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Re^2: 決意

あきはばら博士

クールに変身してエルレイドの姿になっているアイビスは、途中である違和感がして来た道を戻り、先程のジャグラーの部屋の前に立つ


 そして、超能力で中に誰がいるかを調べ取る。
 ……いる。
「……やはり、おかしい、人数が多い」
 ―――カギはかかっていない。アイビスはそっと扉を開けた。

 そこにいたのは、パッチール、ジュプトル、エーフィ、トロピウス、そしてルカリオ。
 全員に生命の炎は消えてない、前者3人は分かる、突入して来た者と種族が一致する。トロピウスの朱鷺も分かる、前者3人らと戦って

勝った上で捕虜として監視していたのだろう。
 だが、あのルカリオは……かつてDCにいたジャグラーだ。
 彼は確か、カールと刺し違えて重傷だと聞いていたが、そんな体で何故戻ってきたのだろうか。
 おそらく、監視していたトロピウスの朱鷺と戦い気絶させた後、ここでぬくぬくと休眠を取っているのだろうと、アイビスは考えた。

 のんきに眠っているルカリオを“サイコキネシス”で持ち上げ、部屋の外に放り出す。そして、部屋を出てドアを閉めた。

「いっつつ……くそ、誰だ……?」
「お前もかのファビオラ氏のように、ひっそりと暮らしていれば手出しをしなかったものを。何故わざわざ我々に牙を向ける?」
「!……クール!?」
 どうやら先ほど放り投げた時の衝撃で目を覚ましたようだ。
 クールの姿に変身しているアイビスを見ると、すぐに戦闘態勢に入った。
「目が覚めたようだな。いまさら戻ってきてなんとする? お前の居場所はここにはないぞ」
「……ふん決まっているだろ。俺がここに戻って来た理由は、仲間の手助けさ。俺一人だけ寂しくベッドで待っているというのはごめんだ

からな」
「それで倒された仲間を回収してきたというところか?」
 アイビスは腕を組み一瞥する。
「少し違うな。護衛、ガードマンさ。生憎ここにいる人達は生きててもらいたいからな」
「そうか、そういうからにはその者たちを巻き込みたくないんだろう?」
 アイビスは静かに殺気を放出する。
「違うな。“お前が俺に倒される”のさ。それに俺にはまだやりたい事もあるし、あの人に伝えたい事もあるからな!」
「伝えたいこと、か……。 ならばお前に、一つ聞くことがある」
「ん?」
「……何故、お前は裏切った揚句かつての仲間と戦う道を選んだ? お前がカール氏の独断で切り捨てられた事は知っている。私に助けを

求めるか、そのまま戦いの舞台から降りればどうにかしてやったものを……」
「ああ、俺も一度は考えたよ。DCに戻ろうともした。……けどな、それをするということは、誰かが悲しむんだよ」
「何?」
「こんな俺でも、仲間だと思ってくれる人達がいる。こんな俺のことを好きだと思っている人がいる。そんな人達を置いて、今更DCに戻

るなんて……絶対に出来ない」
 ……予想外だ。まさかあのジャグラーがそんなことを言うとは。
 少し奴を低く評価していたようだな……。だが……。
「それに……俺にも絶対守りとおさなければならない大切な人がいるんだ。……俺は、その人のためにDMの一人として戦う。その人のた

めにも、俺は両腕が千切れたって戦い続ける!これが俺の正義だ。俺が貫き通すと決めた、正義だ!!」
「黙れ! お前に愛する者の何を語れるのだ、必死になって戦ってそれで護れるものだと思っているのか! それがお前の正義ならば。…

…いいだろう」
 アイビスは、彼女が愛した者と同じ形の腕の刃を、ジャグラーに真っ直ぐ向ける。
「大切な人を守る、それも正義の一つだが。青二才が言う世迷い事じゃない、その正義の重みに負けて貫き通すことなく、ここで散ること

になるだろう!」
 もはや話など無用、腕の刃を構える。

「行くぜ、クール!」
「来い、ジャグラー!」

「らああああああぁぁ!!」
 叫び声と共にジャグラーの腕から波動が放出される。
 ルカリオが得意とする“はどうだん”だ。
 しかし、アイビスにはその程度の技は通用しない。
「ふんっ」
 “はどうだん”の波動を“リーフブレード”で真っ二つに切り裂く。
 さらに、そこから“サイコカッター”を繰り出し、一気にジャグラーを追い詰める。
「ッ!」
 だが、その攻撃は相手の影をしっかりと捕らえていたが、素通りする結果に終わる。
「何!?……」
 “かげぶんしん”と“みがわり”を複合させのだろうとアイビスは瞬時に判断を下す。
(どこでそんな技を……!? ……やはり、甘く見すぎていたか)
 “かげぶんしん”単体では時間がたてば消滅する上に、攻撃されればすぐにばれてしまう為、時間稼ぎにはあまり向かない。
 しかし、そこに“みがわり”の効果を加えれば時間がたっても消えず、本物そっくりの分身が出来上がる。
 だが、それには身代わりの効果と影分身の能力を調整する必要がある。それを軽々こなすとは……。
「言っただろ、クール。俺は大切な人を守るために戦い続けると。そのためなら俺はどんな技だって使う。」
「そんな技で倒せるような私だと思わないほうがいい」
 アイビスは高まる気持ちを落ち着かせ、めいそうに入る。
「そうかい。最初からそんなこと思ってないからな」
 波動の力で骨棍棒に似た物を作り出す。武器にもなる“ボーンラッシュ”の準備である。
「その杖、ボーンラッシュか……」
 腕の刃を光らせて、構える。
「おらあ!!」
「ふんっ」
 脳天目掛けて振りかざされた骨杖を、アイビスは頭上に光る刃の両腕を添えることで、防ぐ。
「甘いっ」
 そして流れるように、アイビスはそのまま前へと踏み込んで“つじぎり”をする。
「いっ…!っつー…やりやがったな!!」
「望むところだ」
 ジャグラーは接近したポジションを生かすために“インファイト”へと移行するが。アイビスも同じ技“インファイト”を繰り出す。
「あがががが っ…!くそ…!」

 インファイトの打ち合い。
 格闘技はルカリオにとって弱点もあるために、インファイトの打ち合いではジャグラーが圧倒的な不利となるのだ。
 こちらの攻撃がすることで相手は一定範囲に近づいてこれずに続いている状況下で手を休めてしまうのは危ないとは言え。この状態は明

らかに不味い。
「冗談じゃねえ…ここで死ぬことはダメなんだよ!」
 ジャグラーは“インファイト”をやめて“こらえる”を繰り出す。
「お前をこのデパートコンクエスタに連れてきたのは私だったな、だがどうした? あの時のような眼が、無いではないか」
 アイビスはジャグラーが狙うカウンターを読んだ上で、“インファイト”を解除してバックステップをする。
「お前の考えなど、お見通しだ」
 すばやく“サイコキネシス”を叩き込む。
「…っ…あの頃の俺は、腐ってたからな。だけど、今は違う!」
 中距離からの攻撃を耐えながら話す。
「今の俺には、守りたい仲間が!大切な人がいる!だから昔の俺とは目が違うんだ!」
「ほう、 ならばこんなお前には、本当に、大切な人や愛すべき人を守るだけの力があるというのか?」
「あるさ!だから俺は、お前を倒し、生きて帰る!!」
 ジャグラーの瞳を見つつ、アイビスは応える。
「立ち向かえる力、守るための力。守っていくことそれは攻撃を叩き出すより難しいものだ。助けになる。力になる。心に身体が追いつい

ていなければ、それは単なる弱い者の遠吠えだ!
(だから自分はあの方の支えになると決めていて表には出ないようにしていた!!自分にはあの方の横に立って戦うための力が圧倒的に足

りない!!)
 そんな遠吠え戯言など、私には通じぬ」
 アイビスは、下から上へと直線を何度も描くように素早く腕を振り上げる奇怪な舞、つまり“つるぎのまい”に移行する。
「遠吠えかどうかは、決めつけるにはまだ早いんだよ!」
 “りゅうのはどう”をジャグラーは発射する。
「そう、確かに早いかもしれませんね」
 しかし、それを“サイコキネシス”で相殺する。
(ジャグラー、貴方がポケモンになってから暫くたったとはいえ元人間。そこまでその力を使いこなすようになるとはまったく。侮れない

ものです。私も隠していた自分が出てしまって、クール様にはなりきれずにいます。しかしこれは自分の勤め、少なくともこの戦いの最後

までは“クール”として戦うことにしましょう)
「構えなさい。 言うだけの理想で終わるか意志が肉体を凌駕するか。私には今信念がある。さぁ、お前の信念はどこまでだ? 吠えるだ

けならだれにでも出来る。続きをしようじゃないか」
「……ああ。いいだろう。…行くぞ!!」
 たっ、と
 駆け出してジャグラーは“シャドークロー”を仕掛ける。
 アイビスはリーフブレードでそれを受けるが、ジャグラーは“みがわりかげぶんしん”のテクニックを再度使用して、技のタイミングをずらしてインファイトを叩き込もうとする。
 それは実体であるために、必中技をもってしてもジャグラーを捉えることが出来ない。先程のインファイト合戦で相手の防御は大きく下がっている、クリティカルヒットすればジャグラーが大きく有利になれるだろう。
 だが、アイビスは速攻先制技である“かげうち”を瞬時に使用することで、相手の技の発動時に攻撃を挟み込んだ。
 つまり、身代わり分身はタイミングを外し、インファイトは使うことが出来ず失敗することとなったのだ。

 気がつけばジャグラーの目の前にアイビスはいた。
 ここはインファイト圏内だ。

2011/04/13 Wed 01:07 [No.234]