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大阪かヒウン、どっちが都会やと思う?

あんびしゃん(氷河期の賢者

音楽が好きだ。
 俺の周りには常に音楽が流れていた。親父も、母親も音楽家というわけじゃない。でも音楽が好きや。おそらく遺伝子やろ。最初は子どものための歌。次はポップス。洋楽、ロックと来て今はR&B。音楽を聞いている時の俺は普段とは何か違うものがあった。なぜか、それを考えたことはないんやけど。
 音楽を聞いている時の俺が自然体。そして歌っている時の俺は進化形。自分に酔っていると言われればそうなんやろうか。
 俺は歌手になる――歌手になって音楽を届けるんや。多くの人に。

「ヒィイーア!」
 ラップを歌っている俺は、周りが見えない。家ではかなり迷惑なようだが、気にしない。
「静かにしなさい!」
 たとえ母親の怒号が鳴り響こうと。
「黙らんか! 演歌が至高だ!」
 父親がラップを否定しようが。

 俺は音楽を聴き続ける。歌い、奏で。これほど楽しいことが他にあるか。――ないやろ。
「いいよな……歌って」
 一人の部屋で浸っているだけなら誰も文句は言うまい。
 高層マンションの五十三階。大阪市一帯を見渡せるような高さ。ベランダに出る。手元にはスマートフォン。うちの家自体が金持ちだから買ってもらえたもの

 これすごいで。ネットもできるし。マスコミが持ち上げるだけあるわ。
「ポケボードっと」
 音楽サイトをめぐっていたら、ポケモンの主題歌に出会い、おおなかなかいいやんと思ってネットサーフィンしていたらであったサイト、ポケ書。
 俺はポケモンについてはせいぜいルビーサファイヤくらいまでしか知らないにわかやし、このサイトのコンテンツはあまり楽しめるもんではない。
 しかし、このポケ書の掲示板、ポケボード。一般的に雑談やらワイファイやらアンケートやら言葉遊びやらという部屋があるのだが、その中で小説を書く為の部屋というのがある。俺はそこに興味を持ってから、このサイトに通うようになった。今思えばな。
 素人が小説書いて、評価貰えるなんて素敵やん?
 でも、俺は小説を書けない。いや、俺は歌で勝負するし、どうせなら歌の部屋もできたらええのにとか思いながら眺めてるけど、ここ二年でできたことはあらへん。
「歌いたいわ。久々にカラオケ行きたい」
 通天閣は節電中。光らへん。阪神買ったやろうか……
「ん、なんやこれ」
 小説部屋に、タイトルなしのスレッドが立てられている。
「またたちの悪いあの荒らしやろうか。でも、小説部屋に来るのは珍しいなあ」
 そのスレッドは、それ以外の部屋にも。
「なんや、スレッド見てみるか」
 そこには、URLが一行だけ。
「あれ、あの荒らし違うやん」
 俺は画面を下にスクロールしようとして、タッチパネルに触れる。そしてスクロール――やばい。URL押してもうた。これウイルス来るかもしれんで。
 あれ、おかしい眠い。なんでや――

 眠気と呼ぶには穏やかではない指示が彼の脳から出された――

「なんやもう……スマフォ壊れるんちゃうか思うたわ……」
 彼はまず、晴れているということに疑問を持った。彼はさっきまで闇に空間を包まれた夜という世界で生活をしていた。なのにどうして日差しが届いているのだろうと思う。
「あれ、ビルやんこれ」
 彼はベランダにいたはず――なのに道路に横たわっている。
「俺、浮くねんけど」
 彼は浮いている――
「足ないねんけど」
 彼は尖ったもので全身を支えていた。
「腕が氷なんやけど」
 以下省略である――
「これって……どういうことや!」
 彼は近くの窓へと走る。自分の姿を映す。するとそこには――
「アイスやないか……」
 バニラアイスがいた――

2011/08/27 Sat 23:42 [No.599]