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Re: 電脳戦士の異邦人

サントアンヌ号

そんなとんでもない失態をやらかしてしまった自分の不甲斐なさに呆れたものの、今更あがいてもどうしようもないと判断するや否や、すぐにこれからどうするかと切り替えていける自分は、確かに脳がプログラムの人間かもしれない。
 余談だが、最初に鏡を見て自分の姿がポリゴン2になっていた事に驚愕した時に思考を数分間だけ二次元世界へ飛ばして(正確には『現実逃避』である)いた事は、墓場まで持って行こうと考えている。

 その後の店内の探索によって判明した事は、今いる場所がどこの百貨店なのかという事。
 その場所なのだが、店の規模と窓の外から見える右手側の鋼鉄製の橋(おそらくシリンダーブリッジだろう)と、左手側に見える古めかしい町(ホワイトバージョンのソウリュウシティだと思う)から推測すると、一つだけ心当たりがあった。

 イッシュ地方の9番道路にあるショッピングモール、『アールナイン』である。

 ただ気になるのはここには店員がいない事なのだが、自分は特に気にしていない。
 むしろ商品が獲り放題な事に喜んでいたりしている。

 まあそんな万引きまがいな事をしていて心が痛まないのか、という意見はもっともだ。
 だが『悪い事をしてもバレなきゃ問題無い』という思考を子供のころから確立していた私にとっては、残念ながら“馬に耳に念仏”レベルのノーダメージである。

 とりあえず某白黒魔法使いの『一生借りるZE!』という言葉で誤魔化しておこうと思う。

 それからリュック(店内で見つけた物)の中に傷薬やら技マシンやらを詰め込み、更にはPCやらライブキャスターも失敬していると、ふと一階で何かの気配の様な物を感じた。

 視線を向けてみた先には、奥の部屋へと続く道がある。
 確か自分の記憶が正しければ、ゲーム版の場合のそこには段ボールしかない部屋だった筈だ。
 しかし今確実に、何者かがいる様な雰囲気を感じたのである。

 本来なら怪しい場所に足を運ぶなどという、そんな死亡フラグまがいの行動などは絶対取らない主義なのだが、今の自分は少し気分が高揚していたのかもしれない。
 加えて手元にはアイテムを大量に所持していた事もあってか、私は迷わず向かう事にした。

 奥の部屋に入ってみたが、やはりゲームで見た様に段ボールだらけの場所である。
 しかしその内の一つから、先程の気配を感じる事が出来た。

 いや、正確には何かの音がする、といった方が適切かもしれない。
 というよりも、この睡眠の障害となりえる様ないびきの音しか聞こえないのだが。

 とはいえ気になるので、その音の発生源である段ボール箱の一つを開けてみた。

 中に入っていたのは……

 ひょっとしたら、という予想もあったかもしれない。
 けど確かに、その段ボールの中にいたのだ。

 一匹の(なんか小さそうな)ロトムが。

2011/08/31 Wed 00:51 [No.606]