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Sgt.LUKE
食屍鬼街(オウガー・ストリート)
それはロンドンで最も恐れられる場所。肌を切るような風、鼻をつんざく血の匂い――そして、常に立ちこめる悪気。一般人がここへ足を踏み入れるとまず無事でいられないというのは身体的に危険というのがもちろんであるが、この空間に精神をやられ、まいってしまうというのもあるだろう。まぁ「この二人」にはそんなこと一切ないが……
「よし!」
静かな街に響き渡る声。スピードワゴンである。
「さっそく調査してくれよッ! ジキル」
「あぁわかった。だが――」
「ジキル」と呼ばれるその男は正直に訊く。
「どのへんなんだ? その……『幽霊』とやらが出る場所は……」
「……あぁ悪い。もう少し先に行ったところだ。ついてきなよッ!」
スピードワゴンは小走り気味に進む。
この街の通路は迷路のように入り組んでおり、慣れない者が一度迷い込むとなかなか抜け出せない。けれど、スピードワゴンにとっては我が家同然のこの街。もはや彼に「迷う」という言葉はない。
しかし、本日は少し勝手が違った。
「おっかしいなぁ?」
「どうした?」
「いや、たぶん迷っちまったみてーなんだ」
「珍しいな……お前にしては」
「まったくほんとうだぜッ! 『幽霊』か何かの仕業なんじゃねーの?」
「『幽霊』か…………」
「このタイミングで『幽霊』なんて出たら逆に笑っちまうねッ!俺はッ!!」
今度は笑い声が響き渡る。だが、その声は突然途切れるようにおさまった。
「どうした!?」
ジキルは鋭い声でスピードワゴンに問う。
「おぉ……ぉ…………」
えらくうろたえた様子。スピードワゴンの顔からは嫌な汗が噴き出している。
「聞こえなかったかよぉ〜〜……今………」
「何がだ?」
「音だぜッ! 『音』」
「『音』……だと?」
「あぁそうだぜッ! なにか『ヒタッ、ヒタッ』って音が聞こえるんだよ」
途端、ジキルはをグルッと一周して辺りを見渡す。しかし、何も見当たらず、彼の赤い外套が風に靡くだけであった。
「どこにいる?」
「わからねぇ……だがよぉ、『音』はするんだぜッ!! 『音』はッ!!」
「違う」
……………………
「はぁ? オメー何のこと……――」
「お前はどこに『立っている』と訊いているんだ」
「――っ!」
「『幽霊』とやらは発見した。――っでどこにいる? そこでいいか?」
そうするとジキルはスピードワゴンの前方方向へと歩いていく。状況がうまく把握できないスピードワゴンはあっけにとられていたが、すぐに呼び止めた。
「お、おいッ!」
「……どうした?」
「とりあえず『幽霊』を見つけたのはわかったッ。だがよぉ……『対策法』はあるのかッ!? 『解決策』はあるのかッ!?」
「……ああ」
ジキルは再び歩を進める。
「ブッ倒してやる…………俺の『能力』でなッ!!」
2009/12/23 Wed 04:04 [No.60]