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Re: 文章力を見てもらいたくて

いぬ

* * *

 「そうですか為らばやって御覧なさい、――命祈祷ッ!!」

続いて女――永江衣玖も、閉ざされていた口を解き放つ。
更には右手に持っていた、細長い帯に柄をくっ付けたような、奇妙な得物も“解き放つ”。
蛇のように、鞭のようにしなり祈祷に迫るそれ。

薄刃乃太刀(はくじんのたち)。
“刀狩”と呼ばれる者の所有する得物であり、刃の強度を保ったまま可能な限り薄く鍛えた、蛇腹剣の一種と言えよう。
鞭の如く手首の微妙な返しを使って刃を自在に操ることができると言うが、この芸当は本人でなければ扱うのは容易とは言えまい。
なのだが。

 「……案外使い易いわね」

“空気を読む程度の能力”を持つ衣玖にとっては、これ位直ぐに馴染めていたのだった。
それ以前にこの薄刃乃太刀、どうやら扱い方が彼女の普段の戦闘方法と類似している所為かもしれない。

 「いちいちうっさい」

刹那、連続する発砲音。
衣玖を睨みつけながら、祈祷は薄刃乃太刀の追撃を跳びながら避け、隙を見つけて彼女めがけて発砲していた。
独特の発砲音。銀色に輝く二つの銃身。

ソードカトラス。
このバトルロワイアルの参加者であるレヴィが愛用するというカスタムガン。
かの有名な“ベレッタM92F”がベースになっているが、衣玖と同じように、祈祷も案外と馴染んでいた。

して、そのソードカトラスの二発の銃弾を、衣玖はものともせずに避ける。
しかし空気を読む程度の能力の有効活用なのか、避けると言うよりも受け流しているように見えた。

しかしながら祈祷も負けておらず、薄刃乃太刀のくどい撓りも確実に避けていた。
否、それ以上にその“蛇”が襲う速さ以上に動いているので、その攻撃は当たるはずも無いと言えようか。

 「遅い」

一瞬で衣玖に詰め寄る。祈祷にUターンで追尾する蛇。
見計らい、衣玖の後ろに回り込む。そして射撃。発砲と共に蛇が追いつくが、上へと“飛んで”それを避ける。

しかしその所為で、蛇が衣玖を括り付けるような位置になる。つまりは衣玖の周りをぐるんと囲んでいた。
更には発砲を避けなければならない。要約すれば、「嫌でも今の位置から動かなければならない」という訳だ。
まず最初に、軌道が狂った薄刃乃太刀をばっと翻しながら、銃弾を横へと跳んで“避ける”。

その一瞬の動作に、刹那ながらの隙が生じた。
そこを更に“見計らった”祈祷。
にやりと口の端を釣上げて降らせんのは“弾幕”の雨であった。

 「おっと」

上空からの白い弾幕の雨。
相当な数なのに全くと言って良いほどに動じず、衣玖は全てを受け流しつつ再び蛇を放つ。
祈祷はその蛇を避ける為、弾幕の展開を中断して再び横に跳ぶ。

再び、最初の位置づけとなる。
しかし、祈祷には作戦が浮かび上がった。

 (――さっきの奴で弾幕をばかでかい奴にしてやりゃ、避けれないかも)

ちみっこい攻撃が効かないと思ったのか、弾幕に重きを置くことを提案した。
あくまで銃は囮。一発でも撃ち込めりゃあ充分。
そう思い、利き手の左手には弾幕を溜め込む。

 (決めてやるッ!!)

再び、一瞬で衣玖に詰め寄る。再び、祈祷にUターンで追尾する蛇。
再び、見計らい、衣玖の後ろに回り込む。

・・・・・・・
まではよかった。

* * *

回り込んだ。
あとは銃を撃つ。その間に上に上がる。
それだけ。

・・・・ ・・・・・
それだけ、だったのに。

――その銃を撃とうとした、右手が動かなかった。

 「え」

――衣玖の背から伸びるのは、衣服の一部である“筈”の、羽衣。

 「迂闊でしたわね」

――そして祈祷の横腹に、“蛇”は貫通した。

* * *

 「が」

それだけの言葉が漏れると、祈祷の身体は人形と化した。

 「わ…に同…手が…用…ると…も…ば、大…違…すわ」

一気に脚の力が抜け、地面――正しくは橋の台――にのめり込む。
……衣玖の声が聞き取れない。耳が遠くなる。視界が霞む。衣玖が遠のイていク……と、思えば。

――痛い、熱い。

******
バトロワの戦闘シーンから抜粋。
日本語でおk

2011/04/26 Tue 00:08 [No.289]