Makoto
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「ねぇ、キミ? 大丈夫?」
「…………」
誰かが僕を呼びかけてる。鈴のように高い声……子どもの声みたいだ。
「ねぇ… 起きてよ、起きてってば」
「…………うぅ……」
今度は体を揺さぶっているようだ。それも、強く力を込めてユサユサと。
うるさいなぁ……。もうちょっと……寝かせてよ……
「……起きろー! <みずでっぽう>!」
「わああぁっ!?」
バシャッ!! 水の冷たさを真っ向から感じた僕は、慌てて飛び起きた。
「ケホッ、ケホッ!?」
「あ、気が付いた! よかったぁ〜!」
水をかけられてまだ驚いている僕をよそに、ラッコのような体をした小っちゃな子どもは歓喜の声を上げていた。
いきなり浴びせられた方はたまったものではない。水打ちにはいいかもしれないけど。
「ちょ、いきなりひどいじゃないか! 何も悪いことしてないのに」
「う…だ、だって……。目の前で倒れてるキミを放っておけなかったんだもん……」
「……ゴメン、今のは僕が言い過ぎたよ」
思わず声を大きく上げてしまった僕。と、さっきまでの元気が萎れて、泣きそうな顔をしてうなだれる男の子を見て、自分の大人気なさに気づいて反省、何とかなだめすかした。その際に、泣いてる子どもの顔も可愛いなと思ってしまったのは、さておき……。
とりあえず、一先ず落ち着こう。それに、ここは見慣れた風景じゃないことには間違いは無さそうだ。
「僕、一体どうしてたの? ここは、どこ……?」
「キミ、ここで倒れてたんだよ? “でんきいしのほらあな”に通じる、6ばんどうろの一軒家の前で」
「そうなの…か……」
「大丈夫? ごめんね、もしかしてぼくの<みずでっぼう>の打ち所が悪かった?」
「ううん、そんな事ないよ。大丈夫だ、ちょっと眩暈がしただけ…」
ようやく目の前の視覚が戻ってきた。しかし手を伸ばそうとすると、妙な違和感を感じる。
いや、それ以前に…… 僕って、こんなに目線が低かったっけ?
2011/08/27 Sat 22:19 [No.596]