ゆな
皆々様、かなりお久しぶりです。始めましての方は始めまして。私は種族名エンブオー、個人名ステーキと申します。
なにやらメンバーの変更があったり、なんかのコンテストで激戦を行ったり、ご主人様は相変わらずの大食いだったりと色々ありましたが私達は元気でございます。
この度ご主人様があの優男……ゲフン! 宿敵を追いかける旅を続けている最中、とても不思議な存在に出会いました。
それは人間であって人間でなく、ポケモンであってポケモンではない子供でした。
「……こいつは驚いたな、人間なのにポケモンの技を使えるなんて」
「来ないでください……。これ以上、戦闘を実行するなら僕は……」
「怯えるな、私に子供を苛める趣味は無い。それにショタコンでもない」
「しょた、こん?」
「気にするな。それより子供よ、腹は減ってるか?」
「え?」
最低限のバトルをした後、ご主人様は何と言いますか普段どおりに飯に誘っておりました。もちろんあの淡々とした様子且つ無表情で言った為、相手方は呆気に取られておりました。
さてさて、これが始まりだと――一体誰が思ったのでしょうか? それとも皆々様ならば予測できたのでしょうか? 少なくとも私から見たご主人様の様子は、飯の事しか考えてないとしか言えません。
この出会いが、ご主人様と子供を巡る物語の始まりでございました。
■
「……ポケモンの細胞を生みこんだ、人間?」
「はい。“ホムンクルス”という名を与えられ、一体一体に番号が示されています」
「で、お前もそうだというのか。……親は泣かなかったのか?」
「いいえ。僕達に親はいません、僕等は最初からこの状態で産み落とされたようなものですから」
「そうか。それは凄まじいな、それでお前は何故ここにいる」
「分かりません。……従いたいと願っている筈なのに、恐怖心を抱いて、逃げて……」
「ふむふむ」
「頭がごちゃごちゃになって、眩暈がしてきて、何も出してないのに混乱して、それで……気づいたら……」
「逃げ出していたというわけか」
「……はい……。それで、あなたと、出会って、それで、それで」
「…………」
「僕は、何をすればいいのでしょうか……?」
「……何?」
「あなたに従えばいいのですか、それともこのまま誰かにゲットされるのを待てばいいのですか、それとも、それとも、それとも……」
「そうだな、私からいえるのはこいつだな」
「? それ、あなたが食べてたご飯……」
「飯を食え。お前は腹が減っているのだろう? 空腹の時に考えようとしても、苦しいだけだ」
グラトニーが出会うのは、ポケモンの力を持った人造人間。
■
「ノーマルタイプ」
「ほのおタイプ」
「みずタイプ」
「でんきタイプ」
「くさタイプ」
「こおりタイプ」
「かくとうタイプ」
「どくタイプ」
「じめんタイプ」
「ひこうタイプ」
「エスパータイプ」
「むしタイプ」
「いわタイプ」
「ゴーストタイプ」
「ドラゴンタイプ」
「あくタイプ」
「はがねタイプ」
「……これら全部に一人ずついるのか、お前の兄弟」
「はい、そうです」
「見た目はお前と同じ人間に近いのか?」
「フォルムはそうですね」
「羽生えてたり、牙生えてたりするのいるのか?」
「はい、います」
「……マジか?」
「マジです」
■
「ポケモンの遺伝子を如何に組み込むかで、人間に変動が起きるかの実験……か」
「僕等はその為のモルモットなのですか?」
「……理由がサッパリつかめんな」
「何故?」
「下手なトッピングやアレンジが料理を殺すのと同じだ。既に良い代物を無茶苦茶にしてるに過ぎない」
「……グラトニー……」
「お前を否定してるわけじゃない。私が怒っているのは、何でそんな事を思ってやらかしたか」
「どういう事ですか?」
「奴等は“作りたい”と思った。だがそれを“味わいたい”と思っているのかが分からない。これはさっき言った料理と同じだ。……直訳するととてもとても酷い言い方になるが、聞くか?」
「……はい」
「奴等はな、一瞬の研究成果にのみ興味が無いのかもしれん。そしてホムンクルスはその為の過程でしかなく、命とすら見られているのかどうか怪しい」
2011/01/31 Mon 14:09 [No.86]