kaku
声は笑った。
「はっはっは……とう!」
掛け声と共に、声の主が、地を割って這い上がり、地中から抜けだした。
遂に現れた声の主を目の当たりにした三人は、同時に叫んだ。
「杏子ちゃん!」「佐倉杏子!!」「誰!?」
まどかの声は歓喜に震えていたが、ほむらの声はまるで地中深くから立ち上るような恨みに満ちたものであり、巴マミに至ってはこの時間軸では佐倉杏子と面識が無いので本気で誰か分かっていない様だった。
そこにいたのは、赤い魔法少女佐倉杏子だった。
「待たせたな!!」
槍を掲げたまま、左手を前方に向けて見得を切る。なんと猛々しいポーズであろうか。だが、それ以上に三人の目を釘付けにしたのは、すっかり修復されたソウルジェムであった。
「杏子ちゃん!!そのソウルジェムどうしたの!?」
まどかは、杏子のソウルジェムを指さそうとした。だが、不幸かな、誤ってティロ・フィナーレを放ってしまった!!
魔女を一撃で葬るほどの銃弾である。当然、魔法少女が食らってはひとたまりもない。まどかのティロ・フィナーレは、あろうことか杏子のソウルジェムに直撃した。そして、その生命の石を粉々に砕いてしまったのである!!
魂が破壊され、抜け殻となった佐倉杏子の肉体が、ドサッと音を立て、力なく横たわる。
「きょ、杏子ちゃーん!!」
まどかは、後悔した。己の軽率さを呪った。杏子がせっかくソウルジェムを元に戻して蘇ったというのに、よりによってそのソウルジェムを撃ちぬいてしまうとは。自分の空気の読めなさに、ただただ絶望するだけだった。
だが、杏子はまどかの想像など遙か超越していた。
「ふっふっふ……まだまだ甘いな、お前ら!!」
なんと、死体が口をきいたのである。
この光景には、様々な魔女の犠牲者を見続けていたまどかも、ドン引きである。
「う……キモイ……」
そんなまどかをよそに、杏子は無表情のまま、まるで操り人形のように起き上がり、ねずみ色の肌にみるみる血が通い、虚ろな目が光をとりもどした。そこにいたのは、先程までと寸分違わぬ佐倉杏子であった。
「おい、びっくりするじゃねぇか!!私は実はソウルジェムじゃなくて賢者の石を命として生きている旧ハガレンアニメ版設定のホムンクルスだったからよかったものの……普通の魔法少女なら死んでたぜ!!気をつけろ!!」
生き返った杏子は、ぷんすかと怒った。
「なんだ、そうだったんだ!!」
「いよいよ人間離れしているわね!!この妖怪!!」
「ごめん、マジで思い出せない。誰?」
杏子の秘密を知り、まどかは安堵し、ほむらは憎悪に顔面を歪めた。マミは杏子のことを知らないのでどうでもよかった。否、正直なところ、杏子の秘密など、三人にはどうでもいいことだった。まどかが安心したのは、自分が殺人犯にならなかったことに対してであるし、ほむらが怒りに震えていたのは、自分とまどかのプレイを邪魔されたことに対してだ。
だが、ほむらのそんな怒りは、杏子の次の一言で雲散霧消することになる。
「まったく……とにかく、そんな人間が入れそうな銃ををアナルにぶち込もうだなんて許せねえな!!そんなにケツ穴が寂しいのなら、私の槍で我慢しろ!」
そう言いながら、杏子は、自分の得物である槍を取り出した。これこそ、杏子がその生命を預けてきた相棒たる槍である。その槍は、戦うときに、自在に大きさを変える。どんな穴にもジャストフィットさせることができるのだ。
「……ごくり」
ほむらは、思わず唾を飲み込んだ。
こんな危険な槍が、自分の中に入ってくる様子を想像すると、それだけで正気を失いそうだ。その上、アナルの中で巨大化したら。ほむらのパンツは、もはやいろんな汁でびちゃびちゃになっていた。
「……女神さま、お願いします!!」
2011/04/21 Thu 01:24 [No.258]