかっこいいが、実際のところ「どんな人間」が「どんなところ」で「どんなこと」をしているのかさえわからない。ましてや著名な探偵など聞いたことがない。酷い話、警察からのけもの扱いされる。しかし、探偵がとても活躍することもある。たとえば「表面上警察が関与できないことがあり、それを探偵に依頼、調査してもらう」といった具合だ。
今はそんなことがあるのだろうか? 少なくとも自分ではわからない。だが過去にはそのようなことがあったのだ!

この物語の舞台である「19世紀」ではね…………

19世紀、英国の首都ロンドン。その郊外の路地をある一人の男がひっそりと歩いていた。
「ふぅ……」
男の名はスピードワゴン。のちの石油王になる男であり、このときはまだロンドンの貧民街「食屍鬼街(オウガー・ストリート)」のリーダーである。
「しかし、相変わらずここは変わらねーな」
郊外にはよくきているのだろうか。彼は小さくつぶやくとある古い家の前で足を止めた。そしてその家の戸に手を置き、開ける。戸からは見た目相応の音がした。
「ボロい家……」

そこには「探偵事務所」と書かれていた

家の中へ入り、奥に進む。すると男が一人いた。
「ようこそ。今日はどのような用件で?」
男は作業をしながら目を合わせずに問いてきた。しかしスピードワゴンは何も答えない。
「…………どのような用件で――」
「俺だッ! 俺」
明るめの声色で言う。すると男はようやく顔を向けた。
「なんだお前か」
スピードワゴンとは対照的にえらく冷めた口調。
「なんだとはなんだッ!俺は客だぞ!」
といって机の上にあるポットから勝手に紅茶を飲みだす。
「客ならそんなことはしないが……」
「じゃあ客以上の人ってことで」
「――――あぁ……」
男はスピードワゴンの破天荒ぶりに呆れた様子。しかしもう慣れっこといった感じだ。
「っで!――」
スピードワゴンはすっかり飲み干した紅茶の容器を置いた。
「今回の依頼はなぁ〜 聞いて驚くなよッ!」
「まさかお前……“幽霊が出た”とか言うんじゃあないだろうな」
「……………………」
「図星か……」
図星だ。
「そ、そうなんだよ。最近俺たちのとこで変なことがおこってさぁ……もしかして“幽霊”とかじゃねーかと」
「…………そんなもの信じているのか?」
「信じてるわけじゃねぇッ!! だが……気味が悪くてよぉ。最近話題の“切り裂きジャック”なんて比にもならないぜ」
「ふぅ……」
男はゆっくり足を動かしだした。
「その話、なかなか興味がある。場所は?」
「食屍鬼街(オウガー・ストリート)だ。依頼受託のサインは俺とお前の仲。適当でいい。」
すると男は慣れた手つきで、最寄りの紙に自分のサインをした。
「依頼、たしかに承った」
紙には

Jekyll(ジキル)

と書かれた。

2009/12/04 Fri 02:24 [No.50]

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