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夢の世界とは(途中)

ゆな

この光景はある意味夢のようだと、スイレンは思う。いや、ポケモンになってからも夢のようだと思った事はあった。だけどそれは驚きという意味合いであり、目の前にあるのはそういう意味じゃない。言うなれば御伽噺に近い。
 ライモンシティにたどり着き、興味が湧いて入ってみたポケモンミュージカル。今、自分はその観客席に座ってミュージカルを眺めていた。舞台の上では西部を連想させる衣装を身につけた見知らぬルカリオが、得意気に演じている。評価はあえてしないが、舞台の上に立って堂々と演じている姿は少なくともスイレンの目を奪うには十分だった。

「うわぁ、すごぉい……!」

 まるでゲームの中からそのまま出てきたようなステージに、スイレンはきらきらと目を輝かせていた。こんなにも平和にミュージカルを見る事が出来ている為か、頭からはすっぽりドリームメイカーズの事が消えていた。
 実際ここに来るまで大きな事には巻き込まれていないし、ポケモンの姿にも慣れてきて楽しいと思えてきたところなのだ。それならばこうやって楽しんでも罰は当たらないだろう。
 そんな気楽な考えの中、ミュージカルを眺めていると不意に隣から話しかけられた。女性の声だ。

「あんた、ミュージカルは始めて?」
「ほえ?」

 スイレンが振り返ってみると、そこにいたのは簡易的なシャンデリアを連想させる姿のポケモン・シャンデラだった。ただしその後頭部にはオレンジ色のリボンをつけており、右目にはモノクルをつけている。
 その変わった姿にスイレンはぱちぱちと瞬きしながら、つい思ったことを口にする。

「モノクルリボンシャンデラだー」
「おいこら、なんちゅー返答だ」
「あ、ごめんなの! そんなつもりは無かったの!」
「いいよ。わざとじゃないのは分かってる」

 一気に不機嫌になったシャンデラに慌てて弁解するも、彼女はさらりと流して小さく笑う。どうやら見た目やタイプと違い、結構触れ合いやすい性格のようだ。
 スイレンは軽く座りなおすとミュージカルからシャンデラへと顔を向けたまま、先ほどの質問に笑って答える。

「うん。ミュージカル初めて見るの! こうやって見れるなんて夢みたいなんだ」
「へー、そうなんだ。うちは偶に見に来るぐらいだね」
「常連さんなの?」
「いや、暇潰し目的。あんまり興味は無いけど、気分転換にはなるかなーってね」
「あ、そーなんだ」

 あっさりしたシャンデラの返答に、スイレンはちょっと呆気にとられる。適当に流すように答える様子からして、本当にミュージカルのファンというわけでもなさそうだ。
 勿体無いなぁ、と思うけれどそれ以上深く聞こうとは思わなかった。言葉が思い浮かばなかったし、何を聞けばいいのかもパッとには思いつかなかったのだ。

2011/09/11 Sun 23:14 [No.664]