ロサラ
「もうすぐ、この世界は終わるだろうな」
――時は2114年。
人間の細胞を変形させるウィルスが、突如出没した。
その悪魔とも呼べるウィルスは瞬く間に日本中を覆い、2年後の2116年には、既に日本は崩壊状態となってしまった。
その中で、健気に生きてゆく、化物に浸食された人間達。
「やだ………化物になるなんて嫌だよ……あたしがあたしじゃ無くなるなんて……そんなの…」
ウィルスの浸食が進んでしまうと、その人間は次第に自我が崩壊して行く。
そして、完全に精神と肉体が変貌してしまうと――それは、もう人間の面影など残らない、只の化物。
この結間小学校も、その化物の波に呑み込まれかけていた。
化物達によって出口が塞がれてしまい、生徒達は其処にある意味監禁状態となりながら、日々を送っていた。
だが、苦痛ではない。家族に会えないから苦痛だなんて、思わない。既に、自分達の親は全員、親では無くなってしまったのだから。
自分達には、仲間がいるのだから。共に泣き、共に笑い、共に痛みを分かち合える、仲間がいるのだから。
「ほら、先生も呼んでるから。早く行かないと今日のおやつ、下級生の子達に全部食べられるぞ」
だけど、幸せは突然。本当に突然。
「――踊子がいなくなったって、そんな…」
幸せが走るレールは、唐突に千切れてしまうのだから。
「どうしよう、化物達こっち来てるよ!? すごい来てるよ!?」
「みんな、落ち着いて体育館に避難して! 大丈夫だから!」
だって僕らは、人間なのに。
だって僕らは、人間だったのに。
運命の波は、容赦なくちっぽけな"人間"に覆いかぶさる。
それは、何回も繰り返しても繰り返しても繰り返しても。
「……に…ない……し…に………たく…ないよ……」
彼らは、運命の鎖に縛り付けられたまま。
「――僕、もういいんだよね。もう、みんなの所に行ってしまっても、いいんだよね?」
決して、解放されない。
「……………ごめんなさい……気づけなくてごめんなさい、助けられなくてごめんなさい、死なせてしまって、ごめんなさい…ごめん、なさい………」
ただ、解き放たれる為のたった一つの術は、
「…………あたしさ…あたし達さ…もう、取り返しのつかない事…やっちゃってるんだよね…」
自分達の過去の罪を。
自分達で、抱えてしまった罪を。
「……………どう、しよう…」
自分達で、許す事。
「…ねぇ由貴、何処行っちゃったの?」
自分達で、赦す事。
「…………ユルさない……私、は…お前達をユルさない…ッ! 一生かかっても、何年時が過ぎても、ユルさない! ユルしてやるものかッッ!!!」
誰かに、ユルされる事。
「………また、もう一度やり直せるなら…今度こそ…ッ!」
何回でも、繰り返す。
運命の鎖が、罪の鎖が、砕け散るまで。
それまで、彼らに終わりなど、無い。
終わりなど、与えられない。
たった一つの罪のせいで。
たった一つを、終わらせてしまっただけで。
彼らは、終わりを失くしてしまったのだから。
―Lost Last―
***あとがき
なんなんだろうこれ。
とりあえず続くかどうかわからない新小説の予告編みたいな何か。
つーかこれ災害とかそれに関する話だし、この話考えてる途中に震災来ちゃって公開しようかどうか迷った挙句に。
まぁ自粛なんてしても何も起こらないからね、うん。
>4/27 編集
セツコ、「ラストロスト」やない、「ロストラスト」や。
2011/04/26 Tue 22:45 [No.293]