ジャグラー
「死者が蘇る・・・しかも、スケルトンや屍兵のような形ではなく、生前と同じ状態で・・・。だけど、ネクロマンサーでもこんな高度な魔術は扱えないのに、誰がやったのかしら?」
ミラノとキリエの二人を見て、ロザリィは呟く。
彼女の脳裏には、かつてお互い争うこともなくロズウェルと話していた事が思い浮かぶ。
彼女の知ってる中でネクロマンサーは彼が一番だった。
だから彼女はロズウェルの事を思い出した。
「・・・そんなわけ、ないわね。だって、あいつはもう死んじゃってるんだし・・・。それに、あのネシアというのももういないし。きっと、何かの間違いね」
「何が間違いだって?」
「決まってるでしょ。あのユグドラが持ってた剣の力か何かで・・・え?そ、その声って・・・」
突如後ろから聞こえた声にどこか懐かしい感覚を持ったロザリィは、後ろを振り返る。
そこには、胸に黒色の薔薇のクレストをつけ、ネクロマンサー独特の杖を持ったひとりの若い男がいた。
男はロザリィの元に近づき、彼女の顔を覗き込む。
「白薔薇の頃に比べて、ずいぶんと高飛車な性格から変わったんじゃないか?ロザリィ」
「・・・う、うるさいわね!そういうあんたこそ、生き返ったからってバナナン食べまくってたんでしょ?」
「人聞きの悪いことを言わないでくれ。私は目が覚めたらここにいたんだ。バナナンは黒薔薇に戻ってから食うさ」
「ああそう。変な事言って悪かったわね。・・・ロズウェル・・・生きてたのね」
「正確に言えば、生き返ったの方が正しいな。一度亡霊になった後にユグドラお姫様に浄化させられたからね。」
「どっちにしろ、生き返ったんだからどっちでもいいのよ、馬鹿」
ロザリィは、この時初めて王国軍の男達と一緒にいて今まで感じることのなかった胸のざわめきを感じた。
「・・・キリエ殿に、ロズウェル殿も生き返っているとは・・・。しかし、このような魔術を一体誰が・・・?」
ミラノやロザリィ達を見て、デュランが疑問を言う。
聖剣は封印され、誰かを生き返らせる手段は彼からしてみれば何もなかった。
だが、すでに2人が生き返っている。
彼からしてみればかなり謎だった。
デュランがそのような独り言を言うと、クルスはその言葉に答えを投げかける。
「多分、聖剣の最後の力か何か・・・じゃないのかな?」
「クルス殿?・・・聖剣の力、ですか?」
「ああ。あくまでも僕の推理にしか過ぎないが・・・あの剣は、封印される前に何か力を発揮したんじゃないか?
例えば、あの剣に切られた人間が蘇るとか・・・」
「なるほど・・・信じがたいですが、そのような事もあり得ますね。ありがとうございます、クルス殿」
「あくまでも推理だから本当かどうかは微妙だけどね」
そうですね、とデュランが言うと彼はユグドラの元へと向かい始めた。
2011/06/21 Tue 23:14 [No.396]