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探偵事務所へようこそ その1

Sgt.LUKE

探偵とは実にうさんくさい職業である。
もし、あなたが見知らぬ人から「私は探偵ですが……」と怪しげに話しかけられたらどう思うだろうか? 大抵の人は不審がるとおもう。テレビのドラマなんかで見るとかっこいいが、実際のところ「どんな人間」が「どんなところ」で「どんなこと」をしているのかさえわからない。ましてや著名な探偵など聞いたことがない。酷い話、警察からのけもの扱いされる。しかし、探偵がとても活躍することもある。たとえば「表面上警察が関与できないことがあり、それを探偵に依頼、調査してもらう」といった具合だ。
今はそんなことがあるのだろうか? 少なくとも自分ではわからない。だが過去にはそのようなことがあったのだ!

この物語の舞台である「19世紀」ではね…………

19世紀、英国の首都ロンドン。その郊外の路地をある一人の男がひっそりと歩いていた。
「ふぅ……」
男の名はスピードワゴン。のちの石油王になる男であり、このときはまだロンドンの貧民街「食屍鬼街(オウガー・ストリート)」のリーダーである。
「しかし、相変わらずここは変わらねーな」
郊外にはよくきているのだろうか。彼は小さくつぶやくとある古い家の前で足を止めた。そしてその家の戸に手を置き、開ける。戸からは見た目相応の音がした。
「ボロい家……」

そこには「探偵事務所」と書かれていた

家の中へ入り、奥に進む。すると男が一人いた。
「ようこそ。今日はどのような用件で?」
男は作業をしながら目を合わせずに問いてきた。しかしスピードワゴンは何も答えない。
「…………どのような用件で――」
「俺だッ! 俺」
明るめの声色で言う。すると男はようやく顔を向けた。
「なんだお前か」
スピードワゴンとは対照的にえらく冷めた口調。
「なんだとはなんだッ!俺は客だぞ!」
といって机の上にあるポットから勝手に紅茶を飲みだす。
「客ならそんなことはしないが……」
「じゃあ客以上の人ってことで」
「――――あぁ……」
男はスピードワゴンの破天荒ぶりに呆れた様子。しかしもう慣れっこといった感じだ。
「っで!――」
スピードワゴンはすっかり飲み干した紅茶の容器を置いた。
「今回の依頼はなぁ〜 聞いて驚くなよッ!」
「まさかお前……“幽霊が出た”とか言うんじゃあないだろうな」
「……………………」
「図星か……」
図星だ。
「そ、そうなんだよ。最近俺たちのとこで変なことがおこってさぁ……もしかして“幽霊”とかじゃねーかと」
「…………そんなもの信じているのか?」
「信じてるわけじゃねぇッ!! だが……気味が悪くてよぉ。最近話題の“切り裂きジャック”なんて比にもならないぜ」
「ふぅ……」
男はゆっくり足を動かしだした。
「その話、なかなか興味がある。場所は?」
「食屍鬼街(オウガー・ストリート)だ。依頼受託のサインは俺とお前の仲。適当でいい。」
すると男は慣れた手つきで、最寄りの紙に自分のサインをした。
「依頼、たしかに承った」
紙には

Jekyll(ジキル)

と書かれた。

2009/12/04 Fri 02:24 [No.50]