あきはばら博士
クルーザは自称最速である。
いや、言い直そう。
クルーザ様は自称最速である。
彼は昔から何事も一番でなければ気がすまないタチで、小さいときは片っ端から勝負を挑み続けて、どんなことでも一等を取るまでは絶対にあきらめず、何度も何度もチャレンジをしていた。
とにかく負けず嫌いで、現在ではだいぶまるくなったと本人も思いかえすが、その本質は変わってない。
そんなあるとき出会った最速の称号に心惹かれて、速さを追究するようになり。自ら最速を名乗り始めた。
自分が最速であるための日々のトレーニングを欠かさず、ちょっとした大会でも優勝を収めている。セクトが哲学者ならば、クルーザはアスリートだろう。
DMにはある人物からの誘いを受けて加入した、DMの目的は完全に理解をしていないが、目的の完遂後には新しい世界が開けることからその挑戦心が加入の理由であり、またそれまでツッパって敵を作って生きていた彼にとって誘いが素直に嬉しかったこともあるだろうか。
自称では有るが誰もその最速の名乗りに異議を唱える者はいない、少なくとも現時点に限れば。
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「ずいぶんと派手にやっちまったようだな」
シャンデラのゆなの襲撃を受けて命からがら逃げ出してきたフィリットとジャグラーと気絶しているまかろんの前に、一匹のフローゼルが立ちふさがっていた。
ここはホドモエシティの出入り口、モニュメントが目をひくブリッジ西口。
「あのモノクルにやられたみたいな焼き焦げから、おめえ達があっちの世界からやってきたという元人間だな? そうだろ」
それを聞いて、気絶しているまかろんを背負ったジャグラーが目を見開いて尋ねる。
「ま、まさかお前もドリームメイカーズの」
「その通り、俺様はドリームメイカーズの一人、誰もが俺様をこう呼ぶ、最速の男っ! クルーザ様だ!」
フローゼルのクルーザは見得を切って、あらかじめよく練習していたような動きでとてもかっこいい(自称)ポーズを決める。
「手ごたえのある相手で――」
その瞬間にフィリットの猫騙しが決まった!
先手必勝、もうさっきのような惨劇は繰り返したくない、怖い繰り返したくない。
クルーザが怯んでいる隙に、フィリットはとび――ひさげりには成らず、とびげりをクルーザに蹴り込んだ。
「くそっ てめぇぇ!!」
悪態を付けながらゼロ距離でんこうせっかから刹那においうちをすることで、弾き飛ばしたフィリットに追撃で2連打を叩き込んだ。俺様コンボ#1(命名:クルーザ)だ!
フィリットは立ち上がり再びとびげりをするが、ダメージで意識が半ば消えかかっている。
その攻撃はかわされカウンターでクルーザの拳が彼女のみぞおちに吸い込まれて、気を失った。
「フィ、フィリットさん!」
気絶したまかろんを地面に置いたジャグラーがクルーザに殴りかかる。不完全ではあるがマッハパンチの形だが。
「おせえ」
クルーザはしゃがみけたぐりで相手の足を崩して、たきのぼりの激しい水流と共にアッパーカットした。
ジャグラーの意識は闇に包まれた。
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・
「やっちまった……」
沈黙する3人の前に、クルーザは悩んでいた。
これは捕縛して本部に持ち帰るべきだろうけれど、さすがのクルーザも3人持つのは無理だ。誰か一緒に連れてくるべきだったと後悔していた。
連絡を入れて誰か来るのを待ってようかと考えていると、
「待ちなさい」
「あぁ?」
そこに色違いの青いジュプトルと、普通の緑のジュカインがいた。
「なんだ、青薔薇のねーちゃんじゃねえか。こんなところに何の用だ? ん、ひょっとしてこれはおめえの仕業か?」
「その質問に答える義務は無いわ」
青薔薇のねーちゃんことレナは立ち去れとばかりに右手を向けて威嚇する。
「彼氏連れで来るとは妬けるね。心配するな、デートの邪魔はしないぜ」
「…なっ」
「帰る。気分が乗らねぇ」
そう言い捨てて、クルーザは川に飛び込む。そしてあっと言う間に泳ぎ去っていった。
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フィリット&まかろん&ジャグリオを例にしていますが、このような形でホドモエに逃げたチームをジュカッター&レナに合流させる予定です。
クルーザは気に入った人に変なあだ名を付ける設定です。ジュカッターには青薔薇の彼氏とか付けそう。
クルーザはレナの速さを見込んでDM関係で戦う以外にプライベートでも勝負を挑んでいるだろうと思い、お互いによく知っている関係として書きました。
2011/09/03 Sat 23:37 [No.632]